1.3.3大学部門の研究開発費

ポイント

  • 2016年の日本の大学部門の研究開発費は3.6兆円である。長期的に見ると漸増傾向であったが、2013年以降、微減している。また、日本(OECD推計)の値は2.1兆円である。各国の状況を見ると、米国は世界トップクラスの規模を維持しており、2016年では6.8兆円となっている。中国は2011年で日本(OECD推計)を上回り、2016年では3.1兆円となっている。ドイツは2000年代後半から増加傾向にあり、2016年では2.2兆円となり、日本(OECD推計)を追い抜いた。
  • 2000年を1とした場合の各国通貨による大学部門の研究開発費の名目額と実質額の指数(最新値)を見ると、日本は1.1(日本(OECD推計)は0.9)であり、他国と比較すると低い。米国は2.3、ドイツは2.1、フランスは1.9、英国は2.2である。中国は14.0、韓国は4.1と著しい伸びを示している。実質額での最新値を見ると、日本以外の国では名目額より実質額の方が低い数値となっている。日本は1.2(日本(OECD推計)は1.0)である。他国を見ると、米国、ドイツは1.7、フランスは1.5、英国は1.6である。中国、韓国も名目額よりは低くなってはいるが、8.0、2.9と他国と比較すると大きな伸びを示している。
  • 大学の研究開発費のうち、政府による負担研究開発費の割合は、フランス、ドイツ、韓国で約80%と高い値になっている。次いで、中国、英国、米国、日本と続いている。推移を見ると、2010年頃まで韓国が大きく増加しており、ドイツが緩やかに減少している。その後は両国共に横ばいに推移している。その他の国では、2010年以降、米国が微減、中国が微増し始めている。
  • 大学の研究開発費のうち、企業による負担研究開発費の割合を見ると、ほとんどの国で大きな変化は見られないが、長期的にドイツの増加と韓国の減少が見える。最新年の状況を見ると、中国が最も高く、次いでドイツ、韓国、米国、英国、フランス、日本と続いている。
  • 日本の大学等の研究開発費を学問分野別で見ると、1990年代後半以降、保健のみが増加し、他の分野は横ばい、もしくは微増で推移している。
(1)各国大学部門の研究開発費

 大学をはじめとする高等教育機関は、研究開発機関としての機能も持ち、各国の研究開発システムのなかで重要な役割を果たしている。1.1.2節で示したように、主要国では国全体の研究開発費の1~3割程度を使用している。
 高等教育機関の範囲は国によって異なるが、各国とも大学が主たるものである。また、どのレベルの機関まで調査をしているかも国によって差が出る。
 どの機関を対象としているかを簡単に示すと、日本は大学(大学院も含む)に加えて、短期大学、高等専門学校、大学附置研究所及びその他の機関が含まれる(14)。米国に関してはUniversities & Colleges (年間15万ドル以上の研究開発をしている機関、FFRDCsは除く)、ドイツはUniversities、Comprehensive universities、Colleges of theologyなどである。フランスは国立科学研究センター(CNRS)、大学を含む高等教育機関及び国民教育省(MEN)所管以外のグランゼコールである。大部分の国々では研究開発統計の調査範囲は全分野となっているが、米国についてはS&E(15)の分野であり、韓国は2006年まで自然科学分野のみを対象としていた(図表1-1-4参照)。
 大学部門の研究開発費を算出するには、教育活動と研究開発活動を区別して、経費を集計する必要があるが、一般的にそれは困難である。
 日本の大学の研究開発費は、総務省の研究開発統計「科学技術研究調査」による。この調査では研究開発費の内数として人件費についても集計しているが、この人件費は「研究以外の業務(教育など)」を含む総額データとなっている。
 日本の研究開発統計では、大学部門についてフルタイム換算した研究者数の統計をとっておらず、さらにすべての教員は研究者として計測されている。しかしながら、教員全員が研究のみに従事していることはあり得ない。このため全教員の人件費が研究開発費に計上されている状態は、研究開発費としては過剰計上となっていると考えるのが自然であろう。
 こうした事実はOECDも認識しているため、OECD統計が公表する日本の研究開発費は1996年以降人件費に対して、1996~2001年は0.53を乗じた値、2002年以降は0.465を乗じた値となっている。なお、2002年以降の補正係数である0.465は2002年に文部科学省が実施した「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査(FTE調査)」から得られたFTE換算係数である。このFTE調査は2008年及び2013年にも実施され、OECD統計による日本の大学部門の研究開発費はFTE係数で人件費分を補正した研究開発費となっている(2009~2012年の間のFTE係数:0.365、2013年以降のFTE係数:0.351)(16)。
 以下においては、日本の大学部門の研究開発費として、OECDが提供している値(「日本(OECD推計)」と明記)と総務省「科学技術研究調査報告」で提供している値(「日本」と明記)を掲載することとする。
 図表1-3-12(A)は大学部門の研究開発費を名目額で示している。2016年(17)の日本の値は3.6兆円である。長期的に見ると漸増傾向であったが、2013年以降、微減している。また、日本(OECD推計)の大学の研究開発費は、2.1兆円である。
 各国の状況を見ると、EUの増加が著しい。2000年代後半は横ばいに推移していたが、近年再び増加している。
 米国の2016年は6.8兆円となっている。長期的に見ると増加しており、世界トップクラスの規模を維持している。
 中国は2000年以降、着実に増加している。2011年で日本(OECD推計)を上回り、2016年では3.1兆円となっている。
 ドイツは2000年代後半から増加しており、2016年では2.2兆円と日本(OECD推計)を追い抜いた。フランス、英国については、長期的に見ると増加傾向にあるが、近年、横ばいに推移している。韓国は着実な増加を見せている。
 次に、2000年を1とした場合の各国通貨による大学部門の研究開発費の名目額と実質額の指数を示した(図表1-3-12(B))。
 名目額での最新年を見ると、日本は1.1(日本(OECD推計)は0.9)であり、他国と比較すると低い。米国は2.3、ドイツは2.1、フランスは1.9、英国は2.2である。また、中国は14.0、韓国は4.1と著しい伸びを示している。
 実質額での最新値を見ると、日本以外の国では名目額より実質額の方が低い数値となっている。日本は1.2(日本(OECD推計)は1.0)である。他国を見ると、米国、ドイツは1.7、フランスは1.5、英国は1.6である。中国、韓国も名目額よりは低くなってはいるが、8.0、2.9と他国と比較すると大きな伸びを示している。


【図表1-3-12】 主要国における大学部門の研究開発費の推移
(A)名目額(OECD購買力平価換算) 

(B)2000年を1とした各国通貨による大学部門の研究開発費の指数

注:
1)大学部門の定義は国によって違いがあるため国際比較の際には注意が必要である。各国の大学部門の定義については図表1-1-4参照のこと。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年まで自然科学のみ)。
3)購買力平価は、参考統計Eと同じ。
4)実質額の計算はGDPデフレータによる(参考統計Dを使用)。
<日本>年度の値を示している。
<日本(OECD推計)>1995年まで見積り値である。1996、2008、2013年において時系列の連続性は失われている。
<米国>2015年は予備値、2016年は見積り値。
<ドイツ>1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。1982、1984、1986、1988、1990、1992年値は見積り値である。1993年値は定義が異なる。1991、2016年において時系列の連続性は失われている。
<フランス>1997、2000、2004、2014年において時系列の連続性は失われている。2016年値は暫定値である。
<英国>大学の1985、1993年において時系列の連続性は失われている。2016年は暫定値である。
<EU>見積り値である。EU-15の1991年において時系列の連続性は失われている。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<日本(OECD推計)、ドイツ、フランス、英国、中国、韓国、EU>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2017/2”
<米国>NSF,“National Patterns of R&D Resources: 2015-16 Data Update”

参照:表1-3-12


 各国の総研究開発費のうち大学部門が使用している研究開発費の占める割合の推移を図表1-3-13に示した。
 日本は、長期的に見れば、1990年代中頃から増減を繰り返しながら、概ね横ばいに推移しており、2016年では19.6%となっている。日本(OECD推計)も同様の動きを見せており、2016年では12.3%である。
 他国を見ると、英国は継続的に増加していたが、2009年をピークに減少に転じている。ただし、2016年では24.6%と他国と比較して最も大きい。
 フランスは1990年代に入ってから増加傾向にあり2000年代後半になると日本を上回っている。2016年では22.0%である。
 米国、ドイツは2000年代に入ってから増減を繰り返しながら、横ばいに推移している。2016年の値は、米国で13.2%、ドイツで18.3%である。
 一方、韓国、中国については、割合で見ると減少傾向にある。これは、総研究開発費のうちでも企業の研究開発費の伸びが著しいためと考えられる。2016年の値は韓国で9.1%、中国で6.8%である。


【図表1-3-13】 主要国の総研究開発費に占める大学部門の割合の推移 

注:
図表1-1-1、図表1-1-5と同じ。
資料:
図表1-1-1、図表1-1-5と同じ。

参照:表1-3-13


(2)主要国における大学の研究開発費の負担構造

 図表1-3-14は主要国における大学の研究開発費の部門別負担割合、つまり大学の研究開発費のうち、各部門がどの程度を負担しているかを示したものである。
 日本及び日本(OECD推計)は、政府と大学の両部門でほとんどを占めている。負担部門として大学が4~5割を占めるのは、日本だけに見られる特徴である。なお、日本の統計において、大学で使用される研究開発費のうち、大学による負担分とは私立大学が負担している金額であり、そのほとんどが授業料収入等の自己資金による研究開発費である。
 米国は政府部門(56.4%)の負担割合が日本と同程度であり、また非営利団体部門(8.8%)も他国と比較すると多くを占めている。
 ドイツは政府・非営利団体の負担が多くを占めているが、企業部門の負担も13.9%と大きい。
 フランスは、政府部門の負担割合が81.3%を占め、他国と比較しても最も大きい。
 英国は、非営利団体部門(15.1%)、外国部門(16.0%)の負担が大きいことが特徴である。
 中国は政府部門の負担も大きいが、企業部門の負担(29.0%)が他国と比較しても、最も大きい。
 韓国は政府部門の負担が多く(78.8%)、また企業部門の負担(12.6%)も大きい方である。
 これまで見たように、大学の研究開発費負担構造は、国によって大きな差異があることがわかった。そこで、負担部門のうち各国共に大きい政府部門と企業部門に着目し、大学における負担割合の推移を見る。
 政府による負担研究開発費の割合の推移を見ると(図表1-3-14(B))、フランスが最も高かったが、最新年ではドイツ、韓国と同程度になっている。次いで、中国、英国、米国、日本と続いている。なお、フランスでみられる2014年の政府負担割合の減少は大学からの負担が増加したためであり、政府からの負担額は微増している。推移を見ると、2010年頃まで韓国が大きく増加しており、ドイツが緩やかに減少している。その後は両国共に横ばいに推移している。その他の国では、2010年以降、米国が微減、中国が微増し始めている。
 企業による負担研究開発費の割合を見ると(図表1-3-14(C))、最新年では、中国が最も高く、次いでドイツ、韓国、米国、英国、フランス、日本と続いている。ほとんどの国で大きな変化は見られないが、2010年代に入ると中国における企業負担割合の減少が見える。


【図表1-3-14】 主要国における大学の研究資金の負担構造 
(A)大学の研究開発費の部門別負担分割合
(a)日本
(b)日本(OECD推計)
(c)米国


(d)ドイツ
(e)フランス
(f)英国


 (g)中国
 (h)韓国
(B)大学における政府負担研究開発費の割合
(C)大学における企業負担研究開発費の割合

注:
国際比較等の注意は図表1-2-3、図表1-2-4と同じ。
購買力平価は、参考統計Eと同じ。
<日本>年度の値を示している。
<米国>2016年は暫定値。
資料:
図表1-2-4と同じ。

参照:表1-3-14


(3)日本と米国の大学における研究開発費の設立形態別資金構造

 図表1-3-15は日米の大学の研究開発統計の対象となっている機関数の変化である。なお、米国は研究開発予算を年間15万ドル以上執行している大学が対象であり、全大学を対象としているわけではない。日本の科学技術研究調査では短大等も調査対象となっているが、ここでは日米比較のため4年制大学のみを取り上げている。
 日本は、国立大学、公立大学が同程度の機関数であり、私立大学が多くを占めている。推移を見ると私立大学が増加しているが近年は横ばいである。2016年度の全体の機関数は778である。
 米国では、州立大学の方が私立大学より多い。2016年度の全体の機関数は640である。


【図表1-3-15】 大学の機関数 
(A)日本
(B)米国

注:
1)日本と米国における大学の対象範囲には差異があるので国際比較する際には注意が必要である。
2)日本の場合、4年制の大学。短大や大学共同利用機関等は含まない。米国の場合、研究開発予算を年間15万ドル以上執行している機関を対象としている。
3)日本の場合、大学等の名寄せは、NISTEP大学・公的機関名辞書(ver.2018.1)に基づき実施した。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」の個票データを使用し、科学技術・学術政策研究所が再計算した。
<米国>NSF.“Higher Education Research and Development”,“Academic Research and Development Expenditures”

参照:表1-3-15


 次に日本と米国における設立形態別の大学の研究資金構造を示す。
 図表1-3-16(A)は日本の大学(4年制大学)を国・公・私立大学別に分けて資金構造を示したものである。国立大学と公立大学の資金構造は似通っている。いずれも「政府」からの資金が90%以上である。「企業」からの資金は国立大学で4.9%、公立大学で2.9%である。一方、私立大学は、自己資金である私立大学からの資金が90%近くを占めている。政府からの資金は10%以下である。また、企業からの資金は1%台である。
 図表1-3-16(B)は米国の大学の資金構造を州・私立大学に分けて示したものである。
 州立大学では、「連邦政府」からの資金が最も大きく51.6%、次いで「機関資金」が26.7%である。「州・地方政府」は7.7%であり、「企業」からの資金は約5%と、「非営利団体」と同程度である。
 私立大学は、「連邦政府」からの資金が最も大きく、62.2%を占めているが「州・地方政府」は1.6%と小さい。また、「非営利団体」からの資金は「企業」からの資金より大きく、7.9%である。
 日本も米国も大学の資金構造には、大学の種類によって差異があるが、日本の国公立大学の資金のほとんどが「政府」からの資金であるのと比較して、米国は私立大学の方が「連邦政府」からの資金が多い。また、米国の大学については「機関資金」が一定の割合を持っているのが特徴である。
 「企業」からの資金割合については、日本の場合、国立大学が最も高く、私立大学が低い傾向にあるが、米国は、州立、私立大学ともに同程度の資金割合となっている。


【図表1-3-16】 日本と米国における大学の研究資金構造 
(A)日本(2014-2016年平均)
(B)米国(2014-2016年平均)

注:
国際比較注意については図表1-3-15を参照のこと。年度の値を示している。
<日本>4年制の大学。短大や大学共同利用機関等は含まない。
<米国>
1)機関資金とは機関によって資金が支出された研究、共同負担した研究費、弁済されていない間接経費。
2)その他資金とは他に分類されない資金源。たとえば、研究の目的で個人が寄付した資金を含む。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」の個票データを使用し、科学技術・学術政策研究所が再計算した。
<米国>NSF, “Higher Education Research and Development”

参照:表1-3-16


(4)日本の大学部門の研究開発費

 日本の大学における研究開発費は前述のとおり、人件費に研究以外の活動分も含まれているという点に注意しなければならないが、この節では、「科学技術研究調査報告」で公表している大学等の研究開発費のデータを用いて国公私立大学別の研究開発費使用額を見る(図表1-3-17)。
 2016年度の日本の大学全体の研究開発費(3.6兆円)を国・公・私立大学別で見ると、国立1.4兆円、公立0.2兆円、私立1.9兆円であり、私立大学の研究開発費が全体の半数以上を占めている。
 推移を見ると国公私立大学ともに、1990年代中頃まで続いた研究開発費の伸びは鈍化しているが、私立大学については漸増傾向が続いている。
 自然科学分野における研究開発費は2016年度において全体で2.4兆円、うち国立1.2兆円、公立0.2兆円、私立1.0兆円となり、国立大学が半数以上を占める。推移を見ると、国公私立大学ともに、1990年代中頃まで続いた研究開発費の伸びは鈍化しているが、公立大学・私立大学については漸増傾向が続いている。
 人文・社会科学分野における研究開発費は、2016年度において全体で1.3兆円である。うち国立0.3兆円、公立0.1兆円、私立0.9兆円となり、私立大学が大多数を占める。推移を見ると、国公私立大学ともに、1990年代中頃まで続いた研究開発費の伸びは鈍化し、その後は横ばいに推移している。


【図表1-3-17】 国公私立大学別の研究開発費
(A)全体
(B)自然科学
(C)人文・社会科学

注:
「人文・社会科学」には「その他」も含む。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表1-3-17


 大学等の研究開発費に関して学問分野別の推移を見る。ここでの学問分野とは、学部・研究施設内で行われている研究の内容を指す。組織の中で研究分野が複数にわたる場合は最も中心であると判断された研究の学問分野を示している。
 図表1-3-18を見ると、1990年代後半までは、ほとんどの分野で研究開発費は増加傾向にあった。大きく増加したのは、保健、人文・社会科学、工学である。その後、増加し続けたのは保健分野のみであり、他の分野は、横ばい、もしくは微増で推移している。


【図表1-3-18】 大学等における研究開発費の学問分野別の推移

注:
学問分野の区分は、学部等の組織の種類による区分である。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表1-3-18


 近年、大学のポテンシャルを活用しようとする取り組みが、世界の各国で進められている。大学は、イノベーションの源泉である知識の創造という点で、他に代替しえない組織であるが、その一方で、大学で産み出された知識を他に移転することは容易でない。このような認識を背景に、産学連携を強力に推進する機運が高まっている。
 産学連携の状況を示す指標のひとつとして、大学が企業から受け入れた研究開発費をとりあげる(図表1-3-19)。大学等が企業から受け入れた研究開発費の推移を見ると、1990年代は停滞気味であった。2000年代に入ると著しい増加を示していたが、2007年度をピークに減少に転じた。しかし、2010年度以降は増加傾向にあり、2016年度は934億円となった。
 国・公・私立大学の区分別に見ると、企業部門から受け入れた研究開発費は国立大学の金額が最も多く、2016年度で613億円であり、公立大学56億円、私立大学は265億円である。


【図表1-3-19】 大学等における内部使用研究費のうち企業から受け入れた金額の推移

資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表1-3-19


(5)日本の大学部門の費目別研究開発費

 大学等の研究開発費に関して費目別の内訳を見ると、「人件費」が多く、2016年度の「人件費」は2.3兆円で、全体の65%を占めている(図表1-3-20)。また、「その他の経費」については「有形固定資産購入費」よりも大きな費目となっており、2016年度で0.7兆円となっている。この「その他の経費」には研究のために使用された図書費、光熱水道費、消耗品費等が含まれている。
 国立・私立大学別でみると、2016年度の国立大学の「人件費」は0.8兆円である。2000年代に入ってからはほぼ横ばいに推移していたが、2014年度から微増している。割合は全体の約6割である。「その他の経費」は2番目に大きな費目になっている。次に多くを占めている「有形固定資産購入費」は、年によって増減のバラつきが激しい。
 私立大学でも「人件費」が多く、2016年度では、1.3兆円であり、増加し続けている。割合は全体の約7割である。2番目に大きな費目は、「その他の経費」である。なお、私立大学では、国立大学ほど「有形固定資産購入費」の増減のバラつきが見えない。


【図表1-3-20】 大学等における費目別研究開発費
(A)全体
(B)国立大学
(C)私立大学

注:
2001年度より、新たに「リース料」が調査項目に加わった。
2013年度より、新たに調査項目に加わった「無形固定資産購入費」は「その他の経費」に含めている。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表1-3-20



(14)日本の大学部門の統計資料として本章で用いる総務省統計局「科学技術研究調査報告」においては、大学は学部(大学院の場合は研究科)ごとに調査されている。なお、「その他の機関」とは、大学共同利用機関法人、独立行政法人国立高等専門学校機構など学校以外の組織、国立大学の学内共同教育研究施設、全国共同利用施設、公立・私立大学の学部から独立した設備等の共同利用を主目的とする施設等である。
(15)S&EとはScience and Engineering: Computer sciences, Environmental sciences, Life sciences, Mathematical sciences, Physical sciences, Psychology, Social sciences, Engineeringであり、EducationやHumanities等は含まれていない。
(16) FTE調査結果については第2章図表2-1-2参照されたい。
(17)この節の日本は、国際比較の際には「年」を用いている。本来は「年度」である。日本のみを記述している節では「年度」を用いている。