4. 調査研究活動の概要
(1) 第1研究グループ
研究課題 1
技術導入取引の契約形態の分析
和田 哲夫 (客員研究官)、岩佐 朋子、小田切 宏之1. 調査研究の目的
技術は、他の財に比べて専有可能性などいろいろな点で異なり、この結果、技術の取引形態も特殊なものとなることが多い。過去の技術導入データを用い、このような特殊契約形態の決定要因や効果に関する経済学上の予想を実証的に検討し、理論上の知見を得ることを目的とする。
2. 調査研究の概要
国際技術取引における資本関係併存、クロスライセンス、ランニングロイヤリティーなどの特殊契約使用の要因や効果について、ミクロ経済学の応用分野である契約・組織の経済学を利用し分析する。「外国技術導入の動向分析」で得られている過去のデータに特許データベース・企業データベースを組み合わせ、技術契約形態や特許ポートフォリオと、特許引用による知識フロー、関連イノベーションの密度、技術専有度などの関係を計量的に検定する。
3. 進捗状況
平成 15 年度研究では、企業間の知識フローに対して合弁事業の存在が影響を与えるかという問題と、ライセンス契約におけるランニング・ロイヤリティの使用に対し特許被引用数が影響するかという問題について、前年度に引き続き取り組んだ。企業レベルの特許引用関係を米国特許データベースを用いて把握し、技術導入データベースから得られた情報と組み合わせて分析した。その結果、特許引用で代理される企業間の知識フローに対して、単純なライセンス契約に比べて合弁事業の存在が幅広く増加作用を与えるという知見と、ライセンス契約におけるランニング・ロイヤリティの使用に対して特許被引用数が負の影響を与えるという結果が得られた。後者の結果は、特許被引用数が(知識フローだけではなく)派生技術の量と複雑性を表しているためと推測される。これら分析・考察結果は、ディスカッションペーパーとしてまとめられた。
4. 特記事項
現在、海外からの技術導入と海外直接投資との関係に関する分析を進めている(岩佐)。
5. 論文公表等の研究活動
- [1]和田 哲夫「Joint ventures and the scope of knowledge transfer: Evidence from U.S. - Japan patent licenses」、科学技術政策研究所DISCUSSION PAPER No.34, 2004 年 3 月.
- [2]和田 哲夫「Running royalty and patent citations: the role of measurement cost in unilateral patent licensing」、科学技術政策研究所DISCUSSION PAPER No.35, 2004 年 3 月.
研究課題 2
研究開発投資に関する実証分析
古賀 款久1. 調査研究の目的
本研究は、産業の研究開発投資に関する様々な問題について、わが国製造業企業のデータを用いて、実証的に検討することを目指す。そこでは、大規模企業とともに、ハイテク・スタートアップスにも対象を広げて検討を試みる。とりわけ、分析の関心は、産業部門の研究開発活動を支援する目的で創設されている諸政策 - 研究開発優遇税制および技術開発補助金 - にある。
2. 調査研究の概要
本研究では、産業の研究開発投資の決定要因に関する実証的な分析を行う。対象となる産業は、わが国製造業であり、企業は、大規模企業、ならびに、科学技術系新規創業企業である。これらの企業を対象として、本研究では、主に、研究開発支援政策の有効性をデータに基づいて検討する。本年度は、1999 年度に実施したハイテク・スタートアップスに関する質問票調査のデータを利用して、ハイテク・スタートアップスのR&Dと補助金に関する分析を行った。
3. 進捗状況
ハイテク・スタートアップスの育成は、わが国の重要な課題の一つとなっている。本年度は、ハイテク・スタートアップスに企業成長に関わる諸要因について実証的な検討を行った。ハイテク・スタートアップスに関する先行研究にならい、本研究でも、企業規模、資金利用可能性などの企業特性を考慮した上で、R&Dに対する補助金の効果を議論した。
4. 特記事項
特になし
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 日本経済学会 (2003 年 10 月 13 日: 明治大学) に討論者として参加
- [2] 「研究開発と税制: 先行研究の整理」科学技術政策研究所ディスカッションペーパーとして公刊予定
研究課題 3
バイオテクノロジー研究開発と企業の境界
小田切 宏之、古賀 款久、岩佐 朋子、伊地知 寛博、安田 英土 (客員研究官)、桑嶋 健一 (客員研究官)、 本庄 裕司 (客員研究官)、和田 哲夫 (客員研究官)1. 調査研究の目的
研究開発における「企業の境界」について、バイオテクノロジー関連技術を対象に分析する。バイオテクノロジー(以下バイオ)を対象とするのは、もちろん一つには、バイオが今後数十年における技術革新の中心的役割を担うと思われ、また日本政府の科学技術政策でも IT と並び重視されていることによる。また、バイオ技術は幅広く応用可能であるため既存の産業区分を超えて研究・応用されていること、バイオ技術の進展がこれまでの研究開発モデルを変えつつあることを考えると、新技術の発展が研究開発における企業の境界をどう変化させていくかを研究するために、バイオはもっとも適切な事例を与えてくれる。
2. 調査研究の概要
企業はさまざまな活動をおこなう。それらの活動のうちどこまでの範囲を企業内でおこなうのか、どこまでを他企業に発注し、委託し、あるいは共同でおこなうのか。こうした問題は「企業の境界」の問題として幅広く論じられており、こうした企業の境界の問題が研究開発においても重要であることが認識されるようになってきた。伝統的なモデルでは、基礎的な研究を大学などの公的機関がおこない、その成果は論文などで公知のものとされて、それらを活用しつつ企業が研究開発をおこなって応用・製品化すると考えられている。しかし現実には、研究開発における企業の境界も一本の線ではなく、さまざまな形での中間的な活動がおこなわれ、また、中間的な組織が活用されている。例えば、企業間の共同研究・ライセンシング、産学や産官学による共同研究、産官学研究者によるベンチャー設立、などである。本プロジェクトでは、こうした幅広い観点から研究開発と企業の境界に関して研究を進めていく。またこれによって、科学技術・研究開発政策が及ぼす影響を従来よりも幅広くとらえられることが期待される。
3. 進捗状況
昨年度に引き続き関連企業、大学、研究所、省庁への聞き取り調査(オーストリア共和国における聞き取り調査を含む)、文献や新聞記事検索などによる動向調査をおこなった。また、一昨年度末に実施したバイオ関連企業約1,700社に対するアンケート調査データ、企業活動基本調査データなどを用いた計量分析をおこない、どのような場合に企業は自社内での研究開発を重視し、どのような場合に共同研究あるいはアウトソーシングするのかなどについて分析した。これらの成果は、第5項に上げられているように、科学技術政策研究所のディスカッションペーパーなどとして取りまとめた。また、本研究グループが中心となって開催した国際コンファレンス「研究開発と『企業の境界』- バイオテクノロジーの産学連携と企業間提携 -」(別掲)、研究セミナー「研究開発戦略と科学技術政策」において報告した。
4. 特記事項
アメリカではHenderson, Rebecca; Orsenigo, Luigi; and Pisano, Gary P. "The Pharmaceutical Industry and the Revolution in Molecular Biology: Interactions among Scientific, Institutional, and Organizational Change"(in David C. Mowery and Richard R. Nelson [eds.] Sources of Industrial Leadership. Cambridge University Press, 1999, 267-311)などのように、医薬品を中心として、研究開発における企業の境界を分析した研究がある。ただしバイオ全般についての企業の境界についての系統的な研究は世界的にも遅れており、とくに日本についての研究は全くない。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 中村 健太・小田切宏之「研究開発と企業の境界 - 企業活動基本調査データによる委託研究・共同研究・技術導入の決定因分析」、日本経済学会春季大会発表論文、2003 年 6 月 14 日、大分大学。
- [2] 小田切宏之「研究開発における企業の境界」、『経済セミナー』 No.587、2003 年 12 月、20-24。
- [3] Kenta Nakamura and Hiroyuki Odagiri, "Determinants of R&D Boundaries of the Firm: An Empirical Study of Commissioned R&D, Joint R&D, and Licensing with Japanese Company Data," 科学技術政策研究所 DISCUSSION PAPER No.32, 2003 年 11 月。
- [4] 小田切宏之「バイオテクノロジー研究開発と『企業の境界』」、科学技術政策研究所国際コンファレンス「研究開発と『企業の境界』 - バイオテクノロジーの産学連携と企業間提携」、2004 年 2 月 12 日、東京国際フォーラム、において発表。
- [5] Kenta Nakamura and Hiroyuki Odagiri, "R&D Boundaries of the Firm: An Estimation of the Double-Hurdle Model on Commissioned R&D, Joint R&D, and Licensing in Japan," 科学技術政策研究所研究セミナー「研究開発戦略と科学技術政策」、2004 年 2 月 13 日、東京国際フォーラム、において発表。「研究開発戦略と科学技術政策」研究セミナー報告論文集、科学技術政策研究所調査資料 No.104、2004 年 3 月、所収。(第 (3) 項の DISCUSSION PAPER No.32 を一部修正したもの)
- [6] 中村 健太・小田切 宏之「技術取引先の決定因としての能力格差と取引費用」、『特許統計データの経済学的分析に関する調査研究報告書』、(財) 知的財産研究所、2004 年 3 月、第 4 章。
研究課題 4
バイオテクノロジー研究開発のグローバル化
小田切 宏之、岩佐 朋子、古賀 款久、伊地知 寛博、安田 英土 (客員研究官)、桑嶋 健一 (客員研究官)、本庄 裕司 (客員研究官)、和田 哲夫 (客員研究官)1. 調査研究の目的
研究開発のグローバル化の要因と貢献について、製造業全般について分析し、また一部ではバイオテクノロジー関連技術を対象に詳細に分析する。研究開発活動を国内でおこなうか海外でおこなうかも「企業の境界」の問題の一環であることから、本プロジェクトは「バイオテクノロジー研究開発と企業の境界」プロジェクトと密接に関連しておこなわれており、詳細は同プロジェクトに準じる。
2. 調査研究の概要
研究においても生産・販売においてもグローバル化する状況下で、各企業は海外研究開発拠点の設立、海外研究機関やベンチャー企業への研究委託、ライセンシングなど、さまざまな形で研究開発活動をグローバル化させている。どのような場合に自ら海外研究するのか、どのような場合に委託するのか、ライセンシングするのか、その要因について数量分析する。本研究により、国際的な研究立地と知的所有権との関連など、新しい観点からの政策的含意をえることができると期待される。
3. 進捗状況
「外国への新規輸出に関する調査」データ、有価証券報告書データ、海外事業活動基本調査データなどを利用しつつ、研究開発のグローバル化を決める要因、その成果などについての統計的分析をおこなった。その成果の一端は NISTEP ディスカッションペーパーにとりまとめられた他、海外学術誌への掲載も予定されている。また、日本経済学会およびサセックス大学 (英国) で開かれたイノベーションに関するコンファレンスで報告を行なった (下記、第5項参照)。
4. 特記事項
海外研究開発の要因研究については、小田切・安田の"The Determinants of Overseas R&D by Japanese Firms: A n Empirical Study at the Industry and Company Levels," Research Policy, 25, 1996, 1059-1079. などいくつかの研究があるが、本研究では、さらに、海外研究開発を国際技術契約・ライセンシングなどと関連させて、幅広く、グローバル化した技術開発活動を分析する点にオリジナリティがある。
5. 論文公表等の研究活動
論文
- [1] Tomoko Iwasa and Hiroyuki Odagiri(forthcoming) "Overseas R&D, Knowledge Sourcing, and Patenting: An Empirical Study of Japanese R&D Investment in the US," Research Policy, Elsevier.
- [2] Tomoko Iwasa(2003)"Determinants of Overseas Laboratory Ownership by Japanese Multinationals," NISTEP Discussion Paper, No. 31, National Institute of Science and Technology Policy.
- [3] 岩佐 朋子(2004)「日本企業による海外への技術輸出: ライセンスと直接投資の選択に関する実証分析」NISTEP Discussion Paper, No. 36, 科学技術政策研究所.
学会発表
- [1] Tomoko Iwasa "The Determinants of Overseas Laboratory Ownership by Japanese Multinationals" 日本経済学会 2003 年春期大会、大分、6 月
- [2] Tomoko Iwasa "The Determinants of Overseas Laboratory Ownership by Japanese Multinationals," コンファレンス名「What Do We Know About Innovation - A Conference in honour of Keith Pavitt」, Science Policy Research Unit, University of Sussex, UK, 11 月.
研究課題 5
全国イノベーション調査 (J-NIS 2003: Japanese National Innovation Survey 2003)
「全国イノベーション調査」実施準備プロジェクト・チーム (平野 千博、小田切 宏之、伊地知 寛博、古賀 款久、岩佐 朋子、富澤 宏之、計良 秀美、俵 裕治、廣瀬 登、後藤 晃 (客員研究官)、丹羽 冨士雄 (客員総括研究官)、永田 晃也 (客員研究官)、山口 孝 (文部科学省科学技術・学術政策局調査調整課)1. 調査研究の目的
本調査は、科学技術・イノベーション政策の展開に資する基盤的データを取得するために、我が国の民間企業におけるイノベーション活動の状況について把握しようとするものである。イノベーション活動に関する大規模な全国的・総合的・客観的な調査で、総務大臣による承認を受ける統計調査としては、我が国ではこれが初めてである。
2. 調査研究の概要
我が国と同様な政策課題を有しているOECDならびにEUメンバー国などが国際的に協力して共同で策定された各国共通の調査票と調査方法論に準拠しつつ、さらに我が国の独自性や固有の課題を踏まえたうえで、調査票を設計し調査方法論を検討して、いわゆる"承認統計"(承認番号: 23198)として調査を実施した。
3. 進捗状況
本調査については、総務大臣より 2002 年 12 月 25 日に承認を受け、2003 年 1 月 24 日に抽出した 43,174 社の調査客体対象企業に調査票を発送し、承認期限である2003 年 3 月 31 日まで回答へのご協力をお願いした。なお、承認期限まで、2 回の郵便による督促 (回答へのご協力のお願い) と、部分的にはさらに電話による督促を行った。9,257社より有効なご回答を得た。データ・クリーニングに時間を要し、次年度早期に統計調査結果の公表を予定している。
4. 特記事項
国際比較可能性に留意しており、単にデータとして日本の状況を把握することができるのみならず、国際的に見た相対的状況も把握することが可能となる。調査結果は、我が国における政策展開の基盤的データとしてのみならず、各国相互にまた国際機関においても利用されるほか、各企業や産業における戦略の形成に資するものと期待している。
5. 論文公表等の研究活動
本調査研究の結果それ自体に関わる論文等の公表はないが、イノベーション調査ならびにそれが依拠する国際標準マニュアルの改訂に関する各国専門家による議論に資するため、J-NIS 2003 での調査経験について概説したペーパーを、各国科学技術・イノベーション指標専門家が集まる会合等に提出し発表している。
研究課題 6
政策形成・研究開発実施過程における産学官のインタラクションに関する研究
伊地知寛博1. 調査研究の目的
本研究は、科学技術政策の形成・執行過程および研究開発の実施過程における産業界と政府・公的研究機関・高等教育機関とのインタラクションについて、我が国にとって将来的に有効になると思われるシステムに関する含意を得ることを目的とする。
2. 調査研究の概要
具体的には、産学官連携に係る利益相反のマネジメントのシステムについて、基本的概念や要素を踏まえた上で、日本の制度的特徴や、大学や公的研究機関における連携に係るマネジメントの実状、研究者の意識、それに社会による認知などを精査し、将来、日本において整備すべき方策を見据えた政策的ならびにマネジメント上の含意を得ることとした。
3. 進捗状況
具体的には、産学官連携に係る利益相反のマネジメントのシステムについて、諸外国の状況と日本の現状を常に把握しながら、現在の主として国立大学、とりわけ2004 年度に予定されている国立大学法人を念頭に置いて、政策的ならびにマネジメント上の含意を得るように努めた。とくに、この課題への対応には、大学や公的研究機関が他のアクターとの関わりにおける"ガバナンス"として不可欠であり、また、相反する潜在性を有するものであっても現状の把握など(コントロールではなく)マネジメントの対象とし、確実に自らの機関内を統べて律し保全する(インテグリティ)ことが重要であることを強調した。
4. 特記事項
本課題に関連して、大学等が関係する各種会合に参画した。また、独立行政法人研究機関における利益相反マネジメント・システムの形成・運営にも関与した。
5. 論文公表等の研究活動
論文形態による貢献は2003 年度にはないが、上述のとおり、本課題に関連する種々の会合において公開で講演ならびに議論に参画したり、検討のために設置された委員会において報告書の作成に寄与したりしたほか、独立行政法人研究機関における利益相反マネジメント・システムの運営に際しても助言を行ってきた。そして、利益相反マネジメント・システムに関する基本的で重要な概念が政策・マネジメントの両面で広く定着され、より健全な連携が推進されるように図った。
その他の活動
○ 所外講演等
- 伊地知 寛博 (第1研究グループ主任研究官)
「これからの大学における利益相反(conflict of interest)のマネジメント」 熊本大学 九州・沖縄地区国立大学産学官連携マネジメント研修会 2003.5.16 - 伊地知 寛博 (第1研究グループ主任研究官)(後藤 晃 (東京大学教授) との共同発表)
"R&D and Innovation Statistics in Japan" Panel to Review Research and Development Statistics at the National Science Foundation, Committee on National Statistics, The National Academies Workshop on Measurement of Research and Development 2003.8.24 - 伊地知 寛博 (第1研究グループ主任研究官)
「大学における利益相反のマネジメント」 山梨大学 第 15 回国立大学共同研究センター長会議 2003.10.16 - 伊地知 寛博 (第1研究グループ主任研究官)
「利益相反とプロジェクト事前評価等の制度設計」 文部科学省科学技術・学術政策局 平成 15 年度研究開発評価研修 2003.11.26 - 伊地知 寛博 (第1研究グループ主任研究官)
「大学における利益相反のマネジメント」 大分大学 地域共同研究センター第 293 回講演会 2003.12.8
○ 所外委員会
- 伊地知寛博 (第1研究グループ主任研究官)
産業技術政策調査委員会 委員 2001.11.30〜2003.5.12 - 伊地知寛博 (第1研究グループ主任研究官)
文部科学省科学技術・学術政策局 科学技術政策関連指標の整備に関する研究会 大学教員等の活動時間に関する実態調査ワーキンググループ 委員 2002.5.24〜 - 伊地知寛博 (第1研究グループ主任研究官)
平成15 年度利益相反・責務相反に関する事例検討委員会 委員 2003.11.10〜2004.3.31 - 伊地知 寛博 (第1研究グループ主任研究官)
「第 9 回アジア太平洋科学技術マネージメントセミナー」企画委員会委員 2003.12.2〜2004.3.31
○ 国際貢献、国際協力
- 伊地知 寛博 (第1研究グループ主任研究官)、古賀 款久 (第1研究グループ研究員)、富澤 宏之 (第2研究グループ主任研究官)、三浦有紀子(第1調査研究グループ上席研究官)、蛯原弘子(情報分析課情報係長)
EU Benchmarking Exercise of RTD Policies: Data Collection Exercise 2003 - Japanese Indicators、 Response to the DG Research and Eurostat of the European Commission (unpublished document) - 伊地知 寛博 (第1研究グループ主任研究官)、古賀 款久 (第1研究グループ研究員)
Venture Capital Investment in Japan: For the Third European S&T Indicators, Response to the Research Directorate-General of the European Commission(unpublished document)
(2) 第2研究グループ
研究課題 1
科学技術政策システムの articulation (機能分化と再統合)
近藤 正幸、中山 保夫、客員研究官、他1. 調査研究の目的
過去 20 年の世界的な科学技術政策の変動を理論的、実証的に跡付け、科学技術政策の革新の方向性を探る。その間の変化を、科学技術政策システム(政策主体、研究主体、これら相互間の機能的連結や中間的組織の全体)の再編過程、すなわち、科学技術政策に関わる機能の分化と再統合の過程として捉え、概念化し、体系的に整理する。
特にここでは、産学連携を主対象として、大学、企業の機能的な再定義を行う。
2. 調査研究の概要
産学連携は大学と産業という二つのドメインに所属するアクターがあるチャンネルを通じて互いに働きかけ、そこから相乗効果が生まれ互いのポテンシャルを高めてゆくプロセスであり、日本経済の沈滞を克服する手段として期待が寄せられている。一方、産学連携に対する政府の資金援助、また大学と産業の行動様式等は従来と異なるモデル変化が起こっている。ここでは、それを大学と社会のArticulationの変化ととらえ、概念的、理論的な検討を実施する。
これら調査研究成果により、産学連携の実態が明らかになり、またそこに潜む問題点等が顕在化されることによって今後の産学連携政策立案の前提となるエビデンスを得る効果を生ずる。
3. 進捗状況
産学連携を支援する制度のうち、民間等との共同研究制度、受託研究制度の実績に関し04 年度調査結果も加え分析の基盤となるデータベースの構築を行った。同じく、それら研究制度より創出された国有特許に関してもデータベースの構築を行った。
さらに、共同研究制度については下記の分析結果が得られ、研究・技術計画学会にて報告を行っている。
今後、受託研究制度を含む分析の拡大、特許等の創出成果の評価、及び起業への貢献の観点から大学発ベンチャーの研究制度利用状況など、産学連携支援制度から創出された成果、並びにそれら成果の社会還元などの視点で分析を実施する。
- 民間等における共同研究の主役は、近年、大企業から中小企業に転換した
- 産学連携を促進するための法整備が大学等、及び民間企業の産学連携マインドに与えた影響は大きい
- 大学の規模・所在地により連携パターン (連携先企業規模/地域内連携) に個性化傾向がある
- 大企業は広範な大学と、中小企業は特定少数の大学との連携傾向がある
4. 特記事項
産学連携支援制度に関する実績データベースの構築は、研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室の協力のもとに作成している。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 科学技術政策研究所調査資料 No.96, 「産学連携 1983 - 2001」, 2003 年 3 月
- [2] 中山・齋藤・細野・福川・小林、「産学連携研究制度」、研究・技術計画学会第 18 回年次学術大会・講演要旨集、pp.31-34、2003.10
研究課題 2
科学技術指標の機能及び有効性の向上に関する研究
富澤 宏之、他1. 調査研究の目的
科学技術指標の国際比較可能性の向上、及び科学技術政策上の有用性・有効性の向上を目的として、理論的に検討するとともに、実際に指標の改良及び開発を行う。
2. 調査研究の概要
我が国の科学技術指標の開発は、従来、科学技術活動の定量的把握に重点が置かれ、国際比較可能性や科学技術政策上の有用性・有効性については必ずしも重視されていなかったため、一層の向上の余地、必要性がある。そのため、本研究では、科学技術指標の国際比較可能性の向上について理論的な検討を行うとともに、各国の指標の作成方法を調査し国際比較可能性上の問題点を明らかにする。指標の科学技術政策上の有用性・有効性の向上については、行政部局と協力し、政策策定上のニーズを中心として現状の分析を行うとともに、実際にいくつかの指標の開発を行う。
3. 進捗状況
最近、論文の被引用度等を用いた科学計量学的手法が研究評価や科学技術政策策定に活用されることが多いが、その方法について系統的に整理した。また、OECDによって研究開発人材の測定方法として勧告されているFTE(フルタイム換算)のデータを収集するために文部科学省科学技術・学術政策局が実施した「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」に協力し、調査票の設計、回答データの集計・分析を担当した。さらに、今後、科学技術政策の重要な課題となると考えられる科学技術人材の確保と質的向上について、女性の専門職への進出という観点から総合的に対処するための予備的検討を行った
4. 特記事項
特になし。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 藤垣裕子、平川秀幸、富澤宏之、調麻佐志、林隆之、牧野淳一郎、『研究評価・科学論のための科学計量学入門』、丸善株式会社、2004 年 3 月 30 日
- [2] 富澤宏之、「大学等におけるフルタイム換算データに関する2002 年調査の概要」、 研究・技術計画学会第18回年次学術大会・講演要旨集、pp.526-529、2003 年 11 月
- [3] 富澤宏之、伊藤裕子、三浦有紀子、「科学技術政策研究のフロンティア: 女性の科学技術関連専門職への進出をめぐって」、研究・技術計画学会第18回年次学術大会・講演要旨集、pp.156-159、2003 年 11 月
研究課題 3
科学技術国際協力に関する研究
小林 信一、客員研究官、川崎 弘嗣、林 隆之、客員研究官、隅藏 康一、客員研究官、新保 斎、客員研究官、綾部 広則、客員研究官1. 調査研究の目的
科学技術国際協力の実態を、国際比較の観点に配慮しつつ明らかにし、問題点、評価の枠組みなどを検討することを通じて、科学技術の国際戦略策定のための基礎的知見を得る。同時に、OECD GSF(グローバル・サイエンス・フォーラム)などの当該問題に関する国際的議論に資する。
2. 調査研究の概要
国際科学技術協力のベストプラクティスを得るため、(1)日本の科学技術における国際的研究開発プログラムの実態と事例研究プログラムの位置づけ、および(2)事例研究プログラムの分析とベストプラクティスの抽出を行う。事例研究プログラムとしては、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)、インテリジェント・マニュファクチャリング・システム(IMS)、ヒト・ゲノム・プロジェクト(HGP)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、高エネルギー物理(HEP)を調査対象とする。本年度は、国際協力関係経費の分析結果および事例調査の結果を報告書としてまとめた。
3. 進捗状況
日本における科学技術国際協力の現状を分析するため、昨年度に引き続き政府予算をベースとした国際協力関係経費の推計、研究分野の分類、国際協力形態等の追加分析を実施した。また、国際協力プロジェクトの事例研究については、ヒアリング調査から得られたプログラムの開始から運営に至るプロセスでの知見、教訓を抽出した結果に関し、整理した。その結果、プログラムの理念・目的の浸透や参加のインセンティブを形成させるような設立過程の制度設計において、運営体制や方法等の運営上の制度設計において、国際共同研究プログラムのマネジメントの観点からの課題を抽出できた。これらの成果は、科学技術政策研究所の調査資料としてとりまとめた。
4. 特記事項
本研究は、OECD GSFにおける国際科学技術協力調査の活動と連動して進められてきた。2003 年 6 月に開催されたOECD GSF会合で、本調査活動の最終報告がなされている。
5. 論文公表などの研究活動
- [1] 川崎弘嗣、小林信一、林隆之、隅藏康一、新保斎、綾部広則「科学技術国際共同研究プログラムにおける計画とマネジメント」、研究・技術計画学会第18回年次学術大会・講演要旨集、pp.514-517、2003.11
- [2] 川崎弘嗣、林隆之、隅藏康一、新保斎、綾部広則、小林信一、「科学技術国際協力の現状」、科学技術政策研究所、調査資料-101、2003.11
研究課題 4
科学技術基本計画の内容分析・構造分析に関する研究
近藤 正幸、山本 桂香1. 調査研究の目的
科学技術基本法に基づいて策定される「科学技術基本計画」(以下「基本計画」という。)の第1 期基本計画(平成8 年〜平成12 年)、第 2 期基本計画(平成13 年〜平成17 年)について構造的に分析するとともに単語出現頻度分析による内容分析を行って、"機械的"にそれぞれの基本計画の特徴及び相違を明らかにする。
2. 調査研究の概要
本研究では、科学技術基本計画について内容分析と構造分析という 2 つの手法を用いて分析を進める。内容分析として、本年度は英語による単語出現頻度分析を行う。具体的には、文部科学省及び総合科学技術会議のホームページ上に公開されている英訳されたそれぞれの基本計画を対象とし、英単語出現頻度を機械的にカウントすることによって分析を行う。
構造分析に関しては、第 1 期基本計画と第 2 期基本計画をそれぞれ章・節の表題及び記述内容により構造化し、基本計画の類似の章・節を対比しつつ構造の比較を行うことによって、それぞれの基本計画の特徴の分析を進める。
3. 進捗状況
科学技術基本計画に関して、内容分析と構造分析という 2 つの手法を用いることによって、それぞれの基本計画の特徴がある程度明らかになった。特に、内容分析に関しては、機械的に単語の出現頻度を分析することによって、各基本計画の特徴を明らかにすることが可能となった。構造分析については、特に、第 2 期は第 1 期に比して、情勢分析、戦略的、重点化といった新たな視点や、産業技術力の強化と産学官連携の改革、人材養成、科学技術振興の基盤整備等が新たに追加されていることが明確となった。
今後は、科学技術基本計画の内容分析に関しては、日本語による単語出現頻度分析を行う予定であり、構造分析については外国の同種の計画との比較を行う予定である。
4. 特記事項
特になし。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 近藤正幸、山本桂香、「科学技術基本計画の内容分析・構造分析(第 1 報)」、研究・技術計画学会第17回年次学術大会・講演要旨集, pp.518 - 521、2003 年 10 月.
研究課題 5
科学技術の事業化を担う研究者・技術者の育成・支援の研究
石井 正道1. 調査研究の目的
我が国において国際競争力を向上させることは重要課題である。独創的な商品開発は国際競争力を向上させるためには不可欠である。今まで一部の研究者・技術者が商品開発で創造性を発揮し競争力をつけてきたが、今後はより多くの研究者・技術者が商品開発に創造性を発揮することが期待される。本研究の目的は、独創的な商品開発を担える研究者・技術者の育成・支援における政府の役割を検討するために、既に独創的な商品開発に成功した研究者・技術者に関して知見を得ることである。
2. 調査研究の概要
過去独創的な商品開発に成功した研究者・技術者を対象にする。
本研究の基本的な問いは、次の通りである。
- なぜ、どのようにして独創的な新製品のアイデアを出せたのか?
- どのように管理されたのか、どのような組織環境だったのか?
- どのような人材であったのか?どのように育成されたのか?
本研究は学際的な研究であり、関連する先行研究は「創造性」「商品開発」「イノベーション」等の研究分野で見られる。これらの先行研究を参考にし研究のフレームワークを作成する。手法としては、ケース・スタディを使う。ケース・スタディは「なぜ」「どのように」という質問に適しており、本研究の目的にあった有効な研究手法である。
3. 進捗状況
2003 年度は先行研究調査をほぼ終了し、我が国で行われた独創的な商品開発の担当者数人にヒヤリングを行った。2004 年度はこれらをもとに、研究のフレームワークを精緻化し、本格的なケース・スタディを実施する。
4. 特記事項
特になし。
5. 論文公表等の研究活動
2004 年度に報告書作成、論文発表・投稿、等を予定している。
(3) 第1調査研究グループ
研究課題 1
国際級研究人材の養成・確保に関する調査・研究
松室 寛治、今井 寛1. 調査研究の目的
平成13 年 3 月に閣議決定された第2期科学技術基本計画では、我が国が目指すべき国の姿の一つとして、「知の創造と活用により世界に貢献する」との基本理念が掲げられた。その実現には、知の源泉である人材を育成し、知を我が国の基盤とする社会を構築していくことが必要であり、本調査研究では、我が国の科学技術の基盤を支える国際的に活躍できる研究人材の育成・確保のための方策の方向性を明らかにする。
2. 調査研究の概要
我が国の科学技術の基盤を確固たるものにし、新しい「知」を創造し続けていくためには、研究人材のすそ野を広げるだけでなく、卓越した、国際的に活躍できる研究人材を多数輩出することが必要不可欠である。そのため、まず、このような人材が世界各国にどのように分布しており、我が国がどのような位置づけにあるかを明瞭にする。
その上で、このような人材がどのような教育環境、研究環境の中でもっともよく育成されるかについて調査し、効果的な育成・確保の方策について調査研究を行う。
3. 進捗状況
国際的に極めて卓越した研究者(国際的科学賞受賞者、国際的アカデミー会員 、論文被引用回数等)を対象にアンケート調査を実施し、調査対象者自身の経験を通して、優れた研究者を養成・確保するうえでの考え方、国際級研究人材を育む教育環境、国際級研究人材の養成に理想的な研究開発環境、今後取り組むべき課題等を分析し、調査資料として取りまとめた。
4. 特記事項
中央教育審議会大学分科会での資料配付や新聞社やテレビ局等マスコミ各社からの問合せなど、各層からの反響があった。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 「国際級研究人材の養成・確保のための環境と方策」(調査資料 - No.102)
研究課題 2
若手研究者の能力の向上と発揮に影響する要因に関する調査研究
三浦 有紀子、今井 寛1. 調査研究の目的
優れた研究成果の創出は、科学技術創造立国を目指す我が国にとって重要な課題である。ノーベル賞受賞者の例に見られるように、優れた研究成果は、その研究者の若手から中堅時代に生み出されている傾向があることが最近の調査結果等から明らかになってきた。すなわち、研究者がこの時代に飛躍的に能力を向上させていること、さらにその能力を十分に発揮する環境にあったことが推測される。
そこで本調査研究では、若手研究者がその能力を向上し、最大限に発揮するために必要な因子について検証し、我が国の現状をふまえ、それを具体化するための方策を明らかにすることを目的とする。
2. 調査研究の概要
若手研究者の「能力向上に寄与する因子」と「能力発揮に寄与する因子」のふたつに分けて検討を行う。
- (1) 能力向上に寄与する因子については、研究者のキャリアとその生産性との相関性を解析し、生産性向上に寄与したキャリア上の変化等について考察する。
- (2) 能力発揮に寄与する因子については、国内の大学・公的研究機関における研究者公募状況とその問題点を解析し、若手研究者に能力発揮機会が十分に与えられているか否かについて考察する。
3. 進捗状況
まず、(1)については、大学の研究者総覧、学術論文検索データベース等の公開情報を利用して、解析に役立つデータの収集を行っている。そのうち、ある国立大学の生命科学分野の研究者については、データの収集および分析を完了した。(2)については、過去1 年間の大学・公的研究機関が公開した募集情報の収集を完了し、応募資格等の項目に着目して、分類、解析にとりかかっているところである。
4. 特記事項
特になし。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 三浦有紀子 研究者のキャリアとその生産性の相関性について、研究・技術計画学会第18回年次学術大会講演要旨集、pp.153‐155、2003.
研究課題 3
科学技術人材のキャリアパスの多様化に関する調査研究
下村 智子、今井 寛1. 調査研究の目的
科学技術人材の養成・確保を図るためには、多くの優秀な者が科学技術分野を目指すような環境の整備が重要である。そのためには、科学技術分野に進んだ者が、各人の能力に応じて多様な職種を選択・経験できるようにすることが必要である(キャリアパスの多様化)。
そこで本調査研究では、科学技術人材のキャリアパスの多様化を促進するために、特に、我が国において進路の選択肢が狭いと考えられている博士号取得者を対象として、日本及び米国におけるキャリアの現状を整理・分析し、日米比較を行うことにより、科学技術分野の博士号取得者の就業構造(又は就職構造)が日米でどのように異なるかを把握する。
2. 調査研究の概要
まず、国立科学財団(NSF)等の公表統計資料をもとに、米国における科学技術分野の博士号取得者の就業状況を把握する。次に、文部科学省「学校基本調査」、総務省統計局「科学技術研究調査報告」等の既存統計資料をもとに、日本における科学技術分野の博士号取得者の就職状況を把握する。そして、これら日米のデータを比較することにより、科学技術分野の博士号取得者の就業構造(又は就職構造)が日米でどのように異なるかを把握・分析する。
3. 進捗状況
米国については、科学及び工学分野の博士号取得者の就業構造に関するストックデータを分析し、日本については、主として、文部科学省の「学校基本調査」をもとに博士課程修了者の就職状況に関するフローデータを分析した。このように両国のデータにはストックデータ・フローデータといった相違点や分類項目自体に相違点があるため、データ自体を比較することは困難であったが、データから得られる特徴についての日米比較を試みた。
4. 特記事項
特になし。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 「博士号取得者の就業構造に関する日米比較の試み - キャリアパスの多様化を促進するために -」、科学技術政策研究所 調査資料 - 103(2003.12)
研究課題 4
創造的な研究成果をあげるための研究組織の構成や人材マネジメントのあり方に関する調査研究
下村 智子、三浦 有紀子、今井 寛1. 調査研究の目的
我が国において世界をリードするような独創的・創造的な研究成果を数多く創出するためには、優秀な科学技術人材の養成・確保を図ることが重要であり、このためには、多くの優れた人材が理工系を目指すとともに、自己の能力を充分に発揮できるような研究組織・研究環境を整備する必要がある。
そこで、本調査研究では、国際的に評価される研究成果をあげている研究者の所属する研究室や独創的・創造的な研究成果をあげている研究グループを対象に、その組織構成やマネジメント手法につき調査・分析することにより、創造的な研究成果をあげるための研究組織の構成や人材マネジメントのあり方について政策提言することを目的とする。
2. 調査研究の概要
まず、独創的・創造的な研究成果をあげている国内の研究グループを抽出し、これら研究グループの組織・人員構成を詳細に把握するとともに、我が国の国公立大学理系学部等の全研究室を対象にその組織構成を統計的に把握する (各大学の HP で公開されている資料をもとに分析)。そして、創造的な研究成果をあげている研究グループと国公立大学理系学部の全研究室の組織・人員構成とを比較分析することにより、当該研究グループの組織構成における特徴を把握する。さらに、組織構成に特徴を有している研究グループについてその人材マネジメント手法を把握・分析する。
3. 進捗状況
平成15 年度は、過去3 年程度の「nature」及び「science」に論文を投稿している我が国の研究者が所属する研究室を抽出した。また、我が国の国立大学理系学部の全研究室について、その組織・人員構成(職位別人数・女性研究者・外国人研究者の割合、研究支援者の人数等)を把握した。
4. 特記事項
平成16 年度以降は、研究課題 2 「若手研究者の能力の向上と発揮に影響する要因に関する調査研究」と統合する予定。
5. 論文公表等の研究活動
特になし。
研究課題 5
第 5 版科学技術指標に関する調査研究
第 5 版科学技術指標検討チーム1. 調査研究の目的
本研究は、多様かつ複雑な科学技術活動を定量的データに基づき、総合的・体系的に分析・評価することで、世界における日本の科学技術の水準を明確にし、今後の科学技術政策の企画・立案に資することを目標とする。
2. 調査研究の概要
科学技術指標については平成 3 年度に最初の報告書を作成して以来、ほぼ3 年ごとに改訂を行ってきており、平成12 年に第4版科学技術指標を発行した。本年度は、平成16 年の第5版科学技術指標の作成に向けて、具体的な構成データ収集項目等について検討を行うとともに、その結果を踏まえ、データ収集、執筆を進めた。
3. 進捗状況
平成 16 年の第5版科学技術指標作成に向け調査研究を継続中である(平成16 年 4 月公表)。
4. 特記事項
多様かつ複雑多岐にわたる科学技術活動を定量的データに基づき総合的・体系的に分析・評価する本指標は、国内では当研究所以外で開発しているところはない。また、国外では、欧米や一部の開発途上国で取り組まれているが、理論と実証の両面から体系的に取り組んでいる点で国際的にも数少ないものといえる。
5. 論文公表等の研究活動
進捗状況のとおり。
その他の活動 1
生命科学分野の海外在住日本人研究者の現状 - 米国NIH在籍者へのアンケート調査より -
三浦有紀子1. 調査研究の目的
海外の優れた研究機関での経験は、研究者にとって非常に有意義なものであるという認識の下、優秀な日本人研究者に対しては、帰国の動機付けとなるような環境整備の必要性が求められている。しかし、現在、海外在住の日本人研究者については、その総数すら把握できていない状態であり、海外在住の日本人研究者の意識調査についてはニーズが高いと思われる。
本調査研究は、先端的研究分野の中でも、近年最も海外との実力差が認識されている生命科学分野に焦点を当て、現在海外で活動している日本人研究者の現状と意識を明らかにすることにより、海外における研究活動及び帰国奨励策に寄与することを目的とする。
2. 調査研究の概要
日本人研究者が多数在籍していることが確認されている米国NIHに焦点を当て、所属の日本人研究者へアンケート調査を実施する。その中で、米国での研究経験より得られたことや現在の研究環境と日本の研究環境との比較等に関して、意見を集める。
3. 進捗状況
米国NIHの公開情報より、日本人と思われる研究者に関する情報を収集。連絡先が特定できた数百名に対し、アンケート調査を実施した。アンケート回答結果を整理、分析した。
4. 特記事項
特になし。
5. 論文公表等の研究活動
「生命科学分野の海外在住日本人研究者の現状 - 米国NIH在籍者へのアンケート調査より -」と題した報告書を近く発行予定。
その他の活動 2
(1) 所外講演等
松室 寛治 (第1調査研究グループ)- 「知的クラスター政策立案の経緯」 関西ベンチャー学会2003 年度 第2回例会 2003.9.2
- 「どのようにしたら日本の研究システムは良くなるのか」独立行政法人国立健康・栄養研究所 所内セミナー 2003.10.27
- 「政・産・官・学の連携で知財政策と科学技術政策を考える」政策研究院シンポジウム 2003.12.18
(2) 所外委員会
三浦有紀子(第1調査研究グループ)- 文部科学省科学技術・学術政策局 科学技術政策関連指標の整備に関する研究会 科学技術人材の統計的把握に関するワーキンググループ 委員 2003.7.23〜
(3) 国際貢献、国際協力
伊地知 寛博 (第1研究グループ主任研究官)、古賀 款久 (第1研究グループ研究員)、富澤 宏之 (第2研究グループ主任研究官)、三浦 有紀子 (第1調査研究グループ上席研究官)、蛯原 弘子 (情報分析課情報係長)- EU Benchmarking Exercise of RTD Policies: Data Collection Exercise 2003 - Japanese Indicators, Response to the DG Research and Eurostat of the European Commission (unpublished document)
(4) 第2調査研究グループ
研究課題 1
科学技術の公衆理解に関する研究Ⅱ
渡辺 政隆、大沼 清仁、中村 隆史、今井 寛、植木 勉 (客員研究官)1. 調査研究の目的
科学技術の恩恵に浴することなく生きられない現代社会にあっては、ひとりひとりが理科や科学技術への関心を持ち続けることが望ましい。ところが現実はむしろ、理科離れ、科学技術への無関心が高まる傾向が顕著となりつつある。科学技術創造立国を目指す我が国にとって、その対策を講じることは急務である。そのためにはまず、その実態を正確に把握して諸原因を探り、人々が科学技術に触れる機会を増やすための提言をする必要がある。そうした調査研究活動を通して、公衆の科学技術理解増進を図ることが本調査研究の目的である。
2. 調査研究の概要
(1) 科学系博物館等における理解増進活動に関する調査
科学系博物館・科学館等における理解増進活動の実態を把握すると同時に、その成果に関する調査・分析を行う。
(2) 科学コミュニケーションシステムに関する調査
科学コミュニケーターが果たすべき役割、その養成システムのあり方等に関する調査検討を行う一方で、長年にわたって開催されてきた各種科学コンテスト等において集積されてきたデータの分析、一般向け講演会・シンポジウム等でのアンケート調査などを実施することにより、科学技術に対する関心度が低下してきた素因の特定を目指す。
(3) 科学技術理解増進方策の検討
有識者による「科学技術理解増進研究会」を設置し、理解増進方策を検討する
3. 進捗状況
(1) に関しては、科学技術館サイエンス友の会会員、日本宇宙少年団団員へのアンケートを実施し、平成15 年度に調査報告書を取りまとめた。(2)に関しては、英米における科学コミュニケーション施策の実態を調査し、収集した関連情報を国内の実態とあわせて、平成15 年度に調査報告書を取りまとめた。また、科学講演会、大学開放時等にアンケートを実施すると同時に、大衆文化における科学研究者の描かれ方に関する予備的調査を実施した。(3)に関しては、「科学技術理解増進研究会」(委員構成は備考を参照)を設置し、3回の会合を開催した。研究会における議論と(1)及び(2)の成果等を踏まえ、今後とも鋭意検討を行う。
4. 特記事項
10 月には、韓国科学部人力課の李性奉課長補佐を日本学術振興会短期フェローとして2か月間招き、日韓両国に共通する問題点について検討した。3 月には内外5名の著名講師陣を招聘し、科学講演会「ダーウィンで科学を楽しむ」を実施した。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 大沼 清仁、中村隆史、今井寛「科学館等における科学技術理解増進活動への参加が参加者に及ぼす影響について-科学技術館サイエンス友の会・日本宇宙少年団を例として-」 科学技術政策研究所 調査資料 - 99 (2003.11)
- [2] 渡辺 政隆、今井寛「科学技術理解増進と科学コミュニケーションの活性化について」 科学技術政策研究所 調査資料 - 100(2003.11)
- [3] 渡辺 政隆「科学技術理解増進と科学コミュニケーション活性化策についての提言」 日本科学教育学会第 27 回大会 (2003.7)にて発表。
- [4] 渡辺 政隆「科学コミュニケーションと活字メディア」 「第 2 回生命科学と社会のコミュニケーション研究会」(2003.8)にて発表。
- [5] 渡辺 政隆「文化として科学を楽しむ」 日本科学教育学会主催シンポジウム「これからの科学教育を考える - 科学好きを育てる -」(2003.11)にて発表。
- [6] 渡辺 政隆「科学コミュニケーション活性化方策において科学系博物館が果たすべき役割」 ワークショップ「21世紀型科学教育の創造 - 自然科学及び理工学系博物館等の生涯学習施設の役割 -」(2003.11) において発表。
- [7] 渡辺 政隆「科学を楽しむ素養を養うための科学コミュニケーション活性化方策」 日本学術会議科学教育研究連絡委員会主催「『科学のための科学』を基盤にした『社会のための科学』に向けた新世紀の科学教育」(2004.3)にて発表。
- [8] 渡辺 政隆 鹿児島大学理学部物理学科において [科学ジャーナリズム] の非常勤講師。
- [9] 渡辺 政隆 「第 3 回 日米科学技術理解増進専門家会合」(2003.7)に参加。
- [10] 渡辺 政隆 鳥井弘之東京工業大学教授主催の「科学技術リテラシー研究会」に参加。
- [11] 科学講演会「ダーウィンで科学を楽しむ」(2004.3) を開催。
講師 養老 孟司 (東京大学名誉教授)、向井 万起男 (慶應義塾大学助教授)、Randal Keynes (チャールズ・ダーウィントラスト理事)、James Moore (オープン大学上級講師)、Olivia Judson (インペリアル・カレッジ研究員)
※ 備考 「科学技術理解増進研究会」委員及び客員研究官一覧 (肩書きは任命時点のもの)
座長 | 高柳 雄一 | 文部科学省高エネルギー加速器研究機構教授 |
---|---|---|
副座長 | 中村 雅美 | 日本経済新聞社編集委員 |
大島 まり | 東京大学生産技術研究所助教授 | |
高橋真理子 | 朝日新聞社論説委員 | |
鳩貝 太郎 | 文部科学省国立教育政策研究所総括研究官 | |
松田 良一 | 東京大学大学院総合文化研究科助教授 | |
美馬 のゆり | 日本科学未来館副館長 | |
客員研究官 | ||
小倉 康 | 国立教育政策研究所主任研究官 | |
日夏 健一 | JST 科学技術理解増進部企画課長 | |
藤本 瞭一 | JST 広報参与 | |
植木 勉 | 岩手県立大学総合政策学部教授 |
研究課題 2
科学技術情報とメディアに関する研究
大沼 清仁、植木 勉 (客員研究官)、平野 千博、今井 寛1. 調査研究の目的
国民は科学技術に関する情報をテレビ、新聞、雑誌などから得ているが、科学雑誌については、近年、休刊(廃刊)するものが相次いでいる。雑誌については、発行部数、購読者に関するデータは公にされることが少なく、実態がわかりにくいのが現状である。本調査では科学雑誌の発行部数等について調査を行い、科学雑誌の動向を明らかにする。
2. 調査研究の概要
(1) 科学雑誌の発行点数、発行部数に関する資料調査の実施
科学技術情報を総合的に扱う雑誌の発行部数、購読者層などを出版社の資料などから調査し、発行部数の変化、購読者層の変化を追跡する。
(2) 科学技術への関心の変化について調査と科学雑誌の発行部数の変化についての分析
また、科学技術への関心の変化についても調査分析し、雑誌の発行部数の変化と科学技術への関心の変化の関係について分析する。
(3) 科学雑誌のあり方、科学技術への関心を高める方策についての検討
科学雑誌の編集や科学技術の情報発信の現場に携わる方から聞き取り調査を行い、科学雑誌の役割、国民の科学技術への関心を高める方策について検討する。
3. 進捗状況
(1) 資料調査の実施及び動向分析
資料調査、動向分析については既に終了。
(2) 科学雑誌編集、情報発信現場に携わる方からの聞き取り調査
2001 年 6 月から2002 年 11 月にかけて実施し、関係者から科学雑誌の役割、国に期待する役割について検討。
調査、取りまとめについては終了し、2003 年 5 月に公表。
4. 特記事項
特になし。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 「我が国の科学雑誌に関する調査」を調査資料-97 として2003.5に公表。
- [2] 大沼清仁「我が国の科学雑誌に関する調査」 日本出版学会雑誌研究部会2003.7)にて発表。
研究課題 3
先端生命科学技術の社会的ガバナンスシステム構築のための調査研究
牧山 康志、今井 寛、渡辺 政隆、植木 勉 (客員研究官)、菱山 豊 (客員研究官)1. 調査研究の目的
先端生命科学技術の進展に伴う新たな倫理的・社会的諸問題に対処するためには、社会全体が的確に対応する包括的な先端生命科学技術の社会的ガバナンスシステムの構築が必要であり、その基盤となる諸課題を調査研究する。
2. 調査研究の概要
- (1) 具体的事例を通して、生命倫理問題に包含される諸要素を分析する。
- (2) 生命倫理問題の諸要素の分析検討から、構築すべきシステムの枠組みを検討する。
- (3) 生命科学技術の社会的ガバナンスシステムの在り方(設計図)を提言する。
3. 進捗状況
上記 (1) に関し、昨年度までの調査研究で重要性が明らかとなった、施策策定のプロセス、法定の許認可機関、専門的調査研究機能、広報と公衆理解、倫理委員会、インフォームドコンセント、専門職能集団、査察・モニター、これらを包括するシステムの透明性の確保などの諸要素に関して、具体的事例として、ヒト胚の取扱いの在り方について検討を行い、科学技術、科学技術政策立案、市民・社会の3つの領域(セクター)を適切に仲介する中間的機関の必要性を明らかにした。
4. 特記事項
第 2 期科学技術基本計画 (2001 年) やバイオテクノロジー戦略大綱 (2002 年) では生命科学技術の発展と不可分な生命倫理問題解決の重要性が指摘され、本検討は急務である。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 牧山康志 「ヒト胚の取扱いの在り方に関する検討」Discussion Paper No.33(2004 年 1 月公刊)
- [2] 牧山康志 「『生命倫理』から『社会システム』へ - 社会システム改革の黎明 -」、『人倫研プロジェクト News Letter』No. 6 (2003 年 9 月発行)
- [3] 牧山康志 「英国におけるヒト胚に関する政策 - HFEActとHFEA」、「人体利用等にかんする生命倫理基本法」研究プロジェクトワークショップ、北海道大学、2003 年 7 月 6 日.
- [4] Yasushi Makiyama, "Government Policies in Japan now, and Hypothetical Plan for Bioethical Governance in the Future", Beijing International Conference on Bioethics, Beijing, China, January 5-7, 2004.
- [5] Yasushi Makiyama, "Hypothetical political framework for bioethical governance in Japan", Fifth Asian Bioethics Conference concurrent with International Tsukuba Bioethics Roundtable, Tsukuba, Japan, February 13-16, 2004.
- [6] Yasushi Makiyama, イタリア、ジェノバで開催されたEuropean Commission 主催の会議"Modern Biology and Visions of Humanity" に参加、2004 年 3 月 22-23 日.
その他の活動
1. 共同プロジェクトへの参画
- 渡辺 政隆 分担研究「ジャーナリズムから社会への情報提供とその役割の検討」、平成14・15 年度科学技術振興調整費研究「生命科学技術推進にあたっての生命倫理と法」(主担当: 上智大学)
2. 講演・研究会等での発表
- 渡辺 政隆 「科学コミュニケーション」、平成 14・15 年度科学技術振興調整費研究「生命科学技術推進にあたっての生命倫理と法」公開シンポジウム「"生命倫理" - - 破壊と再生」(2003.11)
- 渡辺 政隆 「生命倫理とマスメディア」、平成 14・15 年度科学技術振興調整費研究「生命科学技術推進にあたっての生命倫理と法」研究会 2003 年度第 4 回、上智大学、2003 年 9 月.
- 牧山康志 「ポストゲノム研究における生命倫理的課題への対応: ハプロタイプデータベースを中心に」、平成 14・15 年度科学技術振興調整費研究「生命科学技術推進にあたっての生命倫理と法」研究会 2003 年度第 2 回、上智大学、2003 年 6 月.
3. 所外委員会
- 牧山康志 平成15・16 年度科学技術振興調整費研究「生命倫理の社会的リスクマネジメント研究」推進委員会委員(主担当: 三菱総合研究所)
(5) 第3調査研究グループ
研究課題 1
地域イノベーションの成功要因及び促進政策に関する調査研究
斎藤 尚樹、計良 秀美、杉浦美紀彦、俵 裕治、岩本 如貴、前田 昇、客員研究官1. 調査研究の目的
地域イノベーションを促進するためには、現在講じられている個々の施策を融合したトータルなイノベーション・システムの確立が必要である。その手がかりを見つけるべく、海外地域の優良事例を調査分析の上、日本各地の事例との比較分析により、日本型クラスターのあり方・方向性を明確化し、国・地方自治体のクラスター関連施策の展開についても考察する。また、当該調査にあたり、地域イノベーション促進政策の理論及び応用について総合的に把握するため、国内外の関連情報を収集・分析する。
2. 調査研究の概要
本調査研究では、大学等の「知」の創出に根ざす連鎖的イノベーション・システムの構築に成功した欧米の地域クラスターの先進事例を踏まえ、日本の社会・文化システムとの適合性を意識しつつ、国内各地域における日本型クラスターの形成のための成功要因及び促進政策のあり方を検討・分析した。本調査研究「中間報告」(2003 年 3 月取りまとめ )では、欧米においては大学等の知的機関の深い関与がクラスター形成・発展の重要な要素となっていること、地域に根付くための研究開発型ベンチャーの存在が重要であること等を述べた。
最終報告では、中間報告での検討・分析結果を踏まえ、「日本型」クラスターの発展の方向性を探るべく、クラスター形成時の強さ及び今後の促進要素の抽出を試みた。
具体的な手法は次の通りである。
- (1) 外部識者による専門家委員会での検討
- (2) 欧米の成功地域についての資料調査及び現地ヒアリング調査
- (3) 国内の特色ある地域を対象にした資料調査及び現地ヒアリング調査
- (4) 国内外の学会・会議等への参加による情報収集及び文献調査
- (5) 調査結果の分析・考察
3. 進捗状況
- (1) 地域イノベーションの調査研究に対する評価及び助言を行う外部識者による「地域イノベーション検討委員会」(委員長: 松田修一早稲田大学教授)を設置し、委員会を計8回開催した(2002 年度4回、2003 年度4回)。
- (2) 海外のクラスター先進事例8地域を選定し、2003 年度は、アメリカ: ボストン、ドイツ: ミュンヘン、中国: 北京(中関村)、韓国: テジョン(テドク)について現地へ赴きヒアリング調査を実施した。
- (3) 上記海外調査と並行して国内17地域を選定し、札幌、花巻・北上、仙台、筑波、福井、長野・上田、浜松、名古屋、豊橋、京都、大阪北部、神戸、広島、徳島、香川、北九州・福岡、熊本の各地域について現地へ赴きヒアリング調査を実施した。
- (4) 本調査研究の「中間報告」における検討・分析結果と現地ヒアリング調査等を踏まえ、各地域の特質を生かしながら、いかにして従来のような企業や研究機関の単なる集積でなく、地域に根付いた広がりと持続性・発展性のある日本型クラスターを創出できるかについて調査分析を行い、最終報告として取りまとめた。
- (5) 研究・技術計画学会発表(2003.11.8): 計良秀美「地域クラスターの日本的成功要素 - 欧米クラスターとの比較調査研究」
- (6) 所内成果発表会(2003.4.18): 計良秀美「欧米先進クラスター形成要素からみた日本のクラスター - クラスター形成による地域イノベーションの促進 -」
4. 特記事項
各地の事例報告はあるが、多面的、総合的な調査は少ない。また、本件調査研究については、2003 年 3 月に「中間報告」(DISCUSSION PAPER No.29) を取りまとめ、当所 HP 等を通じ発表している。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 「地域イノベーションの成功要因及び促進政策に関する調査研究 - 『持続性』ある日本型クラスター形成・展開論 - (最終報告)」科学技術政策研究所 POLICY STUDY No.9(2004.3)
研究課題 2
地域イノベーションの事例調査 (所内セミナーの開催)
斎藤 尚樹、計良 秀美、杉浦 美紀彦、俵 裕治、岩本 如貴1. 調査研究の目的
地域イノベーションの調査研究は各地域の現場を訪問しヒアリングを行うことが望ましい方法であるが、それには時間的、経済的に限界がある。そのため、事例調査等を補完するため関係者を招き所内セミナーを開催する。なお、開催にあたり関係機関にも聴講の案内をすることにより、所外に対して地域イノベーションに関する情報の発信を行うことが期待できる。
2. 調査研究の概要
地域イノベーション調査において、幅広い地域情報の収集・確認、調査の正確性を高めるため、産学官連携機関の専門家、幾つかの国内地域の有識者を招き所内セミナーを開催し、意見等を聴取する。内容等については後日講演録として取りまとめて公表する。
3. 進捗状況
(1) 2003 年 7 月 14 日開催:
青木 由直 北海道大学大学院工学研究科教授 高橋 昭憲 ㈱ データクラフト代表取締役4. 特記事項
昨年度も3回実施し、講演録 101、103、128 として発表した。本セミナーより本省等、所内外の関係機関へ情報発信を実施。
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 青木 由直、高橋 昭憲「札幌 IT クラスターの現状と課題」、科学技術政策研究所 講演録 No.129 (2004.3)
研究課題 3
地域イノベーションの事例調査(地域クラスターセミナーの開催)
斎藤 尚樹、杉浦 美紀彦、岩本 如貴、俵 裕治 (2004 年 1 月まで)、丸山 泰廣 (2004 年 2 月から)1. 調査研究の目的
地域科学技術振興政策は科学技術基本計画等で重点施策の一つとして挙げられており、国内外の地域クラスターの事例等についての最新情報を得ることは当研究所第3調査研究グループをはじめ地域政策関係者(国、地方行政担当者、専門の研究者等)にとって意義あることである。そこで、問題意識を共有する独立行政法人経済産業研究所、研究・技術計画学会とともに、セミナーを開催する。
2. 調査研究の概要
地域クラスター調査において、海外を含め幅広い地域情報の収集・確認、調査の正確性を高めるため、地域専門家もしくは在日科学アタッシェ等を招き地域クラスターセミナーを開催し、事例紹介等をメインとした意見等を聴取する。内容等については講演概要を取りまとめ、後日当研究所ホームページで公表する。
3. 進捗状況
(1) 第 2 回 (2003 年 4 月 11 日開催)
- 講師:
- ミシェル・イスラエル フランス大使館科学技術参事官
- テーマ:
- ネットワークとクラスター(フランスにおける知識ベース経済推進のイニシアティブ)
(2) 第 3 回 (2003 年 5 月 16 日開催)
- 講師:
- 中川 健朗 文部科学省科学技術・学術政策局 地域科学技術振興室長
- テーマ:
- 日本の知的クラスター創成を目指した取組み
(3) 第 4 回 (2003 年 6 月 25 日開催)
- 講師:
- フィリップ・ウェイヤス オランダ大使館科学技術参事官
- テーマ:
- オランダにおけるイノベーション政策の発展 - クラスター政策から DIS (ダイナミック・イノベーション・システム) モデルの導入まで -
(4) 第 5 回 (2003 年 9 月 29 日開催)
- 講師:
- 井上 裕行 経済産業省 地域経済産業グループ産業クラスター計画推進室長
- テーマ:
- 現場から見た産業クラスターの形成
(5) 第 6 回 (2003 年 12 月 17 日開催)
- 講師:
- 岡崎 英人 (社) TAMA 産業活性化協会事務局長
- 児玉 俊洋 経済産業研究所上席研究員
- テーマ:
- TAMA - 技術革新的クラスター形成への取り組み -
(6) 第 7 回 (2004 年 1 月 26 日開催)
- 講師:
- クラウス・マッテス 在日ドイツ連邦共和国大使館一等参事官 (科学技術・環境担当)
- テーマ:
- ドイツの研究開発政策の発展 - ネットワークとクラスター形成に向けて
(7) 第 8 回 (2004 年 3 月 8 日開催)
- 講師:
- 柴田 義文 (財)浜松地域テクノポリス推進機構知的クラスター本部事業総括/三遠南信バイタライゼーション推進協議会会長
- 岡本 尚道 静岡大学イノベーション共同研究センター長
- テーマ:
- 「浜松地域クラスターと地域産業の振興」(柴田氏)
- 「静岡大学の産学官連携活動」(岡本氏)
4. 特記事項
第 1 回地域クラスターセミナーは「カナダの地域クラスター開発」をテーマとし、2003 年 1 月 31 日開催した。
5. 論文公表等の研究活動
経済産業研究所との協力により、本セミナーのプレゼンテーション資料及び議事概要を当研究所のホームページに順次掲載する。
(6) 科学技術動向研究センター
科学技術動向に関する調査研究
科学技術動向研究センター1. 調査研究の目的
第 2 期科学技術基本計画の重点分野を中心に、先端の科学技術に関する動向について体系的かつタイムリーな情報収集・分析を行い、適宜、総合科学技術会議及び文部科学省等に提供することによって、今後の科学技術政策に関する戦略・施策の検討に積極的に貢献する。
2. 調査研究の概要
調査研究は、科学技術専門家ネットワークによる科学技術動向情報の収集・分析とセンター独自の視点で設定した重要科学技術分野・領域の動向分析からなる。
科学技術専門家ネットワークは、約2,800名の研究者、技術者を専門調査員に委嘱し、インターネットWebサイトへ科学技術の動向に関する最新情報や専門的な見解等を投稿形式で収集する仕組みである。これにより国内外の学術会合、学術雑誌等に発表される研究成果、今後の科学技術の方向性等に関する意見が得られる。この情報は毎週整理(「週報」)されて、ネットワークを介して文部科学省、総合科学技術会議の担当者及び専門調査員が共有(閲覧)している。
また、センター独自の視点により設定した科学技術に関するテーマの最新動向について、インタビュー調査、専門家を招いての講演会の実施、文献調査等をもとに詳細な分析を行った。独自の視点とは、今後、国として取り組むべき具体的な重点事項、研究開発課題等を明確にすることであり、行政部局の動向、社会・経済的ニーズ等も踏まえ、重要と考えられる技術・課題を設定する。
3. 進捗状況
専門調査員からは、専門家ネットワークを通じて約1,300件の投稿があった。これらのうち特に注目される最新の動向を選び、毎月、「科学技術トピックス」としてとりまとめた。今後は、専門調査員の拡充を図るとともに、センターと専門調査員と情報交流の双方向性を高め、より有用な情報が提供・蓄積されることを目指す。
また、センターとして32件のテーマを設定し、調査・分析の結果を「特集」としてとりまとめた。
これらの成果を「科学技術動向」として毎月編集し、定期的に文部科学省、総合科学技術会議、在京大使館、シンクタンク、マスコミ等へ提供し、さらに政策研Webにおいて一般に公開した。さらに、「特集」については、英訳して「Science & Technology Trends Quarterly Review」として年 4回にまとめて発行し、上記に加え海外機関へも提供している。
この他、文部科学省、総合科学技術会議からの求めに応じて、適宜、各種の資料を提供した。
今年度の調査研究の成果について、センター全体にわたる成果と、ライフサイエンス・医療、情報通信、環境・エネルギー、材料・製造技術、総括(社会基盤、フロンティア)の各ユニットについての成果を以下の研究課題 1 〜 6 に示す。
4. 特記事項
特になし
5. 論文公表等の研究活動
- [1] 「科学技術動向」2003 年 4 月号〜2004 年 3 月号
- [2] 「Science & Technology Trends -Quarterly Review」No.7 〜 No.10
- [3] 科学技術動向研究センター編著「図解 水素エネルギー最前線」工業調査会 2003 年 7 月 25 日発行
その他個別のものは、研究課題 1 〜 6 において記述。
研究課題 1
センター全体としての調査研究
① 特定テーマについての動向分析
科学技術政策全般に関わる以下の 4 テーマを取り上げ、「科学技術動向」(月報)の特集にとりまとめた。
- 「米国の科学技術政策動向 - 2003 年 AAAS年 次コロキアム速報 -」(清貞 智会、2003 年 4 月)
- 「Futur - ドイツにおける需要側からの科学技術政策の展開」(丹羽冨士雄、2003 年 6 月)
- 「企業の科学技術人材における女性比率の拡大 - EU の政策と日本の課題 -」(伊藤裕子、2003 年 12 月)
- 「研究開発プロジェクトの評価 - ヨーロッパの事例 -」(山田 肇、2004 年 2 月)
② 講演会の開催
我が国の学術論文誌が抱える問題、産学官共同、人材問題等、科学技術政策上の重要テーマについて、専門家を招いて講演会を開催した。
- 「日本の学術論文誌の危機とインパクトファクター 〜 JJAP からみる」(講師: 応用物理学会 鈴木 徹 理事)
- 「北米における産学共同研究の実態」(講師: カナダ・マクマスター大学 Jen Shih Chang 教授)
- 「欧米の研究教育状況とリタイア後の研究者」(講師: 浅野 和俊 山形大学名誉教授)
- 「独立法人化による大学における研究の位置づけ」(講師: カナダ・マクマスター大学 Jen Shih Chang 教授)
- 「AHP (Analytic Hierarchy Process) の世界 - 公共政策に適用できる意思決定手法 -」(講師: 名城大学 木下 栄蔵 教授)
③ 行政部局からの要請に基づく調査分析
○ 内局の要請に基づく調査分析
- 中塚 勇、横田慎二、桑原輝隆「先端的計測・分析機器の現状と今後の課題」(調査資料-98、2003 年 7 月)
内局の要請により、科学技術専門家ネットワークを通じてアンケートを実施し、分析結果を提供した。
④ 対外的な情報発信
- 「先端的計測・分析機器の現状と今後の課題」(発表者: 桑原輝隆)と題する所内セミナーを開催、上記 ③ の調査結果をもとに文部科学省関係部局向けに説明を行った。
- 研究・技術計画学会第18回年次学術大会にて、「論文データベースを用いた新興科学技術領域の俯瞰的探索手法」(発表者: 伊神 正貫、桑原 輝隆) と題して研究成果を発表。
⑤ 国際貢献、国際協力
○海外機関の活動支援、参画
- 茂木伸一、伊藤裕子
- An APEC-Wide Foresight Study: "DNA-Analysis for Human Health in the Post-Genomic Era" のコアグループミーティング(タイ・バンコク、2003 年 4 月)および、ワイドミーティング(タイ・バンコク、2003 年 8 月)に参加。
- 桑原 輝隆
- ギリシャ政府主催の技術予測ワークショップおよび政策関係者ミーティング (ギリシャ・アテネ、2003 年 6 月) に参加。
- 桑原 輝隆、亀岡 秋男 客員研究官
- ASEANが実施する"ASEAN Technology Foresight and Scan"のワークショップ(ベトナム・ハノイ、2003 年 8 月)に参加。
- 藤井 章博
- APEC 技術予測ワークショップ (タイ・バンコク、2004 年 2 月) に参加。
○海外来訪者への対応、情報交換
- 桑原 輝隆、立野 公男、浦島 邦子
- 海外の科学技術政策関係機関、在京大使館からの来訪者に対して、科学技術動向調査や予測調査の概要を説明するとともに、意見交換を行なった。
- (主な機関)
- 中国科学院、ニュージーランド大使館、ブラジル大使館、シーメンス、日立ダブリン研究所
研究課題 2
ライフサイエンス・医療分野の基盤的な動向に関する調査研究
茂木 伸一 (2003 年 12 月まで)、伊藤 裕子、島田 純子、勝木 元也 (客員研究官)、金澤 一郎 (客員研究官)、竹田 敏 (客員研究官)、辻 崇一 (客員研究官)、矢野 良治 (客員研究官)1. 調査研究の目的
第二期科学技術基本計画で重要分野の一つに選ばれているライフサイエンス分野について、基盤となる科学技術の研究開発動向を調査し、総合科学技術会議、文部科学省などの政策決定への基礎データを提供する。
2. 調査研究の概要
(1) 科学技術専門家ネットワークを利用した科学技術情報の収集
専門調査員からの情報を中心に、研究開発の最新動向や学会等の状況、また見解等といった幅広い科学技術情報を収集する。
(2) キーパーソンへのインタビュー、所内講演による科学技術情報の収集・分析
各種資料の分析の他、当該分野の内外のキーパーソンへのインタビュー、講演会による議論等を通じて、広い視点からの動向調査を行う。
(3) 政策の検討に資する資料としての取りまとめ
科学技術動向月報へのレポート(特集原稿の執筆)を中心に、調査資料、ディスカッションペーパー等を行政サイドで利用しやすい形に取りまとめ、提供する。
3. 進捗状況
- (1) については、国内現地調査・インタビューを 47 件実施し、のべ 70 人以上の専門調査員等と面談した。その成果として、(3) がある。
- (2) については、8件の所内講演会を実施し、6 件の講演録を作成した。作成した講演録は行政部局など広く配布し、成果の普及に努めた。
- 「昆虫を用いた研究の動向と今後の見通し」(講師: 理化学研究所 特別招聘研究員 名取 俊二 氏)
- 「次世代ナノバイオデバイス研究の最前線と今後の展開」(講師: 徳島大学薬学部教授、産業技術総合研究所 単一分子生体ナノ計測研究ラボ長 馬場 嘉信 氏)
- 「2000 年から 2010 年へのゲノム革命とそれに対応する研究組織のあり方」(講師: 東京大学 先端科学技術研究センター システム生物医学ラボラトリー ディレクター 特任教授 児玉 龍彦 氏)
- 「我国のPhysician Scientist(臨床医科学者)とTranslational Medicineの困難な現状」(講師: 京都大学大学院医学研究科 内科学講座教授 中尾 一和 氏)
- 「システムバイオロジーの展望」(講師: ソニーコンピュータサイエンス研究所 副所長 北野 宏明 氏)
- 「ウイルス感染症〜ポリオから SARS まで〜」(講師: 東京大学大学院医学系研究科 教授 野本 明男 氏)
- 「小さな RNA がバイオ・医学の世界を変える」(講師: 東京大学大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 教授 多比良 和誠 氏)<講演録作成中>
- 「再生医療の現状とその実用化に向けた課題」(講師: 名古屋大学大学院医学研究科 頭頚部・感覚器外科学講座教授、東京大学医科学研究所 幹細胞組織医工学研究部門 教授 上田 実 氏)<講演録作成中>
- (3) については、科学技術動向月報の特集として7件のレポートを作成した。特集の掲載されている科学技術動向月報は、行政部局に留まらず、大学や大使館など広く配布した。
- 2003 年 4 月号「ブレインイメージング: 神経疾患の診断・治療に向けた非侵襲技術応用研究体制強化の必要性」(客員研究官 矢野 良治)
- 2003 年 5 月号「エピジェネティック・がん研究の必要性」(伊藤 裕子)
- 2003 年 6 月号「昆虫を用いた生命科学研究の動向」(茂木 伸一、島田 純子、客員研究官 竹田 敏)
- 2003 年 8 月号「ゲノム構造解析技術の研究開発の必要性」(島田 純子、茂木 伸一)
- 2003 年 9 月号「グライコインフォマティクス展開の必要性」(客員研究官 辻 崇一、島田 純子)
- 2003 年 12 月号「企業の科学技術人材における女性比率の拡大 - EU の政策と日本の課題 -」(伊藤 裕子)
- 2004 年 1 月号「米国国立衛生研究所 (NIH) の生物医学研究推進に向けた戦略 (NIH ロードマップ)」(島田 純子)
4. 特記事項
特になし。
5. 論文公表等の研究活動
(研究発表等)
- [1] Yuko Ito, Post-genome research toward drug Development, DNA-Analysis for Human Health in the Post-Genomic Era: An APEC-Wide Foresight Study, APEC Center for Technology Foresight, Bangkok, Thailand, August 26, 2003.
- [2] Yuko Ito, Present Status of Women in Industrial Research in Japan, Women in Industrial Research(WIR)-Conference , Berlin, Germany, October 11, 2003.
- [3] 伊藤 裕子 「アカデミックキャリアパスにおける女性の割合」 研究・技術計画学会 第18回年次学術大会講演要旨集, pp.149-155, 2003
- [4] 伊藤 裕子 「ゲノム関連研究に投入した日本の政府予算」 科学技術社会論学会 第 2 回年次研究大会予稿集, pp.147-148, 2003
- [5] 茂木 伸一 「ライフサイエンス・医療ユニットの発足後 3 年間の成果より」 所内成果発表会 科学技術政策研究所 2003 年 12 月 9 日
- [6] Yuko Ito, Biotechnologies for improving health in Japan, 2004 AAAS Annual Meeting, Seattle, USA, February 15, 2004.
- [7] 伊藤 裕子 「科学技術人材としての女性を考える - EU の政策と日本の課題 -」 第 19 回文部科学省と科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センターとの研究開発動向に関する打ち合わせ 2004 年 3 月 1 日(文部科学省仮庁舎)
(論文等)
- [8] Yuko Ito, Shin-ichi Mogi, and Terutaka Kuwahara, Post-genome research toward drug development, APEC position paper, DNA-Analysis for Human Health in the Post-Genomic Era: An APEC-Wide Foresight Study, APEC Center for Technology Foresight, 2003 (in publication).
- [9] 伊藤裕子 「科学通信 オピニオン テニュア制導入と研究ポストの多様化について」科学 8 月号 岩波書店, pp.841-842, 2003
- [10] 伊藤裕子 「ヒトゲノムプロジェクトの歴史 - 日本において何が行われたか -」 生物学史研究12 月号, pp.97-120, 2003
研究課題 3
情報通信分野の基盤的な動向に関する調査研究
立野 公男、亘理 誠夫、小松 裕司、藤井 章博(2003 年 6 月から)、上野 元治(客員研究官)、大見 忠弘(客員研究官)、小笠原 敦(客員研究官)、黒川 利明(客員研究官)、坂村 健(客員研究官)、中野 幸紀(客員研究官)、山田 肇(客員研究官)1. 調査研究の目的
第二期科学技術基本計画で重要分野の一つに選ばれている情報通信分野について、a. 基盤デバイス技術、b. ヒューマンインターフェース、c. ネットワーク技術、d. コンピューティング技術、e. ソフトウエア技術を取り上げ、基盤となる科学技術の研究開発動向を調査し、総合科学技術会議、文部科学省などの政策決定に資する基礎データを提供する。
2. 調査研究の概要
科学技術専門家ネットワークを利用した科学技術情報の収集、キーパーソンへのインタビュー、所内講演による科学技術情報の収集・分析、及び国内外の学会、研究会、シンポジウム等への参画を通じて、広い視点からの動向調査を行う。調査結果は科学技術動向月報へのレポート(特集原稿の執筆)を中心に、調査資料、ディスカッションペーパー等を行政サイドで利用しやすい形に取りまとめ、提供する。
3. 進捗状況
- (1) 専門家へのインタビューや現地調査として、東大、京大、阪大、東工大、産総研、日立中研、NEC研究所などを訪問し、最新情報を収集した。また、ECOC '03(European Conference on Optical Communication)、IEDM '03(International Electronic Device Meeting)、AAAS '04 American Association for Advancement of Science)、Microlithography2004、APEC Work Shop(Asia Pacific Economic Cooperation)などの国際会議や国内の数多くのシンポジウムや研究会に出席し、研究開発動向を把握した。
- (2) 注目すべき領域の動向について、国内外の専門家による所内講演会を開催した。講演会で得られた情報や知見は、講演録としてまとめ広く情報提供するとともに基礎資料として活用した。今年度に開催した講演会は、次の 9 件である。
- 2003 年 5 月 "R & D for Sustainable Energy & Water Supply"(R. Kircher/Siemens)
- 2003 年 6 月 「地球シミュレータ計画と次世代コンピュータ」(佐藤/海洋センター)
- 2003 年 7 月 「Res. Activities of Semiconductor Opt. Rout. Devices」(塚本/Yale大)
- 2003 年 7 月 「ロボティクス推進のための課題と展望」(江尻/日立)
- 2003 年 7 月 「ヨーロッパにおける情報市民社会」(高橋/中大・中野/関学)
- 2003 年 8 月 「日本の学術論文誌の危機とインパクトファクタ」(鈴木/NEC・応物)
- 2003 年 10 月 「ソフトウェア要求工学の現状と動向」(佐伯/東工大)
- 2003 年 10 月 「Bioinformatics Res. in Europe and Hitachi 」(M. Field/日立)
- 2003 年 11 月 「ICT Standardization: Critical View & Action Plan」(J. Hill/SUN)
- 特集 (8テーマ)
- 2003 年 5 月 「RFIDの動向」(小松、山田)
- 2003 年 6 月 「人間中心のユビキタス・コンピューティングへ向けて」(亘理)
- 2003 年 7 月 「ロボット技術の研究開発動向」(小松)
- 2003 年 11 月 「ブロードバンド時代の次世代コンテンツ配信技術」(小笠原)
- 2003 年 11 月 「情報システム構築の品質・信頼性向上のために」(黒川)
- 2003 年 12 月 「インターネットルータの技術動向」(藤井)
- 2004 年 1 月 「光ディスク産業の最新動向」(立野)
- 2004 年 3 月 「半導体製造技術の研究開発動向」(小松)
- トピックス(15 報)
- 2003 年 4 月 「急ピッチで進む電子タグの規格標準化」(小松)
- 2003 年 5 月 「超広帯域(UWB)無線による通信の実験」(小松)
- 2003 年 6 月 「第 4 世代に向けた大容量光ディスクの提案相次ぐ」(立野)
- 2003 年 6 月 「次世代フッ素レーザ・ステッパのレンズ材料」(立野)
- 2003 年 7 月 「韓国、台湾勢VLSIシンポジウムにて発表数を急進」(小松)
- 2003 年 8 月 「次世代半導体微細加工技術の提案目白押し」(立野)
- 2003 年 9 月 「IP電話導入のインパクト広がる」(亘理)
- 2003 年 10 月 「JJAPと電子出版」(立野)
- 2003 年 11 月 「情報家電向け新OS開発が活発化」(亘理)
- 2003 年 11 月 「シリコンMOSトランジスタロードマップ前倒し」(小松)
- 2003 年 11 月 「フォトニクス技術を用いたTHz波発生」(山田、立野)
- 2003 年 12 月 「中国政府、EUV発表」(立野)
- 2004 年 2 月 「PCはデジタル家電を取り込むか」(亘理)
- 2004 年 3 月 「米国における研究活動への特許侵害訴訟」(亘理)
- 2004 年 3 月 「国際競争力を維持する日本企業の半導体微細加工技術」(立野)
4. 特記事項(学会など所外研究活動)
○国内
- 立野 公男:
- OJ2003 (応用物理学会)にて「光通信デバイス」セッション座長。 2003.12.9
- 立野 公男:
- 電子情報通信学会 総合大会(東工大)にて「光エレクトロニクス」セッション座長。 2004.3.24
- 立野 公男:
- 応用物理学会、日本光学会、幹事(2003.4-)
- K. Tatsuno:
- "Optical Review", Editorial Board Member. (2002.4-)
- 立野 公男:
- 光設計研究グループ(応用物理学会) 運営委員(2003.4-)
- 立野 公男:
- 電子情報通信学会 集積光デバイス研究会委員(2002.4-)
- K. Tatsuno:
- ICO'04, Tokyo, Steering Chair. (2002.3-)
○海外
- K. Tatsuno:
- IEEE/LEOS Program Committee Member. (2002.3-)
5. 論文公表等の研究活動
- K. Tatsuno, M. Watari, H. Komatsu & T. Ikoma :
- 「IT strategy in e-Japan」, Seminar at Institute d'Optique (Orsay, France) 2003. 9.30
- K. Tatsuno, M. Watari, H. Komatsu & T. Ikoma :
- 「Ubiquitus e-Japan」 Seminar at Hitachi Dublin Lab. (Trinity College Dublin, Ireland) 2003.10.3
- 立野 公男:
- 「次世代フォトニックネットワークのニーズとシーズの融合」OJ2003 (応用物理学会 日本光学会) パネリスト、2003.12.9
- 立野 公男:
- 「光通信ネットワークのニーズとシーズの融合」 機関紙「光設計No.29」巻頭言。2003.12.9
- 立野 公男:
- 「日本のIT産業を取り巻く状勢」 (独)科学技術振興機構主催 未来戦略ワークショップ。2004.1.29
- K. Tatsuno :
- 「IT Review, e-Japan」 Seminar at Edward Gintzton Lab., Stanford Univ. (USA) 2004.2.26
- 小松 裕司:
- 「ロボットの研究開発動向」 文科省・JST連絡会議 (於文部科学省) 2004.2.2
- 藤井 章博、玄場公規:
- 研究技術計画学会年次大会、「通信プロトコル技術の技術軌道の分析」(東京大学)、平成15 年 10 月
- 藤井 章博:
- 計測自動制御学会研究会、「スケールフリーネットワークモデルの社会計測への応用」 平成 15 年 12 月
- 藤井 章博:
- 電子情報通信学会年次総合大会、「技術政策としてのネットワークセキュリティ研究の重要性」 平成 16 年 3 月
- 小笠原 敦:
- 「日本の R&D 再生に向けて」 一ツ橋ビジネスレビュー, 51巻2号pp64-78、 2003.9
研究課題 4
環境・エネルギー分野の基盤的な動向に関する調査研究
浦島 邦子 (2003 年 6 月から)、大森 良太、山本 桂香(2003 年 6 月から)、宮本 和明(2003 年 7 月まで)、橋本 幸彦(2004 年 2 月まで)、青木 康展(客員研究官)、大迫 政浩(客員研究官)、五箇 公一(客員研究官)、小林 博和(客員研究官)、中根 英昭(客員研究官)、吉川 邦夫(客員研究官)1. 調査研究の目的
第二期科学技術基本計画で重要分野の一つに選ばれている環境エネルギー分野について、基盤となる科学技術の研究開発動向を調査し、総合科学技術会議、文部科学省などの政策決定への基礎データを提供する。
2. 調査研究の概要
科学技術専門家ネットワークを利用した科学技術情報の収集、キーパーソンへのインタビュー、所内講演による科学技術情報の収集・分析、及び国内外の学会、研究会、シンポジウム等への参画を通じて、広い視点からの動向調査を行う。調査結果は科学技術動向月報へのレポート(特集原稿の執筆)を中心に、調査資料、ディスカッションペーパー等を行政サイドで利用しやすい形に取りまとめ、提供する。
3. 進捗状況
- (1) 専門家へのインタビューや現地調査として、大学、関連企業、つくばの各研究所などを訪問し、最新情報を収集した。また、国際会議や国内の数多くのシンポジウムや研究会に出席し、研究開発動向を把握した。
- (2) 環境・エネルギーに関する動向はもちろんのこと、科学技術に関する注目すべき動向について、11名の国内外の専門家を招いて講演会を実施した。講演会で得られた情報や知見は、講演録としてまとめ広く情報提供するとともに基礎資料として活用した。今年度に開催した講演会は、次の11件である。
4 月 25 日 「「生物多様性」を考える」総合地球環境学研究所 日高敏隆所長 5 月 8 日 「工業廃熱の民生部門での利用に向けて〜高密度蓄熱装置による Off-Line 熱輸送方式の提唱〜」飯沼 和正氏 5 月 28 日 「海水ウラン利用の動向と展望1.海水ウラン捕集技術の研究開発の現状 2. 海水ウラン利用のシナリオと意義」 1. 日本原子力研究所高崎研究所材料開発部 主任研究員 玉田正男氏、2. 電力中央研究所 狛江研究所原子力システム部 魚谷正樹氏 6 月 19 日 「原子力分野の人材育成の現状と課題」九州大学 エネルギー量子工学部門 工藤和彦教授 6 月 27 日 「原子力施設におけるリスク管理の動向〜使用済燃料中間貯蔵施設を中心に〜」東京大学 原子力研究総合センター 小佐古敏荘助教授 7 月 29 日 「国際水ビジネスと日本〜民営化の波〜」㈱ 荏原製作所 吉村和就氏 9 月 17 日 「大気圧放電プラズマと触媒の組み合わせによるガス浄化〜クリーンエネルギーシステムを目指して〜」岡崎国立共同研究機構 水野彰教授 11 月 6 日 「エネルギーマネージメントとパワーエレクトロニクス」武蔵工業大学 深尾正教授 12 月 4 日 「北米における産学共同研究の実態」McMaster University Dr. Jen Shih Chang 1 月 28 日 「欧米の研究教育状況とリタイア後の研究者」山形大学工学部 浅野和俊名誉教授 2 月 17 日 「独立法人化による大学における研究の位置づけ」McMaster University Dr. Jen Shih Chang - (3) 調査結果は、「科学技術動向」(月報)の特集、およびトピックスとして取りまとめた。
○ 特集 (8 テーマ)
2003 年 4 月号: 分散型電源を用いた電力供給システムの構築 - 我が国の地域特性に応じたシステムの構築を目指して - (橋本) 2003 年 5 月号: 革新的原子炉としての高温ガス炉の研究開発動向 (大森) 2003 年 9 月号: 原子力分野における人材育成の必要性・現状・課題(大森) 2003 年 10 月号: 世界における上下水道処理技術と水事業民営化の動向(浦島) 2003 年 11 月号: 地球監視・観測衛星の動向 - 衛星の縦列編隊飛行による監視・観測の高度化 - (小林客員研究官、浦島) 2004 年 2 月号: 化学物質の生態リスク評価に関する近年の動向 - 化学物質審査規制法の改正を迎えて - (五箇客員研究官、浦島) 2004 年 2 月号: パワーエレクトロニクスによるエネルギーインフラの強化に向けて(橋本) 2004 年 3 月号: 化学物質の健康影響評価における緊急の課題(青木客員研究官) ○ トピックス (16 報)2003 年 4 月 紫外線の照射により松の葉からNOx が発生することが報告される 米国で環境負荷物質排出ゼロを目指した石炭火力発電所の研究開発計画が提案される 2003 年 5 月 米国エネルギー省による CO2 地中貯留フィールドテストが行われる マグネシウム蓄電池のプロトタイプシステムが開発される 低温作動固体酸化物形燃料電池で 1kW 発電に成功、世界最高レベルの発電効率が達成される 2003 年 6 月 微小炭素粒子(すす)の大きな地球温暖化効果が報告される メタンハイドレート開発の経済性およびCO2排出量に関する研究成果が公表される 2003 年 7 月 電子ビームを用いた排煙中のダイオキシン類分解技術が開発される 砂漠大規模太陽光発電の実現可能性に関する報告 ―将来のエネルギー源としての可能性が示される― 2003 年 8 月 薬品を使わないバイオフィルム除去技術 2003 年 10 月 糖類を原料とする微生物燃料電池に関する報告 2003 年 11 月 米企業がバイオマス発電に適したスターリングエンジン発電機を発売 2003 年 12 月 高圧水蒸気でごみを肥料化・燃料化 ―ダイオキシン発生をゼロ、重金属の含有量も低減― 2004 年 1 月 最近の可視光線応答型光触媒の開発状況 2004 年 2 月 オゾンホールを巡る最近の状況 2004 年 3 月 エタノールからの新たな水素生成技術
4. 特記事項(学会など所外研究活動)
○招待講演(国内)
- 浦島、環境処理の最近の研究-低温プラズマ技術を中心として、出光興産主催
- 浦島、起業に結びつけるための産学官連携の進め方と現状、東京理科大学主催
- 浦島、プラズマフォーラム、東北大学主催
- 浦島、地球環境と未来へのポリシー、同志社大学主催
○招待講演(海外)
- 浦島、欧州エアロゾル学会
- 浦島、第 3 回環太平洋プラズマ技術国際シンポジウム
○学会賞
- 浦島、静電気学会野口賞
○共同研究、学会活動等
- 大森、科学技術振興機構 社会技術研究システム原子力安全Ⅰグループ非常勤研究員 (2001.4〜)
- 大森、日本原子力学会 社会・環境部会企画委員 (2003.4〜)
- 大森、日本原子力学会 関東・甲越支部企画委員 (2002.4〜)
- 大森、日本原子力学会「原子力エネルギーの外部性」研究専門委員会委員 (2003.4〜)
- 大森、科学研究費補助金若手研究B「原子力の社会受容性についてのマルチエージェントシミュレーション解析」 研究代表者 (2002.4〜2004.3)
5. 論文公表等の研究活動
○雑誌発表 (国内)
- 大森、水素エネルギー実用化と製造技術に求められる要件、化学装置 2003 年 4 月号 p87 - 92 (2003)
○雑誌発表 (海外)
- R. Ohmori, Systems Analysis of Public Opinion Toward Nuclear Energy Using Multi-agent Model, European Nuclear Society PIME2004, Barcelona, February (2004)
○著書
- 大森、科学技術動向研究センター編,「 図解水素エネルギー最前線」(分担執筆)、第 1 章 4 節「水素エネルギー導入の意義」(p18-23)、第 5 章「水素の製造」(p143-170),工業調査会, 2003 年 7 月
- 山本、「地球温暖化と日本 第 3 次報告 - 自然・人への影響予測 -」(分担執筆),古今書院, 2003 年 8 月