科学技術イノベーション政策における重要施策データベースの構築[NISTEP NOTE No.8]中の通史・概説

2.重点研究開発の推進

2.6 エネルギー

エネルギー分野の研究開発については、白書では、原子力エネルギー研究開発が多く取り上げられている。昭和33年版から昭和49年版までのエネルギーに関する白書の記載は、大部分が原子力研究開発利用に関するものであった。原子力については、昭和31年に原子力委員会、日本原子力研究所、原子燃料公社が発足した。昭和38年には原子力委員会より「国産動力炉の開発のすすめ方」についての基本方針が示され、さらに動力炉・核燃料開発事業団の設置と、国産動力炉の開発加速がなされた。

我が国の核燃料サイクルの技術開発のため、使用済燃料の再処理施設の国内建設が必要であることが昭和42年版白書において述べられている。その後、動力炉・核燃料開発事業団により茨城県東海村において我が国で最初の再処理工場を建設された(昭和50年版白書)。さらに、軽水炉でのプルトニウム利用(プルサーマル)計画も積極的に推進された(昭和61年版における記載)。

昭和49年の原子力船「むつ」の放射線漏れを契機に、原子力安全に関する行政の責任体制を明確にするため、昭和50年度には科学技術庁に原子力安全局が新設され、昭和53年度には原子力安全委員会が発足した。行政庁による一貫した安全規制及び原子力安全委員会によるダブルチェックの体制により、厳格な安全規制を実施するとともに、安全研究を推進するなど安全対策の強化に努めた(昭和56年版白書記載)。さらに、平成11年9月に発生したウラン加工工場における臨界事故の教訓を踏まえ、原子炉等規制法の一部改正法及び原子力災害対策特別措置法の可決・成立が記されている。

原子力以外のエネルギーについては、第一次石油ショック後の昭和49年版白書において、化石燃料の利用技術開発及び非枯渇エネルギーの研究開発に関する「新エネルギー技術研究開発計画」による、石油を中心とするエネルギー体系を新しいエネルギー体系に代替するための長期計画とテーマ別中期計画のほか、太陽エネルギーや地熱エネルギーなどを活用する「サンシャイン計画」と省エネルギーを推進する「ムーンライト計画」が示された。

平成23年3月には東日本大震災が発生し、東電福島第一原発の事故が発生した。これを受けて、原子力政策の見直しの議論が行われるとともに、原子力損害賠償のための制度が整備されるとともに、被災地域における復興のため福島再生可能エネルギー研究開発拠点(仮称)などの事業が講じられた。