[レポート2]

道路構造物の
ストックマネジメントのための
技術動向

池田 一壽
推進分野ユニット

1.はじめに

 我が国は第二次世界大戦後の荒廃した国土を復興し、先進欧米諸国に追いつくため、インフラの質、量とも整備を進めてきた。特に高度成長期(1955〜1973年)に建設された社会資本は膨大なストックがある。これらの更新時期は2020年から2030年頃にピークを迎え、今後、更新・維持管理投資の増大が懸念されている。

 高度成長期に建設された道路構造物(橋梁、トンネル、舗装及び付属施設などに大別される)は、現在、橋梁では全橋梁数の約34%、トンネルでは全トンネル数の約25%を占めている。20年後に建設後50年以上となるものは、一般国道及び地方道の橋梁では2005年比で約8倍の64,000橋、トンネルは約3倍の3,600箇所と推計されている。また、インフラに対する国民のニーズの多様化や環境対策など新たに対応しなければならない問題が表面化するなかでさらに、人口減少、少子高齢化、厳しい財政状況下において、老朽化したインフラの更新がより困難な状況になるのは確実である。インフラを効率的に維持管理し、ライフサイクルコストを縮減して、インフラ寿命をより長く確保するとともに、落橋などによるリスクを回避するために、社会変化に対応したストックマネジメントによるインフラの整備が今後、重要になる。

 「第3期科学技術基本計画」では、社会基盤分野のストックマネジメントにおいて「高度経済成長期に大量に建設されたインフラの老朽化が急速に進むなか、社会基盤の機能を確保しつつ適切に維持管理・更新する技術に対する社会ニーズは強く、公共性の観点から国が積極的に取り組む必要性のある研究開発課題」の第一として、「社会資本・建築物の維持・更新の最適化」が挙げられている。

 本稿では、ストックマネジメントを必要とする背景と課題、ストックマネジメントに必要な劣化機構・現象、点検診断、健全度評価、劣化予測、補修・補強といった要素技術や開発が行われている橋梁マネジメントシステムを概説し、更新時期を迎えるにあたり必要とされる対応について述べる。

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2.ストックマネジメントとは

 貯金、株式、債券などの個人の金融資産を、リスク、収益性などを勘案して適切に運用することにより、その資産価値を最大化することが資産のマネジメントである。近年、土地や建築物を主な対称とした不動産管理においても、資産価値を向上させるために、金融資産と同様のマネジメント手法が用いられている。

 資産管理に関する主なマネジメントの呼称としては「アセットマネジメント」、「ファシリティマネジメント」、「プロパティマネジメント」、「ストックマネジメント」があり、これらは概ね「利用者の便益を最大にし、供給者と利用者の費用を最小にするための設計、建設、維持管理、修繕、更新等に関わる全てのプロセスを総合化すること」について述べる際に使われている。一般に道路の分野では「アセットマネジメント」が用いられる場合が多いのに対して、官庁施設の分野では「ファシリティマネジメント」や「ストックマネジメント」が用いられている。またより広範囲な社会資本を対象とした場合には「社会資本マネジメント」と呼ばれているが、それぞれ明確な定義はないのが現状である1)。社会資本のマネジメント分野で先進国である米国でも多様な呼称があり、統一的な用語はない。

 道路構造物関係におけるストックマネジメントは、道路施設の中で異なる資産群(例えば舗装、橋梁、トンネル、擁壁等)全体を対象とした全体マネジメントと、ある同種類の資産群(例えば舗装のみや橋梁のみ等)の同種資産群マネジメントや個別の構造物(例えばその箇所の橋梁等)に対する個別資産マネジメントの2つに分けられる。全体マネジメントと同種資産群マネジメントはサービス水準(管理目標)の客観的な評価を、同種資産群マネジメントと個別資産マネジメントはライフサイクルコストの最小化を目標としたマネジメントを求めることができる。しかし、現段階での実用化に向けた研究は、同種資産群マネジメントや個別資産マネジメントとしての橋梁あるいは舗装マネジメントのように、「かたち」となって見えるマネジメントシステムの領域のみに限られている。

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3.現状と課題

3‐1.日本の現状と課題

[1]社会・経済状況

 日本の人口は、2004年の1億2,779万人をピークとして長期減少過程に入っており、推計によれば2050年には約1億60万人2)となる。人口の減少は地方部ほど急速に進む。また、出生率は年々低下して2006年には1.25となった。このため、65歳の高齢者比率は、2005年には19.9%であったが、2030年には30%近くまで増加すると予測されている2)。今後、少子高齢化の急速な進行に伴い、労働力人口の減少や地方部での集落の消滅、基礎的社会サービス提供が困難な地域の発生などが懸念されている。

 一方、建設産業のこれまでを振り返ると、建設就業者の推移は、建設投資額の増加とともに1997年まで増加が続き、長引く不況の中でも我が国の雇用の安定に寄与してきた。しかし、その後、建設投資額の減少に伴い、2005年には1988年の就業者数と同程度の568万人となった。きつい、汚い、危険の3Kイメージのためか、年齢階層別では、若年層の減少が著しく、相対的に高齢層(55歳以上)就業者数割合が増加して現在は30%を占めている。建設産業は、他産業と比べても高齢化傾向が高い産業となり、産業全体の維持・強化の点で大きな問題となっている。最近のゼネコン収益を見ると瑕疵補償費により収益が圧迫されており、その原因には競争の激化や技術力の低下といった建設業界の構造的課題があると指摘されている3)。現在、団塊世代の多くの技術者・熟練技能者が引退を目前とし、若年就業者の確保と技術・技能の継承は建設産業全体の大きな課題となっている。

 また、建設を含めて公共事業費は、戦後復興期の雇用対策や高度成長期後の景気対策として重要な役割を果たしてきた。バブル崩壊後、景気対策のため建設国債は一時増加したが、現在は減少傾向にある。しかし財政赤字については増加し、その補填として赤字国債が増加している。2006年度の国債費が一般会計予算における歳出79.7兆円の約38%占めており、今後は益々、財政の硬直化が進行することが懸念されている。

[2]道路構造物のストック状況

 内閣府政府統括官編「日本の社会資本 世代を超えるストック」4)によれば、高度経済成長期の1970年から急速に社会資本がストックされてきている(図表1)。社会資本別では、交通(道路、港湾、航空、鉄道)で40%、生活関連(上下水道、公園、廃棄物、公共賃貸住宅、郵政)20%、農林水産工業(農林漁業、工業用水道)15%、国土保全(治山、治水、海岸)13%、文教(学校・社会教育施設)12%の割合である。物流・経済を支えている交通関係社会資本の割合、その中でも特に道路関係が多く、今後、維持管理・更新をする上で道路関係にかなりの投資額を必要とすることがわかる。

chart01

 2005年4月時点で、高速国道、国都道府県道、市町村道の道路実延長は約119万kmであり、管理者別では、旧公団注1)管理が約7千km(1%)、国管理が約2.2万km(2%)、都道府県管理が約12.9万km(11%)、市町村管理が約100.2万km(86%)である5)。地方道が全道路の約97%、橋梁箇所数で約89%、トンネル箇所数で約54%を占めている。

 全国の道路橋数は橋長15m以上で、約14.8万橋があり、その中では、旧公団管理が約6千橋(4%)、国管理が約1.1万橋(7%)、都道府県管理が約4.5万橋(31%)、市町村管理が約8.6万橋(58%)であり、橋種別ではPC橋注2)が40%、鋼橋が39%、RC橋注2)17%、その他4%の順となっている5)。図表2は全国の橋梁数と建設数の推移であり、高度成長期(1955〜1973)において集中的に建設された橋梁数は全橋梁の約34%を占め、平均経過年数は約37年である。近年の急激な交通量増加及び車両の重量化、塩害・アルカリ骨材反応等により、コンクリート部材のひび割れ、剥離・剥落、鋼部材の疲労による亀裂や腐食による損傷が顕在化している。損傷事例を図表3に示す。

chart02

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chart03

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 我が国の舗装率(簡易舗装を含む)は、都道府県道以上ではバブル期までに整備が進み現在97%であり、市町村道路までを含めると78.9%である5)

 舗装にはアスファルト舗装とコンクリート舗装があり、一般国道でのアスファルト舗装の割合は、現在、98.9%を占めている5)。初めてアスファルト舗装が施工されたのは1878年で、東京神田昌平橋であった。自動車通行のための舗装は、東京に初めて自動車が登場した1903年に施工された。舗装は供用経年とともに、舗装路面のひび割れ、段差、わだち掘れ注3)等が発生し、道路走行時の車両の安全性や快適性を低下させる。

 我が国で初めての大規模な道路用トンネルは、1980年に当時世界で3台しかなかった米国製掘削機で建設された山形県と福島県を結ぶ栗子トンネルであった。現在は、トンネル数は8,784箇所、トンネル延長は3,224kmで、旧公団管理が739箇所(8%)、国管理が3,342箇所(38%)、都道府県管理が2,346箇所(27%)、市町村管理が2,357箇所(27%)となっている5)一般国道(指定区間)注4)及び高速自動車国道でみると、高度成長期に建設されたトンネルが全トンネル数の約25%を占めている8)

[3]厳しい自然・地形・交通条件下での道路管理

 日本の国土面積は、世界の国土面積の僅か0.25%にすぎないが、世界で発生する大規模地震(M6.0以上)の約21%を占め、活火山数としては世界の約7%が狭い国土に集中している。また台風の接近数は年平均10個以上で、年間雨量は世界平均800mmに対して2倍以上の約1,800mmとなっている。地形的には、国土面積の約7割が山地で、急峻な山脈が列島を縦断しており、しかも可住地面積の2割以上が軟弱地盤である。また、国土の約6割が積雪寒冷地にあり、道路は厳しい自然条件下にさらされている。大型車混入率注5)は欧米と比較して高く、特に大型車混入率の高い道路では鋼製橋梁の疲労による損傷が発生している。

 首都圏は日本の中枢機能が集中しているにもかかわらず、環状道路ネットワークが十分に形成されていないため迂回機能が発揮されず、都心部では慢性的な渋滞が発生している。道路損傷などによって、通行止めとなるような大規模工事が発生すると社会的影響が甚大である。

[4]耐用年数

 構造物の更新は、構造物の損傷・老朽化に伴う物理的更新と、機能の陳腐化に伴う機能的更新に分類される。物理的更新における更新期間については、財務省の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」や各省庁で設定または推計している耐用年数(図表4)による。このうち、国土交通省では、施設の特性により、必要に応じて細分化し、それぞれの更新実態を踏まえた耐用年数を設定している。

chart04

 例えば、国土技術政策総合研究所の橋梁実態調査(図表5)では、建設から架替えられるまでの年数が、物資不足の第二次大戦中から戦後までは30〜40年程度と短いが、その後、地震被害や損傷事例による対策として示方書や指針等の改定がなされており、新しく建設された橋梁の寿命が徐々に長くなる傾向にある。近年に建設されているものは、適切な管理が行われることにより少なくとも100年程度の寿命が期待できる可能性があると推定される10)が、土木技術の知見が十分でなかった時代に多数のストックが形成されてきたことから、示方書や指針等の改定前の橋梁に対する対策が必要である。

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3‐2.諸外国の状況

[1]米国の「衰退する社会資本」における対応

 米国では1930年代に、ニューディール政策により多くのインフラが整備された。1960年代後半から公共施設の破損や老朽化による事故が起きた。1967年にウエスト・ヴァージニア州とオハイオ州を連絡するシルバー橋の崩落により46名が死亡、1983年にはコネチカット州のインタステートハイウェイの一部であるマイアナス橋が崩落し3名が死亡、1980年代には全米各地で橋梁や舗装が劣悪な状態に陥り、大量に整備された道路構造物の老朽化に対応できず「荒廃するアメリカ」と呼ばれる状況にあった。社会資本の危機について国民の認識が深まってきたが、社会資本に対するマネジメントの欠如と維持管理の長期的な重要性に関する認識不足によって、十分な維持管理予算の投入がされなかった。

 このため、米国政府は悪化した財政状況の中、1982年に「交通支援法」を制定し、ガソリン税率引き上げによる予算確保により重点的にインフラ維持予算を投入した。また、1991年に成立したISTEA(陸上交通効率化法:1992〜1997)及び1998年に成立したTEA‐21(21世紀に向けた交通最適化法:1998〜2003)により、道路投資額の拡充を行い、維持補修に力を入れた結果、現在は欠陥橋梁が減少している。しかし、2004年時点で未だ約27%近い欠陥橋梁が存在し、一度荒廃させたインフラを更新あるいは維持補修して安全に交通を確保することは時間的にも予算的にも容易ではないことが明らかになっており、維持管理の重要性が強く認識されている。現在は、2004年に制定されたSAFETEA‐LU(次期道路整備事業法:2004〜2009)により、対策を実施している。図表6に米国で増大している道路投資額の推移を示す。

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[2]道路施設の補修を計画的に進める英国及びドイツ

 荒廃する米国の教訓を受け、英国では1998年の「道路白書」において、既存道路の維持管理向上を最優先課題として、幹線道路と橋梁の全生涯費用を最小化するため、維持管理に優先度をつけることを明示した。1998年頃より維持管理予算の計画的補強により補修が行われ、舗装の状態は改善されつつあり、橋梁の大規模補修工事も計画的に進められている。

 ドイツでは、1933年から経済政策の一環として、世界で初めての高速道路ネットワークであるアウトバーンの整備を進め、国内経済を支えてきた。しかし、1990年代から道路損傷が顕在化し、1996年以降の大規模実態調査の結果、1960〜1970年代に建設された橋梁など5,000箇所の構造物が限界的状態にあり、また、トラックの大型化(40t)への対応も必要なことが判明した。経済に大きな影響与えるアウトバーンの荒廃に危機感を持ったドイツ連邦政府は、2003年に「連邦交通網整備計画」(2001〜2015)を策定して、1992年に策定した10年計画よりもメンテナンス投資の増額(年平均38%増)を図り、既存インフラの維持更新を進めている12)

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4.日本でストックマネジメントを導入する必要性

[1]老朽ストックの急増

 我が国の経済や国民の暮らしを支えている道路構造物は高度成長期に集中的に建設され、2020年から2030年頃をピークに、構造物の劣化とともに維持管理・更新の需要が集中的に増加すると懸念される。

 橋梁とトンネルにおいて、建設後50年以上になるものの数を表したのが図表7である。橋梁では、2005年に対して、10年後に約3倍、20年後に約8倍の64,000橋、トンネルでは10年後に約2倍から20年後に約3倍の3,600箇所が建設後50年以上となる。老朽化する構造物が今後急増するため、補修・補強や更新の費用増加は避けられない。

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[2]維持・更新費用の増大

 図表8は国土交通省所管の社会資本(道路、港湾、空港、公共賃貸住宅、下水道、都市公園、治水、海岸)において、2030年までの維持管理・更新費の推計を2つのケースに対して行った結果である7)。ケース1(投資可能総額が対前年比±0%)の場合、2030年には、維持管理費及び更新費が投資可能総額の65%を占める。ケース2(投資可能総額が対前年比−3%(国)、−2%(地方))の場合には、投資可能総額が2022年以降不足し、社会資本が更新できなくなる。この推計によれば、将来は新規建設が不可能になること、あるいは、一部は老朽構造物を更新できないか、十分な維持管理ができなくなる可能性もある。

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 したがって、将来人口が減少する中では地域的状況も考慮して、既存道路構造物の差別化を図り、それらに投入すべき維持管理費のメリハリをつける必要がある。

[3]建設廃棄物の増大

 建設産業から排出される建設廃棄物は、産業廃棄物総量(約4億1,200万t)の約2割(7,500万t)であり、産業廃棄物最終処分量(約4,000万t)においても約2割(700万t)を占めている。一方、産業廃棄物不法投棄量(約41万t)では、約9割(35.4万t)が建設廃棄物である13)

 リサイクル率は年々微増ながら向上し、国土交通省の2002年調査では92%(土木・建築計)に達している。しかし、最終処分場の新たな設置は困難な状況であり、最終処分場の残余容量不足が生じている13)

 今後、老朽化構造物が増加し、それらの解体により、建設廃棄物の排出量は増加すると予測されているが(図表9)、このような観点からも、今までのようなスクラップ・アンド・ビルドの時代から、維持修繕を適確に行い、可能な限り寿命を延ばして使用することが求められるようになる。

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[4]財政制約

 財政赤字の増大、少子高齢化に伴う労働力の不足、消費・投資の減少などによる経済活力の低下懸念、社会保障関連費用の増大により、日本では社会資本整備に対する財政制約が高まっている。事実、公共事業費は1999年以降減少している。また、道路特定財源の一般財源化問題もある。今後、このような財政制約は益々増大する。したがって、日本の将来ビジョンを踏まえて、社会資本の整備・維持管理に必要な予算の根拠を将来を含めて把握し、構造物の維持・更新の必要性を明らかにする必要がある。

 これまでの道路管理の取り組みでは、維持管理の予算については、対前年比等の指標を基に決定されてきた。長期的な視点に立った予算配分ではなく、点検により構造物の劣化が顕著に現れている箇所を対処療法的に修繕(事後保全)するのが一般的である。点検要領の作成、データベース構築、技術開発を個別に行っているため、全体を俯瞰した総合的なマネジメントシステムの取り組みが欠如している。今後はストックマネジメント手法を導入し、建設から更新に至る間のライフサイクルコスト(LCC)の最小化を図るために、設計、建設、維持管理、修繕、更新等に関わる全てのプロセスの総合化と、損傷が顕在化する前に軽微な補修を実施す予防保全を行っていくことが必要となる。

 一般的に、事後保全よりも予防保全の対策の方が、トータルコストを低く抑えることができるうえに、構造物の延命化や更新時期の平準化を図ることが可能であることが、経験的に分かっている14、15)

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5.ストックマネジメントに必要とされる技術

 事後的保全から、損傷が顕在化する前に軽微な補修を実施する予防保全に切り替えるためには、図表10のようなサイクルで適切な維持管理を実施しなければならない。また、そこで得られた対策などの知見を構造物の設計・施工に活かし、新規構造物においてもより長寿命化を図らなければならない。

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 以下に、サイクルの各段階において必要な技術について述べる。

5‐1.構造物の劣化機構と劣化現象

 鋼構造物の劣化機構には腐食、疲労、遅れ破壊があり、供用時間とともに品質の低下を来たし、鋼構造物の寿命低下をもたらす。道路構造物の多くで用いられているコンクリート構造物の劣化要因には、中性化、塩害、凍害、アルカリ骨材反応、化学的侵食、疲労がある。中性化と塩害は、環境中からの劣化因子である二酸化炭素又は塩化物イオンがコンクリート中へ侵入し、コンクリート内部の鋼材を腐食させるが、コンクリート自体の劣化は生じさせない。一方、凍害、アルカリ骨材反応、化学的侵食、疲労は、それぞれ劣化メカニズムが異なるが、コンクリート自体が劣化する現象である。これらの劣化要因による代表的な損傷は、ひび割れ、剥離・剥落、遊離石灰、錆汁、ゲルの滲出、鉄筋露出、スケーリング、変色などがあり、耐荷力及び耐久性の低下につながる。凍害と塩害、アルカリ骨材反応と塩害等の複合劣化は、コンクリート表面から劣化機構を特定するのは困難である。

 劣化機構についての詳細は、「科学技術動向」2004年6月号レポート「構造物保全技術とリスクベースメンテナンス(RBM)」を参照されたい。

5‐2.構造物の点検診断

 道路構造物は屋外の厳しい自然環境や交通環境等にさらされている。より長期間の供用に耐えうるためには、構造物の保有性能が要求水準を下回らないよう、適切かつ効率的な維持管理を実施しなければならない。

 点検は構造物の劣化機構及び状態を把握することが第一の目的であるが、それとともに、その後の健全度評価及び劣化予測を行うための情報収集としても重要な作業である。構造物の損傷は複合劣化に因るものが少なくなく、診断にあたっては、過去の損傷事例などを参考に点検方法の選択などによって効果的な点検と点検データの解析を行い劣化の有無を判断し、劣化要因と機構を的確に把握する必要がある。

 構造物の保有性能や材料劣化の程度を直接的評価する方法には、コア採取注6)による局部破壊試験や実構造物の載荷試験がある。しかし、いずれも損傷を加える欠点がある。その対応として、近年点検の効率化と高度化も目的とした非破壊検査手法の開発・導入が急速に進んでいる。また、構造物の保有性能を把握するための必要項目を常時監視(モニタリング)し、その計測に基づいた対策を随時行う研究開発も進展している。

 しかしながら依然として、点検診断技術は訓練と経験によるところが大きく、技量の高い点検技術者は目視点検及び写真で構造物の劣化損傷メカニズムと状態をある程度の精度で診断ができるとも言われている。今後、老朽化する構造物が全国的に増加することより、このような能力を持つ点検診断技術者の不足が懸念されている。

 図表11に、コンクリート構造物各種点検方法の適用性ついて示す。

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 以下には、最近進んできた非破壊検査とモニタリングについて紹介する。

[1]非破壊検査

 非破壊検査は構造物を破壊することなく内部や表面の欠陥状況を検査する方法である。図表12のように、コンクリート構造物の診断技術としては、コンクリート部分の劣化及び欠陥検出では赤外線法、電磁波レーダ法や打音法、鉄筋の腐食では自然電位法が多く用いられている。鉄筋の腐食は腐食の程度(腐食量)が重要な情報であるが、現在のところ、その情報を把握できる試験はなく、その試験方法の開発が望まれている。

chart12

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 一方、鋼構造物の場合には、クラック診断には超音波探傷試験、磁粉探傷試験、浸透探傷試験、渦流探傷試験、放射線透過試験などがある。しかし、これらを用いて信頼性の高い測定結果を得るには、板組や溶接方法の知識と測定に熟練を要する。また、溶接線の条件や継手形状により検出しにくい場合があり、測定結果の検証や適用性について研究が行われている。

 非破壊検査は、検査の効率化と高度化の観点から普及が見込まれているが、今後更なる精度向上と利用範囲の拡大を図るとともに、試験方法の早急な標準化が必要である。

 以下に、最近の研究成果の一例として「鉄筋コンクリートの非破壊による鉄筋腐食量診断システムの開発」を示す。

 鉄筋腐食の検査法には自然電位法や分極電位法があるが、これらは鉄筋の腐食状態や腐食速度を推定する方法であり、継続的に測定し変化を把握する必要がある。腐食程度(腐食量)は、構造物の維持管理を行っていく上で重要な劣化情報の1つであるが、前述したように、現在のところ把握可能な非破壊検査は無く、その確認にはコンクリートをはつり、内部鉄筋を露出させて、目視検査や他の試験方法を用いて劣化の情報を得ている。

 中央大学理工学部の大下英吉教授、五洋建設株式会社、NEC三栄株式会社、株式会社計算力学研究センターは、産学連携による研究で、コンクリート構造物の性能を損なわずに効率的に行うことのできる「非破壊による鉄筋腐食量診断システム」を開発した19)

 錆(腐食)は断熱材的な熱的性質(大きな比熱、小さな熱伝導率)を有しており、鉄筋を加熱した場合のコンクリートへの熱伝導は健全な鉄筋に比べ小さくなる。したがってコンクリート表面での温度は、腐食鉄筋と健全な鉄筋では異なる(図表13(a)、(b)、(c))。このことを利用して、赤外線サーモグラフィで温度変化を測定し、欠陥位置画像処理ソフトによってコンクリートの浮き、ひび割れなどの欠陥位置や大きさを示すことができる。また、温度履歴データを最適化熱伝導逆解析ソフトにフィードバックすることによって、腐食程度(腐食量)の診断も行うことが可能となった。本研究での鉄筋腐食状況とかぶり厚の関係における実測錆厚と解析錆厚は図表13(d)のとおり、腐食鉄筋あるいはかぶり厚がおおきい程、解析錆厚が大きい値がでる傾向があるが、運用上問題のない精度である。

chart13a

chart13b

chart13c

chart13d

 これまでは、熱画像からの欠陥位置評価は定性的な判断によることが大きいために熟練者が行っていたが、開発した画像処理システムは欠陥位置と大きさを自動的に抽出することから、熟練者でなくとも診断が可能となる。

 この研究開発では、当初、鉄筋の加熱方法はコンクリート構造物を一部壊し鉄筋に電線を取り付け加熱する方法を用いていたが、構造物の損傷と効率性の点で欠点があるために改良を加え、構造物表面から電磁誘導コイルにより鉄筋に誘導電流を発生させ、均等に鉄筋の加熱を可能とした。現在は、携帯型の電磁誘導加熱器を開発し、より容易な検査を可能にするための研究を進めている。また、今回の研究は横筋のみの配筋状態に注目したものであったが、実構造物は縦筋・横筋が結束し配筋されているため、結束箇所でのコンクリート表面温度が最も高くなる。この結束箇所での劣化性状評価を行う方法についても、画像処理手法を行う研究も進められている。

 この他、最近現場で使えるポータブル型蛍光X線分析装置も開発されているが、その詳細は、「科学技術動向」2007年3月号トピックス「ポータブル装置によるコンクリート内部の塩化物イオン量測定」を参照されたい。

(2)モニタリング技術

 モニタリングは構造物の劣化や変状を客観的に把握、監視し、評価することであり、構造物が所要の性能を確保しているか、異常な損傷が生じていないかを常時監視(モニタリング)して、その結果を対策に反映することが重要である。

 モニタリングの方法としては、構造物にセンサーを設置し、光ケーブル等で遠隔地にあるモニター画面に接続して状態を常に監視する方法と、計測器を移動しながら定期的に現場の構造物のセンサーに接続し監視する方法がある。

 モニタリングには、地震等の災害直後の異常検知のような構造物全体のマクロな挙動を監視するものと、構造物の部材の亀裂や腐食の進展監視がある。最近の研究動向としては、構造物全体の監視に関するものが多く、これはAEセンサー注7)や光ファイバーセンサーが開発されたことによるところが大きい。例えば、地震時の高架橋の損傷をAEセンサーなどにより現地からの情報を基に損傷の評価を行い、その評価に基づき優先的に検査員を投入し、早期復旧対応するためのモニタリング手法などが行われているが、普及拡大はセンサーの低コスト化にかかっている。図表14にAEセンサーの概念図を示す。

chart14

5‐3.健全度評価

 健全度は構造物の機能や性能を満足する程度を表す。現在までのところ、一般化された算出方法はない。橋梁のように異なった機能を有する部材で構成されているものや、舗装のようにほぼ同一材料で評価できるものなどがある。一つの健全度で表すのが困難な場合もあることから、構造物毎の健全度の評価単位を決定せざるをえない。橋梁マネジメントの場合では、各部材の点検健全度係数と部材間の重み係数を設定して加重平均し、橋梁単位の健全度を求める方法などが提案されている。国土交通省における塩害の健全度の評価表については、6章で後述する。

5‐4.劣化予測

 劣化予測は、点検結果の統計分析に基づくものや理論式などにより、対象となる構造物の性能を時間軸上に表し、その経時変化より、構造物がどのような損傷が発生するかを予測する。その段階においての耐久性の評価及び判定は、補修あるいは補強の対策などの維持管理計画を策定する上で重要である。維持管理計画の具体性及び実効性は、点検データと劣化予測の精度の良し悪しにかかっている。

 将来の健全度を予測するための対象となる劣化要因ごとの劣化予測手法には、寿命を設定する方法、理論的な劣化予測式を用いる方法、点検結果の実績を統計的に分析する方法、遷移確率注8)を用いる方法がある。各手法の概要と特徴及び課題を図表15に示す。

chart15

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 このうち理論的な劣化予測式については、(社)土木学会コンクリート標準示方書[維持管理編]において劣化機構の中性化、塩害、RC床版の疲労に対し、性能照査式が提案されている。コンクリート材料、構造の緒元および環境条件を入力すれば、ある程度の劣化現象の発生時期、劣化の進行度等が推測可能となっている。しかし、凍害、化学的浸食、アルカリ骨材反応や複合劣化は現在のところ、実用化に耐えうる精度で劣化予測を行うことは困難である。また、補修補強後の劣化予測精度の向上も必要であり、これらの研究の進捗が望まれている。

 図表16に塩害による劣化進行過程を示す。使用期間により、潜伏期、進展期、加速期、劣化期に分けられ、劣化が進行する。

chart16

 予測式の一例として、(社)土木学会コンクリート標準示方書[維持管理編]の塩化物イオンの拡散予測に関する理論式を図表16中に示す。

5‐5.補修及び補強

 補修及び補強対策の際には、構造物の保有性能や要求性能だけでなく、対策後の劣化進行や経済性等を総合的に評価し、劣化・変状の原因を究明して対策の検討を行い、最適な補修・補強方法を決め構造物の性能を維持し、かつ向上させる必要がある。ただし、維持管理費を低減するためには、予防保全手法によって損傷が顕在化する前に軽微な補修を実施し、ライフサイクルコストを最小とする必要がある。これを実現するためには、点検診断技術や劣化機構の研究の進展と補修効果を反映した劣化予測精度の高度化が必要である。

 一般的に補修は、構造物や部材の寿命を長くする、または、耐久性を回復もしくは向上させるための対策であり、補強は、構造物や部材の耐荷力や剛性等の力学的性能を回復もしくは向上させる対策である。図表17に補修と補強の概念図を示す。

chart17

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 補修及び補強技術は多種多様にある(図表18)。工法選定の誤りにより、所定の効果が得られず、供用期間中に再補修や再補強が必要になる事例が散見している。各工法の性能と効果、適用範囲を明確にし、劣化要因に応じて要求性能を満たす最適な補修・補強工法を選定するシステムの確立が必要である。

chart18

(図表クリックで拡大表示)

 近年、コンクリート構造物では、ひび割れが発生して自己修復するコンクリート材料の研究開発が行われている。これが実現すれば構造物の長寿命化やメンテナンスの軽減が図られることから、今後の進展が期待されている。

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6.橋梁マネジメントシステムの開発

 橋梁の計画的管理を支援するツールとして、橋梁マネジメントシステム(BMS)が開発されている。その概要を以下に示す。

 BMSは、各橋梁の諸元データ、点検データ、補修履歴データあるいは環境条件等のデータを入力すると、予め作成された健全度予測プログラムにより、現在の健全度及び将来の劣化進行が予測され、それに対する各種の補修、あるいは更新計画を遂行する複数の条件を与えると、各条件に対してコストと橋梁の健全度のシミュレーションが行われ、予算と照らし合わせて最適な橋梁の維持管理計画を立てることができるシミュレーションシステムである24)

 3‐2節で述べたように、米国では1970年前後に、各地の橋梁において供用上問題となる状態が発生し始めたことから、点検・資格制度の構築、データベース構築、維持管理や予算管理に関する各種分析システム開発が行われてきた。代表的なBMSとして、FHWA(米国連邦道路局)が1991年に開発し、Windows対応など数度の機能改良を加えたPONTISというシステムを州政府、特別区・郡・市、有料道路事業者に提供している。このシステムは、ハンガリーやクウェートなどでも運用されている。欧州においては、イギリスのSSBP(橋梁安定化プログラム)やデンマークのDANBRO(総合橋梁管理システム)などがある。

 日本においても国土交通省、旧道路公団、自冶体などにおいて、限られた維持管理や更新のための予算を有効に活用し、数多くのストックを維持する研究を行っている。ここでは、国土交通省国土技術政策総合研究所でのBMSの研究開発の概要6)を紹介する。

 実際の道路橋の管理においては、図表19に示すように、多様な条件下にある橋梁の将来予測を客観的データの統計処理などから精度良く行うことは困難である。管理計画の立案にあたっては専門家等の知見による定性的・経験的な評価に依存するところが大きい。しかしBMSを導入することにより、データに基づく将来予測や定量的・客観的評価の情報を管理計画の立案過程に取り入れ勘案することで、より合理的な計画の策定が可能となる。

chart19

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 まず、健全度を予測していくにあたり、現況の損傷状態の評価を実施する。健全度予測が実施可能であるものについては、定期点検結果を活用し、損傷状態に応じて図表20の「1.健全度の評価」に示すIからVまでの健全度を設定し評価する。例えば、塩害が原因となるコンクリート部材については、理論式による全塩化物イオン量及び鋼材の体積減少率等から(社)土木学会の定める劣化過程に対応してBMSで用いる5段階の健全度への変換方法の例を示している。

chart20

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 劣化予測については、将来的には劣化予測に必要となる点検データ、対象とする劣化に応じた劣化予測手法を用いることが望ましい。しかし、現時点では国土交通省編 橋梁定期点検要領(案)による点検データがまだ少ないこと、塩害、疲労等の劣化要因が特定できる点検結果が少ないことから、現段階では精度や個々の適用性については課題があるものの理論式による劣化予測式を用いる手法としている。現時点のBMSで具体的に示されている劣化予測は、鋼部材の塗装劣化、鋼部材・RC床版の疲労、コンクリート部材の塩害に関するものに限られている。しかし、BMSの中では、現状の橋梁の状態評価及び将来予測を用いて、部位・損傷毎に推奨される補修時期・補修費用を試算して対策計画の検討の参考となる情報が出力できる。

 日本では、関係機関においてBMSの研究開発が活発に行われているが、早期に精度の高いシステムを開発し、導入・運用する必要がある。

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7.まとめ

 少子高齢化、財政の厳しい時代を迎え、確実に進行する老朽化した道路構造物の維持管理のため、今まで行われてきた保全方法を「事後保全」から「予防保全」へ移行し、更新時期の平準化、ライフサイクルコストの縮減、リスクの低減のために、以下の点について計画的な対応が必要である。

[1]ストックマネジメント手法の本格的導入

 膨大な道路構造物の更新時期を2020年から2030年頃に迎え、更新の平準化のためには保全方法を「事後保全」から「予防保全」へ移行し、損傷が顕在化する前に軽微な補修により長寿命化、ライフサイクルコストの縮減をする必要がある。そのためには、これまでのような構造物の点検、評価、劣化予測など個別の取り組みに終わらず、これらを統合した総合的なストックマネジシステムを構築し、早期の本格的な導入・運用をすることによって、既存ストックを長持ちさせ利用する必要がある。

[2]技術開発

 効率的な道路管理を行うためには、劣化要因のメカニズム解明や劣化予測技術の精度の更なる向上、非破壊検査やモニタリング技術、効果的かつ経済的な補修・補強手法の開発、構造物の長寿命化、点検技術、交通や周辺環境に与える影響をできるだけ小さくした取替え時の更新技術等を進める必要がある。これらの研究開発では、個々の研究機関が独自に研究を進めるのでなく、産官学一体の研究開発プロジェクトを立ち上げ、ロードマップを定めて研究・開発の促進を図ることが望ましい。

[3]高度な測定技術及び判断技術を有する人材の育成

 老朽構造物の増大に伴い老朽化する構造物を適切に維持・管理するために、ストックマネジメント手法により、設計から建設、点検、維持管理の各段階で、一定レベルの知識と経験、適切な技術的判断が可能な技術者がより多く必要となる。人材育成には長期間を要することから計画的な育成を実施しなければならない。

 この人材育成では、専門知識と現場経験の積み重ねが必要なため、インハウス技術者及びコンサルタント技術者のOJT(On‐the‐Job Training)などによる実施研修を通したレベルアップと、技術力に見合った資格制度の確立が必要であると考えられる。例えば、土木・建築分野での高等教育の場での「維持管理工学」の教育の実施はまだ少ないが、今後は必要であるであろう。また、技術士やシビルコンサルティングマネージャ(RCCM)などに「維持管理部門」を設けることにより、高度な専門能力とインセンティブの確保が可能となると考えられる。さらに、検査等をアウトソーシングで行ううえで経費を見直すことにより、優秀な技術者が集まり易い環境を整備することも必要になると考えられる。

[4]自冶体への財政支援及び技術支援

 道路網は高速自動車国道から市町村道まで一体的なネットワークを形成し機能をしているが、全道路の約97%を占める地方道の管理の高度化が全体のレベルアップのキーポイントになる。しかし、地方公共団体では財政制約や技術者不足等により維持管理が十分になされていないところも多い。国も含め民間資金を活用するPFI(Private Finance Initiative)の導入を推進することや財政的に厳しい自冶体に対しては財政支援策を整備する必要が出てくると考えられる。また、技術支援においては、国及び大学、社会基盤関係を担当する独立行政法人、財団法人、社団法人がイニシアチブを取り、自冶体の支援を図る必要が生じている。

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謝 辞

 本稿を執筆するに当たり、東京大学工学系研究科 石田哲也助教授、東京大学生産技術研究所都市基盤安全工学国際研究センター 金田尚志特任助手、中央大学理工学部 大下英吉教授、国土交通省国土技術政策総合研究所 小林寛元主任研究官、武田達也元研究官、七澤利明主任研究官、新構造技術株式会社 松村英樹代表取締役社長らに資料提供及び討議を頂いた。ここに関係の皆様に深く感謝の意を表します。

1) 大堀勝正、中村祐司:社会資本におけるアセットマネジメントの定義と実用化に向けた課題について、土木学会誌、Vol.89、pp.14‐17、2004.8

2) 国立社会保障・人口問題研究所:日本の将来推計人口(平成14年1月推計)

3) 建設通信新聞記事 2006.10.25

4) 内閣府政策統括官編:日本の社会資本 世代を超えるストック、2002.7.31

5) 国土交通省道路局 道路統計年報2006(平成16年度)

6) 玉越隆志、小林寛、武田達也:道路橋の維持管理に関する取り組み、土木技術資料48‐11、2006.11

7) 国土交通省:国土交通白書2006 平成17年度年次報告

8) 国土技術政策総合研究所:住宅・社会資本の管理運営技術の開発、2006.1

9) 財務省:「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」、内閣府:内閣府政策統括官編「日本の社会資本」(2002)、国土交通省:「国土交通白書2006」

10) 玉越隆志、中州啓太、石原真理、武田達也:道路橋資産に関する最近の施策動向と取り組み、土木技術資料46‐11、2004.11

11) 勢山廣直:高速道路事業と道路公団民営化、2006.11.6:http://www.jehdra.go.jp/pdf/125.pdf

12) 專本建設業団体連合会、(社)日本土木工業協会:世界は今、日本の今、2006.2

13) 国土交通省リサイクルホームページ:http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/fukusanbutsu/genjo/index.htm

14) 社団法人土木学会:アセットマネジメント導入への挑戦、pp.102、2005.11.1

15) 橋梁マネジメント研究会:道路橋マネジメントの手引き、pp.13、2004.8.1

16) 土木学会:2001年制定コンクリート標準示方書〔維持管理編〕

17) 国土技術政策総合研究所:非破壊技術の動向資料、2006.2.22

18) 海洋架橋・橋梁調査会:橋梁マネジメント現場支援セミナーテキスト、2004.10

19) 五洋建設株式会社ホームページ:http://www.penta-ocean.co.jp/news/d_news20040116.html

20) 大下英吉:赤外線サーモグラフィを用いた非破壊技術の開発、2006.12.20

21) 池ヶ谷、柳瀬:実構造物のモニタリングに向けて、2005.7.1:http://www.just-ltd.co.jp/technical/smart/images/HM_SAE200507
pdf.pdf

22) 北海道建設部:公共土木施設長寿命化検討委員会報告書、2006.3

23) コンクリート構造物補修技術研究会:コンクリート構造物の補修・補強工法の解説、2004.4

24) 日本コンクリート工学協会:コンクリート構造物のアセットマネジメントに関するシンポジウム、2006.12.15

略後のフルスペル

ISTEA:Intermodal Surface Transportation Efficiency Act 「陸上交通効率化法」

TEA‐21:Transportation Equity Act for the 21st Century 「21世紀に向けた交通最適化法」

SAFETEA‐LU:Safe, Accountable, Flexible, Efficient Transportation Equity Act: A. Legacy for Users 「次期道路整備事業法」

BMS:Bridge Management System 「橋梁マネジメントシステム」

FHWA:Federal Highway Administration 「米国連邦道路局」

PONTIS:フランス語で“橋”の意味 「橋梁マネジメントシステム」

RCCM:Registered Civil Engineering Consulting Manager 「シビルコンサルティングマネージャ」

PFI:Private Finance Initiative 「プライベート・ファイナンス・イニシアティブ」

 

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