科学技術動向調査研究


 2001年1月に内閣府総合科学技術会議が設置され、従来以上に戦略性を重視する政策立案が検討されています。科学技術政策研究所では、戦略策定に不可欠な、重要科学技術分野の動向に関する調査・分析機能を充実・強化するため、2001年1月に新たに「科学技術動向研究センター」を設立しました。本センターでは、第2期科学技術基本計画に示されたライフサイエンス、情報通信等の重点分野の最新動向に係る情報の収集や今後の方向性についての調査・研究に、下図に示すような体制で取り組んでいます。本センターのメンバー構成比率としては、エレクトロニクス、エネルギー、材料、製薬等の民間企業からの出向者が半数、各省庁および財団法人や大学等の公的機関からの出向者が半数です。また、アドバイザーとして、大学教授などを「客員研究官」として各ユニットに配置しております。センターがとりまとめた成果は、適宜、総合科学技術会議、文部科学省へ政策立案に資する資料として提供します。センターの具体的な活動は以下の3つです。

科学技術動向研究センター組織図

具体的な調査研究活動は、(1)科学技術専門家ネットワークによる科学技術動向情報の収集・分析、および(2)重要科学技術分野・領域の動向の調査研究からなり、その概略を図2に示します。なお、センターにおける科学技術動向調査研究の成果は、「科学技術動向(月報)」などとして取りまとめ、文部科学省における研究開発計画策定や、総合科学技術会議における科学技術基本計画の検討をはじめとする科学技術戦略の立案など、政策立案の際の基礎資料となります。また、これらの成果は科学技術関連の行政部局における研究評価、政策評価などの参考資料になります。なおセンターは、その成果を民間企業など行政部局以外へも幅広く公開していきます。

動向センター業務

(1)科学技術専門家ネットワークによる科学技術動向情報の収集・分析

重要科学技術分野についての動向分析を的確に行うためには、多岐にわたる科学技術領域における最新の情報の収集が不可欠です。今日の科学技術は高度に専門化しているため、情報の収集に当たって、第一線の研究現場にいる研究者など高度の専門知識を持つ専門家の協力を得る必要があります。センターでは、インターネットを利用して、各分野における産学官の多数の専門家(以下「専門調査員」という)で構成する情報ネットワークを構築し、国内外の科学技術の動向に関する情報の収集・分析を行っています。

このネットワークを通じて、国内外の学術会合、学術雑誌などに発表される研究成果をはじめとする科学技術活動に関して、注目すべき動きを把握するとともに、今後の科学技術の方向性などに関する専門調査員の意見を広く収集しています。

センターは、専門調査員から提供された情報に、センター自らが収集した情報を加えて、分野別に整理・分析を行い、文部科学省、総合科学技術会議などに随時提供しています。さらにこれらの情報の主要点を「科学技術動向(月報)」の第1部のトピックスとしてとりまとめ、当研究所Webサイトで公開しています。

(2)重要科学技術分野・領域の動向の調査研究

今後、国として取り組むべき具体的な重点事項、研究開発課題などを明確にすることを目的として、重要な科学技術分野・領域を対象に、それぞれの分野の進展を考える上で何がキーテクノロジーとなるのか、何がネックとなるのかなどの調査・分析をしています。調査研究テーマの選定にあたっては、行政部局の動向、社会・経済的ニーズなども踏まえ、重要と考えられる技術・課題などを絞り、可能な限り、重点的かつ集中的に取り組むこととしています。

調査研究にあたっては、センター自ら情報の収集・分析を行うとともに、外部専門家を招いた講演会の開催、外部専門家により構成する調査研究委員会の設置・開催など、多くの専門家の意見を集めることにも留意します。

この調査研究の結果については、「科学技術動向(月報)」の第2部の特集記事としてとりまとめ、当研究所Webサイトで公開しています。

また、重要な科学技術分野・領域ごとの科学技術水準を欧米先進国と比較し、我が国の科学技術がどのような位置にあるのかを調査・分析します。この調査は、文部科学省関連部局や総合科学技術会議が実施する科学技術水準に関する調査研究と連携をとりつつ実施します。

以上の調査研究の成果は、当研究所における他の調査研究活動と同様に「NISTEP REPORT」、「調査資料」などとして取りまとめます。

科学技術動向 (月報)

科学技術トピックス 特集
専門調査員からの情報にセンターの取材による情報を追加した、最新の技術動向 注目すべき動向について、センター独自の取材や専門家を招いての講演会等により情報を収集、分析

科学技術トピックス (例: 2001年12月号)

ライフサイエンス分野
  • 治療的血管新生療法
  • ほ乳類体細胞における特異的な遺伝子抑制法が開発された
情報通信分野
  • マイクロマシン技術の高周波回路への応用 (RF-MEMS)
環境分野
  • 第9回世界湖沼会議が大津市で開催される
  • 廃棄物新時代に向けての提言 -第12回廃棄物学会研究発表会から-
ナノテク・材料分野
  • リン酸およびアンモニウムイオンセンサーに関する動向
エネルギー分野
  • 燃料・動力源・駆動方式の組合せにおける自動車の運転システム効率比較
製造技術分野
  • 新しいプロピレンオキサイド製造法
社会基盤分野
  • 日本都市計画学会が「新世紀日本の都市づくりビジョン」を提言
  • 西南日本で発見された地殻底低周波微動
フロンティア分野
  • 海洋深層水の食品利用の現状

特集で取り上げたテーマ (2001年4月号〜2002年1月号)

<ライフサイエンス分野>

糖鎖研究の展望

<環境・エネルギー分野>

米国の再生可能エネルギー導入状況

<政策動向等>

米国の2002年度政府R&D予算に関する大統領案の対前年変化率

<情報・通信分野>

移動通信システムの発展

<材料・製造分野>

カーボンナノチューブの応用が期待される用途例
用途 CNTを用いる利点 開発状況
走査型プローブ顕微鏡(SPM)探針 より微細構造の観察が可能など多くの利点 実用化段階
電界放出ディスプレイ(FED)用エミッタ 発光ディスプレイ低消費電力化が可能 試作段階
水素吸蔵材料 高い水素吸蔵能力を示す燃料電池用水素吸蔵材料 基礎検討段階
リチウム二次電池負極 従来材料より大容量の負極材料 基礎検討段階
電界効果トランジスタ 集積回路の高密度化などが可能 基礎検討段階
複合材料 高性能な樹脂等の強化、伝導性付与材料 応用検討段階