今年1月に発足した米ブッシュ政権は、新たな科学技術政策を模索中である。
米国の科学技術政策はその予算規模の大きさもあり、世界に与える影響が大きい。例えば、今年度の政府科学技術予算を例にとると、わが国が約3.4兆円であるのに対し、米国は909億ドル(約11兆円)と、わが国の約3倍にあたる。
科学技術動向5月号(科学技術動向2001年5月号・特集「日米欧の政府科学技術予算に関する政策動向」)では、総合科学技術会議による平成14年度科学技術予算の重点方針の検討時期に合わせて、米国およびEUの予算配分動向を概観した。
本稿では、米国の科学技術政策について、より具体的な動向を紹介する。
本年5月、米国で大きなエネルギー政策の転換が発表された。この「国家エネルギー政策」(NEP)は、同国のエネルギー分野のR&D政策に大きな影響を与える可能性がある。
これを踏まえて本稿では、総論として「科学技術政策全般の展望」を行い、次に各論として「エネルギー分野のR&D政策の展望」を論じる。さらに、エネルギー政策と対照的なIT政策(クリントン前政権は同政策を目玉にしたが、ブッシュ政権は未だ同政策の具体的な方針を発表していない)にも着目し、R&Dを中心に今後の方向性を議論する。
ブッシュ政権とクリントン前政権の違いは、
・OSTP(科学技術政策局)の位置付け
・政府科学技術予算
・企業のR&Dへの期待
に見られる。以下にそれぞれの項目についてブッシュ政権の方針をまとめる
クリントン前政権は「科学技術の発展が経済成長のエンジン」とのスローガンを掲げ、OSTPを中心に一貫した科学技術政策を推進した。
一方、ブッシュ政権は、発足後半年が過ぎようとしているが、まだOSTP長官を任命していない。
こうした違いに対し、2001年5月、ワシントンDCで開催された第26回AAAS(米国科学振興協会)コロキウムでは、「ブッシュ政権は、OSTPによる中央集権型の政策を改め、各省庁へ権限を移そうとしているのではないか。」との見解が多くの関係者から示されている。
2001年4月9日に発表された2002年度大統領予算教書では、全科学技術予算は前年比6.1%増加している。
特にブッシュ大統領が、大統領選で「積極的に支援する」と公約したDOD(国防総省)とNIH(国立衛生研究所)は、前年予算を10%以上も上回る予算を要求している。
このしわ寄せとして、その他の機関、例えばDOE(エネルギー省)、NSF(国立科学財団)、USDA(農務省)等の予算要求は5〜10%減少している。
一方、2001年度予算(クリントン前政権下)では、DOE、NSF、USDAは、それぞれ前年比で約10%程度予算が増えており、両政権の違いが顕著である。
米国数学会の事務局長代理を務めるランキン氏は、「NIHの予算増加に異論はないが、将来の技術革新を考慮すると、バランスよく数学、物理、工学等のR&D予算も増加することが重要である。」と指摘している。
ブッシュ政権は、クリントン前政権と同様、研究開発について、企業の力を活用する方針である。
この点について、SRIインターナショナルのピーターソン科学技術政策プログラム代表は、「クリントン前政権は、R&D費の一部を産業に負担させ、政府負担を軽減させることが狙いであったのに対し、ブッシュ政権はさらに一歩踏み込み、企業だけでできる部分はすべて企業に任せ、政府は企業には手が出しにくい基礎研究に特化するスタンスを取っている。」と、コメントしている。
また、米国シンクタンクのワシントンコア社アレクサンダー副社長は、「ブッシュ政権の小さな政府を目差す方針は、共和党保守派の伝統に沿ったもので、当面、この方針が変更されることはないであろう。」と予測している。
このように、現時点では、ブッシュ政権の科学技術政策は前政権に比べて変化が大きいように見られるが、これに対して、AAAS予算・政策プログラム部門長コイズミ氏のように、「ブッシュ政権は科学技術の重要性を十分に認識しているが、現在は選挙公約である"減税、教育重視、国防力強化およびNIH支援拡大"を実現することで手一杯であり、それ以外の政策が後回しになっているだけである。」とするコメントもある。
米国の中長期的な科学技術政策では、学際性がキーワードとなる可能性がある。
2000年12月、NICが2015年を目処に、全世界を対象とした政治・経済、科学技術、紛争、環境等の変化を予測した「Global
Trends 2015」を公表した。
同報告書は、科学技術の変化について、「ITが地球規模で技術革新の牽引役となる。」と予測しているが、ITがどのように技術革新を牽引するのか、またそれが社会へどのような影響を及ぼすのか、については言及していない。
科学技術の変化に関してさらに調査するため、NICは米国有数のシンクタンクであるRAND社へ調査を委託した。
同社は、2001年3月、報告書「The Global Technology Revolution: Bio/Nano/Materials
Trends and Their Synergies with Information Technology by 2015」を発表した。
同報告書は、一貫して学際的R&Dの重要性を唱えており、「今後、技術革新を牽引するのは、バイオテクノロジー、材料テクノロジーおよびナノテクノロジーの相互作用によるシナジー効果である。ただし、これには基盤技術であるITをうまく組み合わせることが不可欠である。」と分析している。
こうしたシナジー効果の例として、図表1が示されている。
しかし、ここでは縦軸と横軸の各技術革新例の相互作用によるシナジー効果の影響範囲(世界規模、特定地域等)を示しているだけで、シナジー効果の詳細な内容には触れていない。例えば、同図表から、縦軸「バイオテクノロジー分野」の「遺伝子組換え食品技術」と、横軸「材料テクノロジー分野」の「人工心臓組織技術」の相互作用によるシナジー効果が「世界規模で健康促進に貢献する」ことは分かるが、どのようにシナジー効果が生じて、またそれがどのように健康促進に貢献するか等については記述されていない。
DARPAはDOD(国防総省)に属し、主に国防分野の研究および先端的開発を担当している。DARPAでは、2000年10月、「バイオ・情報・マイクロ・プログラム(Bio:Info:Micro
Program)」が始まった。
クリントン前政権下でDARPAのディレクターを務めたフェルナンデス氏は、学際的R&Dの重要性を唱えている。同氏は、「今後DARPAでは、バイオテクノロジー、ITおよびマイクロシステム技術を組み合わせたR&Dが主流になるであろう。」と予測している。
また、「バイオ・情報・マイクロ・プログラムは、下記の新規領域の創設を促し、非国防分野のR&D活動にも影響を与えるであろう。」と同プログラムの責任者であるアイゼンスタット氏は述べている。
(創設される新領域)
・ナノ単位から地球規模単位までをカバーする人工システムエンジニアリング
・生物起源コンピュータシミュレーション
(アルゴリズムおよびモデルの開発・実用化)
・生体機能を模倣した材料および化学品の合成生産エンジニアリング
・ヒトとシステムの相互作用を考慮したコンピューター神経科学
・生物学的プロセスを模倣したプラットフォーム
・生物の複雑な活動のモデリングとシミュレーション
・細胞解析に必要な微小単位のプラットフォーム
以上、本節では、総論として米国の科学技術政策全般を展望した。次に各論として、エネルギー分野やIT分野のR&D政策を展望する。

ブッシュ政権がクリントン前政権の方針から大きく転換した政策の一つに、エネルギー政策がある。
ブッシュ政権が国家エネルギー政策(NEP)を発表して1ヶ月以上が経ち、メディアによる報道やシンクタンクによる分析が行われているが、エネルギー事業の展望、環境保護、規制問題等が中心となっており、エネルギー分野のR&Dへ及ぼす影響を扱かったものは見られない。
このため本節では、NEPによるエネルギー分野のR&Dへの影響を分析する。
ブッシュ大統領の命を受けたチェイニー副大統領を代表とするNEPDG(国家エネルギー政策作業部会)がNEPを策定し、5月17日、ブッシュ大統領が、セントポール(ミネソタ州)での演説において、これを発表した。
NEPは、従来のエネルギー政策を転換し、エネルギー供給の拡大方針を打ち立て、原発推進やアラスカの北極圏野生保護区(ANWR)での石油・天然ガス採掘解禁を唱えており、各界に大きな波紋を投げかけている。
図表2にNEPのR&Dに関する提言をまとめる。
図表2 NEPにおけるR&Dに関する記述
| 目的 | R&Dに関する提言 | |
| エネルギー増産 | ANWRでの 石油・ 天然ガス採掘解禁 |
・環境への負荷を最小限に抑える最先端ドリル技術のR&Dの推進。 ・ANWR借地権の入札収入で得た12億ドルを、代替・再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオマス、地熱)のR&Dに投資。 |
| 低公害石炭 発電の推進 |
・クリーンコール技術の研究へ、10年間で20億ドルの投資 | |
| 原子力 発電の推進 |
・使用済み核燃料の再処理に関する国際協力R&Dへの投資の見直し | |
| エネルギー 再生可能 |
自動車燃料の 代替物の開発 |
・水素電池、燃料電池、分散電池のR&D統合 ・次世代エネルギー源(水素など)の開発への投資増 |
| 効率向上 エネルギー |
輸送効率 の向上 |
・輸送信頼性や超伝導送電のR&D推進 |
出典:http://www.whitehouse.gov/energy/
NEPはアブラハム・エネルギー長官に、「現在、DOEで実施されているR&Dプログラムを対象としたプログラム別投資状況と、これまでに実施された、あるいは実施中のプログラムがエネルギー効率向上にどの程度寄与しているかを調査し、大統領へ報告すること」を命じている。
この報告を踏まえ、NEPの方針に沿ったDOEのR&Dプログラムが再設定され、2003年度から実施されると見られる。
図表3に、DOEの主要R&Dプログラムについて、2001年度予算と2002年度教書案を比較する。
Management and Budget2002年度教書案では、DOEのR&D予算が前年より4.5%減少している。
放射性廃棄物処理に関するR&D予算の増加は、研究段階から開発段階への移行によるものであり、今後は、設計・モデル作成に関する技術開発、貯蔵施設の建設準備等が積極的に進められるであろう。
NEPに関するテーマとして、クリーンコール技術プロジェクトが創設されている。
一方、再生可能エネルギーやエネルギー効率向上のプロジェクト予算は、軒並み減少している。
図表3 DOEのR&D予算(単位:百万ドル)
| 領域/(主要プログラム) | 2001年度(クリントン) | 2002年度(ブッシュ) | 増加率(%) |
| 原子力エネルギー | 81 | 57 | -29 |
| (核エネルギー研究構想) | 34.8 | 18.1 | -48 |
| (核エネルギー装置最適化) | 5 | 4.5 | -10 |
| 放射性廃棄物処理 | 390 | 445 | 14 |
| 化石エネルギー | 392 | 296 | -25 |
| (クリーンコール技術) | 0 | 150 | − |
| (炭素回収) | 18.8 | 20.7 | 10 |
| (超低公害燃料) | 23.4 | 7 | -70 |
| 再生可能エネルギー | 328 | 227 | -31 |
| (バイオマス/バイオ燃料) | 86.3 | 80.5 | -7 |
| (水素) | 26.9 | 13.9 | -48 |
| (地熱) | 26.9 | 13.9 | -48 |
| (風力) | 92.7 | 42.9 | -54 |
| エネルギー効率向上 | 39.6 | 20.5 | -48 |
| (産業利用) | 149 | 88 | -41 |
| (輸送利用) | 255 | 239 | -6 |
| 核セキュリティ | 6,641 | 6,777 | 2 |
| (備蓄) | 246 | 305 | 24 |
| (サイバーセキュリティ) | 28.8 | 58 | 101 |
| (核不拡散) | 204 | 195 | -5 |
| 計 | 7,700 | 7,400 | -4.5 |
出典:Budget of the United States Government, Fiscal Year 2002, Office of Management and Budget
6月初旬、議会ではその後の審議に影響を与える大きな変化があった。民主党ビンガマン議員の上院エネルギー・資源委員会の委員長就任である。
この背景には、ジェフォーズ上院議員の共和党離脱がある。上院では、それまで共和党と民主党で議席が拮抗していたが、この離脱により民主党が多数派となり、常任委員会の委員長ポストが共和党議員から民主党議員へ移った。
ビンガマン議員は民主党のエネルギー予算法案の起草者である。DOEのR&D予算について、民主党予算法案が教書案と異なる点は、
・R&D投資の強化
・使用済核燃料研究局の設置(高レベル放射性廃棄物や使用済核燃料の処理技術に関するR&Dを担当)
である。もうひとつ、民主党のエネルギー政策の基盤となっているのが、「2001年包括的・均衡エネルギー政策法(Comprehensive
and Balanced Energy Policy Act of 2001)」である。同法は環境保護に重点を置き、エネルギー増産よりもエネルギー有効利用を重視している。
エネルギー政策に関する議会の審議の鍵を握るのは、環境保護を訴える共和党議員であると言われている。ジェフォーズ上院議員が共和党を離脱した一因には、環境保護を唱える同議員が、共和党が推すアラスカの北極圏野生保護区における石油・天然ガス採掘解禁に同調できなかったことがある。
同様に、環境保護の立場をとっている共和党のチェイフィー上院議員は、ワシントン・ポスト紙に「今後も、北極圏野生保護地区での石油・天然ガス採掘解禁に反対を示す共和党議員が出てくる可能性が高い」と語っている。
米国では、議会に対して、関連団体が影響を与える場合が多いので、ここでは関連団体の主張を概観する。
(エネルギー業界)
・米国ガス連盟(American Gas Association)パーカー代表
「NEPが2015年までに38,000マイルのガス輸送パイプライン新設を許可・保障したことは、賞賛できる。今こそ、ライフスタイルの変化に合わせたエネルギー政策・インフラが必要である。」
・米国石油連盟(American Petroleum Institute)
「NEPのエネルギー増産路線は、今後の米国の経済発展には不可欠である。」
・米国石油化学・精製協会(National Petrochemical & Refiners Association)
「NEPは、エネルギー増産と環境保護を唱えており、バランスがとれた政策である。特に、精製設備の拡大に対する現在の規制の弊害に言及している点は、高く評価できる。」
(環境保護団体)
・天然資源保護評議会(Natural Resources Defense Council)ホーキンス気候センター代表
「NEPはクリーンコール技術の研究へ10年間で20億ドル投資すると唱えているが、これは石炭業者を優遇しているに過ぎない。二酸化炭素の排出を抑えたいのであれば、税金投入より、環境規制を強める方が効果的である。また、NEPが唱えるアラスカでの石油・天然ガス採掘解禁は、米国が直面しているエネルギー問題の解決にはほとんど役に立たず、アラスカの既存パイプライン業者の懐を潤すだけである。」
・国立環境トラスト(National Environmental Trust)クラップ代表
「NEPは短期的なエネルギー問題の解決策を提示していない。原子力プラントの新設や、アラスカ自然保護地区での石油・天然ガス採掘解禁は、この先最低5年間はエネルギー増産に寄与しない。」
(研究機関)
・米国原子力学会(American Nuclear Society)レイク会長
「ブッシュ政権が原子力エネルギーの重要性を認め、プラントの新設を推進したことは、賞賛できる。さらには、議会が同政権のエネルギー政策を推すことを望む。」
・原子力エネルギー研究所(Nuclear Energy Institute)コルビン所長
「NEPが、原子力エネルギーを、今後、米国にとって不可欠なエネルギー源の一つに挙げたことは、原子力研究の光明となる。今後は、この分野への投資増加や優秀な学生の参加が大いに期待できる。」
・国際熱核融合実験炉(ITER)研究所ロバート・エマール所長(応用電磁機械工学シンポジウム(ISEM)での記者会見にて)
「クリントン前政権は議会に対して弱腰だったが、ブッシュ政権は強力にエネルギー政策を進めて欲しい。」
(シンクタンク)
・SRIインターナショナル社・ピーターソン代表
「教書案やNEPを見る限り、ブッシュ政権はDOEのR&Dをあまり重視していないようである。この傾向は、変更されないであろう。」
・ケイトー研究所(Cato Institute)テイラー自然資源政策担当主幹
「NEPが唱える105の提言は、政策の方向性を提案しただけで、実現性に欠ける。」
・戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies)イーブル・エネルギー部長
「NEPは即効性に乏しく、ガソリン高騰や電力危機などによる国民の切実な不安を解消するには不十分である。」
(州政府)
・カリフォルニア州デービス州知事
「カリフォルニア州では、夏になると電力需要が増し、エネルギー危機が拡大することが懸念されているが、NEPは中長期的な政策が中心で、即効性に欠ける。ブッシュ政権は、NEPでエネルギー増産を訴える口実として、わが州のエネルギー危機を利用しているのではないか。」
クリントン前政権は重視していたが、ブッシュ政権は方針を明示していない政策として、IT政策がある。本節では、ブッシュ政権によるIT分野のR&D政策について展望する。
2002年度の大統領予算教書における省庁横断型ITプログラム(ネットワーキング・IT
R&D計画)の予算は、前年から大きくは増えておらず(2.1%増)、また内容的にも大きな違いは見られない。
IT分野における政府R&Dプログラムの関係者は、ブッシュ政権の政策について、次のようにコメントしている。
NSFコンピュータ・通信研究部門のアブダリ部門長
「ITの研究開発は、国家の産業の行く末を大きく左右する重要課題であり、ブッシュ大統領もこのことは十分に理解している。また、共和党もブッシュ政権がクリントン前政権のIT分野のR&D政策を継続して推進していくことを望んでおり、万一、ブッシュ政権がIT分野のR&D予算を大幅に削る案を出したとしても、議会が認めるはずはない。」
IT R&D イニシアティブ国家調整局のフラーニ局長
「ブッシュ政権はクリントン前政権と同様にIT分野の研究開発の重要性を認識しているが、産業主導で進めることを望んでいる。(科学技術動向5月号)」
これらから、4.2.2(3)で紹介したAAAS予算・政策プログラム部門長コイズミ氏のコメントのように、現在、ブッシュ政権は選挙公約の実現に手一杯で、IT分野のR&D政策が後回しになっているというのが実情と見られる。
クリントン政権は基礎研究への投資を増加させていた。
NRC(国家研究評議会)コンピュータ科学&電子通信委員会のブルーメンタル上級管理者は、こうした基礎研究重視を高く評価しており、「企業は、短期的な利益に結びつく製品開発を中心に行っているため、基礎研究やインフラ整備に取り組むことが困難であり、基礎研究やインフラ整備は政府がリーダーシップを取って進めることが大切である。」とコメントしている。
この一方で、基礎研究を担う大学の研究者の中には、企業との協力を重視するものも多い。
MIT技術、政策および産業センターギレット上級管理者
「IT分野では、自分を含め、研究資金を政府にではなく、企業に頼る研究者が増えている。」
ハーヴァード大学情報リソース政策プログラム代表オッティンガー教授
「自らの研究の資金は、かつては政府から得ていた。ここ数年は企業のみに頼っている。これは、政府から出る研究費は、年度ごとに増減が激しく、中長期の研究計画が立て難いためである。」
両氏は、これまで何度も政府からIT政策についてアドバイスを求められており、特にオッティンガー教授は、政府の委員を歴任している。
このような大学研究者の考え方に対して、疑念を示すコメントを次に紹介する。
SRIインターナショナル科学技術政策プログラムコワード上席技術政策アナリスト
「昨年までは、業績が上向きのIT関連企業が多かったため、企業から大学への研究投資も活発であった。しかし、最近では景気減退の影響を受け、業績が悪化している企業が多く、今後、企業から大学への研究投資が全体的に減少することが懸念される。」
IT分野のR&D政策に大きな影響を及ぼすものに、PITAC勧告がある。
PITACは、産学から集められたトップレベルの専門家23名で構成された組織で、大統領にIT分野のR&D政策について提言している。
最近のPITACの代表的な勧告には、1999年に出された「21世紀に向けたIT」がある。これは、当時のクリントン政権に対して、政府のIT分野のR&D活動が過度に応用へ偏っていることを警告し、次世代を切り開く、あるいは国の安全保障に不可欠な基礎研究にも十分な支援を行うよう勧告した。
今年、PITACが今後のIT分野のR&D政策に関する新勧告を発表し、さらに1999年の勧告の政策評価も実施する予定である。こうしたPITACの動向は注目に値する。
以上をまとめると、ブッシュ政権による科学技術政策の方向性が、次第に明らかになりはじめている。
今後、注目すべき点としては、
・ 大統領科学技術補佐官にどんな人物が任命されるのか
・ 2002年度政府R&D予算に関する議会審議の動向
・ NEPに対応したDOEのR&Dプログラムの見直し結果
・ IT分野のR&Dに関するPITACの新勧告
など挙げることができよう。