[特集2]

外科手術支援ロボットの導入と開発の動向

材料・製造技術ユニット 奥和田久美


1.はじめに

 医療にまつわる諸問題は人類にとって永遠の課題のひとつと言えるが、特に日本では急速に高齢化社会を迎えるにあたって、今までにもまして重要な問題としてクローズアップされている。日本で生まれ育った人の多くは、医療において、日本は必ずしも先進国とは言えないことに気づかないのだが、在日欧米人は、日本の医療がその技術もサービスも日本の経済力にはまったく見合っていないと指摘している1)。一般的に日本人は、医療を水と同じように「あって当然のもの」で2)、品質も良好と信じており、多少の不満はあっても、そこには選択の余地など無いと考えている。

 また、ここ10年は、日本の医療機器は輸入超過傾向が続いており、特に治療系機器では輸入が輸出の2倍にも達している3,34,42)。従来は日本が優位であった診断系機器においても、どこまで優位が保ちきれるのか懸念する声が出始めている。

 一方、今年は鉄腕アトムの誕生年に当たるとして、各地でロボット関連のイベントが盛んである4)。日本は世界一の産業用ロボット保有国であり、二足歩行技術やヒュ−マノイドロボット開発にも極めて熱心、という自他ともに認めるロボット先進国である5)。このため、多くの工学研究者は、日本のロボット技術開発にまさか死角があろうとは思っていない。

 医療用のロボット技術は、日本においては上記のような状況下にある。特に本報告で紹介する外科手術支援ロボットは、治療機器のひとつにはすぎないのだが、明確に医療技術を変化させ得るという点で医療用ロボットの中でも最近特に注目されているものである。ここでは、ロボット技術導入によって大きく変わりつつある世界の治療技術の現状を直視し、ロボット先進国のはずの日本が導入も開発も出遅れてしまった理由を議論し、医工連携にふさわしい課題のひとつである医用機器の研究開発を今後どう考えていくべきかについての参考としたい。

2.外科手術支援ロボットの進展

2‐1.技術発展の全体像

 現在、日本の医療現場において、診断や治療に、すでに多くの内視鏡的手段が用いられている。身近な例で言えば、胃カメラは先端にカメラを取り付けた通信ファイバーであり、内視鏡的診断の代表的なものである。内視鏡的手法は、初期には、胃カメラのように体内にカメラを持ち込んで画像を得るという「診断」が主体であったが、次第にマニピュレータ(鉗子)も体内に持ち込んで行なう「治療」へと発展してきた。外科手術では、1990年頃から内視鏡的な治療(あるいは腹腔鏡手術と言う)が急速に普及し、これが過去10年間での医学界最大の変化であったとも言われている。現在、全外科手術の約30%には、なんらかの内視鏡的手法が用いられている。

 図表1に、主にマニピュレータ技術に注目して、現在までの手術支援用のロボティックス発展を模式的に示す。

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 第1段階では、術者の手による手術から内視鏡手術への変化があり、内視鏡という画像技術とマニピュレータを体内に持ち込む技術が大きく発展した。この第1段階が、過去10年間に日本の外科手術を大きく変えた技術に相当する。ところが、世界的に見ると、1997年頃から第2段階、すなわちコンピュータを使った遠隔操作可能な総合的ロボット技術への発展が注目されてきた6)。この代表例が、米国のベンチャー企業で開発されたダビンチ7)あるいはゼウス8)という名前のロボットシステムである。日本では、これらのロボットシステムは従来の内視鏡手術の延長にあると見なされているが、欧米ではロボット工学を用いたTelesurgery(遠隔外科手術)と呼ばれて、これまでとは別の概念として捉えられているようである。この第2段階では、術者の手や目が患者から完全に離れることが可能になった点が最大の発展である。図表2は、外科手術において術者である外科医師が、これらのロボットシステムに期待している各機能である。

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2‐2.第1段階の発展の意味―手による手術から内視鏡手術へ―

 第1段階の外科手術の進展は、カメラとマニピュレータを患者の体内に持ち込んだことにあった。1987年のフランスでの胆嚢摘出手術が、世界で初めての内視鏡手術であったと言われている。手による手術から内視鏡手術に移ったこの第1の段階で、外科手術には低侵襲性という大きな特徴が備わった。患者の傷口は数cm以下と極めて小さくなり、基本的に開腹手術が不要となった。この結果、輸血がほとんど必要なくなり、患者の手術後の痛みが減少、入院期間は短縮、社会復帰までの日数も激減した。例えば脾臓摘出の手術例では、以前の30cm以上の開腹手術が、現在では0.5〜1cmの3箇所の傷口ですむ。現在は日本の胆嚢摘出手術の約95%は内視鏡下の手術で行なわれている。また、日本の内視鏡手術後の入院期間は、平均で4日程度までに短縮されており、内視鏡手術の保険点数は一般治療とほぼ同じになっている。このような低侵襲治療は、合併症を減少させ、より高年齢での手術も可能とし、寝たきりの患者の減少にもつながると期待されている。すでに一部では、低侵襲治療のできない病院からは患者が逃げるという現象が起きはじめていると言う。

 内視鏡的な確定診断と治療とを組み合わせれば、入院を必要とせず、当日あるいは翌日にも自宅に帰ることも可能になる。このような短期間治療をDay Surgery(日帰り手術)と呼んでおり9)、日本でも大学病院10)や民間病院11)でDay Surgeryの手術室が開設中である。Day Surgeryのような短期間治療は、入院患者の回転率の速さから病院経営へのメリットもあると報告されている12)

 もしロボット技術の発展を、単に内視鏡カメラの進歩とマニピュレータの高精度化と考えるならば、この第1段階において、その意図はほとんど達成されたとも言える。内視鏡手術は日本の医師の多くに、また患者にも好意的に受け入れられている。大学と企業との要素技術の共同開発例もみられ、日本企業もこの分野の技術開発に賛同している。しかし、トータルシステムとしての内視鏡手術支援装置が医療器具として認められた時期を考えると、米国では初のFDA認可(米国Food and Drug Administration)を受けたのが1994年のイソップ1000というシステム(Computer Motion社)であるのに対して、日本国内では2002年の俣立製作所MTLP‐1システムが初めてのケースであった13)

2‐3.第2段階の発展の意味―内視鏡手術から遠隔手術へ―

 第2段階の発展の重要点は、各内視鏡技術が道具の領域を超えて、ロボット手術システムとして統合されたことにある。これは術者である外科医師の時間的あるいは肉体的負担を大きく軽減するだけでなく、遠隔治療を可能とするものである。2000年代に入り、欧米ではこれらのシステムへの移行が大きく注目されている。

 1990年代後半に、手術器具と内視鏡から成る複数のロボットアームを持ち、コンピュータによって制御される総合的治療ロボットシステムによる外科手術が登場した14)。これらのロボットは手術支援器具のメインフレームであり、各パーツには自由にヴァリエーションを持たせることができる。代表的なロボット手術システムであるダビンチ(Intuitive Surgical社:2000年FDA認可)7)およびゼウス(Computer Motion社:2001年FDA認可)8)による手術と、これまでの内視鏡手術との様子の違いを図表3に示す。ロボット手術システムでは、術者は患者の居る手術台とは別の場所で手術を行なっており、手術台の傍らには麻酔科の医師と手術助手とが居るのみである。術者は、コンソールあるいは偏光めがねを通して患者を診ている。

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 図表4には、現在までにダビンチあるいはゼウスを用いて行なわれた手術の例を示す。基本的に、内視鏡下での外科手術が可能な領域の手術はすべて可能であることが実証されている。海外では2002年までにすでに7,000件以上の手術例が報告され、2003年に入ってからは正確に件数を把握することが困難なほどまでに普及しつつある。全世界ではダビンチだけでもすでに160台以上が稼動している。

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 これらの手術支援ロボットは、毎日のように世界中で行なわれている手術を容易にし、患者の負担もより軽く、かつ遠隔でも治療を行なえることに意味があり、これは医療体制全体を大きく前進させる可能性がある。特に、心臓外科手術では、胸部を開ける必要もなく、血流も心臓も停止させる必要がなくなったことによる回復の早さなどメリットが大きいことが注目されている。慶應大学の例では手術後約2〜3週間で大工の仕事に復帰したという患者の例が報告されている。ドイツのライプツィヒでは心臓外科手術だけで2002年の1年間に約4,000件の手術が行なわれたとのことである。このようなロボットシステムは、現場の医師の要望を次々と実現させることにより、現在もその技術が日々進歩している最中である。

2‐4.第2段階の発展における要素技術と波及効果

 これらのロボットに用いられている要素技術の進展を、従来の内視鏡技術のそれと比較してみると(図5)、まず、目の部分にあたる画像技術の発達として、三次元的なリアルな映像が得られるようになった。術者が手術用ロボットのコンソールに座って内部を覗くと、まるで自分が小さくなって患者の体内で作業しているような感覚で手術を行なえる。これは、従来の内視鏡手術で、術者が患者の傍らのモニター画面を見て手術していた感覚とは明らかに異なるものであり、従来は見えなかった細かい部分までがリアルに見えるようになっている。また、手に関しては、人間の手よりはるかに小さく、かつ器用に360度回るマニピュレータによって、精度的にも人間の手の動作の数倍も細かい作業を思い通りに行なうことができ、最も細い血管まで容易に縫合することが可能である。すでに日本の外科医の多くが、器用さの点で、手術用ロボットの腕前は最も優れた外科医のレベルに達していることを認めている。これは、経験の浅い医師でも最高レベルの手術が可能であることを意味する。また、術者の手の震えをマニピュレータで排除することができ、手術時間も開腹手術の1/2以下に短縮されるため、体力的にピークを過ぎた高齢の医師でも高いレベルの手術を維持し続けることが可能である。これは、外科医の腕前というバラツキが存在する現実を改善するものである。

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 もちろん、このようなロボットシステムにも未だ不十分な点はある。しかし現在、さらに人間の能力以上の支援も行なえるようにしようという要素技術の研究が盛んに進められている。日本における研究例を挙げると、開腹手術の感覚に近づける工夫として、高感度圧力センサを使い、触感を術者の手にフィードバックする技術、臓器の動きを検知し、マニピュレータにフィードバックして同期させ、術者に、まるで臓器が動いていないように見せながら手術をさせる画像技術(仮想静止化技術)、内部診断装置と組み合わせて、手術中に変化しつつある血管等の臓器内部のアップデート情報をその臓器上に映しだす技術(Augmented Reality)、さらに接触によって変形する臓器情報をフィードバックさせる機能などが開発中である。術前の血管造影や腫瘍の位置確認は、術中の合併症の併発や腫瘍の残存などを最小限に食い止める手段であり、これまで医師の勘に頼っていた情報を確信に変えるものである。つまり、今後のロボット手術システムには、術者には見えないはずの像を見せるナビゲーション機能も備わっていく。このような要素技術を進展させるため、国際的な学会活動も行なわれており、国内にも日本コンピュータ外科学会という研究領域が新設されている15)

 将来的には、臓器の移植手術や再建手術といった手術にも、このような支援ロボットの適用が期待されている。また、米国では1980年代から母体内の胎児治療という分野の研究が開始されてきた16)が、このような特殊外科分野にも適用可能であると考えられている。

 しかし、なんと言っても、これらのロボットシステムの最大の利点は遠隔操作性にあるだろう。術者は隣の部屋で通常の衣服のまま手術することも可能であり、インターネットや衛星通信によって海外にいる患者の手術を行なうことも可能である。専門医のいない地域での僻地医療に関しては、かなり以前から通信手段を介した遠隔操作による診断や治療が期待されており17)、2003年7月に明確化されたIT戦略本部e‐Japan戦略IIの中でも先導的取り組みによるIT利活用推進項目のひとつとして挙げられている18)。なお、日本では、従来は対面診療が基本とされてきた(医師法第20条)が、1997年に情報通信機器を用いた遠隔診療が認められ、すでに規制緩和がなされている19)。また、僻地医療のみならず、救急災害時の手術や、別の場所に居る複数の医師によるチームワーク手術、また、手術中の感染症の恐れを防ぐ必要性からも、遠隔治療には大きな期待がかけられている20)。大陸間の遠隔手術の第1号は、2001年の9月に米国の外科医がフランスの68歳の女性患者を、光ファイバーを介してゼウスを用いて手術した例であり、リンドバーグ手術と呼ばれている。課題であったのは通信品質の確保のみであり、それ以外は隣の部屋で手術をしているのとなんら変わりは無い。なお、脳外科手術には、より微細な特殊マニピュレータが必要であるため、現時点では前記のロボットシステムでは手術できないが、もともとテレビ会議のような形で遠隔で行なわれている手術に対して専門医がアドバイスをするようなシステムも開発されており、これらと内視鏡手術とを組み合わせて行なわれた脳外科手術例が報告されている21)。将来的には、脳外科手術の遠隔手術システムを完成させようという研究もすでに始まっている22)

 また、コンピュータによる制御は、高速シミュレータを発達させ、研修の場で十分な臨床訓練を行なうことを可能とした。日本でも内視鏡手術の発達とともにすでに開腹手術を経験したことのない研修医が出てきているが、前記のようなロボット技術を導入することにより、パイロットと同じようにシミュレーションで研修医をトレーニングすることができる。九州大学では先端医工学診療部が新設され、ロボット手術のトレーニングセンターが設けられた23)。いずれは動物による教育実験も不要になるであろう。現在はリアルな触覚再現を含む遠隔教育も可能になりつつある。2002年10月には、太平洋を越えてオーストラリア―カナダ間のヴァーチャル手術デモンストレーションが行なわれ24)、近い将来、国際的な医学のe‐ラーニングが開始される可能性が示唆されている。手術の腕前の良さが国際的に高く評価されている日本の外科医は数多く、これらのシステムを取り入れた遠隔手術や遠隔教育は、近い将来の日本の大きな国際貢献のひとつにもなりうるであろう。

 図表6は、日本のロボット研究者が描く21世紀の医療体制の理想図である20)

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2‐5.手術支援ロボットの日本での受け入れられ方

 第2段階のロボットへの技術発展は、多くの日本の医師にとっては想像以上のものであったらしい。現時点では日本の臨床医の間では、まだ十分に認知されておらず、一部には拒絶反応さえあるように見受けられる。

 ダビンチは日本では、2000年から2つの大学病院に導入されたが、臨床試験が2002年6月に終わったものの、まだ医療機器としての認可申請が出せない状態にある。日本では、このような新しい医療器具は、薬事法の中に当てはまる記載がない場合には認可までに長期間を要するのが常となっている。この結果、日本での導入実績はダビンチが2台とゼウスが5台で、100例程度の試験的手術のみに留まっている。

 次項に述べるように、海外での開発経緯を振り返ってみれば、1990年代には機器としての改良が着々と進められていた。これらの結果がダビンチやゼウスといったかなり完成度の高いロボットシステムであって、これらは決して突然現れたわけではない。日本に多く聞かれる誤解は、ロボット技術の発展がマニュピレータの精度向上のみであり、所詮医師の手による手術にはかなわないと思われている点、あるいは、ロボットが勝手に手術を行なうようになるのではないかという恐れである。

 全体的に、1990年代の日本では、医療工学技術の世界の流れを見逃したか、あるいは軽視したふしが見られる。科学技術政策研究所が2000年に行なった第7回技術予測調査25)では、医療・保健分野、製造技術分野などの設問設定において、この分野のキーワードは完全に抜け落ちていた。ライフサイエンスの分野では「マイクロマシンやロボットを応用した低侵襲外科手術が外科手術の大半を占めるようになる」という設問が1件設定されていたが、その結果を見ると、全回答者の平均的な実現予測時期は2016〜2017年、専門家平均でも2014年というように、全体的に遅めの時期を予測している。つまり、日本で専門家と言われる人々も、この分野に関しては、2000年時点において、海外の動きを十分には把握できていなかったか、あるいは把握していたとしても、日本の特殊事情からして日本への導入はかなり先のことになると思われていた。

 日本国内では、医療機器としては上記の手術支援ロボットが認可されていないことから、現時点では、これらを用いた手術は臨床試験に留まり、その費用は入院に係わる通常費用も含めて全額が医師の研究費負担に頼っている。その結果、国内の手術例はまだ約100例にしかすぎない。しかしながら、日本でのこのような閉塞状況に風穴を開ける第一歩が、2003年の構造改革特区で実現されようとしている43)。福岡市と北九州市が共同提案中の「ロボット開発・実証実験特区」構想に、2003年6月末、ロボット手術の実証実験が追加申請された。これが認められれば、健康保険法上の特例として特定療養費としての負担分配ができることとなり、特区内ではロボット手術が数多く行なわれるようになる可能性がある。

2‐6.手術支援ロボットを開発したベンチャー企業

 前記の2つの代表的な手術支援用ロボットシステムを開発した米国のベンチャー企業は、大学の研究開発と深いつながりがある。

 ゼウスを作り出したComputer Motion社は、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校電気工学科の研究者によって1989年に設立された。同社のこれまでの開発経緯は、プロジェクト研究の進め方に対して参考になる点が多い26)。同社は、まず、イソップ1000という内視鏡手術システムで1994年に最初のFDA認可を受けた。1991〜1994年には音声認識機能をプロジェクトとして研究開発し、医師の声による操作を実現するヘルメスというシステムが開発された。この成果に立脚して音声認識機能の伴ったイソップ2000が1996年にFDA認可され、続いて、ロボットアーム軸の自由度を増したイソップ3000が1998年に認可された。さらに、ソクラテスという遠隔の医師への手術アドバイスシステムを考案し、イソップと遠隔操作とを統合した姿が2001年に認可されたゼウスである。

 一方、ダビンチを作り出したIntuitive Surgical社は、米国スタンフォード大学の関与するStanford Research Institute(現在のSRI International)で培われた技術を元に1995年に設立されている。後発ということもあり、こちらは最初から完成度の高い大掛かりなロボットシステムを目指しており、起業からFDA認可までわずか5年というスピーディーな開発が達成された。計約200億円の開発投資と延べ100名以上の工学系PhDの能力が投入されたと伝えられている。

 いずれのベンチャーの手術支援ロボットも、必ずしも最初から外科医の満足に足るものではなかったが、現場の医師のニーズを徹底的に取り入れ、非常に早いレスポンスで次々と改善していくことで、今では各国の医師の支持を得つつある。これらが比較的早い段階で認可された大きな要因は、手術支援ロボットの全体コンセプトとフレームを作り上げたことにあると思われる。個々の細部の要素技術は、後からでも向上可能であり、ここには、日本発の要素技術や特許も数多く使われている。

 なお、これまで2社は特許の点などで競争関係にあったが、2003年6月末に合併した。今後は、両社の技術は統合されて、さらに新たなシステムを生み出していく可能性がある。また、両社の技術提携先は、日本企業も含めて27)数社にわたっている。

3.日本のロボット研究における医療用ロボット

3‐1.日本のロボット研究の経緯

 日本のロボット研究の基本は、1960年代からの産業用ロボットの隆盛にあり、現在も世界で稼動中の産業用ロボットの約60%は日本にある。また一方で、1960年代から早稲田大学加藤一郎研究室で始められたWABOTに代表されるようなヒューマノイドロボット研究があり、これがもうひとつの研究の流れと考えられる5)。高等専門学校を中心に学生によるロボットコンテスト28)が始まり、これが世界的に広まりつつある現在では、日本の工学系学生にとってもロボット工学は魅力的な研究課題のひとつである。しかし、(社)日本ロボット学会の発足は意外にもかなり遅く1983年であり、今年がやっと20年目にあたる。

 生体機能の代替は世界的にも普遍の研究テーマであり、日本の工学研究者も医療応用を考えてきた17)が、ロボット研究をヒューマノイドの形をフルボディの人間型の方向へ進める研究は日本以外ではほとんど行なわれていない。海外ではむしろ心理的に敬遠される傾向にあるヒューマノイドロボット研究が、日本ではかくも盛んである理由としては、宗教的なロボットアレルギーがほとんど無い国民性とともに、1960年代に日本初のテレビアニメとなった鉄腕アトム等による「ロボットは人間にとって頼もしい味方」というイメージの影響が大きいと言われている。ここではロボットを厳密に定義することは避けるが、諸外国のロボット研究との比較という観点から日本のロボット研究を見てみると、二足歩行技術に代表される自立した移動、理解・学習といった知性へのこだわりが特徴的である。

 しかし、2000年代の今語られているロボット研究の未来像は、当初から期待されていたそれらの姿と実はそれほど大きくは変わってはいない。1980年代のロボット開発の各プロジェクトの命題は、産業ロボット技術を、原子炉・宇宙・海底などの極限作業ロボットや、家事、介護・介助、救急、警備を行なうロボットに応用する、というものであった。しかし、現在でも日本のロボット研究の多くは依然として未来の技術であり、現実のものではない5)。1980年代の価値観から見て、現在予想外に注目されているように見えるのは、ペットロボット・エンターテイメントロボット・癒し系ロボットなどと呼ばれる系統で、これらには今後、一人暮らしの老人や少子化によって増加する一人っ子に対する癒しや健康管理など、単なる玩具以上の発展の期待がかけられている3)。日本では、おもちゃのロボットにさえも、自立的な移動機能や知性らしきものを強く求める傾向がある。

3‐2.日本のロボット研究の経緯から見た手術支援ロボット

 2‐1で述べたように、欧米では、手術支援ロボットによる手術を、ロボット工学を用いたTelesurgeryという概念でとらえており、これを単純に日本のロボット工学の中に当てはめて考えることは難しいかもしれない。しかし、現在の日本では、現在のような姿の手術支援用医療機器を「ロボット」と呼んでおり、ロボット工学の領域の研究者が開発していることは間違いない。そこで、ここではあえて、日本の一般的なロボット工学の観点から手術支援ロボットの特徴を見てみたい。

 図表2に示したように、手術支援ロボットシステムは、要素技術としては、特に目と手の機能を重要視しており、足の機能(移動)をほとんど意識していない。この点では、従来から日本に蓄積されている産業用ロボット技術の延長上にあると言うことができ、移動や歩行を重要視する今日の日本のロボット研究の流れとは相違する。人工関節を入れる手術の際に用いられる整形外科用のロボットとして、米国のスピンオフ型ベンチャー企業(Integrated Surgical Systems社)29)で開発されたロボドックという手術支援ロボットも日本に数台輸入されているが、これなどはさらに産業用ロボットに近いものである。ロボドックは精密に再現性良く安全に骨の掘削を行なえる医療機器であり、輸血も不要で、患者は術後2〜3日目には痛みなく起立訓練を行える。

 また、手術支援ロボットに対して、国内外を問わず、外科医が特にこだわっている最大のポイントは、自立したロボットに手術をさせることは決してない、という点である。すなわち、医師にとっては、ロボット手術においても、その動作のひとつひとつが必ず術者の判断の結果であることが重要である。どんなに遠隔の地で手術が行なわれようとも、医師の立会いのもとで医師の判断によって手術が行なわれることが最後まで守られるべき鉄則である。この結果、ロボットの自立性よりも遠隔操作が選ばれた。つまり、手術支援ロボットの研究は、人間の代替を目指すことはなく、ロボットに自立した知性も求めていない。この点が、自立型ロボットを嗜好する日本のロボット研究との最大の相違点であろうと思われる。

 また、日本人はロボット研究に対するアレルギーが少ないとは言われるものの、実際に自分の身にふりかかる医療や介護といった分野にロボットを導入することへの抵抗感は、諸外国よりむしろ強いかもしれない。介護や看護に関して言えば、ロボットどころか、介護者や看護者が他人よりも身内、男性よりも女性であることを好む傾向が依然として存在する。この点で、対面型の内視鏡手術や診断系技術は、日本人のもつロボット技術のイメージとはかなり異なっており、どちらかというと他の技術の発展にロボット研究の要素技術を持ち込んだと見なすこともできる。したがって、これらに対しては日本人の抵抗感は少なく、医療機器としての認可の問題がクリアできれば、今後もさらに数多く医療現場に取り入れられていくと考えられる。

 つまり、手術支援ロボットは、日本で盛んなロボット研究とは異なる進化をたどっており、日本人のもつロボットへの一般的イメージとはかなり異なった、やや地味な存在と言える。自立的な移動や知性を求めないのならば、それはロボット技術ではなく、単なる機械的作業ではないか、と考える日本人も存在する。このようなイメージ上のミスマッチも、日本のロボット研究開発において、この分野があまり重要視されなかった大きな理由のひとつと考えられる。

3‐3.日本における手術支援ロボット研究

 ロボット工学のアウトプットとして、医療福祉分野は、人類の役に立つという意味で社会的なインパクトがあり、得られる経済効果も大きい分野である。日本ロボット学会は、ここ数年になって医療福祉分野にも本格的に目を向け始めた、という段階ではあるが、2002年11月にロボット工学セミナー「実用段階に入った医療ロボティックス」を開催し、すでにこれらの技術が未来のものではなく、実用段階にあるという認識を示した。

 医療用のロボット技術を研究題目に挙げている日本の大学や研究機関は数多く、現在までに国内で行われた関連プロジェクトも決して少なくはない(図表7)。ただし、図表7のすべての研究予算を足し合わせても30億円にも満たない。前述のダビンチやゼウスの開発投資と比較すると1桁小さく、日本の医療用ロボティックス研究は小規模なうえに、分散しすぎており、アウトプットが要素技術にとどまっていることは否めない事実である。しかも、日本では、産業ロボティクス分野の研究者の一部が医療福祉分野にも目を向け始めたのは比較的最近のことで、例えば、図表7の「外科領域を中心とするロボティックシステムの開発」の研究成果を使って日本で初めての遠隔手術実験(動物実験)が行なわれたのは、やっと2002年のことである30)

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 日本では、残念ながら当分は、分散した研究が行なわれていく体制に大きな変化は無さそうである。重要なことは、これらのプロジェクトを単に研究発表のみで終わらせずに、より確実な成果、すなわち医師が使用できる装置の姿に結び付けることである。日本で行なわれているような分散型の研究でも可能なアウトプットとしては、小規模病院用の比較的低価格なシステムの構築がありうる。また、既存の手術支援ロボットでは対応できない手術として、より細かい作業を必要とする脳神経外科手術や整形外科などの領域が残されている。また、MEMSやマイクロマシン技術のように日本が得意としてきた精密機械分野と無線技術を用いて、体内マイクロサージェリーを狙うことにも意味があると思われる。もし、今後、プロジェクトが強化され、国内でも比較的大きいロボットシステムを狙う機会があるとすれば、治療と診断を統合した医療システムの構築30)も有意義と考えられる。

4.今後の日本における医工学研究

4‐1.医工学研究を取り巻く環境の変化

 日本の医療福祉体制には数多くの複雑な問題が指摘されており、現在、行政にも方向転換を求める声が強い2,31,32)。ここではこれらについては深く述べないが、目前の最も大きな環境変化は、人口構成比、すなわち極めて高い高齢化率(例:2000年度の高齢化率は17.4%)である。今後の日本は、この大きな量的変化に対応するだけの質的変化を積極的に取り入れていかなければ立ち行かない。さらに量的な問題を深刻にするのは、日本人の求める医療への要望の多様化である。乳幼児医療や難病治療では世界の最先端の技術を求め、成人医療では日帰り手術や医療費負担削減を求め、一方、高齢者は先進医療より人的な医療サービス向上を求める傾向がある。このような多様化に対して従来どおりの医療体制で対応しようとすれば、医療従事者の不足や医療介護ミスの増加は必至である。今後は何かしらの合理性による質の向上を取り入れて、これらの多様性に対応することも必要である。

 一方、見方を変えれば、高齢化の進む日本では、医療ビジネスは特に将来性が大きい分野であると予想されており、このことがバイオテクノロジーへ大きな期待をかけることのバックグラウンドにもなっている。

 しかし、冒頭に述べたようにあまり認識されていないのだが、世界の中で日本は、次第に、必ずしも先進の医療を受けられる国とは言えなくなりつつある。現在の日本では、医療の公平性および規制が過度であり、先端医療の発展という意味で、これらが足かせになっているという指摘が強くなりつつある2,31,32)。新しい機器が医療現場に採用されるグレードに達するまでには必ずいくつかの問題点があり、これを見出し改めるには治験(薬事法第二条第七号)を進めるしか方法がない。そこでは、多少のリスクは負っても新しい医療を試みるという「患者の選択の余地」を認め、医師や製造者および患者に対して十分な保障を用意する、という体制がぜひとも必要である。民間保険等の適用も考慮の中に入れるべきであろう。もちろん医学には慎重さが重要ではあることはいうまでもないが、それは審査体制が弱い結果であってはならず、明確な基準作りは早急に必要である。PL法等の製造者責任と医療行為に対する医師の責任のみが大きく取り上げられ、問題点の本質が曖昧なままでは、日本発の新しい研究開発を世に送り出すことは不可能である。日本が先端的な医療を受け入れられる社会にならない限り、日本で先端医療機器の開発を行なっても、その成果は研究の段階で終わってしまう。

 なお、海外では先端的な医薬品や医療機器に関する特許などの知的財産権が比較的広く解釈されており、このことがベンチャー企業を起こす大きなインセンティブのひとつになっている。日本でも、現在、先端的な医療関連行為に関して特許権を認めるどうかについての議論が行なわれている最中である44)。一部には医師が医療行為を行なう際の制約を懸念する声もあるが、海外では医療行為自体は特許侵害の適用外とされているところも多い。今後の日本での議論の行方が注目される。

4‐2.医療分野への工学的アプローチ

(1)工学的トランスレーショナルリサーチ

 すでに医療は、医学のみによっては成り立たないものになっている33)。日本において医工学という研究分野は、医用センサの研究などが1940年代から始められている17)。(社)日本エム・イー学会は1962年に発足し、すでに40年もの歴史がある。事実、日本のマニピュレーション技術や医用センサ技術は、海外でも質的に高い評価を受けている。問題は、日本の研究の多くに、それらの要素技術を使って医療システムとして組み上げ、医療現場に持ち込むという、言わば工学的トランスレーショナルリサーチが欠けている点である。科学が進歩しても技術は自然に進歩するものではなく33)、一人の科学者の成果を社会に還元するまでには、さらに多くの工学者の努力を必要とする。再生医療等のバイオテクノロジーを具体化するためにも、医療機器の研究開発を通らないわけにはいかない。

 医療機器産業界が中心となって創設された医療技術産業戦略コンソーシアム(METIS:Medical-Engineering Technology Industrial Strategy Consortium)が2001年3月に設立され34)、ここでも「有力な方法は、医療におけるトランスレーショナルリサーチに工学系研究者が参画することである」という提言がなされている。しかし、バイオテクノロジー戦略大綱35)やその具体策のひとつである全国治験活性化3ヵ年計画36)の記載、21世紀COEプログラム(Center of Excellence)37)のテーマなどを見ても、具体的な工学的トランスレーショナルリサーチ案はほとんど取り上げられていないのが実態である。

 なお、現在の日本に比べれば、医療において先進的と思える米国においてさえ、「過去の科学的発見の多くを、人類に恩恵をもたらす具体的利益へ移行させることができなかった」という問題意識があり、これを解決するには利害関係者の誰が何をすべきかという参加型討論がなされている38)

(2)医工連携

 医工連携というキーワードは、21世紀COEプログラム37)等で大きく取り上げられ、特に研究者の人材交流が重要であると認識されている。医療に関わる研究はすべて、実際に医療現場を知ろうとしなければ始まらないことを考えると、今後の医工連携では、研究の最初の段階から工学系研究者が医系キャンパスに日常的に入っていけるような研究の場を用意することが必要であり、学生の異動のみならず教員ポストの確保などの具体策が求められる。医工連携を、単に研究室の交流会などで終わらせてはならない。最近、医学部にもコンピュータ外科領域が取り入れられ39)、また、先端工学診療部23)等が設立され始めた。これらは工学研究者が最も容易に入って行ける窓口であろう。

 工学研究者が実際の手術の場に立ち会うことの意義を示す一例を挙げたい。血管の切断に際して、血管を挟み、超音波エネルギーを利用して止血凝固し、閉じてから切り離すという合理的な技術が開発されている。もし、開発者が現場を知らずに動作を伝え聞いただけでロボットを開発しようとすれば、従来から医師が行なっている血管を縛って止血する方法を正確にロボットに行なわせようという努力のみに邁進したであろう。研究開発にあたって重要なことは、ロボットが果たすべき目的を的確に掴むことであり、単に術者の動作を模倣することではない。工学分野の研究者が医療現場に立ち会わなければならない理由はここにあり、立ち会った工学者から生まれる具現化のアイデアが勝負の分かれ目である。このような発想の余地がまだ非常に多く残されていることを、医師たちは指摘している。例えば、現在の手術支援ロボットは、医師自身がミクロになって患者の体内に入り患部を治療するという「ミクロの決死圏(原題:Fantastic Voyage、1966年)」という夢物語を、医師がミクロにならずに別の手段によって感覚的に実現したものであると言える。

 また、これまで新規医療機器の多くは、主に企業の工学系開発者が開発し、それが病院に持ち込まれるという形をとってきた。しかし、そのような医療関係企業の開発品でさえも、医師が実際に臨床で使うには不適切な場合がしばしば見られる。例えば、医療機器としては清潔さが不十分であったり、免疫応答など生体に及ぼす影響を無視したり、ユーザーである医師の操作性が考慮されていない、などの問題点が指摘されてきた。また、高度先端医療機器導入は医療費用の増大を招く場合も多い。いくら技術的には先進なものであっても、それが医療現場でプラス要因とならなければ、現場で使われるようにはならない。これらは、医学部や工学部のみならず、経済学部なども協調し、共に考えていかなければならない問題であり、今後、介護用機器などを研究開発する上でも重要な事項である。

(3)日本の医療機器産業と医工学 研究の関連

 今後、医療機関の評価は、インターネットを通じて国民に広く情報提供されるようになり41)、医療福祉サービスに競争原理が持ち込まれることは必至である。これまでの日本の先進的医療機器は、導入実績が臨床研究用の数台にとどまるために、潜在的な市場は大きいが実質的な国内市場がいつまでも小さいことを理由に企業における開発も力が入らず、その結果として国産装置はいつまでも研究段階から脱却できず実用的なレベルも上がらない、という悪循環が生じていた。現在でも、すでに医療機器は完全に輸入超過であり、優位であった診断系機器さえもシェアを減らしつつある3)。この問題は、厚生労働省が中心となる「医療機器産業ビジョンに関する懇談会」40)でも大きく取り上げられ、今後、医療機器の認可を容易にすれば、輸入超過傾向はますます加速するのではないかとの懸念も起こっている。

 しかし、グローバル化の進んだ今日では、すでに医療機器市場は国内だけに閉じている産業ではなく、国際的な競争力を持つことが必要になっており、国内市場だけに目を奪われることは、かえって先行きの見通しを誤らせる。また、医療機器市場に関しては、これまでは、人口が全世界の12%にすぎない米国・日本・欧州のみで全体の83%を占めるという偏在市場であったが、最近では中国等が治験への積極参加や先進医療機器導入に補助金を出すなどの政策を取っており、ここ数年内に世界市場が大きく変動する可能性もある。

 日本では大学の共同研究に留まっているプロジェクトも、それぞれの成果が、海外のベンチャー企業の製品と、いずれは医療という市場で競争しなければならない。過保護な科学技術政策を採った場合には、臨床段階での実績作りが進む欧米の医療機器発展との差がますます大きく開いていくとは必至と予想される。新しい医療ビジネスや教育システムの発展性まで含めて考えると、日本国内の装置開発に保護政策をとることはデメリットのほうが大きいであろう。現実を拒否すれば、次のチャンスまでも失う可能性がある。そもそも医療福祉は、その国民的利益の大きさから、本質的には産業分野としての保護政策を取ることはできないはずの分野であろう。

5.おわりに

 外科手術支援用のロボット技術は、高精度の追及や人間の代替作業を意図した産業分野用のロボット開発と比べると、低侵襲治療と遠隔操作性という医療現場の新たな質的効果を生み出しており、日本の医療体制全体を大きく前進させる可能性を有している。人口構成比の高齢化とともに医療論議は今後いっそう激しくなり、情報化の進展も手伝って、日本の医療現場と諸外国の差異は、早晩日本人の多くが知るところとなる。日本の誇るロボット技術が日本の医療現場には登場せず、また最も成長すると予想される今後の医療福祉産業にも寄与しないとすれば、それは極めて残念なことである。

 今後、新しい医療機器技術が日本から生まれるためには、医工連携の研究体制の場で、各要素技術を医療システムとして組み上げ、医療現場に持ち込むという工学的トランスレーショナルリサーチまで責任をもった目標設定が不可欠である。また、環境整備としては、新技術を率先して試してみるという患者の選択の余地を残すことが必要であり、それをバックアップする保障などを用意することが必要である。さらに、現在進行中の医療関連の認可制度や知的財産権の見直しも大きな影響力をもつと考えられ、今後の行方が注目される。

謝 辞

 本稿をまとめるにあたり、特に九州大学大学院医学研究院橋爪誠教授に多大なご協力をいただきました。また、東京大学大学院医学系研究科小山博史教授、同工学系研究科光石衛教授、信州大学医学部本郷一博教授、同後藤哲哉助手、東京慈恵会医科大学山崎洋次教授、医療法人財団河北総合病院河北博文理事長にも各種資料のご提供あるいは貴重なご意見をいただきました。ここに深く感謝いたします。


参考文献

1)テリー・ロイド、在京外国人、大病の治療は本国で、Nipponビジネス戦記、日本経済新聞夕刊、2002年12月3日

2)河北博文、「外圧」なき医療構造改革は不可能、論争東洋経済、2002年5月号

3)例えば、厚生労働省、医療機器産業ビジョン骨子(案)資料集 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/01/dl/s0131-2c.pdf

4)例えば、ROBODEX 2003 http://www.robodex.org/

5)北野宏明他、ヒューマノイドロボットはどこまで進化するか、Science&Technology Journal, 2003年3月号

6)北島政樹、注目されるロボット手術 http://www.nhk.or.jp/kenkotoday/2001/20011129/index.htm

7)Intuitive Surgical Inc. http://www.intuitivesurgical.com/

8)Computer Motion Inc. http://www.computermotion.com/

9)武田純三、広がる日帰り手術 http://cgi2.nhk.or.jp/kenkotoday/2001/20010228/index.html

10)例えば、京都大学医学部附属病院デイ・サージャリー診療部 http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~dsu/DSU-index.html、など

11)例えば、マツダ病院日帰り手術センター http://hospital.mazda.co.jp/1day/
医誠会病院日帰り手術センター http://www.i-dscenter.org/dsc.htm
多根総合病院日帰り手術センター http://www.tane.or.jp/body1/DS_IN.htm
湘南鎌倉病院日帰り手術センター http://www.shonankamakura.or.jp/informationforall/daysurgery.htmlなど

12)篠崎伸明、患者に好ましい技術革新は病院にもメリット大 http://www.shonankamakura.or.jp/informationforall/lapachore.html

13)俣立製作所、内視鏡下手術支援ロボットMTLP‐1 http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/2002/0522a/0522a.pdf

14)東嶋和子、情報技術がもたらす医療革命 身体が電子情報化する、イリューム、28号(2002)

15)例えば、CARS(Computer Assisted Radiology and Surgery) http://www.cars-int.de/
日本コンピュータ外科学会 http://www.atl.b.dendai.ac.jp/jscas/、など

16)例えば、植田美津江、大きく前進する胎児外科治療 http://www.mitsueueda.co.jp/kokusai/001.htm、など

17)吉本千禎、医工学入門 技術革新への挑戦、東海大学出版会 (1983)

18)首相官邸、IT戦略本部、e‐Japan戦略II http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/030702ejapan.pdf

19)(財)医療情報システム開発センター、情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について http://square.umin.ac.jp/enkaku/DEL-NoticeMhw971224.html

20)光石衛、「21世紀のロボティック医療への期待」、日本ロボット学会誌、Vol.18,No.1,p.2(2000)

21)"World's first robotic brain telesurgery performed here", DALHOUSIE News, vol.33, No.4 (2002.11) http://www.dal.ca/~dalnews/dalnews/2002-12/telesurgery.shtml

22)K.Hongo et al., NeuRobot : Telecontrolled Micromanipulator System for Minimally Invasive Microneurosurgery -Preliminary Results, Neurosurgery, vol.51(4),p.985(2002)

23)九州大学高度先端医療開発センター http://www.camit.org/tip_abstract.html

24)MPB Communications Inc., "Live Simulated Surgery a "touching" Success", http://www.mpbc.ca/main_pages/news/2002/6dof.html

25)第7回技術予測調査―我が国の技術発展の方向性に関する調査―、NISTER REPORT No.71,科学技術政策研究所(2001)

26)新エネルギー・産業技術総合開発機構、「内視鏡等における低侵襲高度手術支援システム」中間評価報告書(2002.8) http://www.nedo.go.jp/iinkai/hyouka/houkoku/14h/11.pdf

27)例えば、オリンパス光学工業(株) http://www.olympus.co.jp/LineUp/Endoscope/Info/n011005.html

28)横尾淑子他、科学技術関連コンテストに見る我が国の現状、科学技術動向、2002年8月号

29)Integrated Surgical Systems Inc. http://www.robodoc.com/eng/、(L.Joskowicz et al., "Computer Integrated Revision Total Hip Replacement Surgery : Preliminary Report", MRCAS'95, p.193, Baltimore(1995))

30)日本学術振興会、未来開拓学術推進事業「外科領域を中心とするロボティックシステムの開発」 http://www.jsps.go.jp/j-rftf/integrated_i.htm

31)鴇田忠彦、「日本の医療改革の方向―世代間の公平性の視点から―」、一橋大学経済研究所ディスカッションペーパー、No.18(2001年3月)

32)鴇田忠彦他、「日本の医療と公的規制」、一橋大学経済研究所ディスカッションペーパー、No.26 (2001年3月)

33)小宮山宏、二つの視点:「医療技術」と「健康のための社会システム」、MEフォーラム2002「発展する医用生体工学」(2002.1)

34)金井務、医療技術産業戦略コンソーシアムの役割、MEフォーラム2003「未来医療を拓く医工連携」(2003.1)

35)首相官邸、バイオテクノロジー戦略大綱、 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/bt/kettei/021206/taikou.pdf

36)文部科学省、厚生労働省、全国治験活性化3ヵ年計画(2003.4)、 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/kasseika.html

37)平成14年度および平成15年度「21世紀COEプログラム」 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/coe/021001.htm
および http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/coe/03071701.htm

38)N.S.Sung et al.,"Central Challenges Facing the National Clinical Research Enterprises", J.Amer.Med.Assoc., vol.289, No.10, p.1278(2003)

39)コンピュータ外科関連ホームページ http://homepage2.nifty.com/cas/index-j.html

40)厚生労働省、医療機器産業ビジョンに関する懇談会 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/01/h0117-1.html

41)厚生労働省、医療に関する広告規制の緩和について http://www.mhlw.go.jp/topics/2002/04/tp0401-1.html

42)特許庁、医療機器に関する技術動向調査 http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/kiki_med.pdf

43)福岡市、構造改革特区第3次提案(ロボット開発・実証実験特区)について、 http://www.city.fukuoka.jp/cgi-bin/odb-get.exe?wit_template=AC02022&WIT_oid=cj3wdI0Y5aYeNwY0j1PexddsqI4o

44)特許庁、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会、医療関連行為に関する特許法上の取り扱いについて http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/toushintou/pdf/iryou_report.pdf