科学技術に関する意識調査
- 2001年2〜3月調査 -
概要
平成 14 年 1 月
文部科学省
科学技術政策研究所
科学技術政策研究所は、一般国民の科学技術に対する関心度、理解度、態度等意識を調査するため、2001年2〜3月に一般国民3000人を対象に「科学技術に関する意識調査」を実施したが、今般、単純集計を中心に可能な範囲で時系列比較、国際比較、多変量解析による分析を行った結果をとりまとめた。
調査の主な目的
- 一般国民の科学技術に関する意識についての最新データの収集
- 数理統計手法等を活用した総合的な分析による我が国一般国民の科学技術に対する意識構造の明確化
- 第3期科学技術基本計画策定に向けて基礎資料としてのデータ収集
- 今後の継続的調査実施に向けた標準型調査票の作成・検討及び調査分析手法の開発
調査の概要
- 調査時期:平成13年2月23日(金)〜3月23日(金)
- 調査対象
- 設計標本数:3000標本
(有効回収数2146人、有効回収率71.5%)
- 対象地域・対象者:全国18歳以上男女(69歳まで)
- 抽出法:住民基本台帳からの層化2段無作為抽出法
- 調査方法:調査員による面接聴取(訪問面接法)
- 調査項目:国際比較のため、米国が1999年に実施した意識調査の調査票を基に構成
調査分析結果の概要
- 科学技術に対する関心度、自己評価認知度及び公衆の注目度については、「環境汚染」を除いて「経済・景気」等の他の諸問題と比較すると一般に低く、特に自己評価認知度でその傾向が顕著である(図1、図6)。
また、15ヶ国地域国際比較において我が国は「環境汚染」を除いて科学技術関連項目の関心度等が低い(図2〜6)。
- 科学技術知識の理解度(リテラシー)について、15ヶ国地域国際比較で我が国は欧米諸国に比較して低いレベルにある(図7〜8、表1)。
また、科学技術用語への理解度は過去の調査結果と比較すると向上しているがその理解の具体的内容・レベルについては詳細な調査が必要である。
- 科学技術に対する態度について、科学技術に対する肯定的傾向が優勢であり、科学的研究については利益が上回ると考えているが、遺伝子組換え食品については害を懸念している(図9〜11)。
また、科学研究に対する政府支出等への理解は比較的高い(図12)。
- 科学技術の情報源については、テレビ、新聞が中心であり、科学技術雑誌の購読率は非常に低く、科学技術関係の公共施設への訪問回数は少ない(図13〜14、表2)。
- 科学技術理解増進活動の名称周知度については、「ロボフェスタ」や「科学技術週間」は高い。
また、一般国民は行政担当者、研究者、教育担当者等が一般国民の科学技術理解増進により一層努力すべきであると考えており、マスコミの正確な情報伝達、教育制度等の改善等が研究の正しい理解に繋がると考えている(図15〜19)。
(注)
- 自己評価認知度
- 当該問題を「知っている」とする自己評価レベル
- 公衆の注目度
- 関心度と自己評価認知度、新聞閲覧頻度等での総合評価レベル
- 15ヶ国地域
- 比較可能なデータのあるEU、EU加盟国、米及び加
(関心度と自己評価認知度)
- 関心度、自己評価認知度(当該問題を「知っている」とする自己評価レベル)について、科学技術関連項目は「環境汚染」を除いて「経済・景気」等の他の諸問題と比較すると一般に低く、特に自己評価認知度でその傾向が顕著
図1.諸問題への関心度と自己評価認知度(指数得点による比較)

(指数得点)
指数得点 = 「非常に関心がある」(関心度)、「よく知っている」(自己評価認知度)回答率×100点
+ 「ある程度関心がある」、「ある程度知っている」回答率×50点
+ 「全く関心がない・わからない」、「全く知らない・わからない」回答率×0点
なお、我が国1991年調査は4択式のため、100点、67点、33点、0点の補正値で計算
「自己評価認知度」とは、当該問題について、どの程度知っているかを自分で評価したもの
(「科学的発見」関心度指数得点国際比較)
- 我が国は1991年から2001年にかけて低下、米は1992年から1999年にかけて上昇、英は1992年から2000年にかけて低下
なお、EUデータは1992年、加は1989年であることに留意
図2.「科学的発見」関心度指数得点15ヶ国地域国際比較

「新しい科学的発見に関する問題」について、「非常に関心がある」、「ある程度関心がある」、「全く関心がない」を選択する質問に対する回答率から指数得点を計算
(「技術発明利用」関心度指数得点国際比較)
- 我が国は1991年から2001年にかけて低下、米は1992年と1999年は、ほぼ同じ、英は1992年から2000年にかけて低下
なお、EUデータは1992年、加は1989年であることに留意
図3.「技術発明利用」関心度指数得点15ヶ国地域国際比較

「新しい技術や発明の利用に関する問題」について、「非常に関心がある」、「ある程度関心がある」、「全く関心がない」を選択する質問に対する回答率から指数得点を計算
(「医学的発見」関心度指数得点国際比較)
- 我が国は1991年から2001年にかけて低下、米は1992年と1999年は同じ、英は1992年から2000年にかけて低下
なお、EUデータは1992年、加は1989年であることに留意」
図4.「医学的発見」関心度指数得点15ヶ国地域国際比較

「新しい医学的発見に関する問題」について、「非常に関心がある」、「ある程度関心がある」、「全く関心がない」を選択する質問に対する回答率から指数得点を計算
(「環境汚染」関心度指数得点国際比較)
- 我が国は1991年から2001年にかけて上昇、米は1992年から1999年にかけて低下、英は1992年から2000年にかけて低下
なお、EUデータは1992年、加は1989年であることに留意
図5.「環境汚染」関心度指数得点15ヶ国地域国際比較

「環境汚染問題」について、「非常に関心がある」、「ある程度関心がある」、「全く関心がない」を選択する質問に対する回答率から指数得点を計算
(「科学技術に注目している公衆」の割合国際比較)
- 我が国の「科学技術に注目している公衆」の割合は、調査年に留意する必要はあるが、各国と比較すると少ない
図6.「科学技術に注目している公衆」15ヶ国地域国際比較

- 「科学技術に注目している公衆」:
- 「科学的発見」又は「技術発明利用」について、「非常に関心がある」かつ「よく知っている」かつ「新聞を毎日読んでいる」あるいは「科学技術雑誌を定期購読している」と回答した人の割合
- 「科学技術に関心がある公衆」:
- 「科学的発見」又は「技術発明利用」について、「非常に関心がある」と回答した人の割合(上記「科学技術に注目している公衆」を除く)
(科学技術基礎的概念の理解度)
- 科学技術の基本的な知識に関する理解度については、正答率、誤答率、「わからない」回答率によって、4つのグループに分類される
図7.科学技術基礎的概念の理解度(クラスター分析による4グループ分類)

- クラスター分析:
- グループ分類を行う統計解析手法で、この場合、正答率、誤答率、「わからない」回答率の割合が近いもの同士によって、4つのグループに分類されたG1〜4の分類は表1参照
表1.科学技術基礎的概念理解度のクラスター分析による分類
* は15ヶ国地域国際比較に使用された10問
| (グループ1) 正答率70%以上 |
| 光と音はどちらが早いか |
(光) |
|
| 放射能に汚染された牛乳は沸騰させれば安全だ |
(誤) |
|
| 喫煙は肺がんをもたらす |
(正) |
|
| 大陸は何万年もかけて移動し続けている |
(正) |
* |
| 現在の人類は原始的動物種から進化したものだ |
(正) |
* |
| 地球の中心部は非常に高温である |
(正) |
* |
| (グループ2) 正答率50%以上70%未満 |
| 我々が呼吸に使う酸素は植物が作ったものである |
(正) |
* |
| 宇宙は巨大な爆発によって始まった |
(正) |
|
| 地球の公転及び公転周期 |
(地球公転1年) |
|
| すべての放射能は人工的に作られたものである |
(誤) |
* |
| (グループ3) 誤答率35%以上 |
| ごく初期の人類は恐竜と同時代に生きていた |
(誤) |
* |
| 男か女になるかを決めるのは父親の遺伝子である |
(正) |
* |
| 抗生物質はバクテリア同様ウイルスも殺す |
(誤) |
* |
| (グループ4) 「わからない」回答率45%以上 |
| 電子の大きさは原子の大きさよりも小さい |
(正) |
* |
| レーザーは音波を集中することで得られる |
(誤) |
* |
(科学技術基礎的概念理解度国際比較)
図8.科学技術の基礎的な概念(科学技術に関する基礎的な知識)理解度
15ヶ国地域共通10問平均正答率比較

調査年の相違はあるが、関心度と異なり、知識理解度はそれほど大きく変化しない傾向にある:米国1999年及び1995年データ参照
(科学技術に対する態度)
- 科学技術に対する態度については、肯定的傾向が優勢である
図9.世界は科学によって良くなったか
図10.科学技術の肯定的意見への賛否

(科学的研究等の利害)
- 科学的研究については、利益が上回ると考える人が、害が上回ると考える人よりも多く、遺伝子組換え食品については害を懸念している人が多い
図11.科学的研究等の利害について

(科学研究政府援助)
図12.科学研究への政府援助への賛否

(科学技術の情報源)
- 科学技術の情報源については、テレビ、新聞が中心であり、科学技術関係の公共施設への訪問回数は少ない
図13.科学技術情報:現在の入手方法(複数回答可)

表2.公共施設訪問回数(1年間:単位は%)
| |
1回 |
2回 |
3回 |
4回 |
5回以上 |
0回(行かなかった) |
わからない |
| 美術館 |
16 |
10 |
5 |
1 |
3 |
65 |
1 |
| 自然史博物館 |
14 |
4 |
1 |
0 |
1 |
80 |
1 |
動物園と水族館
(両方合わせた回数) |
23 |
11 |
5 |
2 |
2 |
57 |
0 |
| 科学技術博物館 |
10 |
2 |
1 |
0 |
1 |
87 |
1 |
| 公共図書館 |
9 |
8 |
6 |
3 |
21 |
53 |
1 |
(科学技術の情報源:科学技術雑誌購読)
図14.科学技術雑誌の購読

図15.科学技術情報:満足している入手方法(複数回答可)

図16.科学技術情報:将来使ってみたい入手方法(複数回答可)

(科学技術理解増進活動の名称周知度)
- 科学技術理解増進活動の名称周知度については、「ロボフェスタ」や「科学技術週間」は高いが、周知度の低い活動については、今回の調査対象ではない青少年を対象とした活動であることや実際の活動が正式名称として知られていない可能性がある
図17.理解増進活動名称周知度(複数回答可)

(科学技術理解増進活動への意見:理解増進に努力すべき層)
- 国民は、行政担当者、研究者、教育担当者等が一般国民の科学技術理解増進に努力すべきであると考えている
図18.理解増進に努力すべき層(2つまでの複数回答可)

(科学技術理解増進活動への意見:研究への国民理解に必要な取り組み)
- 国民は、マスコミの正確な情報伝達、教育制度等の改善等が研究の正しい理解に繋がると考えている
図19.研究者が行う研究についての国民理解に必要な取組み(3つまでの複数回答可)

科学技術政策への示唆
- 国際的に比較しても遜色のないレベルに科学技術への関心度を高めるような方策を検討していく必要がある。
- 科学技術への関心を高めることに加えて、科学技術を「よく知っている」と国民が自己評価できるような方策を検討していく必要がある。
- 一般成人の科学技術リテラシー向上のためには、社会人に向けた大学の教育機会の拡充等学校教育の強化と共に、学校教育以外のインターネットによる情報発信やテレビ、新聞、雑誌のマスメディア等を活用した正確な科学技術知識の普及を図る方策を検討する必要がある。
- 科学技術理解増進政策の今後の進め方としては、例えば具体的な目標を設定することにより、その目標達成に向けて関連する調査分析を行って、より効果的な政策の策定及び実施に反映させることも検討する必要があると思われる。
- 本調査結果が科学技術理解増進活動を行っている現場の当事者の一助となるような具体的方策の実現に向けた調査検討が必要である。
今後の調査研究に向けての課題
- 今般の調査を踏まえ、以下の項目が今後の調査研究に向けての課題として指摘される。
- 科学技術に対する関心度や科学技術リテラシー等を構成する個人の意識の形成要因である年齢、性別、学歴等の様々な要素の相互関係を明らかにするため、最先端の統計解析手法である共分散構造分析等の多変量解析手法を活用した多角的な分析による科学技術に対する一般国民の意識構造モデルの作成
- 「科学技術に関する意識調査」の継続的実施による時系列データの収集と国際比較研究の実施(米国と同様に「科学技術指標」改訂スケジュールと連動して2〜3年毎)
- 欧米加豪諸国で既に実施されている「バイオテクノロジーに関する意識調査」をはじめとする個別科学技術分野に関する意識調査の実施
- 科学技術政策におけるパブリックコメント等政策決定過程における国民の関与等の分析や、一般国民の科学技術に対する意識形成に重要な役割を演じている新聞・雑誌記事の内容分析等のメディア分析と、科学技術に関する意識調査結果との総合的な調査分析の実施
- 科学技術に関する意識調査の調査手法の検討事項として、科学技術用語の説明、科学技術知識の回答理由等詳細な調査を行うための自由回答調査の実施や学校教育で取得すべき必須知識を質問項目に設定すること等による学校教育と連携した我が国独自の科学技術リテラシー測定手法の開発
- 科学技術に対する関心度の向上が科学技術リテラシーの向上をもたらし、その結果、科学技術政策を肯定的に支援するといった図式についての更なる検討
- 今回の意識調査については、今後1年を目途に、クロス分析、合成変数分析、多変量解析等の詳細な分析を行っていく予定であるが、本報告書の分析結果に関しては、研究者、行政担当者、教育担当者のみならずマスメディア等において様々な観点から幅広く議論して頂くことを期待する。