先端生命科学技術の社会的ガバナンスシステム構築のための調査研究

担当: 第2調査研究グループ

研究活動の概要

従来から医療と密接に関わってきた生命科学技術は、近年、急速な発展を遂げる一方で、新たに多様で深刻な生命倫理上の問題を社会に投げかけています。生命倫理問題といわれる社会問題には、①人クローンやデザイナー・ベビーの問題、②ヒト胚・胎児組織の取扱いの問題、③臓器移植の問題、④ヒトゲノム遺伝情報の問題、⑤病歴・個人情報管理・保護の問題、⑥安楽死・尊厳死の問題、⑦臨床研究における被験者保護の問題、などがあります。例えば以下のような問いへの答えを、私たちの社会は求められています。

  • 体外で受精させたヒトの受精卵由来のヒト胚を、研究に用いることを許容しますか?
  • 個人が提供する血液などの試料、中絶胎児や死者の臓器・組織などのヒト由来組織をどのような仕組みの中で利用するべきでしょうか?
  • 生物的な特性を示す「個人情報」であるヒトゲノム遺伝情報を、遺伝的差別を招くことなく、病気や薬物副作用の予測などに活用するためにどのような社会制度が必要でしょうか?

私たちは、問題点を整理し (図 1)、適切な社会の仕組みを提案しています (図 2)。

図 1 取扱わなければならない生命倫理の様々な社会的要素

図 1 取扱わなければならない生命倫理の様々な社会的要素

図 2 社会審査制度の仕組

社会審査制度は、監視の「目」を備え、必要な措置を講じる「手」をもつ実効的な社会制度です。不確定性(結果として何を生じるかを予測できない状況)に対処し、かつ、個人の置かれた多様な状況や科学技術の進歩に適応して、生命科学技術の社会的ガバナンスを実現します。