No.137 2000 3 
科学技術庁 科学技術政策研究所
NATIONAL INSTITUTE OF SCIENCE
AND TECHNOLOGY POLICY


 中曽根、朱両大臣立ち会いの下で協力書に署名する柴田所長(左)、王所長(右)
            

 
目次 [Contents]  Ⅰ.レポート紹介 日本の技術輸出の実態(平成9年度)−NISTEP REPORT 65−
情報分析課特別研究員 花井光浩
我が国の廃棄物処理の現状と課題−「環境調和型社会創造への動き」
第3調査研究グループ特別研究員 休井正人
Ⅱ.海外事情
「R&D評価のためのデータ計測と戦略」国際会議出張報告
第2研究グループ主任研究員 藤垣裕子
Ⅲ.トピックス
政策研での経験
住友スリーエム技術本部 タニヤ・クリスティン・シエンコ
米議会の予算審議
日本原子力研究所ワシントン事務所 西村良弘
Ⅳ.最近の動き
中国科学技術促進発展研究中心との研究協力開始について
情報分析課特別研究員 花井光浩
「企業経営・技術戦略の変遷に関する研究会」の設置について
企画課長 植田昭彦

Ⅰ.レポート紹介

日本の技術輸出の実態(平成9年度)−NISTEP REPORT No.65−
情報分析課特別研究員 花井光浩、情報分析課長 吉水正義

 

 本調査研究は、日本の技術貿易についての実態を分析し、政策立案のための基礎的なデータを提供することを目的として、民間企業に対してアンケート調査を行い、平成9年度1年間に締結された「新規の技術輸出契約」の件数・契約形態・対価の受取方法等について多面的な分析を行ったものである。(対象企業:資本金10億円以上)  平成9年度における特徴的事項をいくつか挙げると、  

《新規技術輸出状況》
 新規の技術輸出を実施した企業数は213社であるが、分析対象企業を平成8年度までのベースにすると、179社であり、前年度(260社)と比べて大きく減少している。  契約件数は653件であるが、平成8年度までのベースにすると588件であり、前年度(842件)に比べて大きく減少している。

注)平成9年度は、資本金10億円以上のすべての製造業を対象とするなど、調査企業数を 大幅に増やしている。(平成8年度:1,590社、平成9年度:3,206社)

《国・地域別輸出状況》
 国・地域別にみると、米国が最大の技術輸出先国となっており、以下中国、韓国、台湾、タイの順となっている。アジアにおいては、通貨危機の起こった韓国、タイ、インドネシアの落ち込みが特に大きくなっている。

《技術分類別輸出状況》
 技術分類別に契約相手先国・地域の経年推移をみると、「輸送用機械」、「有機化学」に関する技術において、韓国、タイの落ち込みが大きくなっている。

《技術輸出入の構造比較》
 「外国技術導入の動向分析(平成9年度)」の結果と合わせて輸出入を比較すると、米国から、ソフトウエアを中心とする技術を導入し、アジアに対して、資本関係を伴ったハード技術を輸出する非対称な技術貿易構造となっている。


    


                

我が国の廃棄物処理の現状と課題
第3調査研究グループ特別研究員 休井正人

 

 廃棄物処理にともなう地球環境への影響については種々の方面で調査・議論されているが、その根本的な問題は人間社会における物の流れが「生産」、「消費」から次のプロセスの「廃棄」において自然界への一方的排出、すなわち「燃やす」あるいは「埋める」といった方式によって完了しており、近年の大量生産・大量消費にともなう大量廃棄により、自然界における受け入れ能力が限界に達したということである。
 人類社会が「生産」と「消費」による経済活動をベースとした継続的な発展を続けるためには自然界への一方的な「廃棄」によって完結する物質フローを、「生産」、「消費」、「廃棄」の3つのプロセスが相互に経済原理(需給関係による量的調節)が作用する形でリンクさせた循環サイクルを構築することが是非とも必要である。
 廃棄物を再び「生産」のための資源として利用する「リサイクリング」による「循環型経済」は地球環境への負荷低減を目指した「環境調和型社会」のひとつの重要な要素である。こうした観点から我が国の廃棄物処理の現状を調査・分析し、海外の状況とあわせて今後の「環境調和型社会」構築への動きを探ることとする。
 我が国では1991年に「再生資源の利用促進に関する法律」(通称「リサイクル法」)が制定され、廃棄物のリサイクリング推進が法的に規定された。その後「容器包装リサイクル法」(1997年4月施行)、「家電リサイクル法」(2001年4月施行予定)が制定、2000年度には「循環社会基本法(仮称)」制定の予定であり、循環経済に関する法的整備が進んでいる。「リサイクル法」は2000年度改正が予定されているが、そこではリサイクルに加えて廃棄物の「Reduce」(発生抑制)ならびに「Reuse」(再使用)があらたに規定されることになっている。また通産省補助事業である「エコタウン」事業が各自治体で推進されており、その中核施設としてPETボトルや廃家電、自動車のリサイクル設備を設ける事業が多くみられ、廃棄物リサイクルは着実に進行している。
 ドイツでは1996年に循環社会基本法というべき「循環型経済及び廃棄物法」が施行されている。この法律において廃棄物は「再利用」するべきもので、これができない廃棄物は「削減」すべきと規定しており、廃棄物のリサイクリングを優先的に行うことが規定されている。 米国における廃棄物処理は民間処理会社が主体となっており、巨大廃棄物処理会社が出現しており、これらの企業によるリサイクル事業が全国で進められており、環境ビジネスの成長が急ピッチで進んでいる。

 我が国では従来から、飲料缶(鉄、アルミ)や紙、ガラスといった素材のリサイクルは広く行われており、回収システムや再生プロセスが確立し、高いリサイクル率を示しているものが多いが、家電や自動車といった耐久消費財については、処理プロセスの技術開発や処理プラントの整備など、今後解決すべき課題は多い。
 特にプラスチック類はその材料としての多機能性や汎用性により、これら耐久消費財から容器包装類に至る広範囲で多種類のものが使用されているが故に種類毎の分別収集が困難であり、物性的に再生利用が困難な種類が多いという理由もあり、PET容器やポリスチレン(発泡スチロール)容器といったごく一部の品種のみが回収され再生利用(マテリアルリサイクル)されているのが現状である。自動車業界では再生利用可能なプラスチックであるポリプロピレン(PP)を今後多用して車のリサイクル率を向上させる方向で進んでおり、他業界においてもこうした動きが出ているが、現在実証プラントにより開発がすすんでいる「油化還元」や製鉄所(高炉)における還元剤としての利用(ケミカルリサイクル)や、ごみ固形燃料(RDF)化による熱エネルギー利用(サーマルリサイクル)といったリサイクル手法を組み合わせたプラスチックのリサイクル率向上が今後期待される。
 PET容器については回収量の増加に再利用が追いつかないという問題が最近生じているが、上述の自動車におけるポリプロピレンも含めてマテリアルリサイクルを目指す場合、その再利用先を十分確保しておく必要がある。基本的には同一製品としての再利用を進めるべきであり、PETの場合は衛生面、安全面の問題から飲料容器への再利用の道が現状では閉ざされていることが上述の問題の一因であると思われる。 建設廃棄物(年間約1億トン)を含む産業廃棄物(年間約4億トン)については最終処分場の容量が逼迫しており、その減量化とリサイクリングの向上が緊急の課題であるが、その他の消費財についてもリサイクリング(Recycling)の向上とあわせて廃棄物の減量化(Reduce)と再使用(Reuse)の3Rが強く求められる。これはRecyclingには多かれ少なかれエネルギーが必要であり、これが間接的に環境負荷増大の要因となるのでRecyclingだけに頼ることはいずれ立ち行かなくなると予想されるからである。

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Ⅱ.海外事情



「R&D評価のためのデータ計測と戦略」国際会議出張報告
第2研究グループ主任研究官 藤垣裕子

 去る1999年11月15,16日、オーストラリアのキャンベラにおいて、オーストラリア国立大学、研究評価および政策部会主催の国際会議:Data and Strategies in Evaluating Research and Developmentが開催された。この会議では、研究評価に用いられるサイエントメトリクス(科学計量学)の方法論(引用分析、研究所activity分析、政策分析など)について、科学活動の計測方法論、技術計測、マネジメント研究への応用の3つの視点から発表が行われた。発表者は、米国、ドイツ、オランダ、日本、オーストラリア、およびニュージーランドからの招待講演者11人である。 まずオーストラリア国立大学制度改革機構のブレンナン教授より挨拶があり、続いてサイエントメトリクス分野では著名なVan-Raan氏(オランダ:ライデン大学)から、「21世紀におけるR&D評価」と題する発表があった。ここで機関(研究所および大学)評価に関して、ただ単に研究所の活動が「良い・悪い」の一元的判断に数量データを使うのではなく、どのサブフィールドにおいてその研究所がよい成果をだしているか、その内実を示すプロフィールを作成することが大切である、という興味深い指摘があった。実際にドイツ政府の依頼によっておこなわれた外部評価の事例を用い、欧州の環境医学関連研究所群のサブフィールドごとのプロフィールが、たとえば毒性学、心理生理的因子測定、等の分野群ごとに集計されたデータが提示された。研究所全体の全論文数や引用頻度という一面的評価よりも、より詳しく依頼されたドイツの研究所の特性を表していた。このようなプロフィールによる特性評価は、各研究所の強みを国際的文脈で評価し、今後の研究所運営や政策に生かしていくことができ、我が国における機関評価にも応用可能と考えられる。
 続いてGrupp氏(ドイツ:フラウンホーファー・システムイノベーション研)の発表では、科学活動だけでなく技術計測やイノベーション活動を組み込んだモデルが示され、指標(indicator)に関する論文は多いが、評価(evaluation)に関する論文は少ない点の指摘、評価における時間スパンの視点が指摘された。たとえばプログラムの開始から成果物の出版まで4年はかかり、インパクト計測のためにこれらのtime-delayをどう入れ込むかが議論された。さらにD.Hicks氏(米国CHI研究所)からは、特許および学術論文の360度分析についての詳細な発表が行われた。この360度分析とは、たとえばA国におけるある年の特許群A-productsに対し、(1)それらの特許がどのような国の先行特許および論文によって生産されたか(入力)、(2)それらの特許がどのような国のパートナーとともに生産されたか(コラボレーション)、(3)A-productsから次年以降のどのような国のどのような特許が生産されたか(出力1)、(4)A-productsから次年以降どのような国のどのような論文が生産されたか(出力2)を分析することを指す。このことによって、ある国Aの特許生産をめぐる周囲の国からの知識移入、移出、協同を調べることができるというものである。もちろんA-productsとして論文生産を取ることもできる。Hicks氏は、A国としてオーストラリアを用い、アメリカのデータベースの著者所属を用いて分析をおこなっていた。
 筆者の講演は、まず第1部において、科学技術答申36年分(1960-1996年)の語分析および共語分析(本年度3月までに脱稿予定の報告書の内容)をもとに、日本の科学技術政策の概要を「政策コンセプトの変容」という点からとらえ、報告した。第1部の最後に日本における評価の現状(基本法―基本計画―政策大綱の流れ、各種報告書の扱い)について簡単にまとめた。
 続いて第2部においては、「評価」というものが「科学活動システム」(専門誌共同体による査読システムと引用システムによる品質管理)と「政策システム」(予算と人員の配分)を結ぶ間に位置することを示し、その方法論としてのサイエントメトリクスの役割について論じた。さらに、科学論と科学政策とサイエントメトリクス(科学計量学)をリンクする理論の構築が遅れている現状に鑑み、特に理論天文学における論文数、引用数、引用分布などのデータ分析をもとに、これらをリンクする理論に何が必要かについての問題提起を行った。特に、「seminal-work(将来展望のある科学的業績)」の計測は、単なる一断面の引用計測では測れないこと、サブフィールドに及ぼした影響の計測が必要であること、を示した。最後に、計測結果としてのデータの解釈をめぐる、サイエントメトリクス研究者、科学者、科学政策担当者との間のコミュニケーションギャップについての議論のたたき台を提示した。
 最後におこなわれた全体討論では、研究評価に定量的手法が利用されつつあるオーストラリアの現状を反映して、多くの聴衆からデータ解析法の洗練と同時にその利用法、データの誤用や一人歩きの問題をどうするか、データ分析者と評価者(行政当局)とのコミュニケーションギャップの問題が指摘された。出張者は、海外主要国科学技術システムの比較研究の経験をもとに、サイエントメトリクスの手法はinternationalであるのに対し、それを評価にどう使うかには文化差がある点を指摘した。たとえばイギリスでは評価はvalue-for-moneyのために、オランダでは評価をself-improvementという思想のもとにおこなっており、評価のための基本的コンセプトは各国によって異なっている。この点は会場の観衆の問題意識と重なっており、さまざまな反応が得られた。データ分析者と評価結果の利用者とのコミュニケーションギャップの解決するためにも、何のために評価するかについての基本コンセプトの合意形成あるいは分類が必要である。なお評価の基本コンセプトの各国比較については、現在、当研究所の第2研究グループでも平澤総括、韓研究員、数田研究員を中心にいくつかのレポートを作成中である。 評価をめぐる定量的解析法の洗練とその利用法/誤用の議論は、どの国においても焦点となっている。今後、van-Raan氏の指摘する分野特性の導入や研究所評価に対する一元的でないサブカテゴリーの導入、Grupp氏の指摘する時間スパンの導入などの方法論的な洗練が必要になってくるとともに、評価を何のために行うかの基本的コンセプト(value-for-moneyか、self-improvementか、その他か)を練ること、およびサイエントメトリクス研究者、科学者、科学政策担当者との間のコミュニケーションギャップを埋めるための「インタフェースとしての指標」の理論的モデルが必要となるだろう。これについては、やはり第2研究グループの富沢主任研究官がモデルを構築中である。なお、会議最終日夜、元政策研企画課所属の科技庁職員斉藤尚樹氏(現:在豪日本大使館書記官)によって、豪州側の数人と政策研に滞在したことのある2氏(Grupp氏とHicks氏)を招待した晩餐会が開催された。
 本会議と類似の会議は、2000年5月、ライデン(蘭国)において「指標開発とEUにおける政策応用」会議が開かれるほか、2001年6月、シドニー(豪州)において「第8回サイエントメトリクス国際会議」が開催される予定である。

   

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Ⅲ.トピックス


政策研での経験
住友スリーエム技術本部 タニヤ・クリスティン・シエンコ

 私は1993年の4月に政策研(NISTEP)で働き始め、第1研究グループに入りました。その後の4年間で色々なプロジェクトに参加しましたが、主なものは日米における科学の博士、修士のプログラム比較でした。日本の会社の情報流れとIT導入との関係も研究しました。
 1997年に政策研を辞職して住友スリーエム株式会社(住友電工、NEC,米国の3Mの間の合弁会社)に入社しました。ITS(高度交通制御システム)のプロジェクト・マネジャーになって3Mで開発したITSの製品を日本に導入することが第一の目標でした。ITSは道路と車両をセンサーと通信で統一して、渋滞を減らして運転の効率を高めることが目標です。日本にすでにある例はVICSの優導システム、VMSなどです。将来(2020年)は自動運転ができる可能性があります。住友スリーエムは、私がITSの経験がなかったけれども公務員の経験が役に立つと思っていました。そして宇宙開発事業団では情報通信の規則も勉強しておりそれも有意義な経験になると確信していました。
 住友スリーエムでの最初の一年間、政策研と民間企業の違いにより生ずる米国のビジネス・ノウハウと日本のビジネス・ノウハウの違いに慣れることが一番困った点でした。しかし政策研の経験で日本の政府や官僚のスタイルが一応に分かって、自分の経験でどのようにプロジェクトや政策を作り出すか少しずつ分かってきました。そして、Deutsche−Japonische Instituteで後藤先生の下でプロジェクトされた講演のシリーズから習った情報も作用しました。直接に作用する情報よりバックグラウンドとして素晴らしかったと思います。 政策研の経験で学んだことのもう一つは、情報を見つけるためにどこでどのように探せば良いかという能力です。一番役に立つ情報はほとんどいつもgrey literatureにのっていると思います。
 住友スリーエムに入ったところ私たちのITSに対する一番大きいミスは日本のITSの情報を勉強する以前に3Mで6週間の研修をしたことです。このミスの結果は日本のITSを3Mの立場から分析して誤りもでてきました。5年前でしたら米国のITSのレベルはとりあえず世界で一番でしたが現在では少しずつ日本がシーヅや技術の開発で追いつき、現状は世界をリードしていると思います。数ヶ月後、どのぐらいの「ロ−カライゼイション」が必要か明確になってきました。望ましくは、もちろん、日本の市場のニーヅに対する新商品を作ることです。しかし日本の道路のシステム、交通の特徴を3Mに伝えることがときどき難しかったです。(一番難しいことは、アメリカで規則を作り直すことは一般的ですが日本では、政府の規則が堅固であるなら、新しい技術を開発する方がもっと普及しやすいです。)文化の違いでも問題がおこりました。例えば、「Aについての情報が早目にほしいです。」という依頼は、日本の会社なら「なるべく早く情報がほしくて明日の朝までにお願いします。」という裏の意味があります。そのまま直訳して米国の会社に情報を依頼したら「まあ。。。6週間後でもいいだろう。」という反応です。
 もう一つ政策研の経験が役に立ったのは勉強会です。二年前ぐらいに私はUTMS(社団法人新交通管理システム協会)の新しいWorking Group「交通需要マネジメント」が設立されて、参加しました。 素晴らしくて面白い経験です! 今「ロード・プライシング」の原則を勉強して、日本の都市にどのぐらい使えるか分析しています。もし、出来上がったら世界で一番高度なシステムになるでしょう。
 住友スリーエムのITSには色々なプロジェクトがあります。3Mの「Opticom」という信号の優先制御システムは米国を中心に世界各国で1000都市以上において35,000を超える交差点に実用されています。去年住友スリーエムは警察庁と新交通管理システム協会の供与研究プロジェクトでtest case をしました。OpticomをIRビーコンのシステムに繋いで効果を確かめました。基本目的を3月の初め受けて、system design、技術開発、ほかのメーカーの部品とのinterface を相談して決定した上で、製品を作ったり、送って貰い、工事とdebuggingもできて、7月1日からデモができました。本当に速いプロジェクト時間表でした。東京の弁天町と千葉の東船橋にテスト・システムを二ヵ所設備しました。(場所によって構造、システムの複雑さが違います。)今、改良した第二のシステムを検討中です。Opticomの部分と別の部分(例えば信号制御機)のインターフェースを設定することは一番複雑な点です。日本、米国の交通制御機の規則は両国共に国内だけのものですから私は窓口として翻訳をよくしています。
 政策研時代の関係で言えば、そこで得た情報が活かせる新しいプロジェクトである燃料電池に6ヶ月前から参加しはじめました。3Mでは3,4年前研究し始めて去年ビジネス・プログラムとなりました。(最初の数ヶ月はプロジェクトの人たちは米―欧―日に滞在しているのでテレビ会議の時間を調節するのが大変でした。)燃料電池は日本が大変強いです!住友スリーエムはいま日本の可能性を検討中です。日本のエネルギー政策や市場の分析がもちろんが大切です。残念ながら米国の石油の値段は政治的立場から低すぎるから燃料電池の導入が日本と欧州より遅いと思います。技術の開発にも「のんびりしてもいい」という影響がつよいです。私の個人的な意見は、これはひどい誤りだと思います。燃料電池のような「革命的な技術」の導入は予測より遅れるかもしれませんが、とにかく近々(2010年まで)です。米国の自動車会社は米国の市場以外、余り注意を払っていないようです。世界の経済がだんだん統一されてきましたから欧州、日本の会社が燃料電池の自動車を作ったら、世界にすぐにでも発売することができます。(米国の電力会社の方がもっと先進的です。)米国自動車会社は米国の市場で売れるまで待つ「追いつく・プレーア」という立場しかありません。そして、排気ガスの規則もだんだん厳しくなる傾向がみられるから急に燃料電池自動車や電気自動車しか適合しない「超低排気規則」が日本、欧州に施行されたら米国の自動車会社は米国以外の市場から閉め出されてしまうでしょう。 最後に、政策研での最も良い経験は友達です。もう何年間も毎年のクリスマス・パーティーが「1066」というレストラントで行われていて政策研からのともだちも参加していました。おもには何年間もの政策研の経験と良い関係の楽しい思いが出来ました、これらは何年間も続いてほしいと願っています。

本稿はタニヤさんが日本語で執筆されたものです。

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米議会の予算審議
日本原子力研究所ワシントン事務所 科学技術政策研究所海外客員研究官 西村良弘

 米国における予算審議は各省庁の要求を調整して作成された政府要求が2月、大統領予算教書として議会に送付されるとことから始まります。これは議論の出発点であり、いわばたたき台となるものです。これを受けて予算委員会は予算決議(Budget Resolution)を行い、次いで歳出委員会が全省庁をカバーする13の歳出法案(Appropriation Bill)を決定します。前者はいわばこれこれの事業にはかくかくの予算を配すべきであるとするものであるのに対し後者は具体的な歳出自体を決定するものです。法案は大統領が署名して成立し、執行されますが、新年度入りをする10月の前には出来ていてしかるべきところ大統領(民主)と議会(共和)の関係が緊張をはらんだものとなっている最近では数次の暫定とか極端な場合には一部政府部局の停止ということになります。1月政府案提出、3、4、月成立という我が国に較べて、夏季休会を間にはさんだ複雑なプロセスにより相当な時間を要します。ところで13の歳出法案は上下両院の担当歳出小委員会で具体的に積み上げられてゆきます。当然、上下両院の積み上げはしばしば大きく異なってきますので、両院協議会のプロセスは必須のものとなります。「具体的に」、とは実に細かく検討が加えられるということであって、例えば2000年度のエネルギー省予算をとると、科学予算の目玉である核破砕中性子源(SNS)はプロジェクト管理体制に問題ありとして政府要求2億ドル余に半減のナタを振るっています。金額以外でも去る12月に閉鎖が決定されたブルックヘプン国立研の高中性子束炉(HFBR)については汚染発見以来、地元議員の要求により運転再開への資金使用禁止条項が法案に盛り込まれております。この条項は同炉運転再開断念の要因になったと見られております。その他必要な事項について様々な注文がつきます。このようにプロジェクトの意義そのものだけではなく、マネージャーやマネージメント、予算超過の可能性、背景となる業界、学界、地元等との関係は省庁と議会サイドの気の抜けないネゴジエーションのポイントであります。細かく見てみる例としてもう一つ、エネルギー省国立研では従来、予算の6%を限度として各研の自主運用に委ねる自主裁量枠(LDRD :Laboratory Directed Research and Development)が認められていましたが、議会はその審査権を逸脱しかねないものとしてこれを4%カットしています。これなどは各研究所の独創性を助長し、優れた研究人材をリクルートする原資として活用されたもので、同省幹部から不満がもれてきています。予算には運不運もあって、現政権は情報、地球環境好きですが、議会は必ずしも同調せず、他方、医学保健学好きで担当機関のNIHは大盤振る舞いを受けた旨伝えられております。
 米国では研究資金は厳正な審査を経て交付されていると一般には考えられているようですが、新聞の伝えるところでは、大学の研究所によっては面倒で時間のかかるこうしたピアレビューのプロセスを避け、議員にロビー活動をして法案に小さな1条項を盛り込み、手っ取り早く研究や施設整備を進めるところが出てきているとのことです。勿論、こうした動きを厳しく批判する識者も多いのですが…。いずれにせよ米議会での予算審議は、個々のアイテムについて具体的に議員、議会スタッフ、ロビイストらが入り交じりつつ、彼らの個性を大いに反映して組み上げられているように思います。

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Ⅳ.最近の動き


中国科学技術促進発展研究中心との研究協力開始について
情報分析課特別研究員 花井光浩

 平成12年1月16日(日)から19日(水)にかけ、当研究所と中国科学技術部科学技術促進発展研究中心(NRCSTD)との間における科学技術政策研究の協力・研究者の交流促進等に係わる覚書の署名、および、その具体的研究協力内容の打ち合わせを中国北京市で行った。  柴田所長と王NRCSTD所長との間で取り交わされた覚書の内容は次のとおりである。
 科学技術政策研究所と中国科学技術促進発展研究中心は日中間におけるより深い関係と理解を促進する事を目的とし、科学技術政策研究における協力から得られる双方の利益を認識し、以下の協力を行うことを合意する。
(1) 利用可能な資源の範囲内で、かつ、望ましい科学技術政策研究の協力。この協力は、共同研究、研究打ち合わせ、セミナーや集会の開催等を含む。
(2) 利用可能な資源の範囲で、かつ、望ましい短期及び長期間の情報及び研究者の交流。
(3) 両機関によって合意された他の活動。
 協力の予定は、2000年1月17日からの3年間有効とする。終了時に、両者の検討により延期できる。
 具体的研究協力内容については、現在詰めているところではあるが、「日中間の技術貿易の現状と課題についての分析」や「技術貿易が産業構造や経済へ与える影響についての分析」等を行っていく予定である。
 なお、この研究協力は、両国の科学技術の発展に寄与すると同時に、日中間におけるより深い関係と理解を促進する良い機会であると注目されており、署名式には中曽根科学技術庁長官および朱中国科学技術部長(大臣)が立会下さるという当研究所の歴史に喜ばしい1ページをつづることができた。

 


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「企業経営・技術戦略の変遷に関する研究会」の設置について
企画課長 植田昭彦

 我が国はこれまで、いくつかの困難な時期を主として民間企業の活力により乗り越えおおむね順調に発展してきました。しかし、現在産業構造の空洞化が進み、少子高齢化が予測されるなど民間企業をとりまく状況を含め我が国の将来は不透明になりつつあります。21世紀が始まろうとする現在、今世紀における民間企業の発展、成長の軌跡を明らかにし、日本企業の成功の要因を正しく把握しておくことは、今後の我が国の発展を考える上で極めて重要です。このため当研究所では、20世紀における民間企業の経営と研究開発活動の総括を行い、21世紀の科学技術政策の展望を得ることを主な目的として、昨年12月、所内に「企業経営・技術戦略の変遷に関する研究会」を設置しました。本研究会では次のような課題についての検討を行うこととしています。
(1)民間企業の経営、製品開発、技術戦略等についての歴史的考察
(2)民間企業の経営、製品開発、技術戦略等に関する現在の課題と今後の展望
(3)上記(1)と(2)を踏まえた今後の我が国の科学技術システムのあり方について
なお、研究会では産業界の有識者を講師として招聘し、講師による御講話、講師との意見交換等を踏まえつつ、検討を進めることにしています。

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○ 主要来訪者一覧
・1/21    Dr. Anung Kusnowo: LIPI総務担当局長 インドネシア
・1/16-29  Dr. Gronning Tereje:Research Fellow, Center for Technology,
 Innovation and Culture, University of Oslo ノルウェー
・1/23-2/23 Dr. Paul Collins:Professor, University of Washington 米国
○ 「地域科学技術政策研究会」のお知らせ
・3/14-15 「地方公共団体の研究評価の手法とそのあり方について」 
 於:JST(千代田区四番町) 基調講演:西澤潤一岩手県立大学学長(予定)




編集後記

 

 南の方から桜の便りが届いてもう春はそこまで来ていそうです。
 写真でご紹介のように中国科学技術部(省)の政策研と当研究所との研究協力がスタートしました。両大臣立会いのプロジェクトだけに、いっそう大きな成果を収穫したいものです。
 当研究所には常時5-6人の外国人研究者が滞在しています。ものの考え方など研究の幅を広げるのに役立つのみならず、当研究所のファンになって去る人が多いようです。日本語の堪能な人が多く今回もその一人からご投稿頂きました。
 2月号でお知らせしました当研究所及びAPEC技術予測センター主催による技術予測国際会議の詳細情報が決まりました。欧米・アジア各国から15人以上のゲストスピーカーが出席します。ご関心の方はどうぞお問い合わせ下さい。(問い合わせ先:matukubo@nistep.go.jp)
 下記にあります当研究所の「ホームページ」及び「E-mail」につきましては、一連のホームページ改ざん問題に伴いセキュリティ強化等の設置のため停止いたしております。皆様には不便をおかけいたしておりますが、もうしばらくの間ご理解ご協力下さるようお願いいたします。(Y)



科学技術庁科学技術政策研究所広報委員会(政策研ニュース担当:情報分析課)

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