4.2.4主要国の特許出願の技術分野特性

(1)全世界の技術分野バランス

 ここでは、技術分野毎にパテントファミリー数の状況を分析した結果について述べる。技術分野の分類には、WIPOによって公表されている技術分野と国際特許分類(IPC)の対応表を用いた。WIPOの技術分野は、図表4-2-7に示すように、35の小分類に分類されているが、ここでは、これらをまとめた9技術分野を用いる。


【図表4-2-7】 技術分野

注:
パテントファミリーの分析方法については、テクニカルノートを参照。
資料:
WIPO, IPC - Technology Concordance Tableをもとに、科学技術・学術政策研究所で分類。

参照:表4-2-7


 まず、図表4-2-8では、全世界における各技術分野のパテントファミリー数割合の推移を示す。1981年と2010年を比べると、機械工学は10.2ポイント、化学は7.7ポイント減少している。一方、情報通信技術は14.0ポイント、電気工学は7.0ポイント割合を伸ばした。とくに1990年代に入って、情報通信技術の占める割合が急速に増加した様子が分かる。


【図表4-2-8】 全世界の技術分野別パテントファミリー数割合の推移

注:
パテントファミリーの分析方法については、テクニカルノートを参照。
資料:
欧州特許庁のPATSTAT(2014年秋バージョン)をもとに、科学技術・学術政策研究所が集計。

参照:表4-2-8


(2)主要国内の技術分野バランス

 次に主要国の内部構造をみるために、図表4-2-9では、主要国内の技術分野バランスの変化を示す。
 2010年時点の日本の技術分野バランスを見ると、世界全体と比べて電気工学と一般機器の比率が高くなっている。1981年と2010年を比べると、電気工学の割合は8.3ポイント上昇している。情報通信技術についても9.4ポイント上昇しているが、全技術分野に占める割合は、世界全体の割合とほぼ同じである。他方、バイオテクノロジー・医薬品とバイオ・医療機器の割合は、世界全体と比べて低くなっている。
 米国は、世界全体と比べて、バイオ・医療機器、バイオテクノロジー・医薬品、化学の比率が高い。1981年と2010年を比べると、情報通信機器の割合が14.9ポイント、バイオ・医療機器の割合が4.2ポイント増加している。電気工学の割合は、世界全体と比べて小さい。
 ドイツは、輸送用機器、機械工学、化学の比率が世界全体と比べて高い。1981年と2010年を比べると、輸送用機器は3.4ポイント増加している一方で、機械工学は6.5ポイント、化学は6.3ポイント減少している。情報通信技術は4.9ポイント増加しているが、その割合は世界全体における情報通信技術の割合の半分程度(2010年時点)となっている。
 フランスは、輸送用機器、バイオテクノロジー・医薬品、化学の比率が世界全体と比べて高い。1981年と2010年を比べると、バイオテクノロジー・医薬品は3.2ポイント増加している。他方で、機械工学は9.8ポイントの減少をみせている。情報通信技術の比率は8.8ポイント増加しているが、ドイツと同じく、その割合は世界全体における情報通信技術の割合と比べて小さい。
 英国は、バイオテクノロジー・医薬品、化学、バイオ・医療機器の比率が世界全体と比べて高い。1981年と2010年を比べると、バイオ・医療機器は4.0ポイント、バイオテクノロジー・医薬品は2.7ポイント増加している。機械工学は11.9ポイント、化学は5.5ポイント、輸送用機器は3.8ポイント、その割合を減少させている。情報通信技術の比率は14.8ポイントと大幅に増加しており、世界における情報通信技術の割合と同程度となっている。英国は欧州の中では、パテントファミリー数における情報通信技術の比率が高い国といえる。
 中国と韓国は、ともに情報通信技術の割合が、世界の平均と比べて高くなっている。


【図表4-2-9】 主要国の技術分野別パテントファミリー数割合の推移
(A)日本
(B)米国
(C)ドイツ
(D)フランス
(E)英国
(F)中国
(G)韓国

注:
パテントファミリーの分析方法については、テクニカルノートを参照。
資料:
欧州特許庁のPATSTAT(2014年秋バージョン)をもとに、科学技術・学術政策研究所が集計。

参照:表4-2-9


(3)世界における主要国の技術分野バランス

 図表4-2-10では、世界における主要国の技術分野バランスを示す。具体的には、主要国のパテントファミリー数の技術分野毎のシェア(1998-2000年と2008-2010年、整数カウント法)を作成し、比較を行った。
 2008-2010年のパテントファミリー数におけるシェアに注目すると、日本は電気工学、一般機器が30%を超えており、バイオテクノロジー・医薬品、バイオ・医療機器のシェアが相対的に低いというポートフォリオを有している。図表4-2-9では、1981年と2010年を比べると、日本国内のパテントファミリーに占める情報通信技術のシェアは増加している様子が見られた。しかしながら、世界におけるシェアは、31.4%から27.3%に減少している。これは、中国と韓国が急激に世界シェアを増加させているためである。
 米国はバイオ・医療機器、バイオテクノロジー・医薬品、化学で世界シェアが25%を超えている。ドイツは輸送用機器、機械工学、化学、その他において世界シェアが15%を超えている。フランスは輸送用機器、バイオテクノロジー・医薬品、化学で、世界シェアが7%を超えている。これらの国については、1998-2000年と比較すると、多くの技術分野で世界シェアは漸減傾向もしくは横ばいにある。
 中国や韓国は急激に世界シェアを伸ばしている。2008-2010年時点で、韓国については電気工学、情報通信技術において、中国については情報通信技術において、世界シェアが10%を超えている。


【図表4-2-10】 主要国の技術分野毎のパテントファミリー数シェアの比較
(%、1998-2000年と2008-2010年、整数カウント法)

注:
パテントファミリーの分析方法については、テクニカルノートを参照。
資料:
欧州特許庁のPATSTAT(2014年秋バージョン)をもとに、科学技術・学術政策研究所が集計。

参照:表4-2-10