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米国景気対策法に基づくNIHの研究支援開始
米国最大の生物医学系国立研究機関であるNIHは、2009年2月17日に成立した米国景気対策法(米国再生・再投資法)(American Recovery and ReinvestmentAct)1)による予算配分を受けて、あらたに研究グラントの創設2)・公募を、2009年3月以降、次々と発表している。NIHは、米国民の長寿と生活の質の向上のために最善と考えられる科学的研究に対して資金の支援をし、そのインパクトによって経済を刺激することを狙っている3)。
米国景気対策法によりNIHには、2010年9月までに104億ドルが配分される。その使用内訳は、82億ドルが科学研究の支援に、10億ドルがNIH以外の研究施設の建設・修繕・改良に、3億ドルが共同利用の設備や装置に、5億ドルがNIHの建物や施設の建設・修繕・改良に、4億ドルが費用対効果の研究(ComparativeEffectiveness Research)に充てるとされている3)。
2009年3月10日の発表では、上記の104億ドル中の15億ドル分についての研究資金支援の公募がなされた4)。その内の2億ドルは、新しく設立された「チャレンジグラント」で、これは特に2年間で進展が望めるような、生物医学や行動学研究で解決しうる健康や科学上の問題に焦点を絞っている。
2009年3月11日には、NIH以外の研究施設の建設・修繕・改良に関する10億ドルの支援グラントの募集も開始された5)。
個別研究としては、2009年3月24日に自閉症研究に対して0.6億ドルを支援することが、発表された6)。近年、重度に知的能力に遅滞を示す自閉症に加えて、言語によるコミュニケーション能力や知的能力の高いアスペルガー症候群、明らかな知的能力の遅れが無い高機能自閉症や、それらに含まれない自閉症などを加えた広い概念が、自閉症スペクトラム(autism spectrumdisorders)と呼ばれている。今回の研究グラントは、自閉症スペクトラム内の不均質性の解明に資する研究成果が求められている。研究課題の例として、異なる集団に対する診断やスクリーニング手法の開発・試行、出生前や誕生後の早期においてのリスク査定、早期(治療)介入のための臨床試験の開始、既存の効果的な小児治療の十代の子供に対する適用などが挙げられている。
さらに、同日の2009年3月24日には、すでにNIHから研究支援を受けている研究者や研究機関に対して、サマースクールの学生や小中高レベルなどの科学の教師に短期の研究経験をさせるための資金の支援の公募も発表された7)。
2009年4月13日には、ブレークスルー研究や特別で唯一のインフラの建設などを2年間で実施する、インパクトの高い大規模研究プロジェクトのためのグラントを新設し、これに2億ドルを投入すると発表した8)。
景気対策法のもとに、急発進でイノベーションを創出しようとする動きとみられる。
参 考
1) RECOVERY.GOV:
http://www.recovery.gov/
2) Supported by the American Recovery & Reinvestment Act of 2009, Grant funding opportunities, NIH:
http://grants.nih.gov/recovery/
3) NIH’s role in the American Recovery and reinvestment Act ARRA):
http://www.nih.gov/about/director/02252009statement_arra.htm
4) Applications for $1.5 billion in Recovery act funds now available, NIH News( March 10, 2009)
5) NIH announces American Recovery and Reinvestment Act funding opportunities, NIH News( March 11, 2009)
6) Rising to challenge: NIH will use $60 million in recovery act funds to support strategic autism research, NIH News(March 24, 2009)
7) Students and science educators to get boost from NIH ARRA initiative, NIH News( March 24, 2009)
8) New NIH recovery act opportunity seeks to fund high impact, large-scale, accelerated research, NIH News( April 13, 2009)
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インタフェース規格見直しによるSSDデータ転送の高速化
SSD(Solid State Drive/ Solid State Disk)は多数のNAND型フラッシュメモリから構成されており、HDD(Hard Disk Drive)に置き換わる使い方ができるデータストレージ機器である。機械的な可動部を持たないことからデータアクセスまでの時間を短くでき、さらに高速データ転送・耐振性・静寂性・省エネルギーなどの点でHDDより優位にあると考えられ、特にモバイル製品等のストレージ機器として注目されている。元来フラッシュメモリのデータ転送時間はHDDに比べて低速であるが、専用の並列処理アルゴリズムを用いてメモリを複数個束ね、同時に大量のデータを取り扱えるようにすることで高速化を図ってきた1)。しかし現在までのSSDは、HDDの代替として製品化された経緯から、インタフェースとしてHDDの規格であるSATA(Serial ATA)規格を採用しており、この規格に基づくデータ転送速度(300メガバイト/秒)がさらなる高速化のボトルネックになっていた。HDD規格については、高速化したSATA規格やSAS(Serial AttachedSCSI)規格も発表されているが、これらの規格に対応しても、当面は600メガバイト/秒程度がデータ転送速度の限界となってしまう。
これに対し、米国Fusion-io社はインタフェースの見直しにより、データ転送速度が従来汎用製品に対して6〜8倍程度になるSSDを2009年3月に発表した2)。
最大データ転送速度は読み込みで1.5ギガバイト/秒、書き込みで1.4ギガバイト/秒にも達している(下図表★印)。
今回発表のSSDは、グラフィックボード用として知られるPCI ExpressまたはPCI Express 2.0というインタフェースを用いていることで高速化している。また、SSD内部の高速化のための並列化アルゴリズムにはHDDの並列処理技術として用いられてきたRAID注という技術を専用コントローラの中に組み込んでいる。
このようなSSD高速化技術は、現時点では対応コンピュータの種類が限られるものの、今後のストレージ機器の選択肢を大きく広げていくものと考えられる。

参 考
1) 米国Adtron社ホームページ:
http://www.adtron.com/expertise/arraypro.html
2) 米国Fusion-io社プレスリリース:
http://www.fusionio.com/PDFs/Pressrelease_Pressrelease_ioDriveDuo.pdf
3) SCSI Trade Associationロードマップ(2007年版):
http://www.scsita.org/aboutscsi/sas/SAS_roadmap2004.html
4) The Serial ATA International organization “SATA in the News”:
http://www.serialata.org/news/sata_in_news.asp
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製鋼スラグを用いた藻場造成によるCO2吸収効果確認試験
2009年3月17日、川崎市は、地域企業・NPO法人、県内外の大学・研究機関と連携し、製鋼スラグを用いた海域における藻場造成による温室効果ガスの固定化技術の開発と、同技術を活用した川崎港での実証試験を行うと発表した1)。
製鋼スラグ注は、光合成に必要不可欠な鉄イオンをはじめ、植物の育成に必要なミネラル分を含んでいる。製鋼スラグを利用した藻場造成試験は、磯焼け対策などとして行われ、すでにその造成効果は確認されている2)が、藻場のCO2吸収量などの定量的評価は行われていなかった。
今回の試験計画によれば、研究期間は2009年4月から2010年3月までの1年間である。4月から室内試験により、製鋼スラグと川崎港の浚渫土(粘性土)の混合材を用いて、天然材料に比べ海藻育成効果が高い藻場造成基盤材料を開発するとともに、海藻類を原料としたバイオガス(メタンガス)の生成可能量を把握する。室内試験の結果に基づき、7月より川崎港内の4箇所で大規模な実証試験を行い、開発した基盤材料の天然材料と比較した海藻類育成効果およびCO2吸収効果に加えて、藻場育成による水質改善効果(製鋼スラグは、その組成から周辺海底を弱アルカリに保ち硫酸塩還元菌の活動を抑制することで、青潮の原因となる硫化水素の発生を抑制する効果があるとされる)についても検証する(図表参照)。これらの試験を通じて、藻場のCO2吸収量およびバイオガス生成量を定量的に把握し、合わせて、広域に適用した場合のCO2吸収効果、経済性等についても評価する。なお本計画は、外部有識者の委員会を設置し、適宜指導・評価を受けながら実施する。
得られた成果は、地域で活動するNPO法人と連携し、地域住民・小中学生への環境学習や、臨海部企業等への普及PRに活用するとともに、川崎市が行うアジア太平洋エコビジネスフォーラム、川崎国際環境技術展、および国立環境研究所のアジア向け情報発信などを通じて、国内だけでなく海外へも発信し、他の地域に波及させて環境技術による低炭素社会の構築に貢献することを目指す。なお、この開発は、経済産業省「低炭素社会に向けた技術シーズ発掘・社会システム実証モデル事業」に採択されている。

参 考
1) 川崎市プレスリリース:
http://www.city.kawasaki.jp/25/25koho/home/kisya/pdf/090317-2.pdf
2) 宇田川ほか、JFE技報、No.19, pp18(2008)
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下水処理水の修景利用における藻類増殖抑制技術
下水処理水の再利用は、都市内における貴重な水資源確保の方策としてその重要性が高まっている。(独)土木研究所水環境グループ水質チームは、下水処理水を修景用水として利用する際に問題となる藻類増殖を抑制する新たな技術を2008年に発表した1)。さらに、1年をかけて新技術の適用による付着藻類の抑制効果について、試験水路で実証試験を行った。その結果、付着藻類量を、蒸発残留物量で7分の1、クロロフィルa重量では3分の1程度に抑制することが可能であったことを2009年2月2日に発表した2)。
新技術は、活性汚泥法で処理後の下水処理水に対して微生物保持担体を添加し反応槽下部から2時間の曝気を行う。担体表面に自然発生的に微生物が付着し、藻類の増殖に必要な微量必須元素のひとつであるマンガンが酸化・不溶化される。次工程の砂ろ過装置にて粒子状となったマンガン酸化物が除去される。従来の工程では、藻類を増殖させる窒素・リンを凝集剤の大量使用や逆浸透膜等により除去する手法が試験的に適用されてきたが、設備費・運転費とも高価であり、普及していない。
上記チームによる付着藻類増殖の抑制効果実験は、2008年6〜9月の間で10週間にわたり行われた。試験水路は、長さ180cm、幅7cm、水深1.8cm、流速20cm/秒である。これに、新技術を適用した処理水と適用しない処理水とを連続的に流し、付着藻類の発生状況を比較した結果、新技術による付着藻類の大幅な増殖抑制が確認された。藻類の増殖には、十数種類の元素がそれぞれ適切な割合で必要であり、バランスが崩れると増殖に影響がある。その元素には多量必須元素として窒素・リンと微量必須元素としてマンガンが含まれる。水質測定の結果では、新技術の有無により、窒素とリンに大きな違いは見られなかった。双方ともリン濃度は約0.4mg/Lであり、藻類増殖が抑制されるリン濃度0.01mg/Lを大きく超えていることから、新技術の増殖抑制効果はリン量とは関係がない。新技術では、マンガンを減少させたため、マンガンの摂取阻害が藻類の増殖抑制因子になったと考えられる。
また、下水には人由来の女性ホルモン(エストロゲン)も含まれ、下水処理過程で十分な除去が行われないと、下水処理水放流先の魚類にメス化の影響をおよぼす懸念も指摘されている。新技術では、担体表面に付着したエストロゲン分解微生物によりエストロゲンの除去効果も期待できる。
前工程の下水処理の活性汚泥法では有機物分解微生物を利用する。新技術で利用する微生物は、活性汚泥法で利用する有機物分解微生物に比べて増殖速度が小さいため、下水処理の段階では増殖できず、マンガンの除去ができない。一方、後工程では下水処理水中の有機物がすでに除去されているため、有機物分解微生物が餌不足で増殖できずに新技術で利用する微生物が優先して増殖することから、この新技術が成立していると考えられている。


参 考
1) (独)土木研究所プレスリリース「下水処理水修景利用における藻類増殖の抑制手法の開発」、2008年3月18日
2) (独)土木研究所プレスリリース「下水処理水修景利用における藻類増殖抑制技術の付着藻類への効果について」、2009年2月2日
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