火山の地下構造を把握することは、火山活動に伴う様々な現象の解明と噴火予知に大きく貢献する。地下構造探査には、主に人工地震や比抵抗を用いた構造探査などが実施されているが、経費や実施体制などで探査が困難な状況の場合もある。 東京大学地震研究所の田中宏幸特別研究員らのグループは、火山体内部の宇宙線ミューオンラジオグラフィーの研究を目的として、エマルションクラウドチェンバー注1)を用いた持ち運び可能な粒子線測定装置を開発した。これは名古屋大学大学院理学研究科の中野敏行助教らが開発した原子核写真乾板の自動読み取り技術を使用している。この測定装置により浅間山を透過したミューオンを捉え、釜山内部の密度分布を求め、この密度分布より火山体内部の岩層分布を推定した。本研究成果はNature誌2007年5月24日号のハイライト研究コーナーで紹介された。
ミューオンは物質を構成する素粒子の一つで、宇宙から地球に飛来する原子核(一次宇宙線)と大気中の原子核との反応により生成される。ミューオンは、絶え間なく地上に降り注いでいる。エネルギーは数GeVから数TeV程度の範囲で、エネルギーの大きさ毎にどれくらい存在するかがこれまでの研究からわかっている。
1TeVのミューオンは厚さ約1,200mの岩盤を透過することができる。ミューオンの透過数は、マグマや岩盤が厚いほど減り、薄い岩盤や空洞ではあまり減らない。そこでミューオン吸収量を飛来方向毎に調べることによって、透過経路に沿った火山内部の密度を求めることができ、山体の内部構造、マグマの状態などを透視イメージにすることができる。
ここでは、4000p2の原子核写真乾板という宇宙線に感光する特殊な写真フィルムを使用している。このフィルムはミューオンの飛来方向を精度良く測ることができ、安価で軽量のうえ、測定動力を必要としない。
田中研究員らは、2006年8月から10月まで浅間山の中腹に、この測定装置を設置し、浅間山を透過して水平方向から飛来するミューオンを観測した。回収したフィルムを現像して、ミューオンの飛跡を解析した結果、2004年9月の噴火によって火口底に残った高密度なかさぶた状の溶岩のフタや、その下の空洞状のマグマの通り道などがイメージできた(図表2)。昭和新山においても同様のイメージングを進めた。
また、リアルタイム測定に向けて、宇宙線ミューオンデジタル透過像撮影技術注2)の開発も進められており、成功すれば噴火予知の研究に役立つことが期待される。さらに、この技術は、鉄筋コンクリート構造物の内部状況を透過確認する装置など、一般産業機器への応用も期待される。
