科学技術イノベーション政策における重要施策データベースの構築[NISTEP NOTE No.8]中の通史・概説

2.重点研究開発の推進

2.4 環境

環境分野について、昭和40年代には、公害防止の観点での取組がなされていた。この時期の我が国の急速な経済発展は、公害問題を生じ、国民の健康や自然環境問題等の社会問題が顕在化するにつれ、その対策として科学技術が注目されるようになった。昭和38年に、衆議院科学技術振興対策特別委員会は公害防止の促進に関する決議を行った。昭和42年には公害対策基本法が成立した。昭和41年からは通商産業省の大型工業技術研究開発制度(大プロ)において脱硫技術の開発が開始されている。

昭和46年の科学技術会議第5号答申では、環境公害対策等の高度成長時代に発生したひずみへの対応とライフサイエンス等の次代の技術革新の芽となる科学技術の強化が提言された。また、昭和46年には環境庁(現・環境省)が発足し、昭和49年には国立公害研究所(現国立環境研究所)が設置され、公害防止等に関する試験研究が強化された。深刻化した公害問題に対し規制が強化され、これに対応して排出抑制対策技術の開発が進み、公害防止設備の投資が大幅に増大した。また、自動車の排出ガスの規制基準も強化された。

科学技術会議は、昭和52年度の第6号答申(長期的展望に立った総合的科学技術政策の基本について)において、「②環境、安全問題の解決など望ましい生活環境の整備に資する科学技術」を重点分野の一つとして位置づけた 。

1980年代後半からは、地球環境問題に関する関心が大きくなってきた。昭和62年3月には航空・電子等技術審議会に地球科学技術部会が設置された。平成2年度には、「地球科学技術に関する研究開発基本計画」が内閣総理大臣決定されたほか、地球環境保全に関する関係閣僚会議において「平成2年度地球環境保全調査研究等総合推進計画」(平成2年6月)が定められた。 平成4年4月に閣議決定された科学技術政策大綱では、「地球・自然環境の保全」、「エネルギーの開発及び利用」、「資源の開発及びリサイクル」、「食料の持続的生産」の各分野を、人類の共存のための科学技術と位置付けた。

地球環境研究に関連して、海洋観測、気象観測、極地観測などの研究開発も推進され、「地球シミュレータ」を活用したシミュレーション研究も進んだ。地球環境保全については、様々な国際的枠組が整備されるようになった。

平成5年には、国は生物の多様性に関する条約を受諾し、平成7年度には「生物多様性国家戦略」を関係閣僚会議において決定した。

2000年代からは、バイオマスについての関心が大きくなり、平成14年度には「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定された。

第4期科学技術基本計画からは、環境分野は、「グリーンイノベーションの推進」の一環として推進されることとなった。