5.2ハイテクノロジー産業貿易

ポイント

  • 全世界でのハイテクノロジー産業貿易は一貫して増加傾向にあるが、2009年では、2008年より約10%減少している。内訳を見ると「電子機器」産業が、全体の約4割を占め最大である。
  • 国別で見ると、米国は貿易規模が大きく、拡大傾向にあるが、中国は近年、貿易額を急増させ、輸出額は米国を上回っている。ドイツの貿易額も急拡大しており、日本はドイツに次ぐ第4位の位置にある。2009年は各国ともにハイテクノロジー産業貿易額は減少したが、2010年では再び増加した。
  • 日本の収支比は1984年を頂点として、長期的に減少傾向にあり、2003年には韓国、2009年には中国に追い抜かれているが、貿易収支比が1を下回った事はない。
  • 分野別に見ると、各国とも「電子機器」産業が大きな割合を示しており、特に中国は輸出入ともに、近年米国を上回る金額となっている。
  • 日本は「電子機器」、「医用・精密・光学機器」産業とともに出超である。米国については「医用・精密・光学機器」、「航空・宇宙」産業が出超であり、ドイツは「医薬品」、「医用・精密・光学機器」、「航空・宇宙」産業が出超である。

 ハイテクノロジー産業の貿易額は、技術貿易のように科学技術知識の直接的なやり取りについてのデータではないが、実際に製品開発に活用された科学技術知識の間接的な指標である。なお、ここでいうハイテクノロジー産業とはOECDの定義(「研究開発集約産業(R&D - intensive industries)」と呼ばれる場合もある)に基づいており、具体的には「医薬品」、「オフィス機器・コンピューター」、「電子機器」、「医用・精密・光学機器」、「航空宇宙」を指す。
 図表5-2-1に、ハイテクノロジー産業の貿易額(輸出額と輸入額)のOECD加盟国34と非加盟国・地域7(3)についての合計額(4)の推移を示した。これを全世界のハイテクノロジー産業貿易と考えることとする。これを見ると、2009年は前年より低くなっており、ハイテクノロジー産業貿易の規模が小さくなっている。内訳を見ると、「電子機器」の貿易額が最も大きく、その割合も約4割を占める。

【図表5-2-1】 OECD加盟国34と非加盟国・地域7のハイテクノロジー産業の貿易額の推移

注:
非加盟国・地域はアルジェリア、中国、ロシア、シンガポール、ルーマニア、南アフリカ、台湾。
資料:
OECD,“Main Science and Technology Indicators 2011/2”
参照:表5-2-1


 図表5-2-2に、ハイテクノロジー産業全体の貿易収支比の推移を示した。日本の収支比は1984年を頂点として、長期的に減少傾向にあり、2003年には韓国、2009年には中国に追い抜かれているが、貿易収支比が1を下回った事はない。また、フランスは1992年から一貫して貿易収支比が、1前後を推移している。
 一方、米国については1前後に推移していたが2000年頃から減少傾向にあり、2010年では0.76となっている。

【図表5-2-2】 主要国におけるハイテクノロジー産業の貿易収支比の推移

資料:
図表5-2-3と同じ。
参照:表5-2-2


 図表5-2-3は主要国のハイテクノロジー産業貿易額の推移である。これを見ると、日、米、独、仏、英、中、韓国は、2009年にはハイテクノロジー産業貿易額は減少したが、2010年ではいずれも増加している。
 日本のハイテクノロジー産業の貿易収支は、1990年頃では、黒字幅も大きく、「電子機器」が大きく寄与していた。近年、全体の黒字幅は減少しており、「電子機器」、「医用・精密・光学機器」も出超ではあるが、減少している。また、「航空・宇宙」と「医薬品」は一貫して輸入超過である。
 米国については、「電子機器」の輸出額が最も大きいが、出超なのは「医用・精密・光学機器」、「航空・宇宙」である。
 ドイツは「医用・精密・光学機器」の輸出額が大きく、「医薬品」、「航空・宇宙」ともに出超である。
 フランスは「航空・宇宙」の輸出額が大きく、貿易収支比も高い。 また「医薬品」も同様である。
 イギリスは「医薬品」の輸出額が大きくなり、継続して出超である。また、「航空・宇宙」の輸出額も大きく、出超であったが、近年、入超に転じている。
 中国はハイテクノロジー産業貿易の金額が大きく伸びており、特に「電子機器」の増加が激しいが、出超となったのは2008年からである。1990年代から出超となっていたのは「医薬品」、「オフィス機器・コンピューター」である。
 韓国も「電子機器」の増加が目立つ。出超は「オフィス機器・コンピューター」、「電子機器」である。
 昨今、経済発展が著しいBRICsのデータを見ると、ロシア、ブラジル、インドともに輸入額が大きい。輸出額に注目するとロシアについては、近年「医用・精密・工学機器」が大きいが輸入超過である。また、ブラジルについては「航空・宇宙」、インドについては「医薬品」の輸出額が大きく、いずれも出超である。

【図表5-2-3】 主要国におけるハイテクノロジー産業貿易額の推移

資料:
<日本、米国、ドイツ、フランス、イギリス、中国、韓国、ロシア>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2011/2”
<ブラジル、インドインド、韓国の2010年値>OECD,“Bilateral Trade Database by Industry and End-use category”
参照:表5-2-3



(3)アルジェリア、中国、ロシア、シンガポール、ルーマニア、南アフリカ、台湾
(4)各国が自国以外に対して貿易を行った額を合計したもの。



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