科学技術イノベーション政策における重要施策データベースの構築[NISTEP NOTE No.8]中の通史・概説

3.科学技術システム改革

3.1 科学技術人材

科学技術人材に関する施策は多岐にわたっている。

昭和30~40年代においては、科学技術人材の需給に関する検討がなされていることが特徴である。科学技術会議の諮問第1号答申および国民所得倍増計画において、科学技術者の不足が予想されたため、理工学系学生増員計画が策定され、昭和36年以来、40年度の増員を含めて約3万人が増員され、35年当時の定員の約2倍となっている。昭和40年代の白書では、研究者の処遇改善も挙げられている。

平成になってからは、大学院学生の支援、若手研究者への支援が重点となった。特に、第2期基本計画期間中には、若手研究者向けの競争的資金の枠が急増した。同時に、人口減少に加えて若者の科学技術離れが指摘されるようになり、優秀な科学技術人材の確保が課題とされるようになった。

第1期科学技術基本計画では、人材の流動性の確保が重要であると位置づけたことから、1990年代後半には、人材の流動性に関する施策が取り組まれた。国立試験研究機関や大学において任期付任用制の導入が図られた。また、「ポストドクター等1万人支援計画」として、日本学術振興会の特別研究員制度等によりポストドクターの雇用機会を拡充された。なお、その後、ポストドクターについては、博士号取得者の産業界での活躍促進が重視されるようになり、平成18年度には「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業」が開始された。

平成15年度頃から、女性研究者の処遇改善、外国人研究者への処遇改善への取組が進んだ。

大学における人材育成については、平成17年度に中央教育審議会から答申「新時代の大学院教育―国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて―」がなされ、大学院教育の実質化(教育の課程の組織的展開の強化)と国際的な通用性、信頼性の向上のための方策について提言がなされた。平成18年3月、文部科学省は、「大学院教育振興施策要綱」を平成18年3月30日に策定した。

その他、人材関連での施策としては、高等学校・高等専門学校における取組、技術者の養成・確保、科学技術コミュニケーターの養成、ものづくり人材の養成などがある。

なお、技術者倫理については、「法的・倫理的・社会的課題への対応」の項目で扱う。