3. 国際会議
(1) 研究開発と『企業の境界』- バイオテクノロジーの産学連携と企業間提携-
- 会議名称:
- 研究開発と『企業の境界』- バイオテクノロジーの産学連携と企業間提携 -
- 開催期間:
- 2004 年 2 月 12 日 (木)
- 会場:
- 東京国際フォーラムホール D7
① 開催目的
今日では、どんな企業でも、研究開発に関わるすべてのプロセスを自前で完結させることは不可能であり、産学間、企業間でさまざまな連携や提携が起きている。企業の研究開発活動のどこまでを企業内でおこない、どこまでを他企業にアウトソーシングし、委託し、あるいは共同でおこなうのか、この問題は「企業の境界」の問題と呼ばれ、バイオテクノロジーなど科学技術の進歩が著しい分野では、今までになく重要な戦略課題となっている。研究開発は大企業でおこなわれているだけではなく、大学でもベンチャー企業でもおこなわれ、これらが一方では競争し、他方では連携して、技術革新を進めており、国にとっても、こうした連携が活発におこなわれることが、技術革新を維持するための必須の条件となってきている。こうした問題意識に立ち、この国際コンファレンスでは、産業、政府、大学、研究機関など幅広い聴衆の方々を対象に、国際的研究者やバイオテクノロジー産業実務家から、産学連携、企業間提携、ベンチャー企業などの実態や問題点について講演していただくことにした。
② 会議の概要
会議は、基調講演を含む5つのセッションから構成された。各セッションにおいて、日米欧からの産学連携と企業間提携に関する国際的研究者 6 名とバイオ産業実務家 2 名が発表を行った。一般参加者は約 200 名であった。
セッション構成は、次の通りである。
- セッション 1 基調講演
- ○ Richard R. Nelson(Columbia University, USA)
- 「市場経済、および共有資産としての科学」
- セッション 2 産学連携
- ○ Scott Shane (Case Western Reserve University, USA)
- 「大学発の起業」
- ○ Alan Hughes (University of Cambridge, UK)
- 「産学連携と技術成果-英国からの考察」
- セッション 3 企業間提携
- ○ Luigi Orsenigo (Bocconi University, Italy)
- 「バイオテクノロジーにおける企業の境界とネットワーク」
- ○ Ashish Arora (Carnegie Mellon University, USA)
- 「新薬開発におけるイノベーション能力と企業間協力」
- セッション 4 バイオ産業の現場から
- ○ 出上聡美 (リコンビナント・キャピタル社日本代表)
- 「バイオテクノロジー分野の戦略的提携」
- ○ 加納信吾 (株式会社アフェニックス代表取締役社長)
- 「技術移転の境界とバイオベンチャーの役割」
- セッション 5 科学技術政策研究所研究成果から
- ○ 小田切宏之 (科学技術政策研究所総括主任研究官、一橋大学教授)
- 「バイオテクノロジー研究開発と『企業の境界』 -調査結果-」
③ 会議の成果
いうまでもなく、バイオテクノロジーおよびその関連産業における技術革新は、急速に進展している。しかも、バイオテクノロジー関連産業は幅広い産業間への広がりを見せて、今後のわが国の経済成長に大きな影響を与えるものとみられている。このため、平成 13 年 3 月制定の科学技術基本計画でも重点4分野の一つとしてライフサイエンス・バイオテクノロジーが挙げられるなど、バイオテクノロジー産業の推進はわが国の科学技術政策・産業政策における大きな課題の一つである。このような時期に本国際コンファレンスを開催し、欧米から代表的な研究者または国内から実務者をお招きして講演をいただき、また、国内外の著名な研究者のみならず、行政・産業部門からも多数の専門家の参加をいただいたことは、わが国のこれからの科学技術政策の推進にとって、またバイオテクノロジー関連産業の発展にとって大きな意義を持つものと考えている。
(2) 俯瞰的予測調査 国際ワークショップ
「科学技術の中長期的発展に係る俯瞰的予測調査」の 1 年目終了に当たり、今後の調査に資することを目的として、海外有識者、ならびに調査関係者を招いての国際ワークショップを開催した。
- 会議名称:
- 俯瞰的予測調査 国際ワークショップ
- 開催期間:
- 2004 年 3 月 3 日 (水)、4 日 (木)
- 会場:
- 文部科学省ビル 10F 会議室
1.開催目的
昨今、科学技術政策立案へ寄与することを強く意識しつつ、重点化戦略の策定などに貢献する技術予測が行われている。わが国では、現在、科学技術政策研究所が中心となり、第3期科学技術基本計画 (2006 〜 2010 年) の策定に向けた科学技術の予測調査を実施している。その一環として、海外有識者ならびに予測調査にご参画いただいている専門家の方々を招いて、海外の科学技術予測活動に関する動向を把握するとともに、技術予測活動の経験や科学技術戦略に関する情報交換を行い、調査手法を深めていくための知見を得ることを目的として、本ワークショップを開催した。
2.会議の概要
会議は、1 日目は欧州における Foresight の最新動向、及び日本の動向に関する講演を一般公開で行い、2 日目は当所で実施している俯瞰的予測調査に関する関係者による討議を行った。
1 日目の参加者は 125 名、関係者による討議を行った 2 日目の参加者は 43 名であった。
会議の内容
○ 1 日目 (一般公開): 欧州における Foresight の最新動向、及び日本の動向に関する講演
- 英国における Foresight の最新動向
- Prof. Ian Miles (英国 マンチェスター大学)
- ドイツにおける FUTUR プロジェクトの最新動向
- Prof. Stefan Kuhlmann (独国 フラウンホーファー協会システム・技術革新研究所)
- 俯瞰的予測調査の概要
- 桑原 輝隆 (科学技術政策研究所)
○ 2 日目 (関係者): 俯瞰的予測調査の概要説明、及び関係者による討論
- デルファイ調査
- 横田 慎二 (科学技術動向研究センター)
- 急速に発展しつつある科学技術領域調査
- 伊神 正貫 (科学技術動向研究センター)
- 社会・経済ニーズ調査
- 浦島 邦子(科学技術動向研究センター)
- 注目科学技術領域の発展シナリオ調査
- 奥和田久美 (科学技術動向研究センター)
3.会議の成果
1 日目の会議を通じて、以下のことが認識された。
- 技術予測の実施に当たっては政策決定過程との連携が必要であり、この点を踏まえ予測プログラムを評価していくことが今後の発展・改善につながる。
- 現在実施中の日本の予測プログラムで取り組んでいるいくつかの手法を組み合わせるという新しい試みは、多角的に予測できる可能性があり大変興味深い。
- これまで行ってきたような専門家のコンセンサス調査だけでなく、将来はこうあるべきとの規範的な視点も含め、多くの人々の参加する議論等を通して、政策的プロセスにも関係づけられるようにしていく、いわゆる第三世代の技術予測がますます求められる。
- 海外の科学技術予測活動の動向把握、および技術予測活動の経験や科学技術戦略に関する情報交換を通じて、調査手法の知見をより一層深めることができた。
2 日目の会議は、「科学技術の中長期的発展に係る俯瞰的予測調査」の 1 年目終了に当たり、今後の調査に資することを目的として、海外の有識者、予測調査分科会委員、調査関係者をメンバーとした具体的かつ詳細に調査内容を検討するための議論を行った。
俯瞰的予測調査の概要について、説明がなされた後、活発な議論が行われた。
例えば、デルファイ調査については、技術課題についての社会的適用時期の定義をどういった観点から定めるかが重要なポイントとなる。また、急速に発展しつつある科学技術領域調査では、論文による研究領域の把握について、得られた結果が何を意味しているかの解釈に注意が必要で、研究領域やモデルの設定によっては得られる結果が異なる場合があろうということが示唆された。また、調査本プログラムを構成する 4 つの取りくみそれぞれの調査結果をいかに統合するか、といったことについても意見交換を行った。