4.1.2研究活動の国別比較

(1)国単位での科学研究力の定量化手法

 「国の科学研究力」を定量化し比較する際、ここまでに示したように近年の論文の共著形態の複雑化についても考慮するべきであろう。
 そこで、図表4-1-5に示すように、国単位での科学研究力を把握する場合は、「論文の生産への関与度(論文を生み出すプロセスにどれだけ関与したか)」と「論文の生産への貢献度(論文1件に対しどれだけ貢献をしたか)」を把握することとする。前者は整数カウント法、後者は分数カウント法により計測する。論文の生産への関与度と貢献度の差分が、「国際共著論文を通じた外国の寄与分」と言える。各国・地域により国際的活動の状況が異なるため、カウント方法によりランクが入れ替わることがある。
 また、「国の科学研究力」を見るときに、量的観点と質的観点が求められる。そこで、量的観点として論文数を、質的観点として他の論文から引用される回数の多い論文数(Top10%補正論文数、Top1%補正論文数)を用いる。
 Top10%(Top1%)補正論文とは、論文の被引用数(2014年末の値)が各分野の上位10%(1%)に入る論文の抽出後、実数で論文数の1/10(1/100)となるように補正を加えた論文数を指す。このように分野毎に算出するのは、分野毎に平均被引用数がかなり異なるため、その違いを標準化するためである。分野は、図表4-1-4(B)に準ずる。


(2)国・地域別論文数、Top10%補正論文数、Top1%補正論文数の時系列比較

 図表4-1-6は、整数カウント法と分数カウント法による国・地域ごとの論文数、Top10%補正論文数、Top1%補正論文数及び世界ランクを示した。
 日本の論文数(2011-2013年の平均)は整数カウント法によると第5位、Top10%補正論文数では第8位、Top1%補正論文数では第12位である。
 一方、分数カウント法によると日本の論文数(2011-2013年の平均)は第3位であり、Top10%補正論文数では第6位、Top1%補正論文数では第7位である。


【図表4-1-5】 整数カウント法と分数カウント法
(A)国単位での科学研究力の把握の概念図
(B)整数カウント法と分数カウント法

注:
Top10%(Top1%)補正論文数とは、被引用回数が各年各分野で上位10%(1%)に入る論文の抽出後、実数で論文数の1/10(1/100)となるように補正を加えた論文数を指す。詳細は、科学技術・学術政策研究所の「科学研究のベンチマーキング2015」(調査資料239)の2-2 (7) Top10%補正論文数の計算方法を参照のこと。分野は、図表4-1-4(B)の注釈に準ずる。被引用数は、2014年末の値を用いている。


【図表4-1-6】 国・地域別論文数、Top10%補正論文数、Top1%補正論文数:上位25か国・地域
(A)整数カウント法による


(B)分数カウント法による

注:
分析対象は、article, reviewである。年の集計は出版年(Publication year, PY)を用いた。被引用数は、2014年末の値を用いている。
資料:
トムソン・ロイター Web of Science XML (SCIE, 2014年末バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。

参照:表4-1-6


(3)主要国の論文数シェア、Top10%補正論文数シェア、Top1%補正論文数シェアの時系列推移

 図表4-1-7では、各国の研究活動の量的状況を把握するため、論文数の各国シェアを整数カウント法と分数カウント法で比較した。
 まず、整数カウント法における論文数シェアを見ると、米国は1980年代から一貫して、他国を大きく引き離し、論文数シェアが大きい。しかし、他国がシェアを伸ばしており、1990年代から下降基調が続いている。日本は、1980年代から2000年代初めまで論文数シェアを伸ばし、英国やドイツを抜かし、一時は世界第2位となっていた。しかし、1990年代後半より、中国が急速に論文数シェアを増加させており、日本のみならず米国、英国、ドイツ、フランスの論文数シェアは低下傾向である。2012年(2011-2013年(PY)の平均)時点において、日本は、米、中、独、英に次ぐ第5位となっている。
 次ぎに、整数カウント法における質的指標とされるTop10%補正論文数シェアおよびTop1%補正論文数シェアの変化を示す。
 米国が他国を大きく引き離している構図は論文数シェアの場合と同じであるが、Top10%補正論文数シェアおよびTop1%補正論文数シェアの方がより米国の占有率が高いことが分かる。ただしそのシェアは、1990年代からゆるやかな下降基調が続いている。中国については、1990年代後半からのTop10%補正論文数シェアおよびTop1%補正論文数シェアの増加が著しい。日本は、1980年代から2000年代初めにかけて緩やかなシェアの増加が見られたが、その後シェアを低下させている。一方、英国、ドイツ、フランスは、特にTop1%補正論文数においては1980年代より着実にシェアを増加させており注目される。このような各国の時系列変化の中、日本は2012年(2011-2013年の平均)時点において、Top10%補正論文数では、米、中、英、独、仏、加、伊に次ぐ第8位であり、Top1%補正論文数では第12位である。


【図表4-1-7】 主要国の論文数、Top10%補正論文数、Top1%補正論文数シェアの変化
(A)整数カウント法による

注:
分析対象は、article, reviewである。年の集計は出版年(Publication year, PY)を用いた。全分野での論文シェアの3年移動平均(2012年であればPY2011、PY2012、PY2013年の平均値)。整数カウント法である。被引用数は、2014年末の値を用いている。
資料:
トムソン・ロイター Web of Science XML (SCIE, 2014年末バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。

参照:表4-1-7


 さらに、分数カウント法における論文数シェアを見ると、米国は1980年代から一貫して、他国を大きく引き離し、論文数シェアが大きい。しかし、他国がシェアを伸ばしており、1980年代から下降基調が続いている。日本は、1980年代から2000年代初めまで論文数シェアを伸ばし、英国やドイツを抜かし、一時は世界第2位となっていた。しかし、1990年代後半より、中国が急速に論文数シェアを増加させており、日本のみならず米国、英国、ドイツ、フランスの論文数シェアは低下傾向である。2012年(2011-2013年(PY)の平均)時点において、上位3国は米国、中国、日本となっている。
 次に、分数カウント法における質的指標とされるTop10%補正論文数シェアおよびTop1%補正論文数シェアの変化を示す。
 米国が他国を大きく引き離している構図は論文数シェアの場合と同じであるが、Top10%補正論文数シェアおよびTop1%補正論文数シェアの方がより米国の占有率が高いことが分かる。ただしそのシェアは、1980年代からゆるやかな下降基調が続いている。中国については、1990年代後半からのTop10%補正論文数シェアおよびTop1%補正論文数シェアの増加が著しい。日本は、1980年代から2000年代初めにかけて緩やかなシェアの増加が見られたが、その後急激にシェアを低下させている。一方、ドイツは特にTop1%補正論文数においては1980年代より着実にシェアを増加させており注目される。このような各国の時系列変化の中、日本は2012年(2011-2013年の平均)時点において、Top10%補正論文数では、米、中、英、独、仏に次ぐ第6位であり、Top1%補正論文数では米、中、英、独、仏、加に次ぐ第7位である。


【図表4-1-7】 主要国の論文数、Top10%補正論文数、Top1%補正論文数シェアの変化
(B)分数カウント法による

注:
分析対象は、article, reviewである。年の集計は出版年(Publication year, PY)を用いた。全分野での論文シェアの3年移動平均(2012年であればPY2011、PY2012、PY2013年の平均値)。整数カウント法である。被引用数は、2014年末の値を用いている。
資料:
トムソン・ロイター Web of Science XML (SCIE, 2014年末バージョン)を基に、科学技術・学術政策研究所が集計。

参照:表4-1-7