データ・情報基盤
NISTEPデータ・情報基盤について

1.概要
 NISTEPデータ・情報基盤は、文部科学省のSciREX事業(科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業)の一環として、科学技術イノベーションに関する政策立案や政策研究に活用する各種データ・情報を体系的かつ継続的に整備・公開しているwebページです。本基盤では、法律や個人情報に配慮しつつ、データや成果を可能な限り公開する方針としています。

2.目的
NISTEPデータ・情報基盤は、以下の三つの機能を果たすことを目的としています。
(1) 政策形成プロセスをより合理的なものにするための基盤
(2) 科学技術イノベーションに関する政策研究の基盤
(3) 国民に対する説明責任を果たすための基盤
これらのうち、(1)に関しては、政策立案のための客観的根拠(エビデンス)の強化、政策議論の質の向上、政策の評価や検証の基礎、などを支える基盤となることを意図しているとともに、大学や研究機関などの個別機関における経営・運営戦略の立案等にも役立つ基盤となることも目指しています。(2)については、政策研究における科学的方法論の強化に加えて、データの充実により、多様な学問領域からの科学技術イノベーション政策研究への研究者の参入の促進を意図しています。(3)については、国民に対して科学技術イノベーションが社会にもたらす効果や影響を分かりやすく示し、また、政府の科学技術への投資や科学技術イノベーション政策の成果を示すことや理解増進を目指しています。

3.構築方針
NISTEPデータ・情報基盤の構築に際しては、多様なデータ・情報のなかからニーズが高く、本事業で取り組むことが効果的であると考えられるものを重点的に整備しています。データ・情報基盤に対する具体的なニーズについては、専門家による委員会により検討するとともに、政策研究者・専門家等を対象としたアンケートとインタビュー調査を通じて把握に努め、データ・情報基盤のニーズと方向性を明らかにし、それに基づき、次のような構築方針を設定しました(参考資料[1])。
(1) ミクロデータの重視
政策の効果の測定や分析、研究開発やイノベーションの構造的な分析には、従来、主に用いられてきたマクロデータのみでは不十分であり、機関レベル等のミクロデータに基づく要因分析が必要となっています。
(2) 複数データベースの接続の重視
政策担当者や政策研究者がデータ・情報を活用して取り組む課題は、個別のデータベースで対応できるものから、複数のデータベースを用いた横断的なものになりつつあります。それに対応するためには、複数のデータベースを相互に接続することが重要であり、データ照合手法、不完全データの扱い、匿名化処理などの技術的な問題に取り組む必要があります。
(3) 政策への応用を想定
データ・情報基盤は、単に科学技術イノベーションの状況を把握・分析するための手段に留まらず、科学技術イノベーション政策の効果や影響を分析できるようなものであることが必要です。
(4) システム的なアプローチ
科学技術イノベーションは様々な機関・組織の間の相互作用によって成り立っており、データ・情報を整備する際には、ナショナル・システムとして捉える体系的なアプローチが必要です。特に、政府の科学技術投資や政策の効果や影響を把握するためには、インプット、アウトプット、アウトカムという流れに沿ってデータを整備していくことが重要です。

4.関連する動向
 科学技術イノベーション政策に関して、客観的根拠(エビデンス)に基づいて合理的に政策の形成・推進を行うことを重視する考え方は、近年、世界的に広がっています。
このような動向は、米国において2005年に、当時の大統領科学顧問であったジョン・マーバーガー米国科学技術政策局長が、科学政策の決定をサポートするために必要なデータ、ツール、方法論を生み出す実務的コミュニティの構築の必要性を提起したことが大きな契機となったと言われています(参考資料[2])。米国では、それに引き続いて2007年に、科学技術イノベーション政策に関する学術研究促進のためのプログラムであるSciSIP(「科学イノベーション政策の科学」)が開始されました。また、2009年に制定された米国復興・再投資法の要請で、SciSIPの研究の基礎となるデータ・情報基盤としてSTAR METRICSが整備されています。これは、大学に所属する研究者ごとの公的研究資金、研究成果、支出に関わるデータをこのプロジェクトに参加する大学間で統合し、さらに省庁が保有するデータとリンクさせるもので、これにより、公的研究開発投資の大学研究への影響評価を可能にすることを意図したものです。
 米国以外でも、例えば、欧州連合(EU)は、欧州における科学イノベーション政策研究のための研究インフラとしてRISIS (Research infrastructure for science and innovation policy studies) というプロジェクトを実施しています。RISIS は既存データ基盤のネットワーク化や共同研究の推進により新しい視点を与えられたデータ基盤の構築を目的にしています。
 我が国においては、経済・社会の状況を多面的な視点から分析・把握したうえで、課題対応等に向けた有効な政策を立案する「客観的根拠に基づく政策形成」の実現に向けて、文部科学省が前述のSciREX事業(科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業)を平成23年度(2011年度)より実施しています。
 また、最近では、平成30年6月15日に閣議決定された政府の「統合イノベーション戦略」において、「エビデンスに基づく政策立案/大学等法人運営の推進」に一節が当てられるなど、エビデンスに基づく政策の重要性が益々高まっています。

参考資料
[1]. 科学技術政策研究所,「『科学技術イノベーション政策のための科学』におけるデータ・情報基盤構築の推進に関する検討」,NISTEP NOTE(政策のための科学)No.3,2012年11月.http://hdl.handle.net/11035/1176
[2]. 科学技術振興機構研究開発戦略センター,調査報告書「米国『科学イノベーション政策のための科学』の動向と分析」,CRDS-FY2015-RR-04,2015年11月.https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2015/RR/CRDS-FY2015-RR-04.pdf