3.2高等教育機関の学生の状況

ポイント

  • 日本の大学学部学生の入学者数は2000年頃から横ばいに推移していたが、2011年度は前年度と比較して1%減少し、61.3万人となった。私立大学への入学者数が多く、全体の約8割を占めている。また、分野別に見ると、全体の約3割が自然科学分野を専攻している。
  • 修士課程の入学者数は、2005年頃から横ばいに推移していたが、2010年度は前年度と比較して5.4%増加したものの、2011年度は、3.6%減少し、7.9万人となった。国立大学への入学者数が全体の約6割を占めている。また、専攻別に見ると、全体の約6割が自然科学系を専攻している。
  • 博士課程の入学者数は2003年をピークに減少傾向にあったが、2010年度は前年度と比較して3.6%増加したものの、2011年では4.8%減少し、1.6万人となった。国立大学への入学者数が多く、全体の約7割を占めている。また、専攻別に見ると、全体の約7割が自然科学系を専攻している。

3.2.1大学学部の入学者

 18歳人口について見ると、1991年における206.8万人をピークに減少傾向に転じている。今後も減少傾向で推移するものとみられ、例えば2020年には114.9万人と、ピーク時の55.5%の水準まで減少するものと推計されている(図表3-2-1)。
 大学学部への入学者数は、進学意欲の高まりと定員拡大の下、1981年度の41.3万人から2011年度には61.3万人へと約1.5倍に増加している。この結果、2011年度の進学率(18歳人口に対する大学入学者数の割合)は、過去最高の51%を示した。

【図表3-2-1】 18歳人口と大学入学者数の推移

注:
1)18歳人口は中位推計による。
2)大学入学者数は、当該年度に大学(短大を除く)に入学し、かつ翌年5月1日(調査実施時期)に在籍する者の人数である。
3)進学率は、18歳人口に対する大学入学者数の割合である。
資料:
1)18歳人口:<2007年まで>総務省統計局,「人口推計」(各年10月現在) <2011年以降>厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所、「日本の将来推計人口」(2012年1月推計)
2)大学入学者数:文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-1


 大学学部への入学者数の推移を、主要分野別に見たものが図表3-2-2(A)である。日本の大学学部学生の入学者数は2000年頃から横ばいに推移している。2011年度は前年度と比較して1%減少し、61.3万人となった。
 入学者数の内訳を見ると、「社会科学」系で20.7万人、「人文科学」系は9.1万人となっている。「自然科学」分野では「工学」系で9.0万人、「保健」系は6.0万人、「理学」系は1.9万人、「その他(家政、教育、芸術、その他の合計)」が12.9万人となっており、特に「保健」系の入学者数は1981年度と比較すると2.7倍、「その他」の入学者数も2.1倍となっている。
 入学者数を国・公・私立大学別で見てみると(図表3-2-2(B))、私立大学の入学者数が全体の8割を占めている。入学者数の増加は主に私立大学への入学者数の増加の影響が大きい。分野別に見ると、全体の約3割が自然科学分野を専攻している。なお、私立大学への入学者数は「社会科学」系が多い。ただし、私立大学全体で見た構成比では「社会科学」系が減少傾向にある。一方、国立大学では「工学」系への入学者数が多い。また、「その他」の増加には「私立大学」の入学者数の増加によるところが大きい。

【図表3-2-2】 大学(学部)入学者数
(A)関係学科別の入学者数の推移

(B)国・公・私立別大学の入学者数の推移

注:
(A)のその他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-2


3.2.2大学院修士課程入学者

 2011年度の大学院修士課程入学者数は、全体で7.9万人である。前年度と比較すると、3.6%の減少率である。主要専攻別の内訳を見ると、「工学」系が3.5万人(全体の43.9%)と最も大きく、次いで「社会科学」系0.8万人(全体の9.9%)、「理学」系0.7万人(全体の8.6%)、「保健」系0.5万人(全体の6.4%)となっている。
 大学院修士課程への入学者数は1990年以降に大学院重点化が進んだこともあって、1990~2000年度にかけて大きく増加した。その期間の伸びは2.3倍である。また、2000年代に入ると、その伸びは鈍化していたが、2010年は8.2万人と増加し、2011年では減少している。この変化は、主要専攻の中でも人数の多い「工学」系の入学者数の増減の影響が大きい(図表3-2-3(A))。
 国・公・私立大学別でみて見ると、修士課程入学者数は学部入学者数とは傾向が違い、国立大学が多く、全体の約6割を占めている。専攻別で見ると国・公・私立大学ともに「自然科学」系が最も多いが、私立大学は「人文・社会科学」系も相対的に大きい。3-2-3(B))。

【図表3-2-3】 大学院(修士課程)入学者数
(A)専攻別入学者数の推移(修士課程)
(B)国・公・私立別大学入学者数の推移(修士課程)

注:
(A)のその他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-3


3.2.3大学院博士課程入学者

 大学院博士課程入学者数は、2003年度をピークに減少が続いていたが、2010年度は前年度と比較して3.6%増加した。しかし、2011年度は4.8%減少し、1.5万人となった。主要専攻別の内訳を見ると、「保健」系が0.6万人(36.8%)、「工学」系0.3万人(17.9%)と多くを占め、「理学」系、「人文科学」系、「社会科学」系は0.1万人程度である(図表3-2-4(A))。前年度と比較すると、「工学」系の減少が激しく、10.8%の減少率である。また、「人文・社会科学」系でも減少している。
 大学院博士課程の入学者数は1990年代に入ってから大きく増加した。これは修士課程の入学者数の増加と似通っている。また、修士課程の入学者数は2000年代中ごろから横ばいであり、博士課程の入学者数は2003年をピークに減少し始めていたが、修士課程、博士課程の入学者数ともに2010年は増加し2011年が減少している点は似通っている。
 専攻別に見ると、全体の約7割が自然科学系を専攻している。国・公・私立大学別で見ると、国立大学が全体の約7割を占めている。専攻別では、「理学」、「工学」、「農学」系では国立大学の割合が8~9割、「保健」系も6割を占めており、「自然科学」系を専攻する学生は、国立大学の比率が高いといえる。(図表3-2-4(B))。

【図表3-2-4】 大学院(博士課程)入学者数
(A)専攻別入学者数の推移(博士課程)
(B)国・公・私立別大学入学者数の推移(博士課程)

注:
(A)のその他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-4


3.2.4女性の割合

 2011年度の大学学部の女性入学者数は26.9万人であり、全入学者数の43.8%を占め、1990年度の30.2%から、13.5ポイント上昇した(図表3-2-5)。
 この状況を学部別に見ると、多くを占めるのが「人文科学」系である。次いで「保健」系であり、1990年度と比較すると約4倍と、他の分野と比較しても最も増加している(図表3-2-5(A))。
 修士課程の女性入学者の割合を見ると、「人文科学」系が多いことは、学部入学者と変わりがないが、「保健」系の割合も高く、1990年度では22.9%だった割合は、2011年度は53.1%となり男性を上回っている(図表3-2-5(B))。
 2011年度の博士課程の女性入学者数の割合は31.4%であり、同年度の修士課程の女性割合よりも2.5ポイント高くなっている。
 1990年代前半まで、理工系の大学学部入学者に占める女性の割合は上昇傾向で推移してきたが、最近はその伸びが鈍化している一方で、博士課程といったより高度な教育を受けようとする女性の割合が「自然科学」系でかなり増加している。

【図表3-2-5】 入学者数に占める女性の割合
(A)学部入学者数に占める女性の割合の推移
(B)学部・修士課程・博士課程別、関係学科・専攻別の入学者数に占める女性の割合

資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-5


3.2.5高等教育機関の社会人学生

 高等教育機関を活用し、社会人の学習意欲の高まりに対応した再教育の機会を充実させることは、高度な人材育成の促進、活用に役立ち、さらには社会全体の活性化にもつながる。
 2011年度の日本の大学院全学生数のうち社会人の数は5.5万人で20.2%を占めている。社会人の統計データを取り始めた2000年度の2.5万人から見ると割合は約2倍になっている。社会人大学院生数は、一貫して増加し続けていたが、2011年度は対前年度比0.6%の減少率と、少ないながらも初めて減少した(図表3-2-6)。

【図表3-2-6】 日本の社会人大学院生数の推移

注:
1)「社会人」とは、各5月1日において職に就いている者、すなわち、給料、賃金、報酬その他の経常的な収入を目的とする仕事に就いている者であり、企業等を退職した者、及び主婦等を含む。
2)ここでの大学院生とは、修士課程または博士前期課程、博士課程または博士後期課程、専門職大学院課程のいずれかに在籍する者をいう。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-6


 理工系の修士・博士課程における社会人大学院生数を学位レベルで見ると、2011年度では、工学博士課程の中での社会人大学院生は4,128人であり、2008年度をピークに減少傾向にある。工学修士は2004年度を境に減少し続けており、2011年で1,133人、博士と比較すると4分の1程度である。
 2011年度の理学博士課程の社会人は574人、理学修士課程の社会人は162人である。2000年度からの伸びは1.2倍程度であり、「工学」系と比較するとその伸びは少ない(図表3-2-7)。

【図表3-2-7】 理工系修士・博士課程における社会人大学院生の推移

資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」
参照:表3-2-7


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