科学技術基本計画の達成効果の評価のための調査
(基本計画レビュー)





基本計画レビュー調査プロジェクト・チーム




我が国の科学技術政策は、1995年11月に制定された科学技術基本法に基づき、5年ごとに策定される科学技術基本計画に沿って推進されています。1996〜2000年度にわたる第1期科学技術基本計画、2001〜2005年度にわたる第2期科学技術基本計画期間中、政府は、科学技術創造立国に向けた取組みを実施し、政府研究開発投資は順調に伸び、研究開発システムの改革も進むなど、科学技術政策は大きく変化してきています。

2006年度からはじまる第3期科学技術基本計画について政府等において討論をする際には、これまでの科学技術基本計画の実施状況、成果、達成効果、問題点などを体系的に分析・評価することが必要不可欠です。また、国民への科学技術分野の公的投資拡大に対するアカウンタビリティー(説明責任)の観点からも科学技術基本計画の評価は重要です。このような状況から、それまでほとんど行われていなかった本格的なフォローアップ(追跡調査)が求められていました。

このため、当研究所においては、2003及び2004年度に、科学技術振興調整費により、第1期及び第2期科学技術基本計画の達成状況・達成効果の評価のための調査(以下、「基本計画レビュー調査」といいます。)を行いました。この調査の目標は、海外との比較分析をしつつ、これまでの研究開発投資の実態や投資の有効性を検証するとともに、研究開発システム改革の定着状況、効果等を分析し、さらに、これらの問題点や経済社会等に与えた影響を明らかにすることです。その概要は以下の図のとおりです。

図:第1期・第2期科学技術基本計画の構造と達成効果評価

第 1 期・第 2 期科学技術基本計画の構造と達成効果評価

また、この調査に関して、科学技術政策研究・評価関係の海外専門家12名、国内専門家7名の参画を得て、2004年9月13〜14日に、国際ワークショップ:「基本計画の達成効果の評価のための調査」〜総合的科学技術政策による効果のベンチマーキングに向けて〜を開催しました。

この調査は、以下の8つのサブテーマから構成されます。

この調査の主な成果をいくつか紹介します。詳細については、NISTEP REPORT No.83〜No.93をご覧下さい。

政府研究開発投資(科学技術関係経費)は増加し、伸び率は一般歳出と比較しても高く、米欧との比較においても差が縮まっている。2期も引き続き増加し、一般歳出と比較しても伸び率は高かったが、その伸びはやや鈍化した。一方、米国が大きく伸びているため、日米の比率は基本計画以前の状態近くまで後戻りしている。

図:日・米・EU-15の政府科学技術関係予算比較
図:日・米・EU-15の政府科学技術関係予算比較
出典:
「基本計画の達成効果の評価のための調査〜主な成果〜」NISTEP REPORT No.83
被引用度(論文1編当たりの被引用回数)上位10%論文の筆頭著者に対するアンケート(以下「トップリサーチャー調査」とする)によれば、研究環境は多岐にわたり改善されているが、「研究時間」は少なくなったとの結果が得られている。

図:研究環境変化の認識:基本計画以前(1991〜1995年)と現在(2004年)の比較
図:研究環境変化の認識:基本計画以前(1991〜1995年)と現在(2004年)の比較
出典:
「基本計画の達成効果の評価のための調査〜主な成果〜」NISTEP REPORT No.83
研究環境が整備されていく中で、知的成果が上がっている。論文は世界におけるシェアを伸ばしている。

図:日本・米国・EU-15の論文数シェア、被引用数シェアの推移
図:日本・米国・EU-15の論文数シェア、被引用数シェアの推移
出典:
「基本計画の達成効果の評価のための調査〜主な成果〜」NISTEP REPORT No.83
大学から産業界への技術移転をみると、制度的に20年程先行している米国及びイギリスと比べ、個人ベースの連携に依存した知的財産の活用を主軸としてきた我が国では組織ベースの本格的成果は未だ顕在化していない。

図:産学連携活動の国際比較
図:産学連携活動の国際比較
注:研究開発費については、日・英と米国の間で人件費等の取扱いに差があることに留意する必要がある。
出典:
出典:「基本計画の達成効果の評価のための調査〜主な成果〜」NISTEP REPORT No.83
科学技術の経済・社会・国民生活へのインパクトの実現に関して、公的研究開発・支援の寄与について8分野の実現技術、未実現技術あわせて32事例について調査したところ、基礎研究に対する公的研究開発・支援、技術の発展・流れに合わせた公的研究開発・支援、基盤技術・技術インフラに関する公的研究開発・支援、調達を含む政策連携によるインパクト実現の促進の4類型があることが分かった。

図:基礎研究に関する公的研究開発・支援がなされた事例
図:基礎研究に関する公的研究開発・支援がなされた事例
出典:
「基本計画の達成効果の評価のための調査〜主な成果〜」NISTEP REPORT No.83
図:技術の発展・流れに合わせた公的研究開発・支援がなされた事例
図:技術の発展・流れに合わせた公的研究開発・支援がなされた事例
出典:
「基本計画の達成効果の評価のための調査〜主な成果〜」NISTEP REPORT No.83