1.はじめに

  総合科学技術会議を指令塔とした内閣府、文部科学省等から成る新しい科学技術行政体制の発足に伴い、当所も文部科学省の付属研究機関となりました。総合科学技術会議が国としての戦略を作り、予算等資源配分方針を示し、文部科学省等関係省がそれに基づく個別計画を作り、実施して、それをさらに総合科学技術会議がフォローし、評価していくという姿が実現した現在、このような戦略作りや、計画・評価の実施にあたって、迅速かつ的確な情報を提供するとともに、より有効な政策手段の選択肢を提示する当所の役割は益々重要となっております。このような中で最も効果的かつ効率的に成果を生んでいくために、国内外の関係機関及び関係者との有機的連携を更に一層強めていく必要がありますし、中長期的には政策研究を支える有能な人材をあらゆる分野から糾合し、当所が核となって育成していかなければならないと考えています。

  2000年度においては、総合科学技術会議をはじめとする関係機関と密接な連携を図りつつ、科学技術活動及びそれに関わる諸政策に関する基礎的調査研究を多角的かつ総合的に推進しました。最新の客観的、定量的データに基づいた我が国の科学技術活動の体系的分析を行った「科学技術指標(平成12年度)」、世界的注目を浴びている一般市民と科学技術等の専門家などが一堂に会する会議について調査した「コンセンサス会議における市民の意見に関する考察」、地方公共団体における研究評価の手法とあり方についての「地域科学技術研究会報告書」、科学技術人材の流動化促進に関わる調査資料「創造的研究者・技術者のライフサイクルの確立に向けた現状調査と今後のあり方」、日本の技術系ベンチャー企業に関する体系的実態把握のための調査資料「日本における技術系ベンチャー企業の経営実態と創業者に関する調査研究」、21世紀の科学技術がどのような進展をみせるかを展望した「21世紀の科学技術の展望とそのあり方」、近年注目を集めるようになったNPO(民間非営利団体)について調査した「科学技術とNPOの関係についての調査」、ベンチャー企業の株式公開(IPO)に着目して分析した「IPO企業とそうでない企業と」、「外国技術導入の動向分析(平成10年度)」、「日本の技術輸出の実態(平成10年度)」などの調査報告書を作成しました。

  また、2000年9月には三重県の伊勢志摩において「地域における知識創造と多様性」をテーマに第5回地域科学技術政策研究国際会議(RESTPOR2000)を三重県と共催し、地域における科学技術の開発と利用に向けた新たな課題について幅広い論議を行いました。11月には「起業家精神とナショナル・イノベーション・システム」をテーマに国際コンファレンスを行い、アメリカ、ヨーロッパ及び日本におけるこの分野の専門家が、それぞれの調査結果を持ち寄り、現状と課題を議論して新しいナショナル・イノベーション・システムを生み出すきっかけを作りました。

 本報告は、調査研究を中心とした2000年度における当研究所の活動概要を取りまとめたものであります。2001年度は新体制の中で科学技術の重要性の高まりと共に所内に新設された「科学技術動向研究センター」が本格的に活動を開始し、当所の役割は益々重くなってまいります。当研究所に対する皆様の一層のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

2001年6月
文部科学省
科学技術政策研究所 所長     間宮 馨

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