日米における 21 世紀のイノベーションシステム: 変化の 10 年間の教訓

"21st Century Innovation Systems for Japan and the United States:
Lessons from a Decade of Change"

共同シンポジウム

主催

  • 文部科学省 科学技術政策研究所
  • 全米アカデミー 科学技術経済政策委員会

共催

一橋大学イノベーション研究センター
2006 年 1 月 10 日- 11 日
三田共用会議所
東京, 日本

はじめに

日本でも米国でもイノベーションが 21 世紀の経済成長の主たる原動力であります。日米はそれぞれの国のイノベーション能力を強化する為に様々な改革と新規政策の導入を過去 10 年あまり行ってきました。産学連携の強化、知的財産の保護の強化、スタートアップ企業によるイノベーションの強化などです。

日本にとってこの 10 年間は、「失われた 10 年間」と呼ばれる経済成長の長期的な停滞期とほぼ一致しています。しかし、科学技術政策に関しては、着実に改革が進んだ時期でもありました。特に、1995 年に科学技術基本法が制定されたことは、科学技術システムの改革の重要な契機となりました。この法律に基づいて、1996 年度から 2000 年度までの 5 年間を対象とした第 1 期科学技術基本計画と、2001 年度から 2005 年度までを対象とした第 2 期科学技術基本計画が策定・実施されました。この間、厳しい財政状況にもかかわらず政府研究開発投資が拡充されるとともに、科学技術の戦略的重点化や、競争的な研究開発環境の整備、さらには国立試験研究機関や国立大学の法人化といった構造改革が実施されてきたのです。

科学技術政策研究所 (NISTEP) では、こうした 10 年間の成果をそれ以前の状況や海外と比較しレビューする大規模なプロジェクトを、昨年度までの 2 年間に渡って実施しました。このレビューを通じて、日本の研究開発水準の向上や知的資産の増大を確認することができました。

このような状況のもとで、来年度からは第 3 期基本計画が実施されることになっています。先日公開されたこの計画の原案は、第 1 期・第 2 期基本計画期間の投資により向上した日本の潜在的な科学技術力を、経済・社会の広範な分野でのイノベーションの実現を通じて、日本経済と国民生活の持続的な繁栄を確実なものにしていけるか否かはこれからの取組にかかっていると指摘しています。つまり、現在の日本においては、イノベーション振興がこれまで以上に重要な政策課題となっているのです。このことは、この計画の基本理念である、科学技術が社会・国民に支持され、成果を社会・国民に還元することを目指す、という考え方にも現れています。この基本理念は、まさにナショナル・イノベーション・システムの強化を意味します。そして、この計画案で提案されている具体的な政策目標の多くが、イノベーション振興に関するものです。

一方、米国については、伝統的に多くのイノベーションを生み出してきた国であり、それが国の活力の源になってきたのだと思います。特に 1985 年のバイ=ドール法制定以降のイノベーション振興のための様々な試みは、日本だけでなく各国の政策策定者や専門家たちにとって、学ぶべきことの多い先行事例であります。しかし、米国においてもイノベーション振興は容易な課題ではなく、試行錯誤はこれからも続けられていくのではないかと思います。

この国際シンポジウムは、これらの分野における日米の経験と教訓を共有し、21 世紀のイノベーションの在り方について方向性を得ることを目的として開催されました。日米の各分野の代表的な研究者に加えて、政府・大学・産業界から約 250 人が参加し、パネルⅠからパネルⅦに分かれて両国からの発表があり、活発な討議・質疑応答が行われました。本シンポジウムが、イノベーションの長期的な能力を強化していくに当たって、両国における過去のトレンドと現状から学ぶための一助となることを希望致します。

科学技術政策研究所
所長 小中元秀

国内組織・実行委員会
委員長近藤正幸 科学技術政策研究所第 2 研究グループ客員総括主任研究官
横浜国立大学大学院環境情報研究院教授
長岡貞男 一橋大学イノベーション研究センター長、教授
後藤晃 東京大学先端科学技術研究センター教授
富澤宏之 科学技術政策研究所第 2 研究グループ主任研究官
鎗目雅 科学技術政策研究所第 2 研究グループ主任研究官
 
事務局上野泉 科学技術政策研究所第 2 研究グループ研究員
福田和彦 科学技術政策研究所第 2 研究グループ客員研究官
山下泰弘 科学技術政策研究所第 2 研究グループ客員研究官
清水佳津子科学技術政策研究所第 2 研究グループ事務補助員

第 1 日: 2006 年 1 月 10 日

9:30 AM
開会の辞
司会: 犬塚隆志, 科学技術政策研究所 企画課長
小中元秀, 科学技術政策研究所 所長
9:45 AM
座長: 桑原輝隆, 科学技術政策研究所 総務研究官
ドナルド・マンズーロ Donald Manzullo, 合衆国下院議員 小企業委員会委員長
薬師寺泰蔵, 総合科学技術会議議員/慶應義塾大学客員教授
11:00 AM コーヒーブレーク
11:15 AM
モデレーター: アリス・アムスデン Alice Amsden, マサチューセッツ工科大学教授
後藤晃, 東京大学先端科学技術研究センター教授/経済産業研究所ファカルティフェロー
元橋一之, 東京大学先端科学技術研究センター助教授/経済産業研究所ファカルティフェロー
ステファニー・シップ Stephanie Shipp, 国立標準技術研究所 (NIST) 先進技術プログラム (ATP) 経済評価室 ディレクター
中島一郎, 東北大学未来科学技術共同研究センター長, 教授
12:45 PM ランチ
2:15 PM
モデレーター: ロニー・エーデルハイト Lonnie Edelheit, ゼネラル・エレクトリック (GE) 元 R&D 担当上席副社長/全米工学アカデミー
藤村修三, 東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授/一橋大学イノベーション研究センター客員教授
中馬宏之, 一橋大学イノベーション研究センター教授/科学技術政策研究所客員総括主任研究官
ケネス・フラム Kenneth Flamm, テキサス大学オースチン校 リンドン・B・ジョンソン公共政策スクール ディーン・ラスク国際関係講座長, 教授
本城薫, 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 理事
3:45 PM コーヒーブレーク
4:00 PM
モデレーター: ブラッドレイ・ノックス Bradley Knox, 合衆国下院 小企業委員会
チャールズ・ウェスナー Charles Wessner, 全米アカデミー 科学技術経済政策委員会
安田武彦, 東洋大学経済学部教授
飯塚哲哉, ザインエレクトロニクス株式会社 社長
5:30 PM レセプション

第 2 日: 2006 年 1 月 11 日

9:30 AM
モデレーター: 植村昭三, 世界知的所有権機関 (WIPO) 前事務局次長/東京大学先端科学技術研究センター客員教授
ブロンウィン・ホール Bronwyn Hall, カリフォルニア大学バークレー校教授
長岡貞男, 一橋大学イノベーション研究センター長, 教授
マーク・マイアーズ Mark Myers, ゼロックス (元), ペンシルベニア大学ウォートン・ビジネススクール客員教授
11:00 AM コーヒーブレーク
11:15 AM
モデレーター: 渡部俊也, 東京大学先端科学技術研究センター教授
アーウィン・フェラー Irwin Feller, 米国科学振興協会上席客員サイエンティスト/ペンシルバニア州立大学名誉教授
近藤正幸, 科学技術政策研究所客員総括主任研究官/横浜国立大学大学院教授
ゲイル・カッセル Gail Cassell, イーライリリー 科学担当副社長
ジェームズ・ターナー James Turner, 合衆国下院科学委員会民主党チーフスタッフ
12:45 PM ランチ
2:15 PM
モデレーター: 永野博, 独立行政法人科学技術振興機構 (JST) 研究開発戦略センター, 上席フェロー
ウィリアム・ボンヴィリアン William Bonvillian, ジョセフ・リーバーマン合衆国上院議員オフィス 立法ディレクター, チーフスタッフ
大学における研究への政府の支援-日本における動向と課題
Government Support to University Research - Trend and Issues in Japan
下田隆二, 東京工業大学統合研究院教授
ディスカッサント
ウィリアム・スペンサー William Spencer, 全米アカデミー 科学技術経済政策委員会/SEMATECH 元会長
3:45 PM コーヒーブレーク
4:00 PM
モデレーター:ウィリアム・ボンヴィリアン William Bonvillian, ジョセフ・リーバーマン合衆国上院議員オフィス 立法ディレクター, チーフスタッフ
米国における医薬品開発の最新動向の展望
Perspective on Current Trends in Drug Development in the United States
ゲイル・カッセルGail Cassell, イーライリリー 科学担当副社長
岡田羊祐, 一橋大学大学院経済学研究科助教授
ディスカッサント
長井省三, 日本製薬工業協会 知的財産部長, 弁理士
5:30 PM
司会: 近藤正幸, 科学技術政策研究所客員総括主任研究官/横浜国立大学大学院教授
ウィリアム・スペンサー William Spencer, 全米アカデミー 科学技術経済政策委員会/SEMATECH 元会長
長岡貞男, 一橋大学イノベーション研究センター長, 教授