科学技術イノベーション政策における重要施策データベースの構築[NISTEP NOTE No.8]中の通史・概説

2.重点研究開発の推進

2.5 ナノテク・材料

材料分野の研究は、昭和31年の金属材料技術研究所の設立、昭和41年の無機材質研究所の設立などの長い歴史を持つが、昭和50年頃からは比較的大型の研究開発プロジェクトの対象としても取り上げられるようになった。昭和56年版白書では、構造用セラミックスの研究開発、超耐熱合金の開発等について記載されている。

その後、磁性材料、エネルギー分野のための構造材料、超電導材料、水素吸蔵合金等の研究開発が行われてきた。昭和61年のスイスIBMチューリッヒ研究所における発見を契機として高温超伝(電)導の研究に重点が置かれた。

材料分野は、科学技術庁の金属材料技術研究所、無機材質研究所、通商産業省の繊維高分子材料研究所、機械技術研究所、化学技術研究所、電子技術総合研究所(後に産業技術総合研究所に再編)と多くの研究機関で実施されてきた。なお、文部科学省では、平成13年4月、金属材料技術研究所及び無機材質研究所が統合し、独立行政法人物質・材料研究機構が設置されている。

ナノテクノロジーという視点での取り組みは、2000年代に入ってからである。平成12年2月、米国クリントン大統領がナノテクノロジーに関する国家的戦略(ナショナル・ナノテクノロジー・イニシアティブ)を発表した他、各国政府においても、ナノテクノロジーへの取組の強化が図られている。

材料分野については科学技術会議が昭和62年に「物質・材料系科学技術に関する研究開発基本計画について」を答申しており、以後の総合答申等でも重視されている。また、科学技術庁の航空・電子等技術審議会でも審議が行われてきたが、同審議会は平成13年に科学技術・学術審議会へと再編されている。

平成13年度から第2期科学技術基本計画では、「ナノテクノロジー・材料分野」は4つの重点分野の1つとされた。

近年、ナノテクノロジーの安全性について懸念が表明されるようになっており、文部科学省においては、科学技術振興調整費「ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究」や「ナノテクノロジー影響の多領域専門家パネル」(平成19年版白書に記載)により、ナノ物質の特性評価等の研究を推進するといった取組みを進めてきた。