科学技術と社会

第2調査研究グループ

私たちの社会は、良くも悪くも先端科学技術と無縁ではいられません。しかし、平成 11 年(1999 年)に世界 38 カ国の中学生を対象として実施された「第 3 回国際数学・理科教育調査」の第 2 段階調査(TIMSS-R)の結果を見ると、わが国の生徒(中学 2 年生)の成績は数学、理科共に上位グループに位置しているにもかかわらず、数学や理科の好き・嫌いについての質問では、好きである度合いが世界の中で最下位グループに位置しています。平成 14 年 12 月に公表された、国立教育政策研究所の「教育課程実施状況調査」でも、理科の好きな生徒の数は学年が増すにしたがって減少していることが確認されています。また、当研究所において大人(18 歳以上)を対象に平成 13 年に実施した「科学技術に関する意識調査」(NISTEP REPORT No.72)でも、科学技術に関連する関心度及び科学技術の基礎概念理解度が欧米諸国と比較して全般的に低い水準にあることが判明しています。以上の調査結果を総合すると、先端的な科学技術の研究開発と一般の人々の科学技術に対する関心・知識・理解度との乖離がますます広がってしまいかねないという懸念を抱かざるを得ません。

そこで私たちは、子供から大人までに見られる、いわゆる「理科離れ」の傾向を改善すべく、その原因と対策を探るための調査を行っています。理科離れの原因を探り、科学博物館等の教育施設や専門家の講演会、研究所の一般公開などの啓蒙教育活動の効果を調べ、科学技術者と一般市民とのコミュニケーションの促進を図るための施策等を検討するための調査です(下図参照)。

図 1. 科学技術の理解増進を促進するための調査研究模式図

(科学技術政策研究所において作成)

科学技術が私たちの生活にもたらした大きな恩恵の1つは、医療技術の飛躍的な進歩でしょう。このことに関しても、私たちは無関心でいるべきではありません。今や私たちは、自分の命をどのように自己管理すべきかの選択を迫られる社会に生きているからです。しかも最先端医療技術は、生命倫理という大きな難題を私たちに突きつけています。移植医療や生殖医療はどのような形でどこまで許されるべきものなのでしょうか。また、それらに関する基礎研究は、どのような理念と範囲内で行われるべきものなのでしょうか。この問題は、ひとりひとりの命に関わる問題です。したがって、専門家まかせにするのではなく、ひとりでも多くの人が知識と情報を共有し、できるだけ多くの価値観が生かされる形で研究や治療が実施されるような制度を確立する必要があります。これは、科学技術の理解増進に関する問題であると同時に、どのような社会制度を策定すべきかという問題でもあるのです。

下記の図は、生命倫理に関する諸問題を社会に開かれた形で統治するための制度(ガバナンスシステム)について、私たちが考えている1つのモデルです。

図 2. 最先端医療及び生命倫理に関する社会的ガバナンスシステムの 1 モデル

(科学技術政策研究所において作成)

< 最近の報告書 >

  1. (1) 科学技術理解増進に関するもの
  2. (2) 生命倫理に関するもの

< 関連 HP >

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