1.はじめに
新しい千年紀を迎えた現在、情報通信技術、ライフサイエンスなどの科学技術の新たな展開により科学技術と社会との結びつきは質的に変わりつつあります。さらに、地球環境問題、食料問題、エイズなどの難病問題等の人類が直面する多くの困難な課題の解決にあたって科学技術の果たすべき期待と役割はますます高まっています。科学技術全般に関する理論的、実証的な調査研究は、将来の適切な科学技術政策の展開にあたっての基本となるものであり、先見性かつ総合的な視点からの取り組みが重要であると考えております。
1999年度においては、このような認識のもと、科学技術政策展開の基礎となる諸事項について理論的・実証的な調査研究活動の展開を図ってまいりました。特に研究開発投資と経済成長の関係についての「研究開発関連政策が及ぼす経済効果の定量的評価手法に関する調査」、クローン技術の適用に関する法的規制についての「先端科学技術と法的規制(生命科学技術の規制を中心に)」、ゲノム研究と社会との関わりについての「ヒトゲノム研究とその応用をめぐる社会的問題」、我が国の技術系ベンチャー企業の実像の把握を目的とした「日本のベンチャー企業と起業者に関する調査研究」などの活動について、成果をとりまとめ報告書を作成しました。また、2000年3月に東京において「技術予測の新たなアプローチとその可能性」をテーマに国際コンファレンスを開催し、技術予測活動の成果の活用を含む新たな展開や今後の発展の方向性についての議論を行いました。さらに、20世紀における民間企業の経営と研究開発活動の総括を行い、21世紀の科学技術政策の展開を得ることを主な目的として1999年12月、「企業経営・技術戦略の変遷に関する研究会」を設置し、検討を開始しました。
本報告は、調査研究を中心とした1999年度における当研究所の活動の概要をとりまとめたものであります。当研究所は2001年1月、新たに設置される文部科学省の付置研究所に移行しますが、今後も科学技術の重要性の高まりとともに当研究所の役割は益々重くなっていくものと考えております。1999年度の活動もこのような流れの中で位置づけていただければ幸いです。当研究所に対する皆様方の一層のご支援、ご協力を改めてお願い申しあげます。
2000年6月
科学技術庁 科学技術政策研究所 所長 柴田 治呂 |