1.3部門別の研究開発費

1.3.1公的機関部門の研究開発費

ポイント

  • 日本の公的機関部門の研究開発費は、2012年度で1.37兆円であり、2000年代に入ってからは横ばいに推移している。
  • 各国通貨で研究開発費(名目額)の年平均成長率を見ると、2000年代後半(2005~各国最新年)では、日本のみがマイナスの成長率であるのに対して、他国は伸びており、特に中国は17.8%とかなり高い成長率である。
(1)各国公的機関の研究開発費

 本節では研究開発実施部門としての公的機関部門について述べる。
 ここで対象としている各国の公的機関には以下のような研究機関が含まれる(図表1-1-4(B)参照)。日本は「国営」(国立試験研究機関等)、「公営」(公設試験研究機関等)、「特殊法人・独立行政法人」といった公的研究機関である。
 米国は連邦政府の研究機関(NIH等)と、FFRDCs(政府が出資し、産業・大学・非営利団体部門が研究開発を実施)の研究機関である。
 ドイツでは連邦政府と地方政府、その他の公的研究施設、非営利団体(16万ユーロ以上の公的資金を得ている)及び高等教育機関ではない研究機関(法的に独立した大学付属の研究所)である。ドイツについては、「公的機関」部門と「非営利団体」部門が分離されていないことに注意が必要である。
 フランスは、科学技術的性格公施設法人(EPST)(ただし、CNRSを除く)や商工業的性格公施設法人(EPIC)等といった設立形態の研究機関である。
 英国は中央政府、分権化された政府の研究機関及びリサーチカウンシルである。
 中国は中央政府の研究機関、韓国は国・公立研究機関、政府出捐研究機関及び国・公立病院である。
 図表1-3-1(A)に主要国における公的機関部門の研究開発費(OECD購買力平価換算)の推移を示した。日本の公的機関部門の研究開発費は、2012年で1.37兆円であり、2000年代に入ってからは横ばいに推移している。各国とも1990年代に入ってからの研究開発費は横ばい傾向にあったが、中国の研究開発費は1990年代中ごろから急速に増加しはじめ、2002年には日本を抜いており、最新年ではEU-15と同等程度になっている。また、米国は2000年代に入ってから、ドイツ、韓国は2000年代中ごろから増加傾向にある。
 次に、図表1-3-1(B)、各国通貨で研究開発費(名目額)の年平均成長率を見る。2000年代前半(2000~2005年)では、日本のみがマイナスの成長率であり、他の国はすべて伸びている。ただし、英国は1%以下の伸びである。2000年代後半(2005~各国最新年)では、日本、フランスはマイナスの成長率であるのに対して、他国は伸びており、特に中国は17.8%とかなり高い成長率である。
 さらに物価の変動の影響を除いた実質額を各国通貨で見てみると(図表1-3-1(C))、2000年代前半では日本、英国がマイナス成長であり、他国は全て伸びている。2000年代前半と比較して、2000年代後半の伸びが大きい国は日本、ドイツ、中国、韓国である。一方、2000年代後半の伸びが小さい国は米国、フランス、英国であり、特に英国はマイナス成長が大きくなっている。


【図表1-3-1】 主要国における公的機関の研究開発費の推移
(A)名目額(OECD購買力平価換算) 

(B)名目額(各国通貨)

(C)実質額(2005年基準各国通貨)

注:
1)公的機関部門の定義には国によって違いがあるため国際比較の際には注意が必要である。各国の部門の定義については図表1-1-4参照のこと。
2)研究開発費は人文・社会科学を含む(韓国は2006年度まで自然科学のみ)。
3)購買力平価は、参考統計Eと同じ。
4)実質額の計算はGDPデフレータによる(参考統計Dを使用)。
<日本>2011年度から営利を伴う特殊法人・独立行政法人を含む。
<ドイツ>1990年までは旧西ドイツ、1991年以降は統一ドイツ。
資料:
<日本>総務省、「科学技術研究調査報告」
<米国>NSF,“National Patterns of R&D Resources: 2011–12 Data Update”
<ドイツ>Bundesministerium für Bildung und Forschung,“Bundesbericht Forschung 2004,2006”、“Bundesbericht Forschung und Innovation 2010,2012”、2010年からはOECD,“Main Science and Technology Indicators 2013/2”
<英国>National Statistics website: www.statistics.gov.uk
<フランス、韓国、EU>OECD,“Main Science and Technology Indicators 2013/2”

参照:表1-3-1

(2)日本の公的機関の研究開発費

 図表1-3-2に日本の公的機関部門における研究開発費使用額の推移を機関の種類別に示す。いずれの研究機関とも2000年度までは、多少の増減はあるものの、増加を続けていたが、2000年代に入ると横ばいに推移し、近年、減少傾向にある。
 これらのなかでは、「特殊法人・独立行政法人」の金額が最も大きい。なお、国営研究機関と特殊法人の独立行政法人化により、2001年度以降は、「国営」と「特殊法人・独立行政法人」のデータの連続性が失われている。また、2011年度から「特殊法人・独立行政法人」には営利を伴う機関も含まれている。


【図表1-3-2】 日本の公的機関の研究開発費使用額の推移 

注:
1)2001年度に、国営の研究機関の一部が独立行政法人となっているので時系列変化を見る際には注意が必要である。
2)2000年度までは「特殊法人・独立行政法人」は「特殊法人」のみの値。
3)2011年度から特殊法人・独立行政法人には営利を伴う機関も含まれている。
資料:
総務省、「科学技術研究調査報告」

参照:表1-3-2



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