3.2高等教育機関の学生の状況

ポイント

  • 日本の大学学部学生の入学者数は2000年頃から横ばいに推移している。2013年度は61.4万人である。主要分野別では「保健」系、「その他」が増加する一方で、「社会科学」系、「工学」系の入学者数は減少傾向にある。
  • 2013年度の大学院修士課程入学者数は、全体で7.3万人であり2010年をピークに減少が続いている。主要専攻の中でも人数の多い「工学」系の入学者数は、2010年から減少が著しい。
  • 博士課程の入学者数は、2003年度をピークに減少が続いていたが、2010年度は前年度と比較して3.6%増加した。しかし、その後は連続して減少し、2013年度は1.5万人となっている。主要専攻別では、特に「工学」系、「人文・社会科学」系の減少が著しい。
  • 2013年度の大学学部の女性入学者数は27.5万人であり、全入学者数の44.7%を占め、着実に増加しているのが見える。
  • 日本の大学学部、修士課程、博士課程別入学生数の男女別の内訳を見ると、いずれも女性の入学者数は増加しているが、男性の入学者数は、2000年度までは増加していたが、いずれも2013年度では減少している。

3.2.1大学学部の入学者

 18歳人口について見ると、1991年における206.8万人をピークに減少傾向に転じている。今後も減少傾向で推移するものとみられ、例えば2020年には114.9万人と、ピーク時の55.5%の水準まで減少するものと推計されている(図表3-2-1)。
 大学学部への入学者数は、進学意欲の高まりと定員拡大の下、増加し続けていたが、2000年代に入るとその伸びは鈍化し、2013年度には61.4万人となっている。進学率(18歳人口に対する大学入学者数の割合)については、50.0%であり、昨年と比較すると0.9ポイント増加した。


【図表3-2-1】 18歳人口と大学入学者数の推移

注:
1)18歳人口は中位推計による。
2)大学入学者数は、当該年度に大学に入学し、かつ翌年5月1日(調査実施時期)に在籍する者の人数である。
3)進学率は、18歳人口に対する大学入学者数の割合である。
資料:
1)18歳人口:<2007年まで>総務省統計局,「人口推計」(各年10月現在)
       <2011年以降>厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所、「日本の将来推計人口」2012年1月推計)
2)大学入学者数:文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-1


 大学学部への入学者数の推移を、主要分野別に見たものが図表3-2-2(A)である。日本の大学学部学生の入学者数は2000年頃から横ばいに推移している。2013年度は61.4万人であり、対前年比は1.5%の増加率である。
 最新年の入学者数の内訳を見ると「社会科学」系で20.2万人、「人文科学」系は9.0万人となっている。「自然科学」分野では「工学」系で9.1万人、「保健」系は6.5万人、「理学」系は1.9万人、「農学」系は1.7万人、「その他(家政、教育、芸術、その他の合計)」が13.1万人となっている。
 経年変化を見ると、2000年代に入り、「保健」系、「その他」が増加する一方で、「社会科学」系、「工学」系の入学者数は減少傾向にある。
 入学者数を国・公・私立大学別で見てみると(図表3-2-2(B))、私立大学の入学者数が全体の8割を占めているため、入学者数の増減は主に私立大学への入学者数の影響が大きいと考えられる。
 分野別に見ると、全体の約3割が自然科学分野を専攻している。なお、私立大学への入学者数は「社会科学」系が多い。ただし、私立大学全体で見た構成比では「社会科学」系が減少傾向にある。一方、国立大学では「工学」系への入学者数が多い。また、「その他」の増加には「私立大学」の入学者数の増加によるところが大きい。


【図表3-2-2】 大学(学部)入学者数
(A)関係学科別の入学者数の推移

(B)国・公・私立別大学の入学者数の推移

注:
(A)のその他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-2


3.2.2大学院修士課程入学者

 大学院修士課程への入学者数は1990年以降に大学院重点化が進んだこともあって、1990~2000年度にかけて大きく増加した。その期間の伸びは2.3倍であった。2000年代に入ると、その伸びは鈍化し、2013年度の大学院修士課程入学者数は、全体で7.3万人である。前年度と比較すると、2.6%の減少率であり2010年をピークに減少が続いている。
 最新年度の主要専攻別の内訳を見ると、「工学」系が3.2万人と最も大きく、次いで「社会科学」系0.7万人、「理学」系0.6万人、「保健」系0.5万人となっている。また、経年変化を見ると、主要専攻の中でも人数の多い「工学」系の入学者数は、2010年から減少が著しく、全体の入学生数の減少に少なからず影響を与えている(図表3-2-3(A))。
 国・公・私立大学別でみて見ると、修士課程入学者数は学部入学者数とは傾向が違い、国立大学が多く、全体の約6割を占めている。専攻別で見ると国・公・私立大学ともに「自然科学」系が最も多いが、私立大学は「人文・社会科学」系も相対的に大きい(図表3-2-3(B))。


【図表3-2-3】 大学院(修士課程)入学者数
(A)専攻別入学者数の推移(修士課程)

(B)国・公・私立別大学入学者数の推移(修士課程)

注:
(A)のその他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-3


3.2.3大学院博士課程入学者

 大学院博士課程入学者数は、2003年度をピークに減少が続いていたが、2010年度は前年度と比較して3.6%増加した。しかし、その後は連続して減少し、2013年度は1.5万人となっている。
 最新年度の主要専攻別の内訳を見ると、「保健」系が0.6万人、「工学」系0.3万人と多くを占め、「理学」系、「人文科学」系、「社会科学」系は0.1万人程度である。
 経年変化を見ると、各専攻ともに2000年代前半から減少、もしくは横ばいに推移しており、特に「工学」系、「人文・社会科学」系の減少は著しい。一方で、「保健」系については近年、増加傾向にある(図表3-2-4(A))。
 国・公・私立大学別で見ると、国立大学が全体の約7割を占めている。専攻別では、「理学」、「工学」、「農学」系では国立大学の割合が8~9割、「保健」系も6割を占めており、「自然科学」系を専攻する学生は、国立大学の比率が高いといえる。
 大学院博士課程の入学者数は1990年代に入ってから大きく増加した。これは修士課程の入学者数の増加と似通っている。また、修士課程の入学者数は2000年代中ごろから横ばいであり、博士課程の入学者数は2003年をピークに減少し始めていたが、修士課程、博士課程の入学者数ともに2010年度は増加し、その後は連続して減少している点も似通っている。(図表3-2-4(B))。


【図表3-2-4】 大学院(博士課程)入学者数
(A)専攻別入学者数の推移(博士課程)

(B)国・公・私立別大学入学者数の推移(博士課程)

注:
(A)のその他は「商船」、「家政」、「教育」、「芸術」、「その他」
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-4


3.2.4女性の状況

 2013年度の大学学部の女性入学者数は、全入学者数の44.7%を占め、着実に増加しているのが見える(図表3-2-5)。分野別に見ると、多くを占めるのが「人文科学」系であるが、その割合に変化はほとんど見られない。次いで「保健」系が多く、1990年度と比較すると約4倍と、他の分野と比較しても最も増加している。
 日本の大学学部、修士課程、博士課程別入学生数の男女別の内訳を見ると、いずれにおいても女性の入学者数は増加している(図表3-2-6)。大学学部入学生時点では「人文・社会科学・その他」の人数が多かったが、高学歴になるとともに「自然科学」分野を専攻する女性の相対的な人数が増加している。
 一方、男性の入学者数は、2000年度までは増加していたが、いずれも2013年度では減少している。また、「自然科学」分野への入学者数は、修士課程においては増加し続けているが、学部、博士課程においては2013年度には減少している。


【図表3-2-5】 大学学部の入学者数に占める女性の割合

資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-5

【図表3-2-6】 学部・修士課程・博士課程別入学者数(女性と男性)
(A)女性入学者

(B)男性入学者

資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-6

3.2.5高等教育機関の社会人学生

 高等教育機関を活用し、社会人の学習意欲の高まりに対応した再教育の機会を充実させることは、高度な人材育成の促進、活用に役立ち、さらには社会全体の活性化にもつながる。
 日本の社会人大学院生数は、一貫して増加し続けていたが、2010年度をピークに減少に転じていた。しかしながら、2013年度では増加し、大学院全学生数のうち社会人の数は5.5万人で21.7%を占めている(図表3-2-7)。


【図表3-2-7】 日本の社会人大学院生数の推移

注:
1)「社会人」とは、各5月1日において職に就いている者、すなわち、給料、賃金、報酬その他の経常的な収入を目的とする仕事に就いている者であり、企業等を退職した者、及び主婦等を含む。
2)ここでの大学院生とは、修士課程または博士前期課程、博士課程または博士後期課程、専門職大学院課程のいずれかに在籍する者をいう。
資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-7


 理工系の修士・博士課程における社会人大学院生数を学位レベルで見ると、2013年度では、工学博士課程の中での社会人大学院生は4,036人であり、2008年度をピークに減少し続けている。工学修士は2004年度を境に減少し続けていたが、2013年度では増加し、1095人となった。
 2013年度の理学博士課程の社会人は518人、理学修士課程の社会人は156人である。理学博士課程の社会人は2000年代中盤から減少傾向であり、理学修士課程の社会人は2009年度から連続して減少していたが、2013年では増加した(図表3-2-8)。


【図表3-2-8】 理工系修士・博士課程における社会人大学院生の推移

資料:
文部科学省、「学校基本調査報告書」

参照:表3-2-8