2.2部門別の研究者

ポイント

  • 公的機関部門の研究者数を見ると、2014年の日本の公的機関の研究者数(FTE値)は3.1万人である。経年変化を見ると、大きな変動は見られないが、2000年代後半から漸減傾向にある。主要国について公的機関の研究者数を見ると、伸びが目立つのは中国であり、最新年値は28.9万人である。
  • 企業部門の研究者数を見ると、日本の研究者数(FTE値)は継続して増加傾向にあったが、近年横ばいに推移しており、2014年では48.5万人となっている。また、2000年代から急激な増加傾向にあるのは中国である。韓国は長期的に増加傾向にあり、2010年以降、欧州諸国を上回っている。
  • 大学部門の研究者数を見ると、日本の2014年の研究者数(FTE値)は13.7万人である。ドイツに関しては、2000年代中頃(2005年時点で6.5万人)から、研究者数が大幅に増加し、2013年では10.1万人である。英国の2013年の研究者数は15.4万人であり、日本の研究者数(FTE値)よりも大きい。
  • 日本の大学教員の年齢階層の比率を見ると、25-39歳の教員の比率が減少する一方で、年長の教員の比率が増加しつつある。なお、大学の種類別で見ると、国公立大学より私立大学の高齢化が進んでいると考えられる。
  • 新規採用教員数の年齢階層別の構成を見ると、25-39歳の採用教員数が減少し、40代の教員数比率が増加している。

2.2.1公的機関部門の研究者

(1)各国公的機関の研究者

 ここでいう公的機関とは何を指すかを簡単に示すと、日本の場合は「国営」(国立試験研究機関等)、「公営」(公設試験研究機関等)、「特殊法人・独立行政法人」である。
 米国の場合は連邦政府の研究機関である。
 ドイツでは連邦政府と地方政府、その他の公的研究施設、非営利団体(16万ユーロ以上の公的資金を得ている)及び高等教育機関ではない研究機関(法的に独立した大学付属の研究所)である。
 フランスは、科学技術的性格公施設法人(EPST)(ただし、CNRSを除く)や商工業的性格公施設法人(EPIC)等といった設立形態の研究機関である。
 英国は中央政府、分権化された政府の研究機関及びリサーチカウンシルである。
 中国は中央政府の研究機関、韓国は国・公立研究機関、政府出捐研究機関及び国・公立病院である。
 「公的機関」部門の研究者数は公的機関の民営化や、研究開発統計の計測対象の変更によって、大きな変動が起こることに注意が必要である。各国の違いを踏まえた上で各国の公的機関の研究者数を見る(図表2-2-1(A))。2014年の日本の公的機関の研究者数(FTE値)は3.1万人、経年変化を見ると、大きな変動はあまり見られないが、2000年代中頃から漸減傾向にある。
 米国については2003年から公的研究機関の研究者数を発表していない。
 ドイツ、フランス、英国は、値が途中大きな変動を示しているが、その主な原因は公的機関であった組織が企業部門に移行したり、研究者数を測定している調査方法が変更になったりしたこと等があげられる。ドイツの最新年の研究者数は5.7万人であり、2000年代中頃から研究者数は増加し続けている。
 フランスについては長期的に見れば、研究者数は増加し続けている。
 また、中国は2009年からOECDのフラスカティ・マニュアルの定義に従って測定し始めたため、2008年値よりかなり低い数値となったが、その後は増加し、最新年では28.9万人となっている。
 次に、人口1万人当たりの公的機関部門の研究者数を見ると(図表2-2-1(B))、日本は2.5人である。最も大きいのはドイツであり、6.9人となっている。ただし、ドイツは地方分(州政府等)が含まれている。英国は数の上でも人口1万人当たりでも小さな値となっている。


【図表2-2-1】 主要国における公的機関の研究者  
(A)公的機関の研究者数の推移

(B)人口1万人当たりの公的機関の研究者数

注:
1)公的機関部門の研究者の定義及び測定方法については国によって違いがあるため、国際比較する際には注意が必要である。各国の研究者の定義については図表2-1-1を参照のこと。
2)各国の値はFTE値である(日本についてはHC値も示した)。
3)人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
<日本>
 1)国・公営研究機関、特殊法人・独立行政法人。
 2)研究者については図表2-1-3を参照のこと。
<米国>
 1)連邦政府のみ。
 2)1985年から防衛関係は除く。
<ドイツ>
 1)連邦政府、非営利団体(16万ユーロ以上の公的資金を得ている機関)、法的に独立した大学の付属の研究所、地方自治体研究所(地方政府に相当する)
 2)1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。
 3)1989年以前は他のクラスを含んでおり、1993年値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。2013年値は国家の見積もり又は必要に応じてOECDの基準に一致するように事務局で修正された推定値及び暫定値。
<フランス>
 1)科学技術的性格公施設法人(CNRSは除く)、商工業的性格公施設法人、行政的性格公施設法人(高等教育機関を除く)、省の部局等
 2)1997、2000年値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。 1997年から2009年まで防衛関係は除く。 2013年は暫定値。
<英国>
 1)中央政府(U.K)、分権化された政府(Scotland等)、研究会議
 2)1986、1991、1993、2001年値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。 2013年値は暫定値または国家の見積もり又は必要に応じてOECDの基準に一致するように事務局で修正された推定値。
<中国>
 1)政府研究機関
 2) 2008年までの研究者の定義は、OECDの定義には完全には対応しておらず、2009年から計測方法を変更した。そのため、時系列変化を見る際には注意が必要である。
<韓国>国・公立研究機関、政府出捐研究機関、国・公立病院
<EU>
 1)各国資料に基づいたOECD事務局の見積もり・算出。
 2)EU-15の1991年値は前年までのデータとの継続性が損なわれている。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<米国、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国、EU>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2014/2”

参照:表2-2-1


(2)日本の公的機関部門の研究者

 日本の公的機関については2001年に、「国営」の研究機関の一部が独立行政法人となった(2003年には、「特殊法人」の研究機関の一部も独立行政法人となった)。そのため、2002年以降のデータはそれ以前との連続性が失われている。以上のことを踏まえて、日本の公的機関の研究者数(FTE)を見ると、2014年で総数30,904人であり、長期的に見ると減少傾向にある。機関種類別に見ると、「特殊法人・独立行政法人」の値が半数以上を占めており、増加傾向にある。一方、「公営」は3割程度で減少し続けている。また、「国営」は1割弱程度であり減少傾向が見える(図表2-2-2)。


【図表2-2-2】 日本の公的機関の研究者数の推移 
(A)研究者数*
(B)研究者数(FTE)
(C)研究者数(HC)

注:
1)2001年12月に、国営の研究機関の一部が独立行政法人となったため時系列変化を見る際には注意が必要である。
2)統計調査の内容や調査時点が変更されたため、2001年までは4月1日現在の研究本務者数、2002年以降は3月31日現在の研究者数を用いた。
3)(A)研究者数*は統計調査において研究換算をしていない「研究を主にする者」である。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表2-2-2


 公的機関の研究者数を専門別に見る。ここでいう専門別とは、研究者個人の専門的知識別である。
 図表2-2-3(A)を見ると、一貫して「農学」の専門知識を持つ研究者が最も多いが、2002年からの推移を見ると、減少傾向にある。
 専門別研究者の所属先を見ると(図表2-2-3(B))専門分野のうち研究者数が最も多い「農学」の研究者の所属先は「公営」研究機関が一番多い。次に多いのは「工学」の研究者であるが、その所属先は「特殊法人・独立行政法人」の研究機関が多い。「理学」も同様である。また、「保健」の専門知識を持つ研究者は「特殊法人・独立行政法人」の研究機関に所属している者が多いが「公営」の研究機関にも多く所属している。


【図表2-2-3】 日本の公的機関における専門別研究者
(A)研究者数の推移

(B)専門別研究者の所属先(2014年)

注:
図表2-2-2と同じ。2002年からHC値。
資料:
図表2-2-2と同じ。

参照:表2-2-3