科学技術予測

科学技術動向研究センター

1. 科学技術予測とは

社会経済の発展にとって、科学技術の振興は重要な課題であり、このためには科学技術の発展の動向を長期的な視点から把握する必要があります。また、その成果は政府の政策立案の基礎資料となるのみでなく、産業における研究開発計画等の参考にも供されます。従って、科学技術予測は単に「いつ頃実現するか」を予測するだけではなく、科学技術の重要性、それぞれの科学技術に関しわが国が世界のどのような位置にあるか、研究開発上の問題は何かなど多面的な分析を行うものになっています。

1990 年代に入り、ヨーロッパを初め、世界各国が科学技術予測に取り組むようになりました。科学技術予測は、科学技術の専門家が中心となるものから、その他の社会的関係者 (自然科学以外の専門家、企業人、一般市民など) も参画して、社会・経済、生活などの将来像を話し合い、その実現のために科学技術はどんな貢献ができるか、すべきなのか、何が優先して取り上げられるべきなのかといった事柄について合意を得ることを目指す方向に向かっています。

2. 科学技術政策研究所における取り組み

我が国では、1970 年代の初め、当時の科学技術庁によりデルファイ法による大規模な技術予測が開始され、以降約 5 年ごとに継続的に調査が実施されてきました。90 年の第 5 回調査以降は、当研究所がその実施機関になっています。

当研究所では、2009 年度に、科学技術振興調整費により９回目に当たる「将来社会を支える科学技術の予測調査」を実施しました。将来的に目指す方向性へのイメージを持ち、想定されるグローバル課題・国民的課題を解決していくための科学技術を議論の中心に据え、既存分野の壁を取り払った学際的な議論を行いました。具体的には、分野名を排除して今後の社会の目標を念頭に課題抽出を行ったデルファイ調査、目指すべき将来への道筋をイメージした複数手法によるシナリオライティング、地域が自ら行った持続可能な地域社会の議論など、多面的かつ学際的なアプローチを組み合わせました。