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1.はじめに
世界各国で環境汚染による健康被害の問題が生じた際に、大人に比べて胎児や小児がより深刻な被害を受けたと考えられる事例が報告されている。子どもの成長過程において、ある種の汚染物質に対して感受性の高い時期があることも知られている。胎児・小児の身体・精神が発達・成長する過程では、さまざまな器官によってそれらが成熟していく時期が異なり、そのため感受性の高いと考えられる時期に違いが生ずる。また、胎児期に低栄養状態にあったことが成人になってから心血管系疾患などの生活習慣病と関係するという、いわゆるBarker仮説を支持する知見も存在する。さらには、医療・福祉の向上にも関わらず、アレルギー疾患のように、前世代よりも現世代の方が発症率・有病率が増加していると考えられる疾病も存在する。
さらに、子どもは環境汚染物質の曝露に関して成人に増して受動的である。子ども特有の行動や体重当たりの食物摂取量が成人よりも多いことや、環境汚染物質の体内動態の特性から、子どもは環境汚染物質の曝露を成人よりも多く受けるという特徴を持っている。
近年、環境の変化に対する子どもの脆弱性に関する関心が世界的に高まっており、米国をはじめとして世界各国で、環境と子どもの健康との関連性を解明し、子どもの健康を守るための方策を見出して、予防・治療に役立てようとする調査研究が開始されている。ここでは、それらの世界の研究動向、特に最も大規模な調査を計画している米国の試みを詳しく紹介し、今後の我が国おける研究の方向性を示したい。

2.背景
環境汚染の子どもに対する影響をより重視しようという考え方が国際的な動きとして初めて明確に示されたのは、1997年の子どもの環境保健に関する8カ国環境大臣会合における「マイアミ宣言」である。この宣言において、子どもの環境保健は環境問題の最優先事項であり、環境大臣の権限において、子どもの健康と環境との関連性に関する研究を推進し、子どもに注目したリスク評価の実施や基準設定等にその結果を反映させることなどが示された。
米国においては、1993年に米国科学アカデミーが小児の食事中の殺虫剤の健康リスクに関する報告書“Pesticides in the diet of infant and children”を発表して、小児の脆弱性を考慮することを提言した。これを受けて、環境保護庁は1995年に小児の健康リスクを考慮した新しい政策を発表するとともに、1996年には食品保護法を改正して、小児の脆弱性を考慮して殺虫剤や残留性汚染物質の基準設定を行うことを定めた。
1997年には当時のクリントン大統領が「環境中の健康と安全リスクからの小児の保護」という大統領令を発令して、子どもの環境保護と安全に関する作業部会を組織した。環境保護庁や国立環境衛生科学研究所は小児の環境保健と疾病予防に関する研究プロジェクトを立ち上げた。これが、後述する全米子ども調査(National Children’s Study)に繋がって行くことになった。また、米国における種々の環境基準が、子どもに特有なリスクを考慮していることを確実に示すことを要求した。その結果として、環境基準設定の科学的根拠を評価した全ての文書には、子どもに関するリスク評価が必ず盛り込まれることとなった。
一方、欧州では1999年の「第3回環境と健康に関する大臣会合」において、欧州における小児の健康保護に関する環境政策の方針が定められた。2004 年に開催された第4回大臣会合では、欧州の小児環境・健康アクションプランが採択され、関係各国が2007年までに自国の小児環境・健康アクションプランを策定することが示された。このような検討を踏まえて、デンマークやノルウェーでは国家プロジェクトとして、子どもの健康に関する疫学研究が開始されている。
我が国においても環境省は2005年から小児の環境保健に関する検討会等を組織して、取り組むべき課題の検討や海外の調査研究動向の調査を行ってきた。2010年からは全国調査を開始する予定で、2008年度からパイロット調査を開始した。
世界各国でコホート研究と呼ばれる同一対象者を長期間追跡する調査が計画されていることは、疫学研究における疾病の原因究明においてコホート研究が最も優れているためである。さらに、子どもに関する調査の場合には胎児期から青年期に至るまでの成長発達過程の時間軸全体に対する影響を評価するためには継続した観察が必須である。成人の健康は、生活習慣病やがんの危険因子の探索や予防などの観点から多くの大規模コホート研究が世界各国で実施されてきた。特に、子どもの健康に関する調査研究の場合には、胎児から出生後の成長過程の時期によって環境との関わり合い方が異なる、言い換えれば環境変化に対する感受性が時期によって異なることが特徴である。このような感受性は身体のさまざまな器官の構造や機能によっても異なることが知られている。そのため、成長発達過程に沿ったコホート研究の重要性は成人の場合よりむしろ大きい。さらに、世界各国でこのような調査研究が計画され、実施されている背景には、子どもの成長発達には遺伝的背景や社会経済的、および文化的要因が大きく関わるために、独自の調査研究が必要であるとの認識がある(図表1)。


3.米国の大規模疫学研究
現在、計画中ないし進行中の調査研究の中で、世界で最も大規模なものは全米子ども調査である。2000年に制定された小児保健法において、国立小児保健発達研究所に全米調査を実施する権限が与えられた。政権交代のために予算獲得が困難となり、本格調査の開始は遅れたが、パイロット調査の実施、調査計画立案、調査地域、調査実施機関の選定作業など調査実行のための準備を進めてきた。2009年1月から正式に本格調査が開始された。
3-1 全米子ども調査の特徴
全米子ども調査は多数の人々を対象とした国家プロジェクトとしての調査研究のあり方について、ひとつのモデルを提示していると考えられる。この調査は疫学の用語で言えば、前向きコホート研究に分類されるものであるが、医学、特に社会医学の中での疫学研究の枠を遙かに超えて、実社会における人々の生活と環境に関わる全ての要素を取りこみ、それらの要因と胎児・子どもの成長・健康・安全との関連性を明らかにしようとするものである。全米子ども調査で対象とする環境は、物理的・化学的環境に限ったものではなく、遺伝要因、社会経済要因、ライフスタイルなども幅広く含む。一方、このような多くの要因と、それによって引き起こされる可能性のある全ての健康影響との関係解明を研究課題とすることは不可能である。そのため、調査研究の立案段階で100を越える研究仮説について検討した結果、現在では以下のような中心仮説を研究課題としてとりあげることとになった(図表2)。仮説設定は連邦諮問委員会の研究計画作業部会によって検討されて、中心仮説が提案された。中心仮説は大きく分けて、妊娠・出産・生殖、子どもの身体・精神発達、喘息、肥満、障害などと環境汚染物質曝露、家族、地域、社会的要因との関係、さらにそれらの要因と遺伝要因との相互作用に関する仮説などである。言い換えると、全米子ども調査の研究課題は、我が国の行政システムで言えば、環境省のみ、また厚生労働省のみ、文部科学省のみの各行政課題に限定されるような狭いものではない。まさに本格調査が開始されようとしている全米子ども調査は、10万人という対象者の規模や20年を越える調査期間の長さ自体は、種々の大規模コホート研究の中で突出したものではない。しかしながら、調査の裏付けとなる法律を新たに制定するなど、まさしく国家プロジェクトとしての疫学研究となっている。

3-2 全米子ども調査の組織および・予算規模
全米子ども調査の組織は図表3に示すように国立衛生研究所(NIH)の下部機関である国立小児保健発達研究所にその中枢がおかれているが、同様にNIHの下部機関である国立環境衛生科学研究所、環境保護庁、疾病対策防疫センターが参加する省庁間連絡会議によって、省庁間の協力体制と政策課題との関連に関する調整を行っている。全米子ども調査の調査実施の主体となるのはプログラムオフィスと呼ばれる組織であり、ワシントン郊外にある。ここでは疫学・医学・統計学・社会学などさまざまな分野の出身の専任スタッフ23名が、総務・会計、プロトコル策定、環境測定、分析・試料保管、情報技術、データ管理・セキュリティ、広報・地域調整に関する部署に配置されている。さらに、コーディネイティングオフィスと呼ばれる受託契約を結んだ民間機関が、日常的な調整・支援業務を行っている。コーディネイティングオフィスでもプログラムオフィスにおける専門職種にほぼ対応する専門家とその補助者が働き、全米各地にある調査センターとの連絡調整等の業務を行っている。

全米子ども調査では、全米で約10万人が参加することを目標として、層別確率抽出により全米を代表するように105の調査サイトが選ばれた。各調査サイト内の特定の地区の近隣世帯から妊娠可能な年齢の女性に調査に参加するように協力を求めるという方式が採られている。調査は出生児が21歳になるまで追跡調査が継続される計画である。ひとつもしくは複数の調査サイトを統括する調査センターは全米から公募によって50程度選ばれる予定となっている。2008年末時点で27の調査センターが決定している。また、この他に2005年から予備調査を実施してきた7つの先行調査センターも、引き続き調査センターの役割を担うこととなっている。調査センターの多くは各地の大学が中心となり、近隣の大学や医療機関と共同調査研究組織を構成している。これらの調査センターがプログラムオフィスならびにコーディネイティングオフィスの下で現地調査を担うことになる。
全米子ども調査の年度毎の予算規模は図表4に示す通りである。計画段階ですでに約50億円が費やされ、2008年度には年間約100億円に達している。

3-3 全米子ども調査の調査項目と手段
全米子ども調査における調査項目は、健康影響に関するものと環境曝露に関するものに大別できる(図表5)。情報収集の手段としては、家庭訪問もしくは電話による質問票調査、臍帯血・血液・母乳等の生体試料の収集とそれらの試料中の各種曝露指標、影響指標、遺伝子マーカーの分析、対象者世帯の室内空気、飲料水等の環境試料の収集と試料中の化学物質等の分析、医療機関での臨床検査データや各種医学的検査による精神身体発達検査など多岐にわたっている。先に示した仮説の根幹には遺伝−環境相互作用があり、調査項目にもそれが反映されている。調査は妊娠前・妊娠中各期・新生児期・乳児期・少年期・青年期などそれぞれの時期で実施することが予定されている。それぞれの時期によって調査項目も異なり、対象者は母と子だけでなく、父も含まれている。


4.欧州等の各国での調査研究
世界各国での環境と健康に関する主な小児コホート研究を図表6に示した。米国以外で国家プロジェクトとして大規模出生コホート研究を実施しているのはノルウェーとデンマークの北欧2か国である。ノルウェーでは1999年から開始されて、順次、妊婦が登録され、2007年までに約9万人が調査に参加している。追跡は6歳まで行うこととなっている。デンマークでは1997年から開始されて2002年までに約10万人が参加している。追跡の期限は特に設けられていない。両国での調査項目は妊娠、出産、子どもの発達、喘息等の疾患である。全米子ども調査とは異なり、仮説を設定して調査を実施するのではなく、できる限り多くの情報を収集することを目的としている。両国ともに出産や医療に関する各種登録制度が整備されていることが、この調査実施のための基盤として機能している。

韓国においても、環境省が主体となって、ソウルなどの3都市において、5歳まで追跡調査を実施する予定で調査が2006年から開始されている。調査項目は血液、尿中のバイオマーカー等の測定や身体・精神発達、アレルギーや喘息などであり、環境中からの曝露が母親と子どもの健康に及ぼす影響を調べることを目的としている。

5.日本の動向
5-1 従来の調査研究
我が国では北海道大学が中心となって実施されている北海道コホート研究が最も大規模なものである4)。この調査は北海道全域で2002年から2005年までの間に約2万人の妊婦の登録を目標として調査が開始された。出生後5〜6歳まで追跡調査を実施する計画となっており、現在進行中である。この調査は先天異常と内分泌撹乱物質に対する感受性の解明を目的としている。研究項目としては、母体血、臍帯血、母乳中の種々の内分泌撹乱物質の測定ともに遺伝子解析も行っている。
また、独立行政法人科学技術振興機構の計画型研究開発「日本における子どもの認知・行動発達に影響を与える要因の解明」(2004〜2008年度)、いわゆる「すくすくコホート」が2004年から開始された。この研究は、社会・生活環境が心身や言葉の発達に与える影響やそのメカニズム、特に社会能力の神経基盤および発達期における獲得過程について、乳幼児を対象としたコホート研究により解明することを目的として計画された。しかしながら、2006年7月の中間評価において、長期研究の意義は認められたたものの、統合的な研究計画や重要な細部の設計が進んでいないことなどの理由から、長期研究を実行に移すことは妥当ではないという評価を受けて、このコホート研究は2008年度で中止されることになった5)。
厚生労働省は2001年1月10日〜17日の間および7月10日〜17日の間に出生した全国の子ども約5万人を対象として、対象者を長期間追跡調査する「21世紀出生児縦断調査」を実施している6)。この調査は21世紀の初年に出生した子どもの実態および経年変化の状況を継続的に観察することにより、少子化対策など、厚生労働行政施策の企画立案および実施等のための基礎資料を得ることを目的としている。調査項目は保育者、同居者、就業状況、労働時間、父母の家事・育児分担状況、住居の状況、子育てで意識していること、子どもをもってよかったと思うこと、子どもをもって負担に思うこと、子育ての不安や悩みの有無、授乳の状況、収入の状況、子どもの食事、健康、生活、遊びなどであり、質問票を用いて、毎年繰り返し調査を実施している。この調査は厚生労働省統計情報部が担当し、承認統計として実施されている。この調査項目の中には、子どもの成育環境と父母の子育て意識など、全米子ども調査の仮説にもある内容が含まれている。出生日が限定されているものの(2001年出生数の約4.6%)、全国民が対象となっており、第1回調査票回収率は87.7%とかなり高率である。各年度の回収率も90%を越えており、第6回の2007年で約3万9千人の調査票が回収されている。非常に高い追跡率は国の統計調査として実施していることによる要因が大きいと考えられる。一方、調査手法は郵送法によるものであり、調査項目は自己記入式質問票に限定されている。
5-2 環境省の環境保健に関する新たな動き
環境省では、2003年から小児等の環境保健に関する国際シンポジウムの開催や小児環境保健に関する調査研究を開始している。2006年には「小児の環境保健に関する懇談会」の提言をうけて、小児環境保健に関する重点プロジェクト研究を開始して、大規模疫学研究の必要性について検討をはじめた。これらの検討結果に基づいて、2008年度から「子どもの環境と健康に関する全国調査」のパイロット調査を開始した。2010年度から本格調査に移行して、全国規模で約6万人を目標として、12歳までの追跡調査を実施する予定となっている。まず、ユニットセンターと呼ばれる大学・研究機関の社会医学、産婦人科、小児科等で構成される組織が全国で10カ所程度選定される。これらのユニットセンターが地域の医療機関の協力のもとで妊婦の登録・生体試料の採取等、対象者との接する場の調査を担うこととなっている。また、独立行政法人国立環境研究所にコアセンターを置き、調査全体の企画・調整、生体試料の保管、データ情報管理などを行うこととなっている(図表7)。調査項目は、各種化学物質への曝露と身体・精神発達、先天異常、アレルギー、代謝・内分泌系異常との関連性、ならびにそれらの関連要因など、全米子ども調査と類似した項目が検討されている(図表8)。これらの調査項目は、仮説の公募等の検討プロセスを経て、最終的に決められる予定となっている。また、調査期間は対象者が12歳までの予定で開始されるが、調査期間の延長に関する妥当性や生体試料の保存期間などの再評価が調査終了予定時期までに行われるものと思われる。



6.今後の課題と展望
近年、他の分野においても世界各国で国が主導した大規模な「人」を対象とした調査研究が見られる。このような調査研究は「人」に関する多種多様な情報を国家戦略として収集し、将来の国民の健康と医療に関わる知的財産を蓄積しようとする意図が働いているものと考えられる。例えば、英国では生活習慣、環境および遺伝の影響を調べるために成人50万人を目標とした調査が実施されている8)。我が国でも「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」では遺伝子解析のために2003年から2007年までの5年間で約200億円の予算を投じて、約20万人の血液試料を収集した。同様の研究は米国でも実施されており、科学技術分野の国家戦略として、調査研究が企画、実行されている。全米子ども調査についてもこのような位置づけをすることもできる。
一方、喫煙と肺がんの関係を明らかにした英国の疫学研究や我が国のがん発症の関連因子についての知見を明らかにしてきている厚生労働省多目的コホート研究など、国際的にも成人を対象とした多くの大規模疫学研究はあるものの、胎児・子どもを対象とした大規模疫学研究はこれまで多くはなかった。子どもの健康と環境に調査研究が各国で推進されるようになったのは、1997年のG8環境大臣会議での「マイアミ宣言」などにみられるように子どもの脆弱性に対する関心が国際的に高まったことが背景にあるが、それとともに国民の健康と医療に関わる知的財産を蓄積しようとする国家戦略があると考えられる。
厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」、厚生科学研究費補助金で実施されている我が国における先駆的な研究である北海道コホート研究、(独)科学技術振興機構の事業で実施された「すくすくコホート」研究、環境省が計画している「子どもの環境と健康に関する全国調査」など、行政および学術の両方面において子どもの成育環境に対する関心が高まっている。それぞれの調査研究は固有の目的があって計画されたものである。また、個々の調査の目的、課題は全米子ども調査の種々の仮説と類似している。しかし、それらを包括して国家プロジェクトとして実施しようとしている米国の取り組みとは国家戦略という意味では隔たりがある。コホート研究実施の困難さや、子どもの健康および成長発達には多種多様な要因が相互に関わることを考慮すれば、共通の基盤の上で、各分野における目的や仮説を検証するための方策を探ることが、調査研究の科学的合理性や効率の面から必要である。
子どもの健康と環境に関する世界中の多くの調査で共通していることは長期コホート研究として計画されていることである。このことはすでに述べたように、胎児から成人に至るまでの成長発達過程の全体における健康とそれに関わる多面的な要因に関する評価のためにコホート研究が必要であるということが認識されていることに因る。一方、我が国ではすくすくコホート研究では長期コホート研究の重要性については研究評価者も認めていたにもかかわらず、研究遂行のための体制が整っていないなどの理由で長期コホート研究の実施を否定する結果となった。このことは、長期的な予算の確保や専門家の不足、および公的な支援システムの欠除など、多数の人々が生活する場そのものを長期間にわたって調査研究の対象とするコホート研究実施の我が国での困難さを象徴している。
また、全米子ども調査では長期間にわたって調査対象者の協力を継続して得るために、さまざまな手法を調査に組み込んでいる。対象者本人とのコミュニケーションを重視することは当然のことであるが、さまざまなレベルの地域組織・機関・関係団体との協力関係を構築し、それを維持するための専門家を各地域の調査センターと中枢部門に配置している。全米子ども調査ではこの部門をコミュニティ・アウトリーチと呼んでいる。「すくすくコホート」の例をはじめとして従来の日本の疫学研究でも、「根回し」に相当するコミュニティ・アウトリーチの重要性を研究担当者は認識していたと考えられる。しかしながら、それは研究遂行のために配慮すべき観点として考えられていたにとどまり、調査組織や研究要素として組み込まれたものになっていなかった。
個人情報保護に対する関心の高まりなど、調査実施主体と被調査者との関係は大きく変化している。国民の健康と医療に関わる知的財産を蓄積しようとする国家的な大規模調査のいずれにも当てはまることではあるが、調査成果が個人と公衆の健康・福祉の向上、および環境保全などにどのように活かされるのかを被調査者に正確に、かつわかりやすく伝えていくことを、組織的に実行する必要がある。

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1) NIH News, National Children’s Study Begins Recruiting Volunteers, 2009年1月13日:
http://www.nichd.nih.gov/news/releases/jan12-09-NCS-Recruiting.cfm
2) The National Children's Study Research Plan, September 17, 2007.:
http://www.nationalchildrensstudy.gov/research/studydesign/researchplan/Pages/ResearchPlan.pdf
3) 環境省環境保健部、小児環境保健疫学調査に関する検討会報告書、平成20年3月、2008.:
http://www.env.go.jp/chemi/report/h20-02.pdf
4) 水上尚典、厚生労働科学研究費補助金報告書「前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と内分泌かく乱物質に対する感受性の解明」、2007.
5) 科学技術振興機構社会技術開発センター評価委員会、「脳科学と社会」研究開発領域、同領域研究開発プログラム「脳科学と教育(タイプII)」、同プログラム研究開発プロジェクト中間評価、同領域計画型研究開発「日本における子どもの認知・行動発達に影響を与える要因の解明」年次評価 評価報告書、2007.:
http://www.ristex.jp/examin/brain/plan/pdf/ind04.pdf
6) 厚生労働省大臣官房統計情報部、第6回21世紀出生児縦断調査(平成18年度)、2008.:
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/27-6.html
7) 環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査ホームページ」:
http://www.env.go.jp/chemi/ceh/index.html
8) UK biobank:
http://www.ukbiobank.ac.uk/
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