科学技術イノベーション政策における重要施策データベースの構築[NISTEP NOTE No.8]中の通史・概説

1. 基本政策

1.2 科学技術政策に関連する予算の総額

(1) 関連予算の目標値

科学技術政策に関連する予算の総額については、平成4年の科学技術政策大綱、第1期から第4期に至る科学技術基本計画において目標値が示されている。
平成4年4月に閣議決定された「科学技術政策大綱」は、できるだけ早期に政府研究開発投資額を倍増するように努めることとしており、以下のように記載している。

    「時々の財政事情等を踏まえつつ、政府の研究開発投資額をできるだけ早期に倍増するように努める。」【科学技術政策大綱2.(3)】
第1期科学技術基本計画(平成8年7月閣議決定)は、期間中の「科学技術関係経費」の総額を17兆円にすることが必要だとして、以下のように記載している。なお、科学技術関係経費についての説明は後述する。
    「「科学技術政策大綱」(平成4年4月24日閣議決定)及び「構造改革のための経済社会計画-活力ある経済・安心できるくらし-」(平成7年12月1日閣議決定)にいう政府研究開発投資の早期倍増については、21世紀初頭に対GDP比率で欧米主要国並みに引き上げるとの考え方の下に、本計画の期間内に倍増を実現させることが強く求められている。この場合、平成8年度より12年度までの科学技術関係経費の総額の規模を約17兆円とすることが必要である。」【第1期科学技術基本計画 第1章Ⅴ】
第2期科学技術基本計画(平成13年3月閣議決定)は、期間中の「政府研究開発投資額」について、GDP名目成長率に関する一定の留保を付けた上で、24兆円とすることが必要として、以下のように記載している。この場合の政府研究開発投資については、白書や基本計画では定義が示されていないが、計測上は、国と地方公共団体の科学技術関係経費の合計額として扱われていた。
    「政府研究開発投資については、第1期基本計画期間中の対GDP比率の推移を見ると、欧米主要国は低下傾向が継続する一方、我が国は着実に増加し、現時点では、ほぼ同水準に達しつつある。しかしながら、今後とも欧米主要国の動向を意識し、かつ第1期基本計画の下での科学技術振興の努力を継続していくとの観点から、第2期基本計画期間中も対GDP比率で少なくとも欧米主要国の水準を確保することが求められている。この場合、平成13年度より17年度までの政府研究開発投資の総額の規模を約24兆円とすることが必要である。 (注)上記は、第2期基本計画期間中に政府研究開発投資の対GDP比率が1%、上記期間中のGDPの名目成長率が3.5%を前提としているものである。」【第2期科学技術基本計画 第1章6.(2)】
第3期科学技術基本計画(平成18年3月閣議決定)では、期間中の「政府研究開発投資」について、GDP名目成長率に関する一定の留保を付けた上で、25兆円とすることが必要として、以下のよに記載している。
    「平成18年度より22年度までの政府研究開発投資の総額の規模を約25兆円とすることが必要である。 (注)上記は、第3期基本計画期間中に政府研究開発投資の対GDP比率が1%、上記期間中におけるGDPの名目成長率が平均3.1%を前提としているものである。」【第3期科学技術基本計画 第1章6.】
第4期科学技術基本計画(平成23年8月閣議決定)では、期間中の「政府研究開発投資」総額について、GDP名目成長率に関する一定の留保を付けた上で、25兆円とすることが必要として、以下のように記載している。
    「官民合わせた研究開発投資を対GDP比の4%以上にするとの目標に加え、政府研究開発投資を対GDP比の1%にすることを目指すこととする。 その場合、第4期基本計画期間中の政府研究開発投資の総額の規模を約25兆円とすることが必要である(同期間中に政府研究開発投資の対GDP比率1%、GDPの名目成長率平均2.8%を前提に試算)。」【第4期科学技術基本計画Ⅴ.4】)
(2) 関連予算の名称
科学技術に関連する予算の概念としては、現在、「科学技術関係経費」として整理されている広義のものと、狭義のもの(「科学技術振興費」)の二つがある。
広義の概念としての「科学技術関係経費」は、国の予算(特別会計分を含む)のうち、大学における研究に必要な経費、国立試験研究機関等に必要な経費、研究開発に関する補助金、交付金及び委託費その他研究開発に関する行政に必要な経費等科学技術の振興に寄与する経費であるとされる 。但し、科学技術関係経費に相当する予算の名称や定義は、時期によって異なっており、その変遷は、これから述べる通りである。
狭義の概念としての「科学技術振興費」は、国の一般会計歳出予算の重要経費別予算の上で「科学技術振興費」として区分されているものである【昭和37年版白書2-1-5-2】。この定義は古く、白書では、昭和37年版の初出から現在に至るまで一貫している。

広義の概念に対応する予算の名称は、1965~1970(昭和40~45)年度予算(白書の昭和41~46年版)までは「科学技術振興関係費」、1971~1990(昭和46~平成2)年度は「科学技術関係予算」、1991(平成3)年度以降は「科学技術関係経費」となっている。

なお、科学技術白書においては、毎年、「○年版」として発行されているが、そこに掲載されている予算数値は前年度のものである。例えば、「平成23年版科学技術白書」は、平成23年7月に発行されており、掲載されている予算データは平成22年度のものである。

科学技術白書に掲載されている科学技術に関連する予算の名称
白書年次予算の名称構成内容備考
S41~46年版科学技術振興関係費・科学技術振興費
・科学技術振興費以外の研究関係費
科学技術振興費以外の研究関係費は科学技術庁の試算による。
S47~53年版科学技術関係予算(同上)
S54~63年版同上 ・科学技術振興費及びエネルギー対策費中の研究関係費
・科学技術振興費及びエネルギー対策費中の研究関係費以外の研究関係費
H1~3年版同上・科学技術振興費
・科学技術振興費以外の研究関係費
H4~7年版科学技術関係経費(同上)
H8~H23年版同上 ・科学技術振興費
・その他の研究関係費(一般会計)
・特別会計中の科学技術関係経費

注:表スペースの関係上、昭和を「S」、平成を「H」と略すことがある。以下においても同様。 出所:科学技術白書各年版より作成

(3) 集計範囲の変更等
科学技術白書に掲載されている科学技術に関連する予算の集計方法の変更経緯を、白書の記述によって辿ると以下のようになる。 表にみるように、ときどき集計方法の変更があり、白書の掲載数値は過去に遡って修正されている。
科学技術白書に掲載されている科学技術に関連する予算の集計方法の変更経緯
白書年次集計方法の変更に関する記述
S51年版昭和46年度にさかのぼって試算方法を一部変更したので、昭和46〜49年度の予算額は昭和49年度科学技術白書の数字と一致しない。
S52年版昭和48年度より試算方法を一部変更したので、昭和48〜50年度予算額は50年度科学技術白書の数字と一致しない。
S53年版試算方法を一部変更したので、昭和51年度科学技術白書の数字と一致しない。
S57年版エネルギー対策費は、昭和53年度に新設された予算分類上の主要経費区分であるが、ここでは便宜上、この分類を昭和52年度についても適用し、算出した。
H9年版科学技術基本計画の策定を踏まえ、平成8年度以降、対象経費の範囲が見直されている。
H14年版第2期科学技術基本計画の策定を踏まえ、平成13年度以降、対象経費の範囲が見直されている。
H17年版平成16年度の一般会計中の科学技術関係経費のうち、国立大学法人等については、運営費交付金及び施設整備費補助金に自己収入を含めた総額から算定している(この額は、国立学校特別会計(平成15年度限りで廃止)における科学技術関係経費に相当する)。
H18年版平成16年度、平成17年度の一般会計中の科学技術関係経費のうち、国立大学法人等については、運営費交付金及び施設整備費補助金に自己収入額を含めた総額から算定している(この額は、国立学校特別会計(平成15年度限りで廃止)における科学技術関係経費に相当する)。
H19年版第3期科学技術基本計画の策定を踏まえ、平成18年度に、集計の対象が見直された。

出所:科学技術白書各年版より作成

年度によっては、詳細な記述がある。例えば、昭和40年版白書では、「科学技術振興関係費(広義)」について、「科学技術振興費に、それ以外の国立大学における科学技術関係研究費および関係省庁の経費のうち科学技術関係の研究費として扱うことが適当と認められるものを加え」たものとしている。また、国の試験研究機関の経費であって科学技術振興費に計上されていないものの例示として、防衛庁技術研究本部、国土地理院、地磁気観測所、および地震観測所等の経費を挙げている。

その後の白書では、具体的な記載は減っている。

科学技術基本計画の策定(1996(平成8)年度)以降は、基本計画の策定、改訂の度に集計対象が見直されている。