参考資料 地域の指標
ここでは、科学技術活動のアウトプットの状況を表す以下の1~7の項目について、日本の都道府県でどのような分布や変化をしているかを示した。
1. 国公私立大学の大学院生数
2. 論文数(全分野)
3. 論文数(生命系分野)
4. 論文数(生命系以外の分野)
5. 生命系以外の分野と生命系分野の論文のバランス
6. 特許出願件数
7. 発明者数
作図にあたり、都道府県のグルーピングの方法はできるだけ共通のものにした。
1. 国公私立大学の大学院生数
ポイント
- 大学院生は、大都市を有する都道府県に多く、東京都が群を抜いている(図1-1)。
- 2004~2006年から2009~2011年のシェア増加率でみると、福島県が1.19と高く、次いで秋田県が1.15と高くなっている。また、シェア増加率が0.95未満と減少した都道府県は7である(図1-2)。

資料:
文部科学省 学校基本調査報告
図1-2. 国公私立大学の大学院生数シェア増加率 2004~2006年平均値と2009~2011年平均値の比較

資料:
文部科学省 学校基本調査報告
表1. 国公私立大学の大学院生数

注:
「大学院学生数」は、国公私立大学の合計数。在籍する研究科の所在地による。
資料:
文部科学省 学校基本調査報告
2. 論文数(全分野)
ポイント
- 論文数シェアの分布をみると、大都市を有する都道府県の値が大きく、2002-2004年と比較すると、上位10県に入る都道府県に違いはない(図2-1、表2)。
- 論文数シェア上位5県に入っている都道府県は、シェア増加率でみると、かならずしも上位5県には入っていない。また、シェア増加率が0.95未満とシェアの減少した都道府県は14である(図2-2)。

資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計。

資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計。

注:
1)都道府県の論文は、論文著者の所属する機関(学科、研究科など)の都道府県所在地により分数カウントしている。特に、海外の機関が関わる共著論文の場合、日本の機関の分のみを分数カウントし、海外の機関の分はカウントしていない。例えば、共著の所属が東京大学(工学部)(東京都)、東京大学(理学部)(東京都)、慶應義塾大学(東京都)、千葉大学(千葉県)、スタンフォード大学(米国)の場合、カウント結果は東京都が4分の3、千葉県が4分の1となる。
2)一部分別分類ができない雑誌があるので、表3と表4の合計値は全体(表2)と合わない。
資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計。
3. 論文数(生命系分野)
ポイント
- ここでは、論文の分野を生命系分野と生命系以外の分野の2つに分けたうちの生命系について示す。生命系分野とは、臨床医学、精神医学/心理学、農業科学、生物学・生化学、免疫学、微生物学、分子生物学・遺伝学、神経科学・行動学、薬理学・毒性学、植物・動物学である(1)。
- 生命系分野のみの論文数シェアの分布(図3-1)はシェア0.5~1.0%に該当する県が18と多い。一方、シェア5%以上の県は少ない。
- 論文数シェアが大きい都道府県が、シェア増加率が大きいとは限らないが、神奈川県は2004~2006年、2009~2011年ともに論文数シェアが比較的大きい上に、シェア増加率も6位と高い順位である。なお、シェア増加率が0.95未満と減少している都道府県は17である(図3-2、表3)。

資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計。

資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計。

注:
論文のカウント方法は、表2の注のとおり。
資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計。
4. 論文数(生命系以外の分野)
ポイント
- 生命系以外の分野とは、化学、材料科学、物理学、宇宙科学、計算機科学、数学、工学、環境/生態学、地球科学である(2)。
- 生命系以外の分野のみの論文数シェアについては、シェア0~0.5%に該当する県が20と多い(図4-1)。また、上位5都道府県については2004~2006年と2009~2011年とでは変化はない(表4)。
- シェア増加率でみると、シェア増加率が1.15以上に該当する県は11と比較的多い。なお、シェア増加率0.85~0.95%未満に該当する県が最も多く、14である(図4-2)。

資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計。

資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計。

注:
論文のカウント方法は、表2の注のとおり。
資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計
5 .生命系分野と生命系以外の分野の論文のバランス
ポイント
- 生命系以外の分野論文と生命系分野論文のシェアのバランスを都道府県ごとにみた(図5)。バランスは、2009~2011年の生命系以外の分野論文数シェアを生命系分野論文数シェアで除したものである。
- 全体をみると、生命系分野論文数シェアが生命系以外の分野論文数シェアより大きい都道府県数が多い。反対に、生命系以外の分野論文数シェア自体が1%以上の都道府県の中で、バランスが1を上回る都道府県は、茨城県(2.41)、宮城県(2.23)、神奈川県(1.50)、京都府(1.39)等、8都道府県ほどある(表5)。

資料:
トムソン・ロイター社 Web of Science (SCIE, CPCI:Science)を基に、科学技術政策研究所が集計。

注:
論文のカウント方法は、表2の注のとおり。生命系以外の分野および生命系分野の3年移動平均の値は、表3および表4の再掲。
資料:
トムソン・ロイター サイエンティフィック"Web of Science"を基に、科学技術政策研究所が集計。
6. 特許出願件数
ポイント
- 特許出願件数シェアの分布をみると、東京都のみで51.72%を占め、さらに上位4都道府県のみで80%以上を占める(図6-1)。これは、企業の本社所在地が東京都に集中しており、特許出願の際には本社の住所が記載されることが多いためと考えられる。
- 2003~2005年から2008~2010年のシェア増加率をみると、伸びている県は秋田県、鳥取県などである。全体をみると、シェア増加率0.95未満と減少傾向にある都道府県は26と全都道府県の半数を超える(図6-2)。

資料:
特許庁、「特許行政年次報告書」

資料:
特許庁、「特許行政年次報告書」

注:
1)日本人によるもの。
2)その他の欄は、都道府県が特定できない出願の件数を示す。
3)筆頭出願人の所在地をカウントしている。
資料:
特許庁、「特許行政年次報告書」
7. 発明者数
ポイント
- 特許出願時の所在地について、出願者の欄には、例えば出願企業の本社の所在地を記載することが多いが、発明者の欄には発明者本人の所在地を記載することが多いと一般に考えられている。そこで、知識生産活動の成果である特許の出願状況を、件数シェアの分布(図6-1)と実際の発明者数シェアの分布(図7-1)で比べてみると、発明者数シェアの高い県は、特許出願数シェア上位都道府県に多いが、周辺にも広く分布していることがわかる。
- 発明者数シェアが大きい都道府県は、特許出願数シェアの大きい都道府県でもあるが、シェア増加率も比較的大きい都道府県は東京都、愛知県である。シェア増加率0.95未満と減少傾向にある都道府県は2010年で26である(図7-2)。

資料:
特許庁、「特許行政年次報告書」

資料:
特許庁、「特許行政年次報告書」

注:
1)一つの出願に記載された「発明者」すべてを抽出した「延べ」人数である。
2)国際出願(PCT出願)は含まない。
資料:
特許庁、「特許行政年次報告書」
参考統計

注:
a:このデータは前年度までのデータとの継続性が損なわれている。
b:各国資料に基づいたOECD事務局の見積もり・算出。
<ドイツ>1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。
資料:
<日本>総務省統計局、「人口推計」年報(webサイト)
<米国>The Executive Office of the President,“Economic Report of the President 2011(webサイト)
<ドイツ、フランス、イギリス、中国、韓国、EU>OECD,"Economic Indicators for MSTI "

注:
a:このデータは前年度までのデータとの継続性が損なわれている。
資料:
<日本>総務省、労働力調査労働力人口平均(Webより)
<米国>Bureau of Labor Statistics,U.S. Department of Labor,Current Population Survey (Webより)
<ドイツ、フランス、イギリス、中国、EU、韓国>OECD," Economic Indicators for MSTI"


注:
a:このデータは前年度までのデータと継続性が損なわれている。
b:各国資料に基づいたOECD事務局の見積もり・算出。
<日本>各年とも年度データである。1993年度までは平成12年基準値、1994年度からは平成17年度基準値
<ドイツ>1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。
<中国>各年とも年度データである。
資料:
<日本>内閣府経済社会総合研究所、「国民経済計算(93SNA)」(webサイト)
<米国>Bureau of Economic Analysis,"National Economic Accounts"(webサイト)
<ドイツ、フランス、イギリス、韓国、中国、EU>OECD,"Economic Indicators for MSTI

注:
a:このデータは前年度までのデータと継続性が損なわれている。
b:各国資料に基づいたOECD事務局の見積もり・算出。
<ドイツ>1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。
資料:
OECD,"Economic Indicators for MSTI "

注:
b:各国資料に基づいたOECD事務局の見積もり・算出。
資料:
OECD,"Economic Indicators for MSTI "
(1)科学技術政策研究所、「世界の研究活動の動的変化とそれを踏まえた我が国の科学研究のベンチマーキング」p.3 を参照。
(2)科学技術政策研究所、「世界の研究活動の動的変化とそれを踏まえた我が国の科学研究のベンチマーキング」p.3 を参照。