No.99 JAN 1997

科学技術庁科学技術政策研究所
NATIONAL INSTITUTE OF SCIENCE
AND TECHNOLOGY POLICY

目次 [Contents]レポート紹介  Highlight of the New Report
最近の動き   Current Topics


Ⅰ.レポート紹介/Highlight of the New Report

外国技術導入の動向分析 −平成6年度−
外国為替・外国貿易管理法に基づく技術輸入及び 技術に関連する輸入の実態(「ソフトウェア」及び「商標」を含む)
(NISTEP Report No.46)

情報分析課 

1.調査概要
 本調査は、わが国における平成6年度の外国技術導入の実績をとりまとめるとともに、最近の技術導入の動向を分析したものである。
 本報告書は、第1部「外国技術導入の動向分析」、第2部「技術形態別動向分析」及び第3部「統計表」から構成されている。
 なお、これらの導入技術の集計・分析は、「外国為替及び外国貿易管理法」に基づく「技術導入契約の締結(変更)に関する報告書」及び「同届出書」により行っている。

2.調査結果
(1)新規導入件数
 新規技術導入件数は、3161件で前年度に比べて4.4%(132件)の増加であり、ここ数年は、大きな変動はなく、このレベルで推移している。(図1)

(2)国別導入件数
 国別導入件数は、アメリカからの導入が、2056件で全体の3分の2を占め、一極集中を示している。第2位のイギリスは、全体の9%に過ぎない。(表1)
 アメリカからの導入の約65%(1327件)は、コンピュータ関係である。アジア圏は、ソフトウェアを中心に急伸している。


図1 技術導入契約件数の推移

表1 主要国別導入状況

国 名 1994年度 割合(%) 対前年比(%) 1993年度 1989年度 1984年度
アメリカ 2056 65.0 3.6 1985 1808 1355
イギリス 283 9.0 45.1 195 196 155
フランス 154 4.9 −4.3 161 187 240
ドイツ 127 4.0 −13.6 147 196 232
オランダ 89 2.8 9.9 81 79 46
(注)ドイツは、統一前の東独を含む。                   

(3)技術形態別導入件数
 技術形態別(ハード系技術、ソフトウェア、商標のみ)では、「ソフトウェア」が1629件となり、全体の約 52%を占め、最近5年間でも50%前後の一定した推移が見られる。一方「ハード系技術」は1117件で35%となり、92年度以降減少が続いている。(図2)(図3)
 従って、「ソフトウェア」と「ハード系技術」の導入件数の差は、91年度以降漸次拡大している。(図4)

(4)技術分類別導入件数
 技術分類別では、「電子計算機」が全体の55%を占め、「電子計算機」主導の技術導入が

続いている。(表2)
 また、技術形態別にみると、「電子計算機」の92%強は「ソフトウェア」で占められており、コンピュータ関係の導入技術が、ハードよりもソフトに年々重点が置かれてきている。従って、技術導入は「ソフトウェア」主導であるとも言える。(図5)

表2 上位5技術分類(細目分類)別技術導入件数の推移

技術分類(細目分類) 1994年度 割合 前年比 93年度 89年度 84年度
電子計算機
外衣
電子部品・デバイス
医薬品
精密機械
1740
148
125
95
90
55.0
4.7
4.0
3.0
2.8
3.4
43.7
-13.8
1.1
30.4
1683
103
145
94
69
1268
117
106
121
63
587
158
76
65
68

(5)対価の支払条件
 対価の支払条件では、「ソフトウェア」のロイヤルティは、8割が単価建てであり、料率設定の場合は、その7割が高率の設定である。(図6)

(6)契約期間
 契約期間では、「1年以上5年未満」が最も多く、全体の37%を占めている。(表3)

表3 契約期間の状況

契約期間の内訳 1994 年度 割合(%) 対前年比(%) 1993年度 1989年度
1年未満
1年以上5年未満
5年以上10年未満
10年以上15年未満
15年以上
118
1163
376
155
48
3.7
36.8
11.9
4.9
1.5
−15.7
28.7
2.5
−14.4
−46.7
140
904
367
181
90
116
779
332
241
78
特許等の期間まで
その他
240
1061
7.6
33.6
−1.2
−3.9
243
110
296
105

(7)資本金規模の業種別導入件数
 資本金規模の業種別導入状況については、全体としては資本金規模の大きい企業の導入件数が多いが、情報サービス関係の小規模企業がソフトウェアを中心に伸長している。(図7)

(8)技術貿易収支
 技術貿易収支については、対価支払額は、前年度より18%(1288百万$)増、対価受取額は、前年度より35%(1431百万$)増で、技術貿易収支比率(受取額/支払額)は前年度の0.55から0.64と大幅増(16.4%増)になった。(図8)

図8 我が国の技術貿易収支の推移(資料:国際収支統計月報)




日本の技術輸出の実態 −平成6年度−
(NISTEP REPORT No.47)

第3調査研究グループ 

1.概要
 従来の技術貿易統計であまりなされていない、技術輸出の質的な面にまで踏み込んだ分析を行うために、平成4年度より民間企業に対してアンケート調査を実施し、その結果をレポートにまとめている。なお、今回は、前年度まで調査対象としてきた資本金10億円以上の企業に加えて、資本金10億円未満の企業に関する調査も試験実施している。

2.調査方法
(1)資本金10億円以上の企業


  ①調査対象契約:平成6年4月1日以降平成7年3月31日までの1年間に締結された新規の技術

          輸出契約

  ②調査対象企業:資本金10億円以上で、研究開発活動を実施している企業および技術貿易と関連

          のある日本国内の民間企業(1569社)

  ③調査方法  :郵送によるアンケート調査とし、上記各社の知的財産部門長もしくは研究開発

          管理部門長へ直接郵送した。

  ④調査期間  :平成8年2月6日(発送)〜平成8年2月26日(締切)

  ⑤回収結果  :回答企業数900社(回収率57.4%)

(2)資本金10億円未満の企業
 資本金1億円以上10億円未満の企業1565社に対して、まず技術輸出の有無を電話で確認し、平成6年度に新規の技術輸出を行っている可能性のある企業に対してアンケート票を郵送した。

          電話調査協力企業 1435社

          アンケート票郵送企業 288社

          うち回答企業 222社


3.調査結果
(1)平成6年度の日本の技術輸出(資本金10億円以上の企業)の傾向
 平成6年度の日本の技術輸出の傾向としては大きく以下の4点が挙げられる。
①技術輸出件数
・ 技術輸出件数は、平成4年度712件、平成5年度626件、平成6年度730件であり、平成5年度に減少した技術輸出件数が平成6年度に大きく増加している。(表1参照)
②輸出先国・地域
・ 輸出先を地域別にみると、アジアが61.8%、北アメリカが18.6%、ヨーロッパが15.9%その 他が3.7%であり、2年連続してアジアの比率が増加し、今年度は6割以上を占めている。(図1参照)
表1 本調査および総務庁統計における技術輸出件数の推移
本 調 査 総務庁統計
全 体 3年連続回答企業 新規・継続合計 新規のみ
件数 前年比 件数 前年比 件数 前年比 件数 前年比
平成3年度 8,063 12.6% 2,066 +31.6%
平成4年度 712 462 8,201 1.7% 1,983 - 4.0%
平成5年度 626 -12.1% 398 -13.9% 8,338 1.7% 1,896 - 4.4%
平成6年度 730 +16.6% 463 +16.3% 9,099 9.1% 2,148 +13.3%



・ 国・地域別にみると、米国が16.7%と最も多くなっているが、以下、韓国(13.8%)、中国(13.8%)、台湾(10.0%)、タイ(6.7%)の順となっており、上位5ヶ国・地域のうち4ヶ国・地域をアジアが占めている。また、3年間の変化をみると中国の比率の増加が著しい(H4 7.9%→H6 13.8%)。(表2参照)
表2 技術輸出先上位国・地域
平成4年度 平成5年度 平成6年度
国名 件数 割合 国名 件数 割合 国名 件数 割合
1 米国 142  19.9%  韓国 104  16.6%  米国 122  16.7% 
2 韓国 98  13.8%  米国 100  16.0%  韓国 101  13.8% 
3 中国 56  7.9%  中国 80  12.8%  中国 101  13.8% 
4 台湾 53  7.4%  台湾 52  8.3%  台湾 73  10.0% 
5 タイ 51  7.2%  タイ 32  5.1%  タイ 49  6.7% 
6 英国 35  4.9%  英国 29  4.6%  ドイツ 28  3.8% 
7 マレーシア 34  4.8%  ドイツ 26  4.2%  マレーシア 26  3.6% 
8 ドイツ 24  3.4%  インドネシア 19  3.0%  インドネシア 24  3.3% 
9 インドネシア 23  3.2%  インド 18  2.9%  インド 23  3.2% 
10 インド 20  2.8%  フランス 15  2.4%  英国 15  2.1% 
              イタリア 15  2.1% 
  その他 176  24.7%  その他 151  24.1%  その他 153  21.0% 
  合計 712  100.0%  合計 626  100.0%  合計 730  100.0% 
③輸出された技術の内容
・ 技術分野をみると、「機械」分野28.4%、「電気」分野24.0%、「化学」分野21.6%、「金属」分野14.5%、「その他」分野11.5%の順となっている。平成4年度には約3割(29.2%)を占めていた「電気」分野のシェアが2年連続して減少した一方で、「機械」分野のシェアが前年度に比べて大きく増加し、平成6年度の最大の技術輸出分野となっている。(図2参照)

・ 技術分類別にみると、「輸送用機械」に関する技術が3年連続して最も多いが、特に今年度は前年度(10.4%)と比べて大きく増加し、全契約の15.1%を占めている。(表3参照)

表3 輸出技術上位10分類

平成4年度 平成5年度 平成6年度
技術分類名 件数 割合 技術分類名 件数 割合 技術分類名 件数 割合
1 輸送用機械 99  13.9%  輸送用機械 65  10.4%  輸送用機械 110  15.1% 
2 電子部品 47  6.6%  医薬品 50  8.0%  電子計算機 57  7.8% 
3 電子計算機 45  6.3%  油脂・塗料 41  6.5%  鉄鋼 45  6.2% 
4 医薬品 42  5.9%  電子部品 39  6.2%  有機化学 44  6.0% 
5 金属製品 33  4.6%  電子計算機 38  6.1%  電子部品 40  5.5% 
6 民生用電機 32  4.5%  金属製品 34  5.4%  金属製品 33  4.5% 
7 有機化学 28  3.9%  民生用電機 30  4.8%  医薬品 30  4.1% 
8 窯業 26  3.7%  有機化学 29  4.6%  その他化学 28  3.8% 
9 油脂・塗料 26  3.7%  通信機械 23  3.7%  非鉄金属 28  3.8% 
10 テレビ・音響 25  3.5%  窯業 22  3.5%  油脂・塗料 27  3.7% 
  その他 309  43.4%  その他 255  40.7%  その他 288  39.5% 
  合計 712  100.0%  合計 626  100.0%  合計 730  100.0% 
④資本関係の有無別の技術輸出件数の推移
 資本関係の有無別に技術輸出件数の推移をみると、資本関係のない企業への輸出件数はそれほど変化がないのに対して、資本関係のある企業への輸出件数は年度ごとに大きく変化(平成4年度249件、平成5年度195件、平成6年度297件)している。(表4参照)
表4 資本関係の有無別の技術輸出件数の推移
資本関係なし 資本関係あり 全体
件数 前年比 件数 前年比 件数 前年比
平成4年度 461 249 712
平成5年度 431 - 6.5% 195 -21.7% 626 -12.1%
平成6年度 431 0.0% 297 +52.3% 730 +16.6%
 資本関係のある企業への技術輸出と関連の深いものとして、製造業の対外直接投資額の推移をみると、平成4年度まで減少傾向にあったのが平成5年度より増加に転じ、平成6年度には対前年度比23.8%増と大きく増加している。平成6年度に入って円高が1ドル100円をきる水準まで進展し、製造業において国内外の製造コストの格差が大きくなったため、その対策として製造拠点の海外移転が進み、それに必要な技術が大量に輸出されたものと思われる。(表5参照)
表5 日本の対外直接投資額の推移(大蔵省届け出統計、単位:100万ドル)
全体 製造業 非製造業
金額 前年比 金額 前年比 金額 前年比
 平成3年度   41,584  -26.9%  12,311  -20.5%  28,809  -29.1%
 平成4年度   34,138  -17.9%  10,057  -18.3%  23,720  -17.7%
 平成5年度   36,025  + 5.5%  11,131  +10.7%  24,627  + 3.8%
平成6年度  41,051  +14.0%  13,783  +23.8%  26,877  + 9.1%
 また、その輸出先地域をみると、年々アジア向けの割合が大きく増加し、平成6年度には7割以上(73.7%)を占めている。製造業の対外直接投資額をみてもアジア向けの割合が増加し、平成6年度には全体の4割近くを占めている。我が国の製造業は、製造コストが低く、投資先として非常に魅力的になっているアジアにおいて投資を拡大させており、その結果資本関係を伴った技術輸出についてもアジア向けの割合が大きくなってきているものと思われる。(図3参照)


(2)その他の全般的傾向
①契約期間
・ 「5〜10年」が34.4%、「1〜5年」29.5%。
・ 地域別にみると、アジアは欧米と比べて、「工業所有権等の期間まで」の割合が低く、「5 年以上10年未満」の割合が高い。
②契約形態
・ 有償契約が85.5%、「無償契約」が8.9%で、クロスライセンスは5.7%。
・ クロスライセンスの内訳は「対価受取」が51.5%、「等価交換」が36.8%、「対価支払」が 11.8%。地域別にみると北米で、技術分野でみると「電気」分野、特に半導体関連で「対価 支払」の割合が高い。
③対価の受取方法
・ 「イニシャルペイメント有」は55.5%、「ランニングロイヤルティ有」は76.8%。
・ 資本関係のある企業への輸出では「イニシャルペイメント有」の割合が高く、資本関係のない企業への輸出では「ランニングロイヤルティ有」の割合が高い。
④独占権・再実施権
・「独占権有」は34.3%、「再実施権有」は8.8%。
・地域別にみると、北米で「独占権有」が低く、「再実施権有」が高い。
⑤技術の種類
・ 「特許有」は41.9%、「ノウハウ有」は88.5%、「商標有」は19.8%
・ 地域別にみると、アジアでは欧米と比べて、「特許有」の割合が低く、「ノウハウ有」の割合が高い。

(3)資本金10億円未満の企業の技術輸出
 資本金10億円以上の企業と調査方法が異なっているので、単純に比較することは出来ないが、資本金10億円未満の調査協力企業1369社のうち、新規の技術輸出を実施していると回答のあった企業は44社であり、資本金10億円以上の企業と比べて技術輸出を実施している割合は低くなっている。 (図4参照)
 また、輸出先はアジア向けが約8割(79.5%)と高く、契約内容についても契約期間の短いもの、イニシャルペイメントを受け取るものの割合が高い等、傾向に違いがみられる。これらについては資本金10億円以上の企業と資本力や輸出している技術の内容が異なるためと思われる。






Ⅱ.最近の動き/Current Topics


 ○ 研究会等/Research Meetings

  ・12/19(木)  第3回地域科学技術指標研究会

  ・12/20(金)  第4回先端科学技術動向調査委員会(物質・材料系科学技術)



 ○ 講演会等/Lectures at NISTEP

  ・12/12(木) 「オートポイエーシスに基づく研究評価論」について

         河本英夫 (東洋大学教授)

  ・12/17(火) 「 Trends in German and Japanese Biotechnology Policy 」について

         Miss Viola Peter (ドイツ フラウンフォーファー協会技術革新研究所研究員)



 ○ 主要来訪者一覧/Foreign Visitors to NISTEP

  ・12/5    張 尚仁( Zhang Shangren )ほか26名

            (中国 広東行政学院長)

             * 中国広東省第4期市庁級幹部終済管理高級研究班として来日



  ・12/11   Dr. Larry Blair

            (米国 オークリッジ国立研究所科学教育研究所プログラムディレクター)

         Dr. Stephen Reynolds

            (米国 ユタ大学社会行動科学学部助教授)



 ○ 海外出張

  ・11/30〜12/16  根本企画課長(米国)

  ・12/8〜12/16  桑原第2調査研究グループ総括上席研究官(ボリビア)