No.105 JUL 1997

科学技術庁科学技術政策研究所
NATIONAL INSTITUTE OF SCIENCE
AND TECHNOLOGY POLICY

目次 [Contents]レポート紹介 Highlight of the New Report
最近の動き Current Topics


所 長 挨 拶


 7月1日、科学技術政策研究所長に就任いたしました佐藤征夫でございます。
 科学技術政策研究所は、効果的な科学技術政策の展開の基礎となる研究を行うため、昭和63年に科学技術庁傘下の国立研究所として設置されました。以来、設立10年度目を迎える今日まで、政策上の重要課題に関する理論的・実証的な調査研究を進めるとともに、国際的にも海外機関との活溌な研究交流を進めて参りました。本年3月には、当研究所主催のワークショップが、海外機関から多くの参加を得つつ、国内外の注目を集めて開催されたところでございます。
 近年、科学技術を取りまく環境は大きく変化しつつあります。科学技術創造立国のスローガンの下、平成7年11月には「科学技術基本法」が成立、平成8年7月には「科学技術基本計画」が策定され、これに伴い、政府の科学技術に対する投資の拡大や様々な制度的な改革が行われつつあります。また、一方で、行政改革の流れにおける種々の論点の一つとして、科学技術行政システムのあり方も議論されているところであります。財政構造改革会議の議論においては、国家財政の厳しい環境にあって科学技術関係予算は例外的に増額を認められているところであり、このことからも政府の科学技術に対する大きな期待が伺われます。
 そのような中、科学技術政策を専門的に研究対象として扱っている当研究所の果たす役割は、非常に大きなものであると言えましょう。私といたしましても、当研究所がこのような時代の要請に応えていけるよう、皆様のご支援を受けつつ、職務に邁進して参りたいと存じます。


Ⅰ.レポート紹介/Highlight of the New Report

先端科学技術動向調査(物質・材料系科学技術)
(NISTEP REPORT NO.49)

情報分析課   井上 恒雄   

        渡辺 俊彦   

1. 調査の概要
 科学技術会議の政策委員会では、近年、科学技術の重要性が従来に増して高まっていることを踏まえ、研究開発基本計画等に基づいて進められている研究・開発活動の一層の促進を図るためには、個別の分野別答申、意見に示された研究開発基本計画等について、計画期間の中間段階で研究開発目標の達成状況の把握、問題点の分析等の評価を行うことが必要であると判断した。
 そこで当科学技術政策研究所では、その一端を担い、研究・開発の現状をアンケート等により調査・分析することとなった。
 今回、調査対象となったのは、研究開発基本計画が策定された後相当の期間が経過している物質・材料系分野(昭和62年8月に策定された第14号答申)である。
 したがって、本報告書は、今後の物質・材料系科学技術の一層の推進を図ることを目的に、次の事項について調査した結果をとりまとめたものである。
・科学技術会議において策定された諮問第14号「物質・材料系科学技術に関する研究開発基本計画について」に対する答申(以下、第14号答申という。)に記載された重要研究開発目標の達成状況、問題点等の調査
・今後の重点研究・開発課題、および、研究・開発推進に当たっての改善点等の調査
 調査は、物質・材料系研究を実施している国公立試験研究機関、国公立・私立大学、民間企業の研究者10,951人を対象にアンケート調査を実施し、回答のあった3122人の結果を分析した。

2. 調査結果の概要
(1)重要研究開発目標の実施状況
第14号答申では、今後進めるべき研究・開発の方向を、次の4つに集約している。
① 理論的、体系的に新物質・材料を開発していくためには、ミクロレベルにおける現象の解明を中心とした研究が重要であり、物質・材料に係わる新現象の探索と諸現象について理論的に解明する。
② 反応環境の制御、構造の制御、生体機能の応用、物質・材料の設計といった手法を駆使することにより、革新的な機能を有する物質・材料の創製を目指す。
③ 基礎的研究によって得られた知見等を積極的に活用したり、加工技術、信頼性技術等を確立するなどして、広範な各分野のニーズに対応した材料技術の開発を推進する。
④ ビーム発生技術、極限環境発生技術、解析・評価技術等の共通・基盤技術の開発を図る。
 今回は、これらの基本的な考え方に基づいて具体的に展開された研究・開発課題について、進捗状況、研究成果の有無、研究の重要度、今後の見通し、欧米比較等を研究者にアンケート調査したものである。
 ここでは、アンケート結果に基づき、研究者の研究評価に対して特に特徴的な傾向を示した研究・開発課題について、簡単に紹介することとする。
 なお、グラフは、「かなり進捗した」「かなりの研究成果が得られた」等、研究状況を高く評価した回答比率を内側の濃い色の部分に、また、この比率に「まあまあ進捗した」「まあまあの研究成果が得られた」等、まあまあと評価した回答比率を加えた結果を外側の薄い色の部分に示してある。
 研究が顕著に進捗したと評価された研究には、図1、2に示したとおり、「極限環境を利用した革新的な物質・材料の創製」や「情報・電子系科学技術分野」があげられる。
 特に、半導体材料の開発では、超LSI技術により非常に研究が進展したと評価していた。


▼図1 極限環境の利用 ▼図2 情報・電子系科学技術分野
(革新的な物質・材料の創製) (ニーズに対応した材料技術の開発)


 逆に、図3、4のように、「材料評価技術・材料保全技術」や「革新的な物質・材料を創製するために、原子、分子等ミクロレベルで物質・材料を設計する研究」では、研究成果があまり得られていないことが分かる。
 特に、複合材料に代表される新材料の安全性、信頼性評価手法の研究は、先進各国でも急がれているようであるが、材料開発のスピードに間に合わず進展していないようである。

▼図3 材料評価技術・材料保全技術 ▼図4 物質・材料の設計
(共通・基盤技術の開発)(革新的な物質・材料の創製)

 欧米諸国との研究状況の比較においては、図5のとおり、組成調整、結晶構造制御等といった「構造を制御する研究領域」では、日本優位との評価結果となったが、「生体機能の応用」、「物質・材料の設計」といった研究領域においては、かなり欧米優位と評価していた。
 また、全般的に「革新的な物質・材料の創製」や「新現象の探索及び諸現象の理論的な解明」といった基礎的な研究・開発は、日本が弱いという状況が未だ改善されていない結果となった。
 なお、グラフは、日本優位と答えた人を1点、欧米優位と答えた人を−1点、同レベルと答えた人を0点として合計し、平均値で示してある。

▼図5 欧米比較


 研究が進捗しなかった理由としては、全般的な評価として図6のとおり、予算不足、人材不足等に問題があった。
 所属別の特徴としては、国公立試験研究機関の研究者は、「研究人材の不足」、国公立・私立大学の研究者は、「研究予算の不足」「研究設備の不備」、企業の研究者は、「技術面の問題」「製品コストの問題」に関し、問題意識が高い結果となっていた。

▼図6 研究が進捗しなかった理由


(2)今後の重点研究・開発課題
 ここでは、研究者が今後どのような研究・開発課題に取り組みたいか、あるいは、日本はどのような研究・開発課題に取り組むべきかについて調査し、その結果をとりまとめた。図7は、日本がチャレンジすべき研究・開発課題について、その研究成果をどのような方面に適用すべきかについて調査した結果をとりまとめたものである。
 この結果、資源・エネルギー、リサイクル問題や公害の軽減、地球環境問題等、地球規模での対応が迫られている問題への高い研究意欲が示された。
 これは、研究者が、今後日本の研究水準が世界におけるフロントランナーとしての地位を保ちつつ、かつ、グローバルな視点にたった研究・開発の推進が重要であるとの認識のもとに、これらの研究課題に積極的に挑戦しようとすることによるものであった。
 この結果と第14号答申の研究課題の適用方面と比較すると、明らかに差が見られる項目があり、これは、基礎的な研究に重点が置かれていた第14号答申に比べて、この10年間の物質・材料系分野を取り巻く環境変化等に伴い、研究者の関心が社会的・経済的ニーズへと大きく変化してきていることを示している。

▼図7 研究成果の適用方面(第14号答申の課題と日本が今後チャレンジすべき課題)


 しかし、研究者の関心が変化してきたとはいえ、依然として図8のとおり、官・学の研究者は、基盤的基礎技術の推進に非常に意欲的であり、一方、企業の研究者は、資源・エネルギー、地球環境等ニーズに対応した研究の推進に意欲的であるといった特徴を示していることから、それぞれの研究スタンスの明確化を図りながら、互いの交流を積極的に進めることで、研究がより一層促進されるものと予測される。

▼図8 日本が今後チャレンジすべき課題の研究成果の適用方面


 今後の物質・材料系分野の研究・開発を推進させるためには、図9のとおり、人材、予算、研究交流、基礎研究の充実・強化が必要であるとの結果となった。所属別の特徴としては、国公立試験研究機関、企業の研究者は、「研究人材の確保、養成」、国公立・私立大学の研究者は、「研究・開発資金の充実」に対して特に強い改善要望を持っていた。

▼図9 改善点


(3)総括と提言
 これらの調査結果から、物質・材料系分野の研究・開発推進のため、次の事項を進めることが必要であると考えられる。
① 世界におけるフロントランナーの地位に相応しい先端的基盤研究の推進
 ・第14号答申に沿った基盤研究の推進
 ・物質・材料設計、プロセス技術の高度化・総合化
② 独創的かつ波及効果の大きな研究・開発の推進
 ・物質・材料探索の効率化
 ・実用化を図るための新技術の開発と確立
③ 社会的・経済的ニーズに即した総合的な材料研究・開発課題の設定と推進
地球環境、資源・エネルギー等の地球規模の諸問題の解決
 ・構造用材料の再利用容易化、長寿命化
 ・太陽光発電用材料・デバイスの開発
エレクトロニクス関連分野の推進
 ・光、メデイア材料(新型半導体材料、新超伝導材料等)の開発
ライフサイエンス関連分野の推進
④ 次世代を担う研究者の育成・確保
 ・研究者、研究支援者のポスト数の確保
⑤ 新たな総合的研究・開発体制(スパイラルダイナミズム)の構築
 ・交流型の研究・開発の活発化
 ・マネージメント業務への第一線の研究者登用
⑥ 独創的、ブレークスルー的な研究・開発の強化に向けた研究環境の国際化
 ・世界最先端の研究施設の充実
 ・グローバルスタンダードに沿った研究組織運営、研究支援体制
⑦ 知的・情報流通基盤の整備、国際的な標準化の推進
⑧ 評価システムの早期構築と運用
 ・物質・材料系研究・開発固有の評価指標


韓・日両国における科学技術諮問・審議機構の比較
(調査資料・データー48)

第3調査研究グループ   尹 大洙   

1.まえがき
 国家政策において科学技術が持つ意味や含蓄はだんだんその重要性が大きくなっていくだろう。日本で1995年11月超党派の議員立法で「科学技術基本法」が制定され、また韓国でも1997年4月科学技術革新を積極的に推進するための「科学技術革新のための特別法」が制定されたことも、このような国家政策の重要要素としての科学技術に対する認識を示していると思われる。
 したがって科学技術について最高政策決定権者に助言・建議し、関係省庁の科学技術政策を総合調整し国家政策の一貫性・効率性確保することは大切だと言える。
 本研究ではこのような観点から日本における科学技術分野の最高諮問機構である「科学技術会議」と、韓国における大統領に対する科学技術分野の諮問機構である「国家科学技術諮問会議」及び科学技術政策の総合・調整を主な機能とする「綜合科学技術審議会」を比較してみた。各機構についてそれぞれの構成、組織等機構の外的形態及び機構の運営、役割等仕組みを検討し、活動結果としての科学技術会議の答申、国家科学技術諮問会議及び綜合科学技術審議会の案件を分析した。また、これら検討・分析に基づいて韓国の両機構と科学技術会議を比較し、それから得られることからいくつかの示唆される点を導出した。

2.両国機構の比較
(1) 機構の構成面において、科学技術会議が最高政策決定権者である内閣総理大臣を議長とし、関係大臣と有識者議員で構成されているに対して、綜合科学技術審議会は外形上の構成は似ているが、その議長が大統領制において実質的調整・統制権が弱い国務総理である点が違う。国家科学技術諮問会議は委員長が国務大臣級であり、委員がみな専門家であることは、科学技術会議と比べると、機構の長による機構自体の位相差異はもとより、それによってその報告・建議の意味においても科学技術会議の答申とは差異があると言えよう。
(2) 答申・案件の形成過程において、科学技術会議の答申が専門家の意見を収斂し、コンセンサスに基づいて形成されるに対して、綜合科学技術審議会の場合は下に設置されている分野別専門委員会のように、専門家の意見が反映される装置は備えられているが、実際にはあまり活用されず、官僚中心に議案が形成されていると言える。
 答申・案件の内容・性格面において、科学技術会議は科学技術に関する総合的・長期的国家計画としての性格を持つ答申の提出という形式を通じて民間部門や国民一般に対して政策の長期ビジョンを提示するといえよう。一方、各答申は科学技術全般について政策方向や推進施策を提示する「基本答申」と特定分野だけを対象とする「分野別答申」に区分できるし、後者はまた科学技術人材の確保や科学技術情報の流通体制の構築のように科学技術振興のための環境や基盤の整備に関する「基盤に関する答申」と、エネルギー、ライフサイエンス等ある科学技術分野において研究開発課題や推進方策を示す「技術分野答申」に分けられるが、基本答申と基盤に関する答申、基本答申と技術分野答申の間に、それぞれ補完・発展関係、総論−各論関係が見られることや、答申全体が1つの政策体系として成立している点が特徴として指摘できる。これに対して、科学技術諮問会議と綜合科学技術審議会は総合的国家計画の樹立に参加しないことから同案件は総合的・長期的国家計画の性格は持っていないし、国民に対するビジョンを提示することはない。綜合科学技術審議会の案件は関連部処の間の調整・協調に重点を置いた実践計画の性格を持っていると言える。一方、科学技術諮問会議の案件は国内与件変化による時事性ある問題、あるいは大統領をはじめに政策決定者が知らなければならない重要な問題について情報を提供し、関心を喚起させることに重点を置いていると言えよう。
(3) 組織・活動面において、科学技術会議は、政策委員会、部会及びその下の小委員会、懇談会等傘下組織を活用し、科学技術政策及び研究開発プログラムに関する調査・検討や意見収斂、国際関係活動等幅広い活動を持続的に展開している。科学技術諮問会議も事務局を下に置いて、また、100人以上の専門家プールを構成・活用することによって持続的に政策開発・課題研究を行っている点において科学技術会議に似ている。他面、綜合科学技術審議会の場合は傘下組織である総括調整分科専門委員会の位置が政策委員会に似ているが、実際の機能面においては議案の事前調整に限定されているし、政策開発のための持続的活動は行っていないことが差異であると言える。また、科学技術会議の常勤議員制度に対しては3つのことが指摘できる。まず、常勤議員が任期期間中安定的に同会議の活動に専念できることから会議運営の専門性・安定性が確保できることである。次は、常勤議員を通じて連結される科学技術本会議と政策委員会、部会等傘下組織においての人的構成の一貫性が科学技術会議の活動においてコミュニケーションを円滑にし、一貫性ある政策形成に繋がる点である。もう1つは、政策委員会の委員長を特定省庁の人物ではない科学技術分野の元老である常勤議員が務めることによって比較的同委員会の中立性・客観性が確保され、微妙な事項を巡る関係省庁間の葛藤の余地を減らす点である。
(4) 機構の運営面において、科学技術会議が時期に関係なく比較的安定的な活動をしてきているに対して、科学技術諮問会議は時期によって大統領への報告回数に甚だしい差異がある等大統領の関心によってかなり運営に影響を受ける傾向があると言えよう。一方、綜合科学技術審議会は1973年設置された以来1989年まで4回しか開催されなかった。1990年からは運営が活性化され、年1回程度開催されているが、国家科学技術政策の総合調整という本来の役割を果たすためには開催回数を増やすことが必要であろう。
(5) 科学技術会議は構成・組織面及び関連政策の総合調整という本来の機能面においては綜合科学技術審議会に似ているが、国家計画の性格を持つ答申を通じた長期ビジョン提示及び政策委員会を通じた実際の活動の面で、綜合科学技術審議会より活動の幅が広いといえよう。
 また、科学技術会議が最高国政責任者に対して意見等で建議することは科学技術諮問会議に似ていることを考えると、科学技術会議は韓国における国家科学技術諮問会議と綜合科学技術審議会の両機構及び国家中長期計画樹立のため限時的に設置される委員会(例:経済社会発展5個年計画科学技術部門委員会)を合わせた機能をしているといえよう。
(6) 機構の役割面においては、科学技術会議と綜合科学技術審議会ともに国家科学技術政策の総合調整機能が弱く、科学技術に関する最高政策調整機構として期待されている役割を果たしていないと言えよう。ただし、科学技術会議の場合、長期国家計画を通じたビジョンの提示というガイドとしての役割は果たしてきたと言えよう。また、科学技術諮問会議の場合も科学技術分野において各界の意見収斂、関連政策対案の提示等それなりの役割を果たそうとしてきたが、まだ科学技術分野の最高諮問機構としての位相が確立されたとは言い難いと思われる。

3.示唆点
(1) 科学技術会議の場合、同会議が国民から期待されているように関連機関の政策を総合調整し、また、国家全体の立場からの戦略的・効率的科学技術政策を樹立・提示する役割を果たすためには、同会議が提示する政策と予算との連携を強化することが緊要であり、さらに、関係省庁の同会議への積極的参加と協力が求められる。
 政策と予算との連携を強化するためには、科学技術分野の予算については科学技術会議が編成・配分権を持つのが望ましいが、現実的に実現が難しいので、科学技術に関する経費の見積もり方針の調整権限の強化と科学技術振興調整費の拡充が考えられる。前者は現在科学技術庁が作成し、科学技術長官から関係省庁大臣に通知しているが、それを科学技術庁長官の代わりに内閣総理大臣が科学技術会議議長の資格として通知し、同方針にある程度強制力を与える方法が考えられる。後者は今も科学技術会議の後続措置手段として有用に活用されているし、その規模も毎年増加しているが、まだ科学技術政策の調整手段として十分とは言えないことから、同調整費を科学技術関係経費の中でもより高い比率で増加させることも考えられる。
 また、関係省庁の積極的参加及び協力を求めることについて根本的課題は、科学技術会議の議長を務めている内閣総理大臣の内閣に対する調整・統制権を強化し、実質的に行政各部を指揮・監督できるようにすることであると思われる。そのため内閣総理大臣が主要政策を閣議に提案することや、必要な場合には閣議の決定に基づかなくても総理大臣が自ら省庁に指示することができるように関連法規を改正することが考えられる。さらに、現在科学技術庁と文部省が担当している庶務機能を統合し、担当組織を拡大・強化して各省庁から独立された別途事務局として内閣総理大臣直属に置くことも考えられる。ただし、このように科学技術会議の事務局が各省庁から独立され、科学技術政策の総合調整のための独自の機能を拡充していくと関連省庁、とりわけ科学技術庁との間に科学技術政策の調整を巡って葛藤が生じる素地があるので、両者間協議チャンネルの確保、人的交流強化等の協調強化方策も併せて講究しなければならないと思われる。
(2) 国家科学技術諮問会議の場合には、同諮問会議がもっと積極的役割を果たすためには報告・建議された事項の履行・後続措置に関する法的根拠等制度的後押しが必要であろう。また、同諮問会議の活動が大統領や委員長個人の関心等に左右されることなく安定的に運営されるように関連規定をより強力にする必要があると思われる。さらに、事務局を実質的に独立させ、組織を拡充・整備することによって、関係部処との協議・調整機能及び諮問会議に対するサポート機能を強化していくことも必要であろう。
 さらに、同諮問会議が諮問機関として意味を持つため重要なことは、同諮問会議が科学技術界の要求と意見を収斂し、政策決定権者に伝えることによって科学技術現場と政策決定権者を連結するコミュニケーション通路の役割を果たすことだと言えよう。また、時事性ある問題について迅速に大統領に報告・建議することも大切であるが、より長期的・総合的観点から国家が推進すべき科学技術政策の方向を提示する先導的役割を果たすことも欠かせない任務だと思われる。
(3) 綜合科学技術審議会の場合、同審議会の活性化のために必要なのは、同審議会で審議・議決された事項が予算で支えられ施行されることであり、予算との連携性をどのように確保するかということが同審議会のこれからの運営においてもっとも重要なポイントだと言えよう。ただし、構成面においては現在13個という多く部処の長官が当然職委員になっていて機敏な運営が難しいし、経済長官会議等他の会議と差別性があまりないことから、当然職委員の長官数を減らす一方、委員ではない長官に対しては必要な場合会議に参加させることができるようにする必要があると思われる。
 また、同審議会の運営を活性化し、政府横断的総合調整機構としての性格をもっと明らかにするためには、各個別法律によって同審議会とは別に該当分野において議決・調整機能を行っている各種の科学技術関連委員会と同審議会を連携させる装置が必要であろう。例えば、個別法律に基づいた国家研究開発関連計画の樹立の際、その結果を同審議会に報告するようにするか、研究開発予算を伴う計画の場合、予算部処が予算審議の時、同審議会との協議結果を重視する等の方策が考えられる。


Ⅱ.最近の動き/Current Topics

○ 講演会等/Lectures at NISTEP
 ・6/25(水)  「経営におけるコンセプトエンジニアリング」
 旭岡 勝義 (東芝情報・通信システム部長)

○ 主要来訪者一覧/Foreign Visitors to NISTEP
 ・6/10      Mr. Paul Dufour カナダ科学技術政策研究所
Mr. Thierry Weissenberg カナダ科学工学会議

○ 人事往来
 ・7月1日付けで、宮林正恭所長が科学技術振興局長に転出し、後任には佐藤征夫通商産業大臣官房審議官が就任しました。
又、同日付けで林光夫総務研究官が衆議院事務局庶務部副部長に転出し、後任には上原哲研究開発局地震調査研究課長が就任しました。

○ 海外出張
 ・6/7-14   前澤第一調査研究グループ総括上席研究官(仏、英国)
 ・6/9-14   桑原第二調査研究グループ総括上席研究官 (タイ)