STI Hz Vol.8, No.1, Part.7:(ほらいずん)科学技術・イノベーション分野における男女共同参画・ダイバーシティ推進政策の歴史と多様性向上の意義STI Horizon

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  • DOI: https://doi.org/10.15108/stih.00284
  • 公開日: 2022.03.22
  • 著者: 塩満 典子
  • 雑誌情報: STI Horizon, Vol.8, No.1
  • 発行者: 文部科学省科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

ほらいずん
科学技術・イノベーション分野における男女共同参画・
ダイバーシティ推進政策の歴史と多様性向上の意義

上席フェロー 塩満 典子

概 要

我が国の研究者全体に占める女性研究者の割合は、2021年3月末現在、生物学的性比(約50%)を大幅に下回る17.5%(総務省令和3年科学技術研究調査結果)であり、OECD諸国との比較でも最低水準である。また、各大学等における男女共同参画のための取組を通じ、以前に比較し、理学、工学、農学分野で教授割合が増加してきたとはいえ、上位職階に進むほど、女性の割合が減じる傾向は持続し、これらの分野の教授割合は10%に満たない。

本稿では、2005年度に閣議決定された「第2次男女共同参画基本計画」及び「第3期科学技術基本計画」に基づき、2006年度に文部科学省により初めて予算化された「女性研究者関連施策」の歴史を振り返る。また、2020年度に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」及び「第6期科学技術・イノベーション基本計画」の特徴と令和4年度関連施策の文部科学省予算額(案)を概観する。さらに、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」で初出した「総合知」と「ジェンダード・イノベーション」に着目し、Society5.0時代における多様性向上の意義を論考する。

キーワード:女性研究者,ダイバーシティ,Society5.0,総合知,ジェンダード・イノベーション

1. 緒言

科学技術・イノベーション基本法1)では、「イノベーションの創出」は、「科学的な発見又は発明、新商品又は新役務の開発、その他の創造的活動を通じて新たな価値を生み出し、これを普及することにより、経済社会の大きな変化を創出すること」と定義されている。周囲や過去の常識とは異なる発想を促す多様性(ダイバーシティ)豊かな研究環境がイノベーションに重要であることは共通認識と言えよう。では、ジェンダーの視点で見たときに、我が国の科学技術・イノベーション分野の男女共同参画の現状はどうか。日本の研究者に占める女性割合は2021年3月末時点で17.5%となっている2)。この数値は海外と比較して、かなり低い水準にとどまるものであり、研究環境でのダイバーシティが実現しているとは言い難い34)(図表1)。

本稿では、筆者が内閣府男女共同参画局調査課長・参事官在職時に執筆を担当した「平成17年版男女共同参画白書」5)を起点として、政府や学術団体による女性研究者活躍促進に向けた取組の歴史を振り返る。また、2020年度に閣議決定された二つの基本計画に基づく2022年度関連施策を概観すると共に、Society5.0時代における「総合知」や「ジェンダード・イノベーション」と多様性の意義を論考する。なお、歴史的な経緯をわかりやすく示すために、政策文書の固有名詞以外は、西暦年号を用いて記述する。

図表1 研究者に占める女性割合(国際比較)図表1 研究者に占める女性割合(国際比較)

出典:「平成19年版男女共同参画白書」3)、「令和3年版男女共同参画白書」4)
(注1)「平成19年版男女共同参画白書」の値(青)は、文部科学省科学技術政策研究所資料(NISTEP REPORT No.86)より作成(日本及び米国は除く)。アイスランドは2002年、ドイツ・フランス・アイルランド・イタリア・ポーランド・スイス・英国は2000年、ポルトガルは1999年、オーストリアは1998年、その他の国は2001年時点。日本の数値は、総務省「平成18年科学技術研究調査報告」に基づく(2006年3月時点)。米国の数値は、国立科学財団(National Science Foundation: NSF)“Science and Engineering Indicators 2004”に基づく1999年の値であり、科学者(scientists)における女性割合(人文科学の一部及び社会科学を含む)。
(注2)「令和3年版男女共同参画白書」の値(赤)は、総務省「科学技術研究調査」(令和2年)、OECD“Main Science and Technology Indicators”、米国国立科学財団(National Science Foundation: NSF)“Science and Engineering Indicators”より作成。日本の数値は、2020年3月31日現在の値、アイスランド、アイルランド、デンマーク、スイス、米国、オーストリア、フランス及びドイツは、2017年値。その他の国は、2018年値。推定値及び暫定値を含む。米国の数値は、(注1)と同様。技術者(engineers)を含んだ場合、全体に占める女性科学者・技術者の割合は29.0%。

2. 女性研究者の活躍促進のための施策とその成果

我が国の女性研究者関連施策の創設に大きな影響を及ぼす根拠となったデータは、「研究者に占める女性割合」であり、「平成17年版男女共同参画白書」5)から「令和3年版男女共同参画白書」4)に至るまで、そのデータがグラフとして明示されている。今で言う「客観的根拠に基づく政策立案」(EBPM:Evidence-Based Policy Making)の先駆けとなったデータソースは、科学技術政策研究所(現在、科学技術・学術政策研究所(NISTEP))が作成した「科学技術指標 – 日本の科学技術の体系的分析 – 平成16年版」(以下「科学技術指標2004」という。)である6)。「科学技術指標2004」において、「女性研究者の活用」の項が初めて立てられ、図表2に示す記述が行われている。

「平成17年版男女共同参画白書」に同データに基づくグラフが初出したときには、韓国の研究者に占める女性割合は含まれていなかった。その後、「平成19年版男女共同参画白書」(2007年6月閣議決定)から含まれるようになり、同白書の作成時点では、韓国の女性割合(11.4%、2001年時点)が国際比較では最小値として報告された(図表1)3)。しかし、比較対象の日本の割合(11.9%)は、2006年3月時点の数値であり、2001年3月に時点をそろえて比較すると、日本の割合(10.9%)が韓国の割合を0.5ポイント下回っている7)

「平成17年版男女共同参画白書」(序説:科学技術の進展と男女共同参画、2005年6月閣議決定)は、「科学技術指標2004」等のデータを基に執筆され、「第2次男女共同参画基本計画」(2005年12月閣議決定)8)及び「第3期科学技術基本計画」(2006年3月閣議決定)9)における女性活躍促進の項が大幅に拡充する根拠となった。文部科学省における女性研究者関連施策の変遷について、図表3に示す10)

2005年度に閣議決定された「第2次男女共同参画基本計画」において、女性研究者の活躍促進のための施策は、「新たな取組を必要とする分野」である「科学技術」として初めて盛り込まれ、女性研究者の採用促進に向けた組織ごとの目安として、数値目標の設定への期待が記された(自然科学系全体として25%、理学系 20%、工学系15%、農学系 30%、保健系 30%)8)。こうした背景の中で、「第3期科学技術基本計画」においては、「女性研究者の活躍促進」の項の記述が「第2期科学技術基本計画」に比較して大幅に拡充した。第3期計画の基本的な姿勢の一つに「人材育成と競争的環境の重視~モノから人へ、機関における個人の重視」があったことも、人材育成政策としての重視される好機となったと言える9)

これらの二つの基本計画に基づき、2006年度から女性研究者支援関連施策10)が創設された契機には、各種学術団体による活発な政策提言・要望活動も大きく影響している。

2002年10月に発足した男女共同参画学協会連絡会は、自然科学系の39学協会の会員を対象に約2万件の回答を得て分析したアンケート調査結果「21世紀の多様化する科学技術研究者の理想像-男女共同参画のために-」(平成15年度文部科学省委託事業報告書、2004年3月)を取りまとめている。本報告書は、上述の「科学技術指標2004」と同様、2005年度に閣議決定された二つの基本計画の起草に当たって大きな役割を果たした。本報告書では、男女の処遇差に関する研究者・技術者の意識、所属機関ごとの年齢による職位の推移、研究開発費の額及び部下の数、研究者の子育て状況等が分析されている511)

また、学術団体の提言活動の一例としては、2005年3月に日本女性科学者の会がまとめた提言も施策に直結した。同会は「文部科学省生涯学習政策局委嘱事業 平成16年度男女の家庭・地域生活充実支援事業」を受託し、和光市教育委員会、独立行政法人理化学研究所、及び女性の社会参画支援促進実行委員会と共にシンポジウム「科学・技術分野で女性科学者が活躍するための四つの条件―男女共同参画の実現にむけて―」を開催した。

その中で「1. 研究環境の整備」、「2. 家庭・育児に伴う問題点の解消」、「3. 研究者間のネットワーク整備」及び「4. ロールモデルの設定」の提言をまとめた:①管理職、女性研究者の意識改革のための予算措置、②各職種別の明瞭な評価基準の設定、適正な評価システム、③女性研究者割合が一定比率を超えた大学・研究機関を男女共同参画特区と定め、特別交付金の提供、④先端的男女共同参画環境を実現するモデル事業、男女共同参画コーディネーターの配置、⑤研究者への育児支援策の徹底、研究者間のネットワーク環境整備及びメンター制への資金支援1213)

男女共同参画学協会連絡会も、①男女共同参画モデル事業制度、②女性研究者・技術者の採用と昇格に対する数値目標、③男女の処遇差低減、④育児支援、⑤ 女子学生の理工系進路選択支援の5点の提言を行った14)

この後、2006年度には、女性研究者関連施策の一つとして文部科学省科学技術振興調整費により、「女性研究者支援モデル育成事業」(2006~2012年度)が初めて予算化され、同事業は、後の科学技術人材育成費補助事業である「女性研究者研究活動支援事業」(2011~2016年度)と「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」(2015年度以降)に引き継がれた。この他の施策として、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)の「特別研究員事業(RPD)」及び独立行政法人(当時)科学技術振興機構(JST)による「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」が開始された。合計予算額は、2006年度に初めて7億円が配分され、翌2007年度に11億円へと増額された後、現在の20億円規模に至る10141516)

では、2006年度から15年を経た今、女性研究者の割合は、どのように変化しているだろうか。

2021年3月末時点では、女性研究者数(実数(ヘッドカウント))は、16万6300人(対前年度比4.6%増、男性研究者数:78万5400人)で過去最多、研究者全体に占める割合は17.5%(前年度に比べ0.6ポイント上昇)と過去最高となっている。これらは、2005年3月末時点の実数(9万8700人)及び女性割合(11.9%)と比較して、それぞれ6万7600人増、5.6ポイント増となっている(図表4)27)。一方、国際比較で見ると、上述のとおり、「平成19年版男女共同参画白書」では、韓国の女性研究者割合(11.4%、2001年時点)がグラフ上では最小値に見えるが、我が国の割合(11.9%)は、2006年3月末時点の数値であり、時点を統一した場合、韓国を0.5ポイント下回る最小値7)であった。また、「令和3年版男女共同参画白書」では、韓国の割合は20.4%(2018年時点)となり、我が国の割合(16.9%、2020年3月末時点)を3.5ポイント上回って報告されている(図表1)34)。このように、我が国の研究者に占める女性割合が、現在もOECD諸国で最低水準であることに変わりはない。

図表2 科学技術指標2004における「女性研究者の活用」に係る記述図表2 科学技術指標2004における「女性研究者の活用」に係る記述

出典:「科学技術指標 – 日本の科学技術の体系的分析 – 平成16年版」(NISTEP、2004年4月)6)

図表3 文部科学省における女性研究者関連施策の変遷図表3 文部科学省における女性研究者関連施策の変遷

出典:文部科学省「令和3年度ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ公募説明会」
(2021年5月文部科学省科学技術・学術政策局人材政策課人材政策推進室)10)

図表4 女性研究者数及び女性の割合の推移図表4 女性研究者数及び女性の割合の推移

注1)研究関係業務に従事した割合であん分しない実数で計算
注2)女性研究者数(実数)は各年度末現在の値
出典:総務省報道資料「2021年(令和3年)科学技術研究調査結果」(2021年12月)2)

3. 二つの基本計画と今後の課題

2020年度に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ」(2020年12月)及び「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(2021年3月)の基本認識と数値目標を図表5に示す1718)。二つの基本計画とも、我が国の女性研究者の割合が諸外国に比較して低い水準にあることを共通認識としている。2016年度を始期とする「第4次男女共同参画基本計画」(2015年12月閣議決定)19)及び「第5期科学技術基本計画」(2016年1月)20)と比較すると、採用する研究者の数値目標設定の対象が「研究者の採用に占める女性の割合(自然科学系)」から「大学の研究者の採用に占める女性の割合」に絞られたこと、及び人文科学・社会科学系に範囲が広げられたことが特徴的である。また、「第5次男女共同参画基本計画」では、「第4次男女共同参画基本計画」で成果目標の対象であった「日本学術会議の会員及び連携会員に占める女性の割合」が削除されていることも相違している。

一方、「国立研究開発法人」の研究職員の女性採用割合は、図表6(2021年4月時点)に示すとおり、「第4次男女共同参画基本計画」及び「第5期科学技術基本計画」(対象期間:2016~2020年度)において、採用数値目標(目安)である「自然科学系全体で 30%、理学系 20%、工学系 15%、農学系 30%、医学・歯学・薬学系合わせて 30%」に達していないところも多い(図表6)2122)。このため、女性研究職員や女性管理職の採用・登用増に向けた国立研究開発法人への働きかけも内閣府男女共同参画局により行われている23)

2006年度から継続している3本柱の女性研究者関連施策:①女性研究者を支援する研究機関への支援の取組、②研究に再チャレンジする人への取組、③将来の進路を考える女子中高生への支援の取組は、女性研究者数・割合の増大等において一定の成果を上げているように見える。しかし、ここ15年間を通じ、女性研究者割合は国際的に見て著しく低いこと、上位職階に上がると女性割合が減じること、女子が理工系を進路として選びにくい傾向は依然として変わらないこと等から、各プログラムの施策メニュー・予算規模に係るフォローアップ調査の要望も行われている24)

令和4年度文部科学省予算額(案)では、ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ:1,037百万円(前年度比:11百万円増)、特別研究員(RPD)事業:930百万円(前年度同)、女子中高生の理系進路選択支援プログラム:42百万円(前年度同)であり、全体20億円の規模と内訳は、過去10年間以上、ほとんど変わっていない15)。将来の女性研究者が育つきっかけとなるSTEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)を女子中高生が進路選択しない傾向は長期にわたっている中で、「女子は理系に向かない」というアンコンシャス・バイアス等によるバリアの存在も懸念される。このため、これまでの施策の効果評価に基づく新しいプログラム内容や異なるアプローチの検討も望まれる。

図表5 二つの基本計画と「女性研究者の活躍促進」に関連した基本認識(抜粋)と数値目標1617)図表5 二つの基本計画と「女性研究者の活躍促進」に関連した基本認識(抜粋)と数値目標16、17)

出典:「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」17)、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」18)

図表6 研究者が所属する研究機関別 科研費採択件数・配分一覧及び研究職員の女性採用・在籍比率(2021年度)図表6 研究者が所属する研究機関別 科研費採択件数・配分一覧及び研究職員の女性採用・在籍比率(2021年度)

※1 順位は科研費採択件数(新規+継続)の多い順。
※2 国立研究開発法人のうち、2021年度科研費採択件数(新規+継続)の多い17機関を抽出して比較。
出典:「令和3年度科学研究費助成事業の配分について」21)、「独立行政法人等における女性登用状況等「見える化サイト」2021年度版女性の採用者数、職員数集計表」22)

4. 総合知とジェンダード・イノベーション

「第6期科学技術・イノベーション基本計画」においては、「自然科学のみならず人文・社会科学も含めた多様な「知」の創造と、「総合知」による現存の社会全体の再設計、さらには、これを担う人材育成が避けては通れない」という認識が示されている。社会の複雑な課題を解決する「総合知」の基本的な考え方やその創出・活用を戦略的に推進する方策については、総合科学技術・イノベーション会議で検討が進められており、2021年度中にまとまる予定である25)。同会議の検討の中では、実現する未来社会ビジョンとして「Society5.0」が提示されている。Society5.0は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)と定義され、従来型のICT(情報・コミュニケーション技術)のみならず、近年の技術進歩が著しいAI(人工知能)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の積極的活用が予見される。

科学や技術に性差の視点を取り込むことによって創出されるイノベーション(ジェンダード・イノベーション)の加速も期待される。

一般社団法人男女共同参画学協会連絡会による会員比率調査では、数学・物理学分野と共に、情報学・工学分野における女性比率が特に低いことが報告されている26)。一方、ジェンダーと人種によるアンコンシャス・バイアスがソフトウェアのアルゴリズムやシステムに組み込まれている事例が多いことが指摘されている27)。また、女性の活躍を促すためのICTを利活用した業務改革の好影響が雇用の面だけでなく、サービス商品化への波及、高付加価値型ビジネスモデルへの転換可能性という業績面にも及んでいる事例28)も見られる。Soceity5.0を支える情報学・工学分野の研究開発においては、女性研究者の一層の参画・活躍によるジェンダー・バランスの確保が重要と考えられる。

また、ウィズ・コロナの現在、テレワークやオンライン会議などICTの利活用によるコミュニケーションの日常化が進み、ニュー・ノーマル(新しい生活様式)も定着しつつある。ポスト・コロナ時代においても、この傾向は持続し、サイバー空間での遠隔地との情報交流が活発になることが予想される。また、働く場所の自由度が増すことから、女性が子育て期に離職する傾向にも変化が見込まれる。

これまで女性がキャリア形成の進路として選ぶことが少なかった情報学・工学分野は、ジェンダー視点が十分に顧みられてこなかった分野と換言できる。逆説的に見ると、これらの分野で開発されるAI、DX、ロボティクス等が多用されるSociety5.0では、女性研究者の活躍により、専門知の「矩」とジェンダーの「壁」の二つの境界を同時に越えた、インクルーシブな共創による「総合知」と画期的・飛躍的な「ジェンダード・イノベーション」が創出される可能性が大きいと予測できる。

本稿においては、文部科学省の女性研究者関連施策を中心に歴史を振り返り、未来社会ビジョンとして、Society5.0時代を展望した。女性研究者活躍促進のための施策としては、他に国立大学法人運営費交付金、私立大学等経常費補助金等の活用、各機関における女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定を通じたPDCAが行われている。また、経済産業省においても、企業の経営戦略としてのダイバーシティ経営の推進を後押しするため、「新・ダイバーシティ経営企業100選」や「なでしこ銘柄」の選定による先進事例の発信、「ダイバーシティ経営診断ツール」の作成等が行われている29)。本稿で紹介できなかった他の取組も含め、(とら)年の2022年は、産学官の連携及び効果的な「総合知」と「ジェンダード・イノベーション」の推進による、日本の女性研究者活躍の「虎変」に期待したい。

参考文献・資料

1) 科学技術・イノベーション基本法、第2条第1項、2021年4月施行
https://www8.cao.go.jp/cstp/cst/kihonhou/mokuji.html

2) 総務省報道資料「2021年(令和3年)科学技術研究調査結果」、p.2、 2021年12月
https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/youyaku/pdf/2021youyak.pdf

3) 閣議決定「平成19年版男女共同参画白書 第1-6-6図 研究者に占める女性割合の国際比較」、2007年6月
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h19/zentai/danjyo/html/zuhyo/fig01_06_06.html

4) 同「令和3年版男女共同参画白書 I-5-7図 研究者に占める女性の割合(国際比較)」、2021年6月
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r03/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-05-07.html

5) 同「平成17年版男女共同参画白書」、2005年6月
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h17/danjyo_hp/index.html

6) 文部科学省科学技術政策研究助「科学技術指標 – 日本の科学技術の体系的分析 – 平成16年版」、NISTEP REPORT No.73、 pp.58-59、2004年4月 http://hdl.handle.net/11035/641

7) 総務省統計局「平成17年版科学技術研究調査 結果の要約」、2005年12月
https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/youyaku/17youyak/17youyak.html

8) 閣議決定「第2次男女共同参画基本計画」、2005年12月
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/2nd/pdf/2-12.pdf

9) 閣議決定「第3期科学技術基本計画」、2006年3月 https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/honbun.pdf

10) 文部科学省科学技術・学術政策局人材政策課人材政策推進室「令和3年度ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ公募説明会」、2021年5月
https://www.jst.go.jp/shincho/koubo/2021koubo/youryou/diversityR3-koubosetsumeikaisiryo.pdf

11) 男女共同参画学協会連絡会「21世紀の多様化する科学技術研究者の理想像-男女共同参画のために-」(平成15年度文部科学省委託事業報告書)、2004年3月
https://www.djrenrakukai.org/2003enquete/PDF/2004ReportWeb.pdf

12) 日本女性科学者の会長 佐々木政子「日本女性科学者の会 (SJWS)について」、男女共同参画推進連携会議 第21回全体会議資料、pp.16-21、 2006年9月 https://www.gender.go.jp/kaigi/renkei/zentai/21/pdf/shiryou14.pdf

13) 日本女性科学者の会創立50周年記念誌別冊「活動と提言 科学技術立国の未来を拓く」、p.71、2008年

14) 河野銀子、小川眞里子、大坪久子他「女性研究者支援政策の国際比較 ー日本の現状と課題」、株式会社明石書店、2021年11月

15) 閣議決定「平成19年版男女共同参画白書 資料 平成19年度男女共同参画推進関係予算額の概要(男女共同参画の推進の見地から当面特に留意すべき事項)」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h19/zentai/danjyo/html/sisaku/chap14_01.html

16) 文部科学省「令和4年度予算(案)のポイント」
https://www.mext.go.jp/content/20211223-mxt_kouhou02-000017672_1.pdf

17) 閣議決定「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ」、2020年12月
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th/pdf/2-04.pdf

18) 同「第6期科学技術・イノベーション基本計画」、2021年3月
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/6honbun.pdf

19) 同「第4次男女共同参画基本計画」、2015年12月
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/4th/pdf/2-05.pdf

20) 同「第5期科学技術基本計画」、2016年1月 https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf

21) 文部科学省研究振興局学術研究推進課「令和3年度科学研究費助成事業の配分について」、2022年1月
https://www.mext.go.jp/content/20220124_mxt_gakjokik_000019825_1.pdf

22) 内閣府男女共同参画局「独立行政法人等における女性登用状況等「見える化」サイト  2021年度版女性の採用者数、職員数集計表 研究開発法人版」 https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/xls/2021_saiyou_2.xlsx

23) 日本学術会議公開シンポジウム「科学的知見の創出に資する可視化(6)
「総合知~幸福論からみた身心・細胞力、その真理の可視化~」」動画、2021年11月30日
https://www.youtube.com/watch?v=clYMsnpphEo

24) 一般社団法人日本女性科学者の会提言「人生100年時代、女性も男性も十分に能力発揮できる研究環境の実現」、2021年10月 http://www.sjws.info/Proposal/doc/teigen_211008.pdf

25) 内閣府ホームページ 「総合知を戦略的に推進する方策(総合知戦略)の検討について」(総合科学技術・イノベーション会議有識者議員懇談会資料)、2021年11月
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20211111/siryo1.pdf

26) 一般社団法人男女共同参画学協会連絡会「連絡会加盟学協会における女性比率に関する調査」(2021年)
https://djrenrakukai.org/doc_pdf/2021_ratio/2021ratio_table_202110120a.pdf

27) Londa SCHIEBINGER, 小川 眞里子「医学, 機械学習, ロボット工学分野における「性差研究に基づく技術革新」:学術の動向、23(12), 8-19 (2018)

28) 総務省「平成29年版情報通信白書 第1部特集 データ主導経済と社会変革 第2節 働き方改革とICT利活用 (2) ICT投資と両輪の関係にある業務改革」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc142220.html

29) 経済産業省ホームページ「ダイバーシティ経営の推進」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/index.html