[レポート3]
再生可能エネルギーの普及促進策と技術課題

大平 竜也
環境・エネルギーユニット


1.まえがき

 京都議定書が2005年2月に発効し、先進各国の温室効果ガス排出削減への取り組みが加速している。日本でも、2005年4月の総合エネルギー対策推進閣僚会議で二酸化炭素(CO2)排出量の少ない再生可能エネルギーの活用をすすめることを決定し、さらなる導入への機運が高まりつつある。中国、インド等アジアの石油需要増大や米国の堅調な石油消費を背景にした石油需給バランスの逼迫化も、世界的な再生可能エネルギー導入の潮流を後押している。

 この背景のもと、風力発電や太陽光発電、バイオマスなどさまざま再生可能エネルギーの開発・普及がすでに活発化してきている。再生可能エネルギーは、化石エネルギーに比べまだコストが高いなどの問題点はあるものの、上記の理由から世界的にその市場は今後大きく発展する可能性が高い。

 本稿では、再生可能エネルギーの普及には発電システムの高効率化や低コスト化技術開発に加えて、促進制度の導入が重要な鍵であること、促進制度は、近年研究開発主体の技術プッシュ型から経済的インセンティブを伴う需要プル型に大きく変化してきていることなどを解説し、日本の法整備状況の問題点を指摘する。また、これらを普及させるために喫緊の大きな課題となる分散電源と既存電力系統に連系との焦点を当てる。

2.再生可能エネルギー普及・促進に向けた取り組み

 ここでは、再生可能エネルギーの定義、導入を加速する要因と、再生可能エネルギーの普及・促進に向けた取り組みの分類、さらに、現在施行されている日本の電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法[RPS(Renewables Portfolio Standard)法、固定枠制度]や民間事業者による余剰電力買取り制度、グリーン電力プログラムの位置づけ等の状況と課題について説明する。

2‐1.再生可能エネルギーの定義

 「再生可能エネルギー」とは、枯渇する化石燃料から得られるエネルギーに対して、自然環境の中で繰り返し起こる現象に伴って得られるエネルギーで、図表1にその分類を示す。一方、「新エネルギー」は1997年度に施行された新エネ法で「新エネルギー利用等」として規定されており、技術的に実用化段階に達しつつあるが、経済性の面での制約から普及が十分でないもので、石油代替エネルギーの導入を図るために特に必要なもの、と定義されている。しかし、世界的には「新エネルギー」という定義はほとんど用いられておらず、水力や地熱、海洋を含めた形で「再生可能エネルギー」と呼ばれている。したがって本稿でも、原則的に「再生可能エネルギー」という用語を水力や地熱、海洋を含めた形で用いる。

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2‐2.導入を加速する要因

 再生可能エネルギー導入を加速する要因は、(1)エネルギー供給の安定化、多様化、分散化、(2)地球温暖化対策の二つである。

 2004年後半から、中国、インド等アジアの石油需要増大や米国の堅調な石油消費を背景に、世界的に石油需給バランスが逼迫化し、1バレル当たり40〜55ドルの高値で推移している。再生可能エネルギーを導入しエネルギーの多様化・分散化を進めることは、エネルギー供給構造の強化につながると世界的に考えられるようになってきた。特に日本では、1次エネルギー供給における石油依存度は、1970年代の70%以上から2001年度には49.4%まで低下してきたものの、図表2からわかるように、石油の中東依存度が1980年代後半から上昇している。日本のエネルギー供給構造は外部依存で、しかも一極集中型になっており、エネルギー供給の安全保障は依然として脆弱である。後述するように再生可能エネルギーは、純国産資源である。

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 もうひとつは政策的課題である地球温暖化対策、すなわち京都議定書目標達成の要因である。1997年12月、京都で開催された気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)において、CO2を含む温室効果ガスの2008年から2012年の平均排出量を、先進国全体で90年レベルに比べて少なくとも5%削減する議定書が採択された。各国別の削減目標は、日本が6%、米国7%、欧州連合(EU)8%などとなっている。本議定書は2005年2月に発効し、先進各国の温室効果ガス排出削減への取り組みが加速している。図表3に示すように、再生可能エネルギーは、化石エネルギーに比べてCO2排出の面から格段に環境への負荷が軽い。この低環境負荷性も、再生可能エネルギー導入加速の大きな要因となっている。

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2‐3.普及促進制度の分類

 上記のような要因によって、近年再生可能エネルギーの普及促進は、世界的に研究開発主体の技術プッシュ型から経済的インセンティブを伴う需要プル型に大きく変化している。再生可能エネルギーの普及には、技術開発に加えて普及促進制度の導入が鍵になっている。普及促進制度を、より強制的か自主的かという軸と官民の取り組みという軸で分類したものを図表4に示す。例えば、これまで再生可能エネルギー設備に対する政府補助金や特別減税といった初期投資への補助が実施されていたが、最近では実績発電量を対象にした経済的インセンティブを与える支援措置へと変化している。経済的インセンティブを与える支援措置としては、1990年にドイツで導入された固定価格制(電力会社が固定価格で買い取る制度)や、同時期に英国で開始された競争入札があり、その後1990年代後半には、後述するRPSなどの固定枠制が始まった。また、電気事業者による自主的取り組みで余剰電力買い取り制度や、消費者サイドの仕組みであるグリーン電力プログラム(グリーン料金、グリーン証書等)が、日本、欧州、米国で動き出している。以下、日本のRPS法、余剰電力買い取り制度、グリーン電力プログラムの現状と課題について述べる。

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(1)新エネルギー利用に関する特別措置法 ―RPS(Renewables Portfolio Standard)法―

 固定枠制度(RPS制度、電気事業者に一定量の新エネルギーを義務付ける制度)は、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」として、2003年度から日本に本格導入された。本制度は、エネルギーの安定的かつ適切な供給を確保するために、新エネルギー等の更なる普及を図ることを目的としており、電気事業者に対して、毎年その販売電力量に応じた一定割合以上の新エネルギー等から発電される電気の利用を義務付ける制度である。ここで対象となる新エネルギー等とは、2‐1で新エネルギーとして定義した風力発電、太陽光発電、バイオマス発電に加えて、出力1000kW以下の流れ込み式水力発電、バイナリー式の地熱発電(1)も含む。大型の水力発電は含まない。


(1)バイナリー式の地熱発電
 熱水、蒸気などにより低沸点の媒体(ペンタン)を加熱・沸騰させ、発生した蒸気によりタービンを回転させて発電を行うシステム。


 

 日本のRPS制度の概念図を図表5に示す。政府は利用目標を勘案して、電気事業者に対し、毎年度その販売量電力量に応じて一定割合以上の新エネルギー等電気の利用を義務付ける。新エネルギー等での電気の利用が義務付けられるのは、北海道電力から沖縄電力に至る10の一般電気事業者と特定電気事業者(2)、特定規模電気事業者(2)である。以下では、この3種類の電気事業者を総称して電気事業者と言う。


(2)特定電気事業者、特定規模電気事業者
 特定電気事業者は、限定された区域に対し、自らの発電設備や電線路を用いて、電力供給を行う事業者。特定規模電気事業者は、契約電力が50kW以上の大口需要家に対して、一般電気事業者が有する電線路を通じて電力供給を行う事業者(いわゆる小売自由化部門への新規参入者)


 

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 電気事業者は、上記の義務を履行するため、以下の3つの方法での新エネルギー等電気の入手が可能である。

(i)自ら「新エネルギー等電気」を発電する

(ii)他から「新エネルギー等電気」を購入する

(iii)他から「新エネルギー等電気相当量」を取得する

 (iii)の「新エネルギー等電気相当量」とは、いわゆるクレジットのことをいい、新エネルギー等電気の価値を他社から購入することによって、実際の電気の利用や利用目標量の減少にあてることができる。

 電気事業者が正当な理由なくこの義務を履行しない場合には、100万円以下の罰金に処する等の罰則が設けられているが、このような罰則によって導入促進のインセンティブが大きく働くとは考えにくい。ここでは、義務量(kWh)に対する不履行量(kWh)の度合いに応じた課徴金制度(ペナルティ措置)などの導入がより合理的であろう7)。また、現在上記の電気事業者の中には、化石燃料を多く使用する自家発事業者(自らの発電設備による電力をもっぱら自らの事業所に供給する事業者)は含まれていない。エネルギー転換部門の温暖化排出量において、自家発事業者は約15%を占めており8)、自家発事業者への義務化も今後の課題である9)

 新エネルギー等電気の利用目標は、政府が4年ごとに総合資源エネルギー調査会の意見をもとに当該年度以降8年間の利用目標を定めることになっている。現在の利用目標は、図表6に示したように、2010年度(122億kWh/年、予想販売電力量の1.35%に相当)までしか定められておらず、利用目標量が全電力量の1.35%程度では、市場の流動性がほとんど期待できない。また、この利用目標だけでは、電気事業者や発電設備製造事業者は長期的な資金調達計画を立てることが難しい。今後、新エネルギーを中長期的に推進していくには、目標値の向上および少なくとも2020年ぐらいまでの長期目標設定が必要である。

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 RPS法導入時に予定されていた法の見直しが2005年6月から始まったが、その際には3章で比較するような海外の状況が参考になると考えられる。

 一方、ここで新エネルギー等の導入を義務化するということは、量の大小に関わらず、今後多くの風力発電や太陽光発電などを分散型電源として既存の電力系統に連系して使用していくことを意味する。4章に後述するが、この義務化を実現するには、各々の発電システムの高性能化及び低コスト化技術開発に加え、多くの分散電源を既存電力系統に連系し協調運用していく制度的・技術的連系問題が近々の課題となる。

 なお、2‐1で定義したように、本稿での「再生可能エネルギー」は水力発電等も含む。現在RPS法の対象となっていない大型水力発電等を含んだ「再生可能エネルギー」で考えれば、日本の再生可能エネルギーの利用目標量は、1次エネルギー消費の約6%程度ということになる。

(2)余剰電力買い取り制度

 一般電気事業者は、新エネルギーの導入拡大に協力するため、自主的な取り組みとして1992年度より、太陽光発電と風力発電から余剰電力を購入してきた。さらに、1993年度からは熱電併給等の自家用発電、1998年度からは事業を目的とした風力発電(2000kW未満)からも余剰電力を購入してきた。余剰電力の購入単価は、新エネルギーの種別等に基づいて設定され、購入メニューが公表されている。特に、風力(事業用を除く)および太陽光については、一般電気事業者の電力販売価格(電力量料金)と同額で購入しており、一般家庭(時間帯別電灯)の場合約27円/kWhである。また、事業用風力発電については、長期かつ安定的に購入する事業用風力メニューを設定している。東京電力の例では、15年の長期契約で約11円/kWhとなっており、これは火力燃料費相当の4〜6円/kWhに比べ、非常に割高である。

(3)グリーン電力プログラム

 グリーン電力プログラムは、電気の消費者が何らかの形で電気の種類を選んで使っていけるように提供されている仕組みである。RPS制度が電気の供給サイドに対して何らかの義務やインセンティブを与える制度であるのに対して、本プログラムは消費者サイドの自発的取り組みを促す制度で、これも再生可能エネルギーの普及を促進するためのひとつのプログラムと言える。グリーン電力プログラムを形態から分類すると、図表7のように4つに大別される。

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 グリーン電力の市場は、例えば電力証書の契約総額が開始後4年で約25億円6)に達するなど一定の成長を遂げてきたが、今後の本格的な市場拡大に向けてはいくつかの課題が出てきている。最大の課題は、企業における証書購入費が税務上原則として寄付金扱いで、法人税が課せられているため、一般の環境対策に比較して高コストになっていることである。これは導入量を大きく制約する要因であり、今後は経費扱いできるような措置が必要である。

 また、本プログラムでは、民間事業者が自主的に消費者サイドに対して、再生可能エネルギーのもつ「環境価値」に焦点をあてた商品の開発や取り組みを行なっているため、この取り組みが供給サイドに向けられたRPS制度と並存できるような仕組み作りも必要である。現状の制度では、グリーン電力証書とRPS制度の「新エネルギー等電気相当量」との2重カウント(2度売り)を避ける措置がとられておらず、これが課題のひとつになっている。

3.世界における再生可能エネルギー導入環境整備の状況

 ここでは、欧州、北米、その他地域における再生可能エネルギー導入環境整備の状況を紹介し、日本の固定枠制度(RPS制度)との比較分析を行ない、日本の制度見直しの参考にしたい。

3‐1.欧 州

 欧州連合(EU)は、地球温暖化対策の観点から、2001年10月に「再生可能エネルギー推進指令」11)を出し、2010年までに1次エネルギーで再生可能エネルギー割合を、1998年の6%に対して倍増の12%(電力消費で21%)に引き上げるという目標を設定した1)。ドイツ、フランス、英国の各国の2010年再生可能エネルギー電力割合目標値は、それぞれ12.5%、21%、10%となっている1)

 各国の普及制度をみると、ドイツ、スペイン、ポルトガルなどが固定価格制度を、英国、スウェーデン、イタリアなどが固定枠制度(RPS制度)を導入している。図表8からわかるように、風力発電の飛躍的な普及を達成しているのは、固定価格制度のドイツ、スペインである。ドイツでは、本制度をベースとする再生可能エネルギー法をバックに、電力消費における再生可能エネルギー電力の割合が、1998年の4.6%から2004年上半期には10%へと倍増した。固定価格制度の利点は、各種再生可能エネルギー事業に対する電力購入価格が長期間にわたって保障されるため、事業リスクが小さく抑えられる点である。日本でも、今後再生可能エネルギー導入量が目標値に達しない場合には、期限を限定して電力の最小買い取り価格設定などの施策を導入する検討の余地がある。

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 EUでは、上記の「再生可能エネルギー推進指令」において、再生可能エネルギーを送電系統に優先的に接続していくという方針が明確に規定されている。また、EUは「再生可能エネルギーおよびその貯蔵が増加した場合の独立型発電システムの革新的制御技術」などの技術開発も積極的に推進している12)

3‐2.北 米

 米国では、再生可能エネルギーを対象として、税制上の優遇措置が行われてきた。カリフォルニア州、ニューヨーク州、アリゾナ州など17の州でRPS法が制定され、州ごとに再生可能エネルギー比率の目標値が決められている。州ごとのRPS制度については、うまく機能している州もあれば、途中でストップしている州もある。これまでのところ連邦レベルの制定は無いが、2005年4月、ブッシュ大統領は再生可能エネルギー導入を推進するため、その普及や技術開発に今後10年間で約19億ドルの予算を確保する意向を表明した13)。現在上院エネルギー・天然資源委員会では、「国家再生可能エネルギー法案」を審議中である。2007〜2009年で最低3%、2012年までに5%まで拡大、2013年以降は7.5%に拡大するという目標が掲げられている1)

 系統連系に関しては、1990年代から再生可能エネルギーに限らずあらゆる独立発電事業者に対する送電系統の利用開放を進めてきた。連邦エネルギー規制委員会が中心となって、多くの再生可能エネルギー分散型電源が該当する出力20MW以下の小規模発電機を対象とした系統連系基準の策定を進めている14)

 また、カナダでは従来から水力発電が進んでおり、現在電力消費の約6割を水力発電でまかなっている。オンタリオ州では2006年から「グリーン・パワー・スタンダード」という再生可能エネルギー推進政策1)を実施予定だが、連邦政府での動きは見られない。

3‐3.中国およびブラジル

 中国は、2005年2月に再生可能エネルギー法を公布し、2006年1月1日から施行される。再生可能エネルギーの開発と利用の促進等を目的とした本法では、税、財政、価格面の優遇措置とともに、電力系統を有する電力会社に対する再生可能エネルギー電力の購入が義務付けられた。中長期的総量目標として、2010年までに再生可能エネルギーの総量を1次エネルギー消費の10%、トータルで60.45GW(小水力発電50GW、風力発電4GW、バイオマス発電6GW、太陽光発電450MW)としている。これを機に、再生可能エネルギー発電事業者に対する送電系統の利用開放が進むと予想される。再生可能エネルギー発電の系統連系電力価格については、給電開始後3万時間(約3.4年)は固定、以後は市場価格と連動することになっている。エネルギー源毎に価格設定は異なる。

 ブラジルでは、1次エネルギー供給の約4割が、水力、バイオマスを中心にした再生可能エネルギーである。政府が再生可能エネルギー電力を20年間買い取り保障するプログラムを実施しており、特にリオデジャネイロでは風力発電、太陽光発電、中小水力発電などの導入に今後力を入れていく予定である15)

3‐4.各国の導入制度比較

 世界各国で始まっている再生可能エネルギー導入制度は、固定枠(RPS)制と固定価格制に大別できる。代表的な国を取り上げてその特徴を図表9にまとめ、日本と比較した。3‐1で述べたように、風力発電導入量での比較では、固定価格制導入国の方が進んでいる。固定価格制では、各種再生可能エネルギー事業に対する電力購入価格が長期間にわたって保障されるため、発電事業者に対する大きなインセンティブが働き、電力購入価格の長期保証制度が有効である。

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 他国のRPS制度をみると、英国における中長期的な制度の保証、イタリアあるいはスウェーデンなどの最低保証価格の設定、イタリアの再生可能エネルギー系統アクセス優先権確保などが、日本のRPS制度見直しの参考になると考えられる。2章で指摘したように、日本の2010年導入目標量は全電力量の1.35%程度であって他国に比べて非常に少なく、これでは日本の再生可能エネルギー市場の流動性は期待できない。現行のRPS法スキームを維持しながらも、目標量の大幅な引き上げと、発電事業者と電力供給事業者の事業リスクを可能な限り低減するような価格安定化および長期的制度保証を取り入れていくべきである16)

4.再生可能エネルギー導入における系統連系問題

 再生可能エネルギー導入量の増加は、今後多くの風力発電や太陽光発電などを既存の電力系統に連系することを示唆している。しかしながら、風力発電、太陽光発電等の技術は分散型電源として発展途上であり、既存電力系統への連系問題は至近の大きな課題となる。ここではその概要と対策技術について述べる。

4‐1.分散型電源としての再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーシステムは、特定の資源を電気エネルギーに変換し、必要に応じて電力貯蔵や電力系統との連系を通して需給バランスをとりながら利用する分散エネルギーシステムになる。図表10に、各種エネルギーシステムを分散型電源として見た場合の構成要素の概要を示す。

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 今後、再生可能エネルギーを分散型電源として大量導入する場合、その分散型電源を有効活用し、かつ供給信頼度・品質を維持するためには、「分散型電源と既存の系統電力の協調運用システム」が必要になる。これは電力需要の変動に合わせ、既存の電力系統と協調運用しながら分散型電源ならびに系統の各機器を出力制御するシステムである。

 図表11は、各種再生可能エネルギーシステムの分散型電源としての出力安定性と制御性を評価したものであるが、風力発電、太陽光発電は天候による変化を受けやすいため、小水力、バイオマスに比べて出力の安定性、制御性に劣ることがわかる。しかも、これらの技術が今後5年程度で急速に改善する見込みは薄い。ところが、風力発電、太陽光発電は電力系統における出力制御性が悪いにもかかわらず、再生可能エネルギー導入推進を受けて、2010年には図表12に表すようにそれぞれ3,000MW、4,820MWの導入量が目標となっている。

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 今後、多くの分散電源を出力の安定性や制御性が不十分なままに既存の電力系統に連系し、協調運用していく必要性が生じるために様々な対策技術が必要になると予想される。次節に検討すべき課題と対策技術を詳述する。

4‐2.系統連系における課題と対策技術

 電力系統は、水力、火力、原子力等の発電所から、送電線、変電所の変圧器、配電線を経て需要家に至るまでの電気設備が組み合わされたシステムの総称である。現在使われている分散型電源は、多くの場合一般電気事業者の系統と連系されている。発電機が系統と連系されていると、需要の変動による影響は系統側が吸収し、点検や故障時の予備電源の心配が不要になる。さらに、風力発電でよく使われる誘導発電機は、回転子巻線の励磁電源を運転初期に系統側からもらえるという利便性がある。すなわち、分散型電源は一般電気事業者の系統と連系することにより安定した運転ができ、系統電力があってはじめて分散型電源の機能を発揮することができる。

しかしながら、今後再生可能エネルギーなどの分散型電源を大量に電力系統に連系する場合、様々な課題が生じると想定される。電力系統側の課題として、電源計画、安全・供給信頼度の確保、品質の確保について、分散型電源側の課題として、安定運転の確保について、その内容と対策技術を図表13にまとめた。

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 電源計画を立てるうえでは、日々の需要を想定する運用計画において、天候予測をもとにした分散型電源発電量の予測技術の精度を高める必要がある。安全および供給信頼度面では、電力系統事故時に分散型電源が連系されていることにより、事故の拡大や事故区間以外での電力供給に支障が出る可能性などが懸念される。系統側、分散型電源側のそれぞれについて事故検出後直ちに分散型電源を配電線から分離する技術や、各分散型電源に設置されている単独運転検出装置の干渉を防止する技術などが重要になる。品質面では、電圧や周波数の維持が困難になることが予想され、複数の分散電源同時制御(郡制御)技術や制御に有用な系統情報を伝達する情報伝送システム技術、さらに電力貯蔵装置を組み込んだ分散型電源などの連系で、電圧・周波数影響を緩和するシステム需給制御技術などが必要である。

 2005年になって、一般電気事業者が「系統の制約」を理由に風力発電の受入量を制限する動きを示しはじめている。その背景には、分散電源の系統連系費用を社会的にどのように負担していくかという問題も絡んでいる。今後上記技術面に加えて、再生可能エネルギー普及拡大の公益性を考慮して、風力発電、太陽光発電などの変動型再生可能エネルギーに関する公平・公正な系統連系ルールのあり方を、手続き面、費用面から再検討する必要が出てきている。「公平性」と「優遇」との間で、合意可能な水準を探る取り組みが必要である6)

5.まとめと提言

 世界各国で、温室効果ガス排出削減や石油需給逼迫化の2つの要因から、再生可能エネルギー導入の動きが強まっている。再生可能エネルギーは、ある程度の市場を形成するまでに発展してきてはいるが、化石燃料など既存のエネルギー資源に比べて依然としてコストが高い。そのため、世界各国で様々な普及促進制度が導入されている。ドイツでは、電力購入価格を長期的に保証する固定価格制度が、イタリア、スウェーデンでは、最低価格を保証した固定枠制(RPS法)が導入されている。一方、民間ベースでもグリーン電力プログラムなどが実施されている。国によって社会制度、経済状況、電力設備の状況などは異なるものの、これらの国の導入実績を勘案すれば、日本で導入を促進するには、さらに促進策の検討が必要であると言える。

 また、再生可能エネルギー導入量を増やすことは、これから既存の電力系統に多くの風力発電や太陽光発電などを分散型電源として連系していくことを意味する。しかし、風力発電、太陽光発電は、分散型電源としての出力の安定性、制御性が悪いため、各々の発電システムの高性能化、低コスト化技術開発はもちろんのこと、多くの分散電源と既存電力系統との制度的・技術的連系問題が喫緊の大きな課題である。

 以上の観点から、日本での導入促進策と系統連系対策に関する技術開発について、以下に具体的に提言する。

(1)導入促進策について

[1]供給サイドの視点において ―固定枠制(RPS制度)の見直し―

 再生可能エネルギー発電事業者が安定して事業を行い、電気事業者が再生可能エネルギー電力購入の負担増リスクを回避できるようにするためには、政府が現行RPS制度のスキームを維持しながら、長期的な購入価格を保証していくことが望ましい。具体的には、一定の公共性を持った再生可能エネルギー取引市場の流動性を高めるため、RPS制度の見直しによって、2010〜2020年における電気事業者の利用目標を大幅に引き上げると同時に、価格を安定化させるため下限価格(最低価格保証、電源毎に調整)を導入することが望まれる。電気事業者に目標達成インセンティブを与えるためには、義務量未達の電力量(kWh)に応じたペナルティ措置を導入する必要もある。

 また、制度の長期性を担保するために、最短でも15年先、できれば20年先の目標値を設定することが望まれる。電気そのものの原価は電気事業者の負担とするが、「新エネルギー等電気相当量価格」のうち、最低価格保証分については政府の財源(エネルギー予算特別会計あるいは温暖化対策税など)で負担することも考えるべきである。それ以外については、電気料金上乗せで電力消費者負担とするべきである。

 また、系統の整備形成と運用に関しては、再生可能エネルギー拡大を基本理念とし、欧米のように再生可能エネルギー電源の優先接続かつオープンアクセスの考え方を採用し、原則として全量買い取りを保証すべきである。これらの措置の前提としては、系統運用に関する再生可能エネルギー連系費用を透明化し、その負担のあり方・制度を検討、「公共的活用」が可能なガイドラインを作成、実施することが必要である。

[2]需要サイドの視点において ―グリーン電力プログラムの見直し―

 民間のグリーン電力プログラムでは、国のRPS制度の枠で認定されない再生可能エネルギー事業者も需要家の市場を持つことができ、市民や企業など需要家が再生可能エネルギー普及プログラムに直接参加できる。しかし、国のRPS制度と民間のグリーン電力プログラムとの調和を図る必要があり、具体的にはRPS制度の「新エネルギー等電気相当量」と、グリーン電力証書の2重カウント(2度売り)を避けることを制度に明記する必要がある。

 現状では、企業におけるグリーン電力証書購入費に法人税が課せられるため、このプログラムが一般の環境対策に比較して高コストになり、導入量を大きく制約する要因になっている。グリーン電力証書購入費用が企業において経費として扱えるようにしなければ、民間での再生可能エネルギー導入量が実質的に増加していくことは難しい。

(2)系統連系対策技術開発の促進について

 再生可能エネルギーを利用する分散型電源を大量に電力系統に連系する場合、電力系統側、分散型電源側双方に課題が生じるため、それぞれについて、対策技術を開発する必要がある。電力エネルギー供給の安定化という視点から、早急に以下の課題の研究開発に力を入れていく必要がある。

[1]電源計画、運用計画立案に資する技術

 中長期的な電源設備計画を支援できるような、分散型電源の導入量、地点、需要などの予測技術開発が必要である。また、日々の需給調整量を想定する運用計画面などに役立てるため、天候予測を基にした分散型電源発電量を短時間で予測可能なシミュレーション技術を高度化させなければならない。

[2]供給信頼度および安定運転の確保のための技術

 電力系統事故時に、不安定な分散型電源が連系されていることにより、事故の拡大や事故区間以外での電力供給に支障が出る懸念がある。各分散型電源に設置されている単独運転検出装置も、多数の電源が連系されると装置間の干渉で検出感度が低下する可能性がある。事故検出後直ちに分散型電源を配電線から分離する技術や、単独運転検出装置の干渉を防止する技術などが必要である。

[3]品質面の確保に貢献する技術

 分散型電源が大量導入されると、電圧や周波数などの電力品質の維持が困難になることが予想されるため、複数の分散電源同時制御(郡制御)技術や制御に有用な系統情報を伝達する情報伝送システム技術開発、さらに、電力貯蔵装置や燃料投入型電源装置を組み込んだ再生可能エネルギー分散型電源との連系で、電圧・周波数影響を緩和するシステム需給制御技術が必要になる。上記Aも含め、電力需要の変動に合わせ、電力系統と協調運用しながら分散型電源を出力制御できるシステムを目指す開発体制が必要である。

謝 辞

 本稿をまとめるに当たり、東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻の山地憲治教授、東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻の浅野浩志教授、財団法人電力中央研究所社会経済研究所の西尾健一郎研究員のご意見もご参考にさせていただきました。ここに深く感謝致します。


参考文献

1) NEDO海外レポート、「再生可能エネルギー発電:欧州のグリーン電力振興(1/2)」、No.953、2005.4.6、「オンタリオ州の再可エネ政策に国内での整合求める声」、No.920、2003.11.26、「米国エネルギー法案の現状と行方」、No.956、2005.6.1、「EUの新エネ/環境/研究開発・動向レポート(その三・1/2)」、No.904、2003.4.7

2) 新エネルギーガイドブック概論編:http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/pamphlets/dounyuu/gairon/

3) 原子力百科事典 ATOMICA、新エネルギーの導入と動向:http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/pict/01/01050109/07.gif

4) 資源エネルギー庁ホームページ、エネルギー・資源をとりまく情勢:http://www.enecho.meti.go.jp/energy/japan/japan02.htm

5) 電力中央研究所研究報告、「ライフサイクルCO2排出量による発電技術の評価」、2000年3月:http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/seikan/gentai/chisiki/02ima/c.htm

6)飯田哲也編、自然エネルギー市場、築地書館、2005年.「風力発電の普及を阻害する解列枠」資源環境対策、Vol.41 No.6(2005)

7)(財)日本エネルギー経済研究所、「日本における再生可能エネルギー導入の論点、パネルディスカション」、2003年8月

8) 環境省ホームページ、地球環境・国際環境協力:http://www.env.go.jp/earth/report/h12-03/3-4.pdf

9) (財)日本エネルギー経済研究所、「日本における再生可能エネルギー導入策の論点」、2003年6月

10) RPS法ホームページ、新エネ等電子管理システム:http://www.rps.go.jp/RPS/new-contents/top/toplink-sitemap.htmlhttp://www.rps.go.jp/RPS/new-contents/top/toplink-1.html

11)山地憲治 編著、「分散エネルギーシステム」、エネルギー・資源学会、2004年5月

12) NEDOホームページ、日本における風力発電設備・導入実績:http://www.nedo.go.jp/intro/pamph/fuuryoku/graphs.pdf

13) 新エネルギー産業ビジョン、新エネルギー産業ビジョン検討会、平成16年6月:http://www.meti.go.jp/press/0005361/

14) 駒橋徐、「新エネルギー・創造から普及へ」、日刊工業新聞社、2004年3月

15) DIRECTIVE 2001/77/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 27 September 2001 on the promotion of electricity produced from renewable energy sources in the internal electricity market

16) 橋本幸彦、「分散型電源を用いた電力供給システムの構築」、科学技術動向4月号、2003年

17) 米国ホワイトハウスホームページ:http://www.whitehouse.gov/news/releases/2005/04/print/20050427-3.html

18) 飯沼芳樹他、「米国電気事業の最近の動向」、海外電力、2005.2

19) W. Victer, V. S. Marques, “Renewable Energy in Brazil”,Proceedings of World Renewable Energy Congress 2005, p5‐9

20) 環境省審議会ホームページ:http://www.env.go.jp/council/06earth/y060-27/ref03-3.pdf