政策研ニュース No.209

1/23 - 24「日中韓科学技術セミナー 2006」
1/23 - 24「日中韓科学技術セミナー 2006」
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目次

  1. Ⅰ. トピックス
  2. Ⅱ. 海外事情
  3. Ⅲ. 最近の動き

クリップのアイコンⅠ. トピックス

「日中韓科学技術政策セミナー 2006」開催報告

第 3 調査研究グループ


写真: 1

世界の中で、東アジア地域は経済発展著しい地域であり、北米、欧州に並ぶ科学技術・イノベーション中心地域の一つとして成長しつつある。東アジア各国の関係性は一層深まっており、知識経済社会を支える科学技術・学術活動においても一層の相互交流が期待されており、平成 17 年 12 月に出された「『科学技術に関する基本政策について』に対する答申」の中でも、国際活動の戦略的推進におけるアジア諸国との協力として、「内外から日本に期待される役割を果たしていくため、アジア諸国との間で科学技術の連携を強化する」と述べられている。

写真: 2

このような背景のもと、東アジアの中核となる日・中・韓の 3 国の科学技術政策研究機関が一堂に会し、その交流を一層深めるために各機関の取り組み状況及び科学技術政策の抱える共通の問題について意見交換を行うため、科学技術政策研究所 (NISTEP) では、1 月 23 日と 24 日に東京港区の三田共用会議所において、「日中韓科学技術政策セミナー 2006」を開催した。

参加した機関は、各国の科学技術政策研究分野での中核的機関であり、具体的には、NISTEP (日本) のほか、中国から、国家科学技術部科技促進発展研究中心 (National Research Center for Science and Technology Development: NRCSTD) 及び科学院科学技術与管理研究所 (Institute of Policy and Management:IPM) 、韓国から、科学技術政策研究院 (Science and Technology Policy Institute:STEPI) 及び科学技術評価・計画院 (Korea Institute of Science and Technology Evaluation and Plannning: KISTEP) である。

セミナーは 2 日間にわたり行われた。最初に各機関の所長よりそれぞれの取り組みが紹介され、引き続き以下の4つのテーマにおいて活発な議論がされた。

写真: 3

「科学技術政策における人材戦略と理解増進」では、「科学技術人材」に関するテーマにおいて、日中韓 3 国にとって、「科学技術人材の養成・確保」は、今後の社会経済の発展にとって重要な政策課題であるが、具体的な政策ニーズや制度面でのあり方について、それぞれ異なる課題を抱えているということが明らかにされた。

また、「理解増進」に関するテーマでは、3 国は、置かれている状況は異なるものの、共通して、科学技術を文化として国民の間に根づかせる必要性を感じていることがわかった。

「科学技術予測と未来戦略」では、デルファイ法の調査設計など予測活動に用いられる手法や科学技術の負の側面の取扱いの問題、予測活動の理解増進の重要性などが議論された。

写真: 4

さらに、「東アジアにおける地域イノベーションの現状と問題点」では、各国とも地域科学技術政策を推進する必要性について共通の認識を有するとともに、国情の違いから、地域間格差の問題や地方政府の役割について意見交換が行われた。

わが国の呼びかけにより、日本、中国、韓国の 3 国における国家の科学技術政策研究機関のトップが一同に会し、意見交換が行われたこと、また、各機関において次世代を担う中核的な研究者がテーマごとに活発な意見交換を行ったことは、3 国における科学技術政策研究の中核となる人材間のネットワークの構築・拡大において大変意義が深いと考えられる。

特に、今回の議論を踏まえ、日本、中国、韓国による枠組を今後とも継続していくことが合意され、これを踏まえ、STEPI より、来年は STEPI 設立 20 周年であることから、次回のセミナーを韓国で開催したいという提案がなされ、了承された。このように、今回のセミナーを契機として、今後は、日中韓の科学技術政策研究機関のネットワークが一層強化され、東アジアが世界のイノベーションセンターとして発展していくことが期待されるところである。

写真: 1/24 「日中韓科学技術セミナー 2006」参加者一同
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ロケットのアイコンⅡ. 海外事情

第 3 回日中セミナー 参加報告

科学技術動向研究センター 金間 大介

1. セミナーの趣旨・参加者

2006 年 2 月 9 日 (木) に中国・海南島にて開催された第 3 回日中セミナーに出席した。本セミナーは、文部科学省幹部と中国科学院の政策責任者が一堂に会し、両国の科学技術政策全般に関する率直な意見交換を通じて、両国の政策立案に役立てることを目的としている。第 1 回目は 2004 年 6 月に中国で、第 2 回目は日本で行われた。3 回目にあたる今回は、日本から林文部科学審議官を団長に、文部科学省、科学技術政策研究所、(独) 科学技術振興機構、(独) 日本学術振興会、(独) 理化学研究所、東京大学から合計で 20 名が参加した。中国側からは、施 (シー) 中国科学院副院長を団長に、主に中国科学院から約 30 名が参加した。

写真 :日中セミナー参加者一同: 会場となったホテル前にて

2. セミナーの概要

セミナーは以下の (1) から (4) まで 4 部構成で進められ、朝 8 時から夜 7 時まで質の高い報告と白熱した議論が続いた。それぞれの講演概要は以下の通り。

(1) 開会挨拶・基調講演

冒頭で、施副院長から、日中セミナーを機会に両国の科学技術の発展を望む旨の挨拶があった。続いて、林審議官より、傘下に多くの研究所を持つ中国科学院との意見交換は非常に重要で、日中セミナーにより両国の信頼関係の醸成を望む旨の挨拶をした。

基調講演では、河村科学技術・学術総括官より第 3 期科学技術基本計画について、計画的な理念、重点化の考え方等の説明を行った。さらに方 (ファン) 副院長より、中国においては、イノベーションと基礎研究、分野別の重点化、人的資源、知的所有権に関する戦略を立てている旨の説明があった。

(2) セッション 1: 基礎研究と応用研究の連携強化

<司会:中国科学院 ムー科学技術政策・管理研究所長>

写真 :発表する金間科学技術政策研究所研究員

まず、潘 (ファン) 企画戦略局長より、「基礎研究及び応用研究間の連携について」との題目で、中国は近年、基礎研究の強化と応用研究の拡大に取り組んできた旨の説明があった。続いて内丸計画官より「日本のイノベーション政策について」という題目で、基礎研究の必要事項、重点分野における選択と集中についての説明を行った。

後半では、ムー科学技術政策・管理研究所長より「国家創新システムから見た基礎研究及び応用研究間の連携の強化」という題目で、中国独自のナショナルイノベーションシステムの確立が必要である旨の報告があった。続いて、筆者 (金間研究員) より「公的研究機関の産業界への寄与」という題目で、産業界に対する公的研究機関の寄与に関するアンケート調査の結果等を紹介した。

(3) セッション 2: 大学と国家研究機関間の相互作用

<司会:小中科学技術政策研究所長>

写真: 司会を務める小中科学技術政策研究所長

午後のセッションでは、まず侯 (ホウ) 中国科学技術大学副院長から「中国科学技術大学の発展と中国科学院」について説明があり、続いて桐野東京大学副学長より「大学における教育・研究活動と機関間連携」と題して、21 世紀の大学の役割から東大における産学官連携活動の説明があった。

後半に入り、ル総合計画局長より「中国の科学研究プロジェクト間の相互作用」について、また、永島理化学研究所調査役より「独立行政法人の組織運営と研究活動」について紹介がなされた。最後に、「人的資源政策から見た大学と国家研究機関の協力活動」との題目でリゥ人事教育局長より、中国科学院の人員状況や人材戦略について説明があった。

(4) 総合討論

写真: 総合討論の模様

最後に行われた全体討論の中で、有馬元文部大臣より中国の R&D 投資の対 GDP 比や、政府と民間の RD 投資の比率について質問がなされ、昨年度は GDP 比で 1.3% の R&D 投資がなされたこと、それには民間も含んでいること、また政府と民間の R&D 比はおおよそ 4:6 であり、民間部門の割合は増加中であること等が紹介された。

3. 所感

写真: NISTEP 参加者: 右から順に、松澤総括上席研究官、小中所長、永野JST上席フェロー (前 NISTEP 所長)、安達課長補佐、金間研究員 (筆者)

今回のセミナーで改めて、科学技術政策やイノベーションに関するほぼ全てのテーマにおいて、中国の政策立案者・研究者と共通の概念やキーワードを用いて議論できることを実感した。また、中国独自のイノベーションシステムの構築が急務であることや、昨今における民間部門の R&D 投資が急増しているといった話を受けて、中国社会が急速に欧米型の技術革新依存型社会へ移行していることが感じられた。本セミナーは今回で 3 回目ということもあり、双方の組織的・政策的な"自己紹介"はほぼ終えていると思われ、今後はさらに実質的な議論が期待される。

筆者プロフィール: 2004 年 3 月に横浜国立大学大学院物理情報工学専攻修了 (工学博士)。その後、(独) NEDO 技術開発機構職員を経て現職。公的研究開発と経済社会とのつながりに興味を持つ。
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時計のアイコンⅢ. 最近の動き

○ 丸の内おしゃれな科学プロジェクト - サイエンスとアートの出会い -

なごみのスペース「MARUNOUCHI CAFE 丸の内カフェ」において、日大藝術学部のアーティストの卵たちにアレンジしてもらった上記の作品を展示します。素材は、「ミトコンドリア」と「深海底」です。

開催期間: 3 月 22 日 (水) 〜 28 日 (火)
開催場所: (千代田区丸の内 3-3-1 新東京ビル)
主催: 文部科学省科学技術政策研究所、日本大学藝術学部
協力: MARUNOUCHI CAFE
問合せ先: 文部科学省科学技術政策研究所第 2 調査研究グループ
担当: 中村、渡辺 TEL: 03-3581-2392 (直通)
○ 講演会・セミナー
・ 2/6中馬 宏之:一橋大学イノベーション研究センター教授/科学技術政策研究所客員総括主任研究官
「半導体産業の競争力弱化要因を探る:メタ摺り合わせ力の視点から」
・ 2/7天野 明弘:兵庫県立大学副学長/IGES 関西研究センター所長
「環境問題と市場経済システムのあり方」
・ 2/13喜多 千草:関西大学総合情報学部助教授
「開発思想・技術的アジェンダ・設計: インターネットの開発思想史を事例に」
・ 2/15赤川 学:信州大学人文学部人間情報学科助教授
「少子化を前提にしたこれからの社会を構築する」
・ 2/16小川 眞里子:三重大学人文学部教授
「科学キャリアにおける女性に関する WS2005: 注目すべき話題と日本からの報告」
Neelam Kumar:インド国立科学技術・開発研究所 (Nistads) Scientist
"Gender and Science: Glimpses from India and Asia"
・ 2/23松原 美之:(独)消防研究所研究統括官
「廃止され国に統合・吸収されることとなった『独立行政法人消防研究所』は何をしてきたのか?」
・ 2/24林 晋:京都大学大学院文学研究科教授
「科学技術に『思想』は必要か?」
○ 第 20 回地域クラスターセミナー
・ 2/6「クラスター形成を支えるベンチャーキャピタル〜『TAMA ファンド』と『東北インキュベーションファンド』〜」
半澤 佳宏:
西武しんきんキャピタル㈱代表取締役社長
「TAMA 産業活性化協会におけるTAMAファンドの役割」
熊谷 功:
東北イノベーションキャピタル㈱ (TICC) 代表取締役社長
「東北における産学連携ファンド (東北インキュベーションファンド) の取組み」
○ 新着研究報告・資料
"Science & Technology Trends Quarterly Review 2006 No.18"
「科学技術動向 2006 年 2 月号」 (2 月 24 日発行)
レポート 1 我が国における花粉症対策の展望
客員研究官 新田 裕史
レポート 2 ナノテクノロジー開発の促進に向けたナノシミュレーション技術の普及
客員研究官 館山 佳尚
レポート 3 石油・天然ガス資源の探査・開発・生産に関する技術開発の動向
客員研究官 持田 勲
環境・エネルギーユニット 大平 竜也
蔦
ふくろう
文部科学省科学技術政策研究所広報委員会(政策研ニュース担当: 情報分析課 news@nistep.go.jp)

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