本稿では、分散型電源の導入状況、技術開発動向及び国・地方公共団体・事業者・国民の取り組みについて概観し、今後の課題等について取り上げる。
分散型電源を利用する資源別に見ると、@再生可能エネルギー系、Aリサイクル系、Bオンサイト系、に分類される(図表1)。
再生可能エネルギー系とは、太陽光・風力に代表される自然エネルギーを示す。石油や石炭等の化石燃料が有限であるのに比べ、エネルギー源が無尽蔵で、CO2等の環境負荷が少なくクリーンである一方で、供給力が自然条件に左右されるため不安定であるという特徴をもつ。
リサイクル系とは、従来、エネルギー源とは着目されずに廃棄されてきた資源や排熱を再利用するものである。
オンサイト系は、ディーゼルエンジン、ガスエンジン、ガスタービンといった原動機や燃料電池である。需要地点の近くに設置するので、送配電ロスが少ない、発電と同時に発生する排熱を有効利用しやすいといった特徴がある。
また、供給エネルギーは、発電と同時に発生する廃熱を有効利用することでエネルギーの総合効率を高めるコージェネレーションシステムと、電力のみを供給するモノジェネレーションシステムに分類される。
本稿では、NOX(窒素酸化物)、SOX(硫黄酸化物)、ばいじん等の大気汚染物質やCO2等の温室効果ガスの排出量が少ない分散型電源を環境性に優れた電源とする。環境性に優れた電源は、太陽光発電、風力発電といった再生可能エネルギー系、バイオマス発電、燃料電池及びガスタービンやガスエンジン等の原動機を用いたコージェネレーションシステムである。従って、これら環境性の優れた分散型電源の普及は、再生可能エネルギーの普及やエネルギー利用効率の向上をもたらすものである。
これらの新エネルギーは、競合するエネルギーと比較して、コスト高の状況にあるため、国は補助金、低利融資等の助成措置を実施しているが、現行対策維持ケースと目標ケースには大きな開きがあり、更なる政策的支援が必要である。
また、分散型電源の電力系統への連系が増加するにつれて、電力品質の悪化による一般需要家への悪影響や系統対策費用の増加、大規模な風力発電施設等による騒音や景観への影響、廃棄物発電・熱利用の導入に際して必要となる廃棄物処理施設に係わる環境影響及び地域住民の理解・受入の必要性など課題も多い。
一方、ディーゼルエンジン(DE)、ガスタービン(GT)、ガスエンジン(GE)のコージェネレーションシステムの導入状況は、99年度実績で再生可能エネルギー系、リサイクル系の分散型電源と比較すると約4倍にのぼる。DE、GT、GEの原動機を用いたコージェネレーションシステムは、発電だけを行うモノジェネレーションシステムと合わせて、現在、分散型電源の主力となっている。
2000年度までのコージェネレーションシステムの累積の導入実績は、GTで2,702MW、DEで2,233MW、GEで549MWであり、合計で3,364施設、5,603台、設備容量5,485MWである。これは全国の発電設備容量の約2%を占め、国の補助金、低利融資等の助成措置により、近年では毎年コンスタントに350〜400MWの導入がなされている(図表3)。コージェネレーションシステムの導入状況
コージェネレーションシステムの導入状況は、従来、電力と熱の消費量が多い工場、病院、ホテル等の数千kW以上の設備が大半を占めていたが、排熱利用技術の進展、発電効率の高効率化、低コスト化等によりここ数年急速に小型化しており、従来は難しいとされてきたスーパー、ファミリーレストラン等の小型店舗でも導入されるようになった。
現在、分散型電源の主力であるDE、GE、GTの常用自家発電設備の導入状況については、直接的な統計はないが、日本内燃力発電設備協会が国内のメーカの出荷実績を調査している。これによると、97年度から4年間の導入実績は合計約2,420MWで、平均毎年約600MWずつ導入されている(図表4)。DE、GE、GTの各導入量を見ると、DEは97年度249MWから2000年度477MWへ、GEは97年度31MWから2000年度90MWへ、と増加している。特に、DEの導入量は大幅に増加しており、2000年度で全体の65%を占める。一方、GTは98年度207MWから99年度103MWというように年度により変化が大きい。これは、GTにおいては、単機容量が500kWを越える設備が多く、年度毎の導入量にばらつきが生じやすいためである。常用自家発電設備の導入状況
このような分散型電源の普及・拡大は、95年の電気事業法改正により、同一の構内であれば、第三者が自家発電を代行する場合、許認可の必要がなくなったことを機に本格化した。現在、需要家に代わって自家発電を行う自家発電一括サービスシステムが主流となってきている。自家発電一括サービスシステムとは、自家発電設備のコンサルティングから設置・保守・監視・燃料供給・主任技術者の手配にいたるまで一貫したサービスを提供するシステムである。
日本内燃力発電設備協会の調べによれば、2000年度のコージェネレーションシステムの導入量は、設備容量別でみるとGTで92.8%、GEで88.4%、DEで39.4%であり、全体では55.8%である。DEは、コージェネレーションシステムの導入がおくれている。理由としては、@排熱が低温であるため熱の有効活用がしにくいこと、A小規模モノジェネレーションシステムの低コスト化により設備投資の回収が短年度で容易であること、等が挙げられる。
このように、今後、経済性の観点から発電だけを行うモノジェネレーションシステムや排熱を十分利用しないコージェネレーションシステムが普及し、在来システムよりもCO2排出量等が増加することも懸念される。従って、今後は、総合効率の高いコージェネレーションシステムの導入を推進していくことが重要である。現在、国で省エネ法における総合効率の判断基準を見直す検討がされており、補助金等の助成措置の強化も図られている。それとともに高効率化・低温排熱利用技術といった研究開発が重要である。以下、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)における代表的な高効率化・低温排熱利用技術の開発動向(図表5)を中心に取り上げる。
内燃機関系のコージェネレーションシステムについては、これまでに88〜98年に、ニューサンシャイン計画の一環として「300kW級コージェネレーション用セラミックガスタービン技術開発プロジェクト」が実施された。ここでは、高温強度、耐食性等に優れるセラミックを耐熱構造用材料として利用する技術開発を行い、今まで小型であるために高温部の空気冷却ができなかった300kW級ガスタービンの高温部の冷却を不要とした。これにより、冷却エネルギーロスの低減による熱効率の大幅な向上、排ガス中のNOXの大幅削減、耐久性・保守性等の向上を実現し、熱効率42.1%を達成した。
また、現在、99年〜2003年の予定で「産業用コージェネレーション実用化技術開発プロジェクト」が実施されている。これは、8,000kW級のハイブリットガスタービン(高温部に金属部品およびセラミック部品の双方を用いる)の部材評価試験及び耐久運転試験等によって、ハイブリットガスタービンの信頼性を確認し、ハイブリットガスタービンを用いた産業用コージェネレーション技術の実用化を促し、高効率エネルギー利用によるCO2排出削減等を図るものである。
その他、高湿分利用マイクロタービン発電システムと排ガス投入型吸収冷凍機システムを組み合わせ、電力、温熱(温水90℃)、冷熱(冷水7℃)の3エネルギー形態を同時に供給できる「次世代マイクロタービントライジェネレーション」の技術開発が実施されている。
なお、近年、国内外の民間企業においても、マイクロガスタービン、熱電可変型ガスタービン、ミラーサイクルガスエンジン、希薄燃焼ガスエンジン等についての技術開発及び実用化が急速に進展してきており、更なる高効率化、環境負荷低減及びコスト低減を目指している。
再生可能(自然)エネルギーは経済性、供給安定性に課題が残るものの、環境性に優れていることから、市民団体・消費者団体・研究機関の各種プロジェクトや、電力会社の余剰電力購入等により、一般需要家・企業・団体等は普及活動に取り組んできた。近年においては、@環境問題に対する消費者や企業の意識が変化しつつあり、自発的な環境貢献を希望する動きが見られるようになったこと、A風力発電は好風況の特定地域から開発が進んだことから偏在性が顕在化してきており、特定の電力会社に購入負担が集中しつつあること、といった状況が生まれている。こうした背景のもと、再生可能(自然)エネルギー普及促進のための新たな自発的な取り組みとして、2000年よりグリーン電力制度が導入された。一般需要家・企業・団体等の取り組み
グリーン電力制度は、需要家のニーズに合わせた2つのシステムから成る。1つは、一般消費者等から電気料金とあわせて寄付金を集め、これに電力会社も拠出し、再生可能(自然)エネルギー設備への助成を行う「グリーン電力基金」である。もう一つは、再生可能(自然)エネルギー発電の価値を「電力自体の価値」と「環境付加価値」に分離し、事業者等が発電した電力そのものは電力会社が購入するが、環境付加価値部分については環境貢献を希望する企業・団体等が購入する「グリーン電力証書システム」である(図表6)。再生可能(自然)エネルギーの利用を希望する企業・団体等は、この証書を購入することにより、CO2排出削減等ができる。
グリーン電力基金の参加口数は、2001年6月末現在で、39,294口(一口当たり月500円、一部地域では100円)が集まり、風力や太陽光発電に対する助成が行われている。
グリーン電力証書システムの契約状況は、2002年3月末現在で、ソニー(450万kWh/年)を初めとする27社と越谷市(100万kWh/年)の合計3,515万kWh/年となっており、契約を伸ばしている。最近では、越谷市のように環境意識の高い地方公共団体の契約が始まった。
国は、新エネルギーの技術開発や普及・促進に向けての補助金・低利融資等の助成措置に力をいれている。今後は、これらの助成措置を引き続き実施するとともに新エネ法(97年施行)、地球温暖化推進大綱(98年閣議決定)、環境基本計画に基づく率先実行計画(95年閣議決定)、グリーン購入法(2001年施行)に基づき、エネルギー利用者の責務として、官庁舎や学校等の公共施設への太陽光発電設置等、新エネルギーの率先導入が期待されている。国・地方公共団体の取り組み
地方公共団体は、自然環境等の地域特性を踏まえ、新地域エネルギービジョンを策定している。これに基づき、普及・啓発効果の高い庁舎、学校等への太陽光発電設置や自然特性を活かした風力発電等の新エネルギーの導入が進んでいる。また、地方公共団体が自ら導入するだけではなく、住宅用太陽光発電を導入する個人等に対し、国の補助金に上乗せした補助の供与や低利融資等、資金面での支援を実施している地方公共団体も増加してきている。
また、供給サイドである電気事業者に対しては、一定比率の再生可能エネルギーの購入を義務付けるRPS(Renewables Portfolio Standard;証書を用いた再生可能エネルギーの導入基準)制度が導入される予定である。これが導入されれば、電気事業者は、2010年度の長期エネルギー需給見通しを踏まえ、計画的に再生可能エネルギーを導入することが必要となる。
その一方で、需要家のエネルギーコスト削減のニーズから、環境負荷の高い分散型電源もまた、普及・拡大しているという現実がある。更に今後は、自由化の進展に伴い、需要家にとって、分散型電源の設置、電力の競争入札・相対契約といった電源の選択余地が拡大すると考えられる。
このような状況の中、環境性に優れた分散型電源の導入を拡大していくためには、以下3つの段階を経ていくことになる。
@補助金等の助成措置のもと、環境意識が高い需要家による、経済性よりもむしろ自らの理念を追求した先導的導入
A国、地方公共団体等の公益性の高い機関が環境性に優れた設備を率先導入し、あるいは競争入札等で環境性に優れた電源を選択すること等により、環境産業の基盤形成を進めること
B一般市場への普及
長期エネルギー需給見通しの目標に向けて、環境性に優れた分散型電源導入への官民一体となった更なる取り組みが求められる。我が国は現在、Aの段階に入ったところであり、今後、公益性の高い機関を中心に、エネルギーコスト削減という視点だけではなく、CO2排出量の削減といった環境性にも考慮した電源を積極的に選択し導入することを通じて、技術的・産業的な基盤を形成していくことの意義は大きい。
2)財団法人エネルギー総合工学研究所:第6回新電力供給システム技術検討会資料(2002.3)
3)財団法人日本エネルギー経済研究所:長期エネルギー技術戦略等に関する調査―天然ガス技術動向調査(2001.3)
4)総合資源エネルギー調査会 新エネルギー部会:新エネルギー部会報告書―今後の新エネルギー対策のあり方について(2001.6)
5)電気事業連合会:総合資源エネルギー調査会 新エネルギー部会資料―グリーン電力制度の概要について(2001.7)
6)山本恵久/金子憲治:「エネルギー自活の奨め」 日経エコロジー(2001.10)