STI Hz Vol.6, No.3, Part.9:(ナイスステップな研究者から見た変化の新潮流)株式会社aba代表取締役 宇井吉美氏インタビューSTI Horizon

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  • DOI: https://doi.org/10.15108/stih.00227
  • 公開日: 2020.09.25
  • 著者: 白川 展之、佐藤 博俊
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.6, No.3
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

ナイスステップな研究者から見た変化の新潮流
株式会社 aba 代表取締役 宇井 吉美 氏インタビュー
-ケアテックで人がつい介護したくなる世界観を実現するデバイスとシステムを創りたい-

聞き手:科学技術予測センター 主任研究官 白川 展之
企画課 業務係長 佐藤 博俊

家族介護者となった経験から介護者側の負担を減らしたいという思いを持ち、千葉工業大学在学中に介護者を支援するロボット開発を行う学生プロジェクトから在学中の2011年に(株)abaを起業した宇井氏は、人工知能を活用しおむつを開けずに行う(はい)(せつ)チェックに用いることができる製品Helppad(ヘルプパッド)を製品化した。現在業界初となる「においセンサ」で便と尿を検知し、要介護者に負担を与えない人工知能を利用した排泄センシングを行う製品の販売及び次世代製品の開発を進めている。創業後約10年を経て同社は、ベンチャーキャピタルからの資本調達や大規模国家プロジェクト等を得て大学発の研究開発型ベンチャーとして飛躍の時期を迎えた。宇井氏は、介護者の立場を深く知るため、介護施設で介護職も兼務しながら、現場の経験を技術者として直接フィードバックする研究開発を行い、さらに、起業の過程で博士号の重要性に気付き取得するなど、独自の研究開発を貫く。また、経営者として多忙な中、2人の子供の出産を経るなど研究開発・経営・育児をパワフルに行っている。大学発ベンチャーの起業を経験した宇井氏に、今後の経営見通し、ベンチャー経営者にとっての博士号の意味、公的支援や資金調達の効用、研究者・技術者のワークライフバランスといった多様な観点から我が国の研究開発型ベンチャーとその支援の在り方について話を伺った。

株式会社aba 代表取締役 宇井 吉美氏((株)aba提供)

株式会社aba 代表取締役 宇井 吉美氏
((株)aba提供)

宇井氏経歴等:
千葉工業大学在学中に介護者を支援するためのロボット開発を行う「学生プロジェクトaba」を発足。その後、プロジェクト内の開発を製品化するべく、法人化。株式会社abaを設立。より介護者の立場を深く知るため、小規模多機能型居宅介護施設「ユアハウス弥生」にて介護職を兼務するなど、現場での経験を技術者として活かす研究開発を行う。
 2007年 千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科入学
 2010年 学生プロジェクトaba開始
 2011年 株式会社aba代表取締役
 2012年 千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科卒業
 2019年 千葉工業大学工学研究科未来ロボディクス専攻博士(工学)

業界初「においセンサ」で要介護者に負担を与えない人工知能を利用した(はい)(せつ)センシング

- 介護事業へのAI(Artificial Intelligence)・IoT(Internet of Things)の導入事例は多く見られますが、する側・される側の負担が多く、またIoT化が難しい「排泄」に注目し、中でもにおいをセンシングするビジネスとして挑戦し続けるabaの姿勢には期待が寄せられています。現在開発している製品について教えてください。

業界初となる「においセンサ」で便と尿を検知し、要介護者に負担を与えない人工知能を利用した排泄センシングにより、おむつからの尿便()れやおむつ交換の空振りを減らし、必要なときに必要なケアを届けるお手伝いをする「ヘルプパッド(Helppad)」とその最新製品を開発しています。最先端のロボット技術を生かし、介護現場と向き合うabaと長きにわたり介護業界を支えてきたパラマウントベッドの協業により生まれた製品です。それぞれの技術と経験をもとに「ヘルプパッド」は誕生しました。機器は身体に装着することなくベッドに敷くだけで、装着型の製品と比べて肌への負担が少なく、しかも尿のみならず便の排泄も検知できます。我々は介護現場から尿と便のどちらも機械を身に着けずにわかるようにしてほしいと言われていました。その両立を考えた結果、ベッドに敷くシート型で、においをセンサで検知するタイプにたどり着いたのです。センサに物質が付着したときの抵抗値の変化を見ることで「においがしている」ことがわかる仕組みです。

テストについては、プライバシーに気をつける側面もあり最初は開発者自らでテストしデータを取って、検知データを積み上げていきました。実験データとセンシングデータの間で膨大な実験の積み重ねが要求される、いわばノウハウの塊なので後発の追随を許さないものになっています。

図表1 製品:排泄ケアシステムHelppad(ヘルプパッド)とにおい吸入口(右)全景(左)図表1 製品:排泄ケアシステムHelppad(ヘルプパッド)とにおい吸入口(右)全景(左)図表1 製品:排泄ケアシステムHelppad(ヘルプパッド)とにおい吸入口(右)全景(左)

Ⓒ(株)aba/パラマウントベッド(株)
出典:(株)aba提供資料

図表2 排泄ケアシステムHelppad(ヘルプパッド)

図表2 排泄ケアシステムHelppad(ヘルプパッド)図表2 排泄ケアシステムHelppad(ヘルプパッド)
出典:(株)aba提供資料

介護職の「おむつの中が見たい」の声をきっかけに学生起業

- 株式会社abaにより開発された第一製品は、これは介護者の負担を減らす観点で大変有効なものです。においのセンシングに着目した理由はなぜでしょうか。

千葉工業大学に進学し、大学時代に特別養護老人ホーム(特養)での経験が今の事業につながっています。実習の一環で初めて特養に行った際、トイレの中で要介護度が高い人に対して介護職員がおなかを押す現場を目の当たりにしたのです。もう壮絶で、すごい叫び声が聞こえます。もちろんこれは虐待ではなく便を出すための正統な介護行為なのですが、介護現場を見たことがなかった自分はその場で涙が出るほどでした。思わず職員の方にこれは本人が望んでいることなのかと聞いたところ、「(意思疎通が難しいため)わからない」と言われたのです。この背景には、在宅介護のときに自宅で便失禁があると大変なので、施設に預けたときになるべく出すようにと家族から要望がありました。下剤を飲ませ腹圧をかけて少しでも便を出すようにしているのです。

このとき、改めて介護者支援を考えるきっかけになりました。私が介護支援ロボットを作りたいことを伝えると、「おむつを開けずに中身の状態が知りたい」と要望されたことがきっかけになり、既に立ち上げていた学生起業プロジェクトabaで研究テーマとして扱い、その後法人化しましたが10年以上、排泄関連の研究開発を続けています。介護現場の声を、データで翻訳して伝えることこそが、abaのミッションだと思っています。

第2の創業期を迎えた(株)aba

- 大学発の起業プロジェクトから法人化、さらにはベンチャーキャピタルからの第3者割当て増資、さらに、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(第2期)」に採択など着実に実績を積み重ねてきています。今後の会社の見通しについて教えてください。

創業後約10年を経て会社は、正社員10名、業務委託も含めると30〜40人規模に社員も増え、新たな成長フェーズを迎えています。最初は他人の迷惑も顧みずやる気のみといった感じでした。学生起業のプロジェクトを「バージョン0」とすると、製品化の過程で、大手企業と協業する中で営業、マーケティング、資金調達など、開発以外の社内業務も一手に引き受けていた時代が「バージョン1.0」です。法人化して8期9期を迎えるに当たり、外部からのファンドも入れた現在は企業として新たな段階“バージョン2.0”の時期を迎えています。

例えば、経営者として、大企業との提携を進めるにしても、自社が不利にならないように、優秀な弁護士とともに契約を進めるといった、知財・法務戦略も意識するようになりました。法務や知財は、後でもめないために積極的に活用すべきことだと思います。大手企業では、中小企業、ベンチャーとの協業を進めオープンイノベーションを進めようとしても、契約書をみると下請企業に向けたひな形で、著しくベンチャーに不利益であったりすることがよく見られるからです。(補足しますと、大企業の法務担当者であれば通常使用する契約書ひな形は業務委託契約書なので、彼らに悪気があるとは思っていません。重要なのは、そういった大企業側の事情を理解し、ベンチャー側が適切に先方とやりとりする法務力です。)

こうしたことは、起業家共通の悩みでもあります。このため、公的資金やアワードを獲得して委員等として各省庁の委員会等でベンチャー支援施策について周りの起業家とともに意見を言うようにしています。新たな社会貢献にもつながっています。

起業してわかった博士号の価値:PDCAを検証する力と大学発ベンチャーの技術力の裏付け

- 経営者として繁忙な中、創業後に博士課程に入学、千葉工業大学長尾徹教授の下でデザイン科学の研究で2019年3月に博士号を取得されました。大学発ベンチャーというと、通常では大学で研究した研究シーズを生かして起業するといったパターンが一般的です。また我が国では博士課程への進学が減っていることも科学技術・イノベーション政策における課題となっています。こうした中、起業された後に博士号を取得しようと考えたのはなぜでしょうか。

元々は、全くの偶然でした。学生とともに「介護機器・共同研究プロジェクト」を実施していました。(こちらのプロジェクトは、初年度NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)からの助成も受けた案件でした。)そうしていたところ、先生たちが「無償では申し訳ない」という話になり、何らかの方法はないかということで大学の身分に必要な資格を考えることになり、博士課程への進学を勧められたというのがきっかけでした。

しかし、博士号を取得する訓練を受ける中で、研究開発型ベンチャーの同社を経営・発展させていくにはエンジニアリングとデザインの双方について高度な知見を有していることが欠かせないと考えるようになりました。というのも、起業家と研究者では全く頭の働かせ方が違います。経営でのPDCA(P計画、D実行、C評価、A改善)プロセスのうち、起業家は極論、Dばかりを行います。一方研究では、Dのモノづくりは必ずしも必要ではなく、シミュレーションでも構わないわけですが、PとCのプロセスを重視します。論理的にしっかり詰めて考える癖がついたことが博士号を取得してよかったところです。ベンチャーキャピタルから資本導入を考える経営戦略を立案する上で、論理的に思考する習慣は、会社をバージョンアップしていく段階で非常に役に立ちました。

また、モノづくり型の研究開発型ベンチャーにとって、代表が博士号を持つことは、対外的な信用にもつながるというのが研究開発型の起業家仲間と一致した見解になっています。

伴走型ベンチャー支援の意義:ベンチャーキャピタルと公的資金

- ベンチャーキャピタル、個人投資家への第三者割当て増資、NEDO事業などにより資金調達をされておられます。ベンチャー支援の在り方ですが、特にベンチャーキャピタルと公的支援について、その役割と意義についてどのように考えておられますか。

ベンチャーキャピタルは、リアルテックファンド(代表:永田 暁彦氏)とMistletoe株式会社(ファンダー:孫 泰蔵氏)の支援を受けています。エクイティファイナンス(投資家に新規に株式を発行する形で資金調達をする方法)に関して、どちらも(長期の)技術開発に関して理解のあるファンドです。この2社の組合せでバランスよく支援を受けられていると思います。

株式会社ユーグレナ 取締役副社長も務める永田 暁彦代表のリアルテックファンドは、製造業、モノづくりにこだわりがあります。キャッシュフロー管理、製造、原価管理といった製造業としての基本をしっかりとたたき込む支援姿勢です。いわば、技術的課題解決の「虫の目」を養うことができます。一緒に支援されている投資(ポートフォリオ)先の株式会社ラングレス(代表取締役CEO山入端佳那氏)、株式会社ニューロスペース(代表取締役社長CEO小林孝徳氏)、株式会社未来機械(代表取締役三宅徹氏)、企業群との交流も話ができるだけでも有益です。

ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏の弟で情報系のシリアル・アントレプレナー(連続起業家)である孫 泰蔵氏が創業したMistletoeからは、経営者として必要な世界観や哲学やアートといった大きなテーマを日々議論させていただいています。世界を俯瞰する大きな視野、いわば「鳥の目」を養うことができます。

こうした、起業家のコミュニティに属することでグローバルな世界一線級の方からの情報や人脈にもアクセスをすることができます。このように得られるリソースが違いますし、相互補完的な支援を受けられているといえます。

公的支援のNEDOの助成・委託事業などは、安定した研究開発を行うことができるので、経営の安定につながっています。その他の受賞は、ファンドなどを獲得する上でのシグナリングになりました。

ただし、これまで様々な授賞等をしてきましたが、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)のナイスステップな研究者は少し違いました。従来の授賞等は企業としてのものでしたが、今回の受賞は私個人の研究者・技術者として表彰であり、これまでの達成点を振り返るきっかけになりました。

研究者・技術者のワークライフバランス:出産後5時間後に経営会議に出席、在宅ワークでもキャリアを中断せずに働き続けられる会社・社会を

- 先ほどの博士課程の進学と並び女性研究者・技術者にとってキャリアパス上の課題に子育てがあります。博士号の取得と2人目の子供の妊娠、さらにはベンチャーキャピタルからの出資の最終意思決定と、様々なライフイベントが重なる中、企業経営者と子育てを両立しておられます。こうした経験から、ワークライフバランスについてどのように考えますか。

介護者支援の技術開発を行う基本姿勢に戻る話になりますが、自分らしく生きる、よりよく生きることを支えることにあります。

ところが、日本の介護業界では本末転倒なことが起きています。介護労働者は、3年以内に7割が離職するといわれていますが、現在も変わっていません。家族介護でも同様です。年間10万人もの介護離職者がいるといわれています。他者の“よりよく生きる”を支えるはずの側が疲労して自身の人生をつぶしてしまう本末転倒なことが一般的になっています。これでは、介護制度自体がサステイナブルではありません。介護現場を支えるのは、介護未経験者たちなのです。このため、どんな人でも介護ができる仕組みの研究開発が大切なのです。

他者を支えるという意味では、高齢者、子供、さらには障がい児といった場合でもこのケアする側の問題は共通です。支援の内容と種類や程度にグラデーションがあるだけです。

この意味で、私の会社では、家族介護者や子育てママさんが働き続けられる、キャリアが止まらないようにするという勤務環境を整えるようにしています。遠隔勤務などは、新型コロナウイルス感染拡大防止対策が一般化する以前から実施してきました。何より、自分自身が率先垂範してキャリアを続けることが可能だということを示していきたいと考えています。実際、子供の食事を作りながらオンラインのウェブ会議をするといったことは普段からしています。また、2人目の子供の出産時にも、アドレナリンが出て興奮していたこともあり、9時に出産して5時間後のリアルテックファンドの担当者らも出席している経営会議にオンラインで出席して驚かれたこともあります。ちなみに、今回のインタビューの調整をした広報担当の管理部部長の加治屋は、子供4人と親のダブルケアをしていました。

出産後、私は40日しっかり産休で休み、それから徐々に復帰しました。今の日本では、育休は3年間まで認められていますが、キャリアを積んでいく中で完全に休むか働くかという0か1かの選択を迫られます。しかし、それでは職場では浦島太郎状態になってしまいます。他の企業のことはわかりませんが、それよりは、気軽に1〜2時間、週1〜2日といったように徐々にできる範囲でリハビリしていく方が現実的だと思います。

新型コロナウイルスの流行で、遠隔勤務もウェブ会議も一般化してきましたので、逆にこうした社会変化が加速された実感があります。

日本の強み:研究開発型・ディープテックベンチャーの振興

- 起業で多くみられるIT系のベンチャーと比較的長期間の研究開発が求められる研究開発型(いわゆるディープテック)のベンチャー起業はどのように違うと思われますか。介護の中でも排泄という一番IT化が難しい取り組みにチャレンジしている立場から、教えてください。

私たちの手掛ける排泄センサに関しては、実用レベルに使えるようにするための機器の実証が大変です。大企業ですと事業化の観点からこの分野で10年単位の研究開発は無理です。また、そもそも排泄は忌避されるもので、できればやりたくないものだと思われている。そこがビジネスチャンスです。私たちの場合は、他社との競争というよりも、自分との闘いです。同じ介護関連でも離床センサなどは、技術的にも簡単にできますが、別のIoT機器で資本力を持つ企業が競争力を持ってしまいます。中小企業が手掛けたら負けてしまいます。

これに対して、IT系のベンチャーは大変です。ビジネスモデルが模倣されやすく、となると、資本力、人脈、リソースの競争になり、コンピュータサイエンスで起業しようとすると、スピード勝負ということになります。

私にはモノづくりのペースが性に合っています。私は、やりたくはないが誰かがやらなければならないことをじっくりやりたいのです。

スピード勝負ではなく、泥臭いことを地道にやるということは極めて日本的です。小説の下町ロケットのようなイメージです。日本では、GAFAが生まれる気がしないが、新たなソニーやパナソニックが生まれるのは納得できるといっている方もいます。実はこうしたディープテックのベンチャーの振興は、米国や他の国々に比べて日本の得意とする領域なのではないでしょうか。

abaのメンバーとともにabaのメンバーとともに ((株)aba提供)

((株)aba提供)

abaが考えるケアテックの未来「人がつい介護したくなるようなシステム・デバイスづくり」

- また今後の長期的なビジョン・夢を教えてください。

介護にまつわる暗いムードを払拭する製品を通じて「人がつい介護したくなってしまう」ようなシステム・デバイスを創っていきたいと考えています。ドラえもんの「お医者さんカバン」の介護版を作るイメージです。介護現場では、入浴、食事など様々な課題がありますが、このうち排泄は介護現場における最大の課題です。

個々人の排泄タイミングの制御はできませんが、そのパターンはわかります。しかし、手段がないため排泄パターンの把握は十分なされていませんでした。排泄は介護現場における最大の課題であり最高のソリューションでもあります。排泄タイミングがわかると、このパターンに合わせて、投薬、水分・食事、レク活動、睡眠、入浴といった介護プランを作成することができます。すると、そのタイミングに合わせて投薬の量、内容、時間を見直し、水分摂取量を調整することで一定のパターンが把握できます。さらに、失禁する心配のない時間に入浴を行うことで、介護者の負担軽減や、就寝中のおむつ替えなどを排除することができ、入所者の睡眠の質を上げることができ、これらの結果として、ケアの質が上がるとともに、介護者の負担軽減が両立でき、施設経営者にとっては、介護現場の現場が見える化することができます。これらの結果として生産性が向上し、必要なときに必要な介護を提供することにつながります。

図表3 abaの描くケアテックの未来図表3 abaの描くケアテックの未来

Ⓒ(株)aba
出典:(株)aba提供資料

世界の高齢社会化と「ケアテック」の国際展開

- 高齢化は、日本だけでの課題ではなりません。東南アジア諸国でも高齢化が進展するといわれています。国際展開は考えておられますか。

日本と近い台湾などでの展開を想定しています。また、欧州などでも調査を行っています。介護の問題は世界共通です。「ケアテック」を確立して世界に発信していくのは我が社のミッションだと思っています。

おわりに:教育が取り持つ縁の大切さ

文部科学省関連のメディアということで、最後に一言言わせてください。私は、成績不振で大学に通いにくくなった時期もあるなど、必ずしも優秀な学生だったわけではありません。しかし、今こうして、起業してここまでやってこられたのも、恩師の千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科富山健元教授に励まされたり、教わったりしたおかげなのです。結果的に、私にしかできない排泄センサという独自のテーマにたどり着くことができました。この意味で、ドライな研究開発ももちろん重要なのですが、教育や師弟関係などウェットな関係の重要性についても強調しておきたいと思います。若者の皆さんには、余り気負わずに一歩踏み出し、是非チャレンジする気持ちを持っていただくきっかけになれば幸いです。

- 学生起業から、研究開発型の大学発ベンチャーの起業家、さらには経営者としての10年間の軌跡を短い時間で教えていただき大変感銘を受けました。本日はどうもありがとうございました。