我が国製造業の国際競争力規定要因に関する調査研究

担当: 第1研究グループ

研究活動の概要

戦後の我が国の経済発展は、鉄鋼・自動車・エレクトロニクスに代表される各種製造業の飛躍的な発展によって支えられてきました。ところが、バブル崩壊後、特に 90 年代後半以降、経済発展の原動力としての我が国製造業の国際競争力に大きな翳りが見られるようになりました。たしかに、トヨタ自動車に代表される自動車産業などは、依然として高い競争力を誇っています。しかしながら、エレクトロニクス産業、中でも同産業の中核的な役割を果たしている半導体産業は、図に示されているように、90 年代初頭に世界生産額シェアの過半を占めていたにもかかわらず、現状では 20% 前後のシェアに低下しています。※ 1 同じようなことは、エレクトロニクス産業を代表する家電産業についても当てはまります。

本年度の調査研究では、上記のような現状認識に基づき、我が国製造業の国際競争力規定要因に関する調査研究を理論的・実証的な視点から実施します。その際、最も重点を当てるのは、半導体産業を構成する半導体デバイス・製造装置・材料の三つの産業です。これらの半導体産業に注目する大きな理由は、今後の我が国製造業の競争力に大きな影響をもたらすと考えられる次のような普遍的な特性を備えていると考えられるからです。

  1. a) 典型的なサイエンス型産業 (サイエンスの成果が産業に直結する速度が非常に速い産業) であると共に直面する市場が極めて地球規模である。
  2. b) イノベーション (市場的成果をもたらす革新的な諸活動) の実現に、広汎な企業間の戦略的提携や効果的な産学官のコラボレーションが不可欠である。
  3. c) 科学者・技術者・技能工等が保有すべき専門・統合的知識・ノウハウの高度化・広範囲化が著しい。
  4. d) 企業レベルでの競争力が国家レベルでの高等教育制度、産業政策、労働市場特性等々によって特徴づけられる National Innovation System によって大きく影響される。
地域別半導体出荷額の推移
出典:
SIA (Semiconductor Industry Association)