3.国際会議

技術予測国際コンファレンス
科学技術政策研究所、APEC技術予測センター及び(財)つくば科学万博記念財団の共催により平成12年3月7日(火)、8日(水)の2日間、都市センターホテル(東京都千代田区平河町)において以下の通り、技術予測国際コンファレンスを開催した。

1.テーマ

技術予測国際コンファレンス −新たなアプローチとその可能性−

2.開催趣旨

1990年代以降、欧州及びアジア諸国を中心とする世界各国において技術予測に関する関心が高まっており、各国の科学技術政策の立案や技術開発計画の策定のためにデルファイ法などによる技術予測が広く利用されるようになってきている。このような状況のなか、技術予測活動の成果の活用を含む新たな展開と一層の発展に資することを目的として、海外及び日本の予測に関する専門家が一同に会して意見交換を行う国際コンファレンスを開催する。

3.参加者

講演者:20名(日本を含む14カ国、2国際機関)
関係者(タイNSTDA代表団、技術予測委員会委員、科学技術政策研究所員等):約50名
参加者:のべ約300名(7日:約200名、8日:約100名)

4.概要

政策研所長挨拶、APEC技術予測センターの紹介のあと、セッション「各国の技術予測活動の現状」を3月7日に、セッション「国際的な予測調査」、セッション「新たに技術予測に取り組む国への提言」及びセッション「社会経済的ニーズを考慮した予測」を3月8日にそれぞれ実施した。

セッション「各国の技術予測活動の現状」
英国、米国、ドイツ、日本をはじめオーストラリア、カナダ、スウェーデン、ニュージーランド、オーストリア、韓国、中国の計11カ国の予測活動が発表された。主な内容は次の通りである。英国、米国、ドイツ、日本をはじめオーストラリア、カナダ、スウェーデン、ニュージーランド、オーストリア、韓国、中国の計11カ国の予測活動が発表された。主な内容は次の通りである。

・英国(Prof. John Wood Nottingham大学教授)
イギリスの第1回及び第2回調査の概要について報告された。第2回調査では、社会環境も重視したテーマパネルを設けるとともに、ネットワークを利用した知識プールを設けるなどより広範な人々の参加を目指している。
・米国(Dr. Bruce Don RAND科学技術政策研究所所長)
1990年代より実施されているcritical technology調査を中心とする米国の動向について紹介された。今後は個々の技術よりイノベーションシステム全体を見ることが重要となること等が提起された。
・ドイツ(Dr. Hariolf Grupp フラウンホーファーシステム・技術革新研究所副所長)
DelphiⅠ、Ⅱなどこれまでの調査の概要について報告された。今後の方向性として、デルファイと他の方法を併用するとともに技術のニーズ側を含む多くのアクターの参加を目指したアプローチFUTURが紹介された。
・日本(桑原輝隆 科学技術庁科学技術政策研究所第4調査研究グループ総括上席研究官)
過去のデルファイ調査の背景、位置付け及び第1,2回調査の評価を紹介するとともに、技術の主要分野のデルファイ調査での重要度の推移が国全体の研究開発費の動向と連動する傾向にあることを示した。

セッション「国際的な予測活動」
APEC技術予測センターよりこれまで実施されたプロジェクト、予測活動支援のネットワーク構築事例及び国際レベルでのデルファイ調査の概要等が、また、EU技術展望研究所よりEUでの予測活動の状況がそれぞれ発表された。主な内容は次の通りである。

・APEC技術予測センターの予測活動(Prof. Greg Tegart  APEC技術予測センター上級顧問)
多国間プロジェクトを進める上で、参加者の予測に対する深い理解、国内視野のみでなくAPECレベルの視野が必要であること、英語を用いることによる誤解の解消等の課題のあることが示された。
・EU技術展望研究所(ITPS)の予測活動(Dr. Gustavo Fahrenkrog ITPS未来プロジェクト長)
人口動態や社会動向を考慮しつつ、技術、競争力、雇用の3者関係について政策決定者を含めた議論が行われているFuture Projectの概要について紹介された。

セッション「新たに技術予測に取り組む国への提言」
近年新たに着手した南アフリカ、ハンガリー及びタイの経験等が発表されるとともに、今後技術予測へ取り組む国に対する専門家からの提言・意見交換が行われた。主な内容は次の通りである。

・発展途上国の視点から見た技術予測(Dr. Malee Suwana-adth 国立遺伝子工学・生命工学センター長)
タイにおけるNGOや政府による活動について報告された。予測に社会環境的側面を加えていくことが望ましく、生活者ニーズへの対応、地域専門家の取込みなどが今後の課題である。
・技術予測の権威、合理性、信頼性(Dr. Chatri Sripaipan APEC技術予測センター長)
予測実施に当たり、適切な専門家を参加させることが合理性と信頼性を高め、そして、これが権威につながるので、計画段階からそれらを確立する手法を検討することが重要である。

セッション「社会経済的ニーズを考慮した予測」
日本及び英国より社会経済的ニーズを考慮した予測への取り組みについて発表があり、今後の技術予測の方向性等について参加者も交えた討議・意見交換が行われた。

・ニーズアプローチを導入した技術予測(軽部征夫 東京大学国際・産学共同研究センター長)
科学技術政策研究所で実施した「国民ニーズと技術予測に関する調査」の概要とこの成果を踏まえて実施中の「第7回技術予測調査」におけるニーズアプローチの導入などの新しい試みを紹介した。
・第3世代の技術予測(Prof. Luke Georghiou Manchester大学教授)
予測活動は、専門家が科学技術について予測した第1世代、産学が科学技術と市場について検討した第2世代から、今後は、広範な社会の利害関係者を含め社会的要素をも取り入れた問題解決型の第3世代に移行することを示した。

5.まとめ

各セッションの議論を通じ、次のような共通認識が得られた。

  1. 技術予測の必要性、有用性についての認識は、先進国だけでなく途上国も含めて一致している。
  2. 技術予測の定義については、国により若干の違いは見られるものの、ほぼ共通の理解が成立している。
  3. 現在、技術予測(foresight)はダイナミックな展開の時期であり、各国で最良の手法を確立すべくさまざまな手法の組合せが試みられている。技術予測調査実施国は、他国の経験から学ぶ必要があり、意見交換、情報交換が重要となる。この意味で今回の会議は有意義であった。
  4. 世界における技術予測の展開に当たり、OECDのイニシアチブ(1994年の専門家会合)は第2世代に入るきっかけとなり重要な役割を果たした。しかし、現在5.技術予測はOECD圏外にも広がり世界的になるとともに、各国とも技術予測に社会経済的視点を結合させ、より有効な政策ツールとしていくことを指向している。



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