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2006 年 3 月 17 日
世界物理年日本委員会
会長 有馬朗人

「世界物理年記念シンポジウム」のお知らせ

拝啓

ますますご清栄のこととお慶び申しあげます。

アインシュタインの業績 (1905 年) を記念して設定された「世界物理年」については、わが国においては、物理学のみならず天文、生物物理、電気・電子、機械などの学会をはじめ、関係するさまざまな研究機関、民間企業、事業者団体のご協力・ご尽力により、別添に示しますように数多くの事業を実施してまいりました。科学技術に対する関心の低下が懸念されている中で、これらの活動により、科学者、技術者の側から社会に対して積極的に働きかけることの意義が理解されてきたものと評価しております。

さて、わが国が「科学技術創造立国」をめざしていくためには、この「世界物理年」を一年の活動をもって終結させるのではなく、次の活動に継続していくことが必要であると思います。

そこで、世界物理年日本委員会では、下記のとおり、「世界物理年記念シンポジウム」の開催を計画いたしました。日本委員会が、昨年、活動の開始に際して発表した「企画書」では、科学と技術について社会一般の人びとが持っている理解度を高めていく活動、次代の科学と技術を担う若い人たちに対する活動、そして科学者と技術者のモラルを再確認する活動を掲げています。今回のシンポジウムでは、この三つのテーマに即して、さまざまな分野の方々にご参加をいただきご意見をいただくことで、今後の活動に向けての出発点にしてまいりたいと考えております。

つきましては、多くの方々のご参加をいただきたく、茲にご案内申しあげます。

敬具
1.日時:2006 年 4 月 8 日 (土) 10:00〜17:00
2.場所:一橋記念講堂 (東京都千代田区一ツ橋 2-1-2 (学術総合センター))
3.参加者:一般の方々、学会関係、研究者など 500 名 (入場無料)
4.プログラム:別添のとおり(別添 1別添 2別添 3)
5.主催:世界物理年日本委員会
共催:宇宙航空研究開発機構、科学技術振興機構、日本原子力研究開発機構、理化学研究所、国立科学博物館、日本物理学会、応用物理学会、日本物理教育学会、日本生物物理学会、日本科学技術振興財団
後援:文部科学省、経済産業省、日本経済団体連合会、NHK、日本天文学会、電気学会、日本機械学会、電子情報通信学会、日本工学会 (申請中のものを含みます)
6.事務局:世界物理年日本委員会事務局: 清田、中野 電話: 03-3212-4785
しゅくみねっと㈱: 高橋、雑賀 電話: 03-5468-0770
以上
別添 1. プログラム

「世界物理年記念シンポジウム」

〜 万人のための科学 〜

敬称略・順不同
<10:00〜10:10>

1. 挨拶:

北原 和夫 (世界物理年日本委員会運営委員長)
松田 岩夫 (科学技術政策担当大臣)
<10:10〜10:30>

2. 基調講演:

霜田 光一 (東京大学大学名誉教授)
<10:30〜12:30>

3. 特別講演:

松井 孝典 (東京大学学院新領域創成科学研究科教授)
茅 陽一 (地球環境産業技術研究所長)
平林 久 (宇宙航空研究開発機構宇宙情報・エネルギー工学研究系教授)
米沢 富美子 (慶應義塾大学名誉教授)
<休憩・昼食 60 分>

4. パネル討論:

<13:30〜15:00>
1) 前半: 「社会の中の科学と技術」
榊裕之 (東京大学生産技術研究所教授)
鈴木 晶子 (京都大学教育学部教授)
髙柳 雄一 (多摩六都科学館長)
田島 俊樹 (日本原子力研究開発機構関西研究所長)
立花 隆 (ジャーナリスト)
柘植 綾夫 (総合科学技術会議議員)
本田 和子 (前お茶の水女子大学長)
黒川 清 (日本学術会議会長):司会
<休憩 20分>
<15:20〜16:50>
2) 後半: 「次の世代を育てる理科教育」
北原 和夫(国際基督教大学教養学部教授)
小舘 香椎子(日本女子大学理学部教授)
銭谷 眞美(文部科学省初等中等教育局長)
谷 重男 (経済産業省大臣官房審議官(産業技術担当))
中村 日出夫(品川区立荏原第一中学校長)
丹羽 健夫(河合文化教育研究所主任研究員)
ピーター・フランクル (数学者、大道藝人)
種市 健 (科学技術と経済の会副会長)
有馬 朗人 (日本科学技術振興財団会長): 司会
<16:50〜17:00>

5. まとめ:

有馬 朗人 (世界物理年日本委員会会長)
以上
別添 2. 開催趣旨

1905 年にアインシュタインが現代物理学の基礎となる 4 編の論文を発表して以来、現代物理学は飛躍的な発展を遂げました。そして物理の知識は、化学、生物、地球科学及びその融合分野などすべての理学、さらには電気・電子、機械など工学の分野や医学にも幅広く応用されています。豊かになった私たちの生活の基礎には、応用された物理が縦横無尽に深く根を張っています。また、これによって私たちの世界観、人生観も大きく変容し、精神活動にも多大な影響を受けていることを見逃すことはできません。

この「奇跡の年」から百周年に当たる 2005 年を、国際連合が「物理の国際年」とすることを決議して、世界中で「世界物理年」の行事が繰り広げられてきました。日本においても関連学会や団体・機関のご協力により「世界物理年日本委員会」が設置され、科学者・技術者だけでなく、社会一般の人たちや若い学生・青少年に向けたさまざまな記念行事が行われ、科学の面白さや興味深さ、奥深さを伝えてきました。本シンポジウムは、「世界物理年」の掉尾を飾る記念行事です。

この 1 年間、私たちは、社会との対話を進めていくために、次の三つのテーマをもって、さまざまな行事を計画し、実施してきました。

一つは、科学と技術について、社会一般の人びとが持っている理解度を高めていく活動です。科学と技術の成果が社会の中で、人びとの生活を左右する力を持つゆえに、科学者と技術者の側から、積極的かつ持続的なコミュニケーションに努力していく必要があるとの考えによるものです。

二つ目は、次代の科学と技術を担う若い人たちに対する活動です。先進国では若い人たちの科学と技術に対する関心が低下する傾向にあります。わが国では、最近、2006 年度の国立大学入学試験で理工系学部の出願倍率が過去最低であることが明らかになりました。このまま推移すれば、科学技術の分野を担う次の世代は減少し、科学技術分野における日本の国際的競争力の衰退は避けられないものと思われます。専門家の育成にとどまらず、深い科学的素養を持ち、感覚的にではなく科学的・論理的に思考と意思決定ができ、人類が直面する地球環境の危機の問題について適切に判断し対処できる青少年を育てるための「教育」が必要です。私たちは、科学と技術は、それ自体、人びとの知的好奇心を掻き立てる面白さや創造性を喚起する魅力を十分に備えていると確信し、また教育とは、若い人たちが持つ潜在的な能力を十分に引き出していくことであると考えています。「世界物理年」では、全国物理コンテスト「物理チャレンジ 2005」をはじめ学生や青少年を対象としたさまざまな行事を行いました。

三つ目は、科学者と技術者のモラルの再確認です。最近、研究者や技術者に対する社会からの信頼を裏切るような事件が起こっています。「世界物理年」では、科学者と技術者の責任と自覚を促す活動も行ってきました。

このシンポジウムでは、「世界物理年」の締めくくりとして、科学を真の意味で「万人のための科学」(Science for All) とすることをめざして、「社会の中の科学と技術」、「次の世代を育てる理科教育」をめぐって、さまざまな立場の方々に率直なご意見を披瀝していただき、今後、採るべき具体的な方策を広く議論していきたいと思います。

以上
別添 3. 世界物理年日本委員会が企画、実施した主要な行事
No.日時・【場所】イベント名内容対象者
1 01/12〜17
【ユネスコ本部】
新春のイベント パリ・ユネスコ本部で開催される「Launch Conference of the International Year of Physics」に、日本代表の学生を派遣する。 物理学専攻の
大学生 5 名
2 03/21・22
【北の丸・科学技術館】
春休みのイベント めざせ! 未来のアインシュタイン ―対話で知る物理の最前線―
大学教員が中心になって、実験、展示と講義により、物理の最前線を小中高校生に語りかける。23の実験展示ブース、13 のトーク。
小中高校生を中心に
約 5,000 名
3 04/23
【丸の内・MY PLAZA ホール】
春のイベント 物理・ひと・未来 〜自然の美から考える21世紀の科学〜
・記念式典
・記念講演(ノーベル物理学賞受賞者:Jerome I. Friedman博士、Steven Chu博士、楊振寧博士)
・東京宣言
・「科学と藝術の出会い」講演とパネルトーク
約 350 名
3-2 04/24
【一ツ橋ホール】
春のイベント
(第 2 日)
21 世紀を切り拓いていく若人へ 〜ノーベル賞受賞者との対話〜
講師:Jerome I. Friedman博士 物理学賞
        Torsten N. Wiesel 博士 医学・生理学賞
        楊 振寧 博士 物理学賞
高校生・大学生: 第一部: 約 350 名、第二部: 90 名
4 07/04
【新宿文化センター】
夏のイベント アインシュタインをめぐるパネルトークと新作能「一石仙人」上演
多田富雄作の「一石仙人」を通じて、「東京宣言」の底流をなす「科学の役割と世界の平和」を考える。
トーク:野村四郎、大西仁、北澤宏一、北原和夫
能上演:清水寛二、味方玄、安田登、野村四郎ほか
900 名
5 07/28〜08/02
【北の丸・科学技術館】
夏休みのイベント 「青少年のための科学の祭典 全国大会」 16 の「サイエンストーク」、学会からの研究者が答える「研究者に聞こう科学相談」などを設置
学協会に所属する大学・研究機関・企業の一線の研究者が小中高校生に直接語りかける。
64,000 名
6 08/12〜08/15
【岡山・閑谷学校】
物理の甲子園 物理チャレンジ 2005
仁科博士の生誕地岡山で、物理の理論と実験のコンテストを中心に、第一線の研究者による講演とSPring-8の見学、参加者の交流を行う。
高校生ほか 100 名
7 10/15
【葛飾・船堀タワーホール】
秋のイベント
(東京)
究める科学・活かす技術
4 つのセッションにおける9つの特別講演、4つのセッションに分かれての高校生・大学生のための懇談セミナー、大学、研究所、企業からのパネル展示など。
一般の人たち、学生
1,000 名
8 10/31〜11/2
【南アフリカ・ダーバン】
WCPSD World Conference on Physics and Sustainable Development
Energy and Environment, Physics and Health, Physics Education,
and Physics and Economic Development
研究者派遣
講演、展示報告
9 11/09・10
【中之島・大阪市立科学館・阪大中之島センター】
秋のイベント
(関西)
自然科学の基礎を訪ねる
最新の科学と技術の基礎を、一般の人たち、大高中学生に理解できるような教室を開き、展示、解説、講義などを行う。併せて、大高中学生が、科学館での日頃の研究成果を披露する。
学生
5,000 名
10 12/13
【東京オペラシティコンサートホール】
冬のイベント アインシュタインメモリアル 〜弦が結ぶ音楽と科学のハーモニー〜
ヴァイオリニストの千住真理子さんと、ストラディヴァリゥスの音色を追求するジョセフ・ナジバリ先生を中心に、ヴァイオリンの音色を楽しみながら、ヴァイオリンの弦から「統一理論」の最新の学説である「ひも理論」までを語る。
一般の人たち
1,100 名
11 2006/ 04/08
【一橋記念講堂】
再び春のイベント 世界物理年記念シンポジウム 〜万人のための科学〜
「世界物理年」の締めくくりとして、科学を「万人のための科学」とすることをめざして、「社会の中の科学と技術」、「次の世代を育てる理科教育」をめぐって、さまざまな立場の方々から率直なご意見を伺う。
一般の人たち
を含め 500 名
12 4/19〜22
【オーストリア・グラーツ】
FPS Forum "Physics and Society"
「世界物理年2005」の活動を今後も持続させていくために、活動の報告及び協力の方法を検討する。
研究者派遣